相関係数が既知の見かけ上無関係な回帰 (SUR) モデルにおける最良共変推定量 東京大・教養 倉田 博史 慶應義塾大・理工 松浦 峻 本発表では,互いに相関を持つ p 個の重回帰式 yi = Xi βi + εi (i = 1, . . . , p) with E(εi ) = 0m , V(εi ) = σii Im and Cov(εi , εj ) = σij Im (ここに,yi : m × 1, Xi : m × ki , rankXi = ki )からなる見かけ上無関係な回帰(seemingly unrelated regression, SUR)モデルにおける偏回帰係数ベクトルの最良共変推定量を導出する.このモデルは,n = mp, ∑p k = i=1 ki と置くと,次のように表現出来る: y = Xβ + ε with E(ε) = 0n , V(ε) = Σ ⊗ Im . ここに,y = (y1′ , . . . , yp′ )′ : n × 1, X = diag{X1 , . . . , Xp } : n × k, Σ = (σij )(p × p 正値定符号) である.観測値ベクトル y の分布は Rn 上のルベーグ測度に関して f (y|(β, Σ)) = |Σ ⊗ Im |−1/2 h((y − ˆ (β, Σ)) = Xβ)′ (Σ−1 ⊗ Im )(y − Xβ)) なる楕円対称な密度関数を持つものとする.損失関数は,L(β, (βˆ − β)′ X ′ (Σ−1 ⊗ Im )X(βˆ − β) を用いる. √ 本発表では,相関係数行列 Λ = (ρij ) : p × p(但し ρij = σij / σii σjj )は既知とし,位置尺度変換群 G = G1 × . . . × Gp (但し,Gi = (0, ∞) × Rki )の作用 yi → ai yi + Xi gi ; βi → ai βi + gi , σij → ai aj σij ((ai , gi ) ∈ Gi ; i, j = 1, . . . , p) に関する β の最良共変推定量を導く.相関係数行列 Λ はこの作用に関する最大不変パラメータである.従っ て,本発表は最大不変パラメータが既知のモデル(パラメータ空間が唯一つの G-軌道からなるモデル)の 下での共変推定問題と捉えることが出来る(基礎となる先行研究として Kariya, T. (1987, Ann. Statist.)). 各重回帰式の残差ベクトル : [Im − Xi (Xi′ Xi )−1 Xi′ ]yi を ei : m × 1 とし,e = (e′1 , . . . , e′p )′ : n × 1 と置 ˆ くと,G 共変推定量 β(y) は,任意の関数 d : Rn → Rk を用いて, ˆ β(y) = (X ′ X)−1 X ′ y + R(e)d(u), d : Rn → Rk と書ける.ここに,R(e) = diag{∥e1 ∥Ik1 , . . . , ∥ep ∥Ikp } : k × k ,u = (e′1 /∥e1 ∥, . . . , e′p /∥ep ∥)′ : n × 1 とす る.u は最大不変量である.以下, H = X ′ (Λ−1 ⊗ Im )X, S = H(X ′ X)−1 X ′ [In − X(X ′ (Λ−1 ⊗ Im )X)−1 X ′ (Λ−1 ⊗ Im )] と置き,最適な d(u) = d∗ (u) を求める. 定理 1. 最良共変推定量は βˆ∗ (y) = (X ′ X)−1 X ′ y + R(e)d∗ (u), d∗ (u) = −D(u)−1 F (u)u で与えられる.但し,D(u) = X ′ (Λ−1 ◦ T (u) ⊗ Im )X : k × k (ここに ◦ はアダマール積), T (u) = (tij (u)) : p × p, tij (u) = E(β,Σ)=(0,Λ) [∥ei ∥∥ej ∥|u], であり,F (u) = [tij (u)Sij ] : k × n と置く(Sij : ki × m は S の (i, j) ブロックである). (定理終) 全て無相関(Λ = Ip )のときは,最良共変推定量は OLSE: (X ′ X)−1 X ′ y に一致する.また,重回帰式 が 2 個(p = 2)でかつ,y の分布が多変量正規分布 Nn (Xβ, Σ ⊗ Im ) のときは,T (u) の陽的表現が得ら れる(定理 2,当日報告).また,導出された最良共変推定量が不偏でかつ有限な 2 次モーメントを持つ一 般化最小 2 乗推定量であることも示される(定理 3,当日報告).数値によるリスクの比較については当日 報告する.
© Copyright 2025 ExpyDoc