<2014.2 月号> 株式会社フォーラムジャパン 東京都千代田区神田小川町 3-20 第 2 龍名館ビル 6F 4月から育児休業給付の給付率が引き上げられる予定です! ~男女ともに育児休業取得を更に促進するため雇用保険法の一部を改正へ~ 平成 26 年 1 月 16 日に開催された、職業安定分科会雇用保険部会で、 「雇用保険の一部を改正する法律案要綱」が示さ れました。要綱には、教育訓練支援給付金の創設や育児休業給付金に関する暫定措置等が盛り込まれており、現在開か れている通常国会に法案提出し、今年の 4 月 1 日からの施行を目指しています。その中から、今回は、育児休業給付金 に関する暫定措置を取り上げます。 【雇用保険法の一部を改正する法律案要綱より】 ・育児休業給付金に関する暫定措置 育児休業給付金の額については、当分の間、被保険者が休業を開始した日から起算し当該育児 休業給付金の支給に係る休業日数が通算して180日に達するまでの間に限り、被保険者が休 業を開始した日に受給資格者となったものとになしたときに算定することとなる賃金日額に 支給日数を乗じて得た額の100分の67に相当する額に引き上げるものとすること。 ・施行期日 この法律は、平成26年4月1日から施行するものとすること。 育児休業給付は、育児休業を取得しやすくし、職業生活の円滑な継続を支援、促進するために雇用保険の失業等給付 のひとつとして設けられており、これまでも給付率の引き上げ等を行ってきました。平成 22 年度からは、育児休業基本 給付金と育児休業者職場復帰給付金を統合し、給付額の全額を育児休業中に支給する制度に改められました。これらの 見直しにより、育児休業給付受給者が増加しています。 現行制度では、一定の要件を満たす雇用保険の被保険者が、1 歳に到達する日までの子を養育するために育児休業を取 得した場合、休業期間中に休業開始時賃金の 40%(当分の間は 50%)に相当する「育児休業給付金」が支給されます。 一方で、依然として収入が減るという経済的な理由から育児休業を取得しなかった者が、男女とも一定程度存在する ほか、特に、男性の育児休業取得率は平成 24 年度において 2%弱と伸び悩んでいる状況です。男性の育児休業取得を促 進することは、男性のワーク・ライフ・バランスの実現だけでなく、女性の育児負担を軽減し、女性が職場で継続して 力を発揮すること(女性の就業率の向上)にもつながります。 このように、男女ともに育児休業を取得していくことを更に促進するため、育児休業給付の給付率を引き上げること とし、出産手当金の水準を踏まえ、育児休業開始時から最初の 6 ヶ月間について 67%の給付率とするとしています。こ の案によれば、半年間を経過した後の給付率は従来と同じ 50%となります。 ■育児休業取得率の推移(生命保険文化センター資料より) 給付率を引き上げる目的 育児休業給付金の拡充が検討されている背景には、男性の育児休業の取得促進という狙いがあります。前ページの グラフでもわかる通り、女性の育児休業取得率は、平成 11 年の 56.4%から平成 24 年度は 83.6%へと上昇してきまし た。これに対し、男性の育児休業の取得率は平成 11 年度の 0.4%から平成 24 年度の 1.9%と低水準で推移しています。 これは、小さい子供のいる夫婦世帯の多くは男性が主な家計の担い手であり、男性の育児休業所得による所得減少 は家計に大きな負担となりかねないことが影響していると考えられています。そこで、育児休業給付金を拡充し、男 性の育児休業の取得を経済面から支えることが期待されているのです。 男性の育児休業取得拡大を目指す背景 国が男性の育児休業取得推進に取り組む背景には、以下の 3 つの目的があります。みずほ総合研究所のまとめたレ ポートからご紹介します。 ①子育て世代の間で働き方への希望が変化していることへの対応 共働き世帯の増加や子育てに関わる価値観の変化により、より積極的な育児への関与を希望する男性が増えていま す。男性の育児休業の取得推進は、男女ともに育児と両立できる働き方の実現に向けた取り組みの一環と位置づけら れます。 ②子育てしやすい環境の整備による少子化への歯止め 男性が育児の精神的・身体的負担を実体験し、育児スキルを身につけられる育児休業の取得は、母親の孤立感や負 担を軽減し、子育てへの意欲を高める効果が期待できます。 ③女性の就業促進 仕事と育児の両立の難しさも一因となり、働く女性で第 1 子を出産した人のうち、出産後 1 年後の時点で離職して いる人が約 6 割にのぼっています。同じ理由から、子育てがひと段楽した後の再就職でパート・アルバイトを選ぶ女 性が多くなっています。育児休業の取得を始め、男性が育児に関与できる働き方の整備は、女性の育児に関わる負担 を軽減し、その就労を支えると期待されています。 企業のリスクマネジメントという側面からみた男性の育児休業 企業にとって男性の育児休業の取得推進は、多様な働き方へのニーズの高まりが予想される中でのリスクマネジメ ントという側面があります。特に今後は、管理職世代の男性を含めて、仕事と介護の両立を迫られる社員が増える可 能性が高まっています。その際、男性も含めて企業の両立支援制度を利用しやすい職場の環境が整っていなければ、 管理職世代の男性が仕事と企業の両立に関わる悩みを抱え込んだり、会社の制度を利用しにくい等の理由で疲労を蓄 積したり、離職する懸念があります。 育児休業取得率が高い企業が、女性の就職先を選ぶ基準となっているように、男性の就職活動でも、今後、育児休 業を取得しやすい「職場の雰囲気」や、休業による業務への影響を最小化する仕組みの整備が、重要な要素になって くると考えられています。 両立支援助成金の拡充が検討されています 政府は、働きながら子育てする労働者への支援策を拡充しようとしています。柱となる育児休業では、育休中の社 員の代替要員の確保で、いまは、中小企業だけを助成している制度を、大企業も対象とすることを検討しています。 雇用保険を財源とした「両立支援助成金」の見直しを軸として、6 月にまとめる新たな成長戦略に盛り込むことにして います。 【現在の両立支援助成金(代替要員確保コース)】 常時雇用する労働者数が 300 人以下の事業主で、3 ヶ月以上の育児休業取得者の休業期間中に代替要員を 3 ヶ月 以上派遣もしくは雇用により新規に確保し、かつ育児休業取得者を当該休業期間終了後に原職等に復帰させており、 当該育児休業終了後引き続き雇用保険の被保険者として、6 ヶ月以上雇用している場合に、対象育児休業取得者 1 人当たり 15 万円(1 の年度において 1 事業主当たり延べ 10 人まで)支給します。 他に、「休業中能力アップコース」、 「継続就業支援コース」などのコースがあります。 「労使で決着」派遣制度見直し、来年春から 2015 年 4 月から適用される労働者派遣制度の見直し案が固まりました。1 月 29 日に開催された 労働力需給制度部会で労使間のとりまとめ作業が決着し、今通常国会に労働者派遣法改正案を提出 し、成立を目指すことになります。新制度では、業務区分を撤廃し、派遣会社と無期の契約を結ん だ人は派遣先で期限なく働けるようにし、有期の契約を結んだ人は、派遣先で 3 年まで働けること になります。 先月の FJ ニュースでもお伝えした、派遣制度見直しですが、ようやく労使の話し合いに決着がつきました。 内容は、ほぼ先月お伝えした通りですが、派遣制度見直しによって企業は派遣社員を活用しやすくなり、派遣社員の働 き方の選択肢も広がることが期待されています。 これまでの制度では、専門 26 業務以外は、原則最長 3 年が経過すると、派遣を受け入れる期間を連続して 3 ヶ月以上 (クーリング期間)空けた場合でない限り、派遣労働者の受け入れは禁止されています。 しかし、法改正により、派遣労働者は、同一組織内で最長 3 年までしか派遣就業できないものの、派遣先は、職場の労 働者過半数代表の意見を聴取することで、改めて最長 3 年間派遣を受け入れることができます。 従来の法制度が、派遣労働者を使用しない期間(クーリング期間)を 3 ヶ月以上空けない限り、派遣労働者を受け入れ ることができなかったことに比べると、製造業務等の自由化業務では、派遣活用の幅が広がります。 一方、専門 26 業務については、来年 4 月から、業務の区分が撤廃され、業務に関わりなく派遣期間が個人単位と派遣先 単位に適用されるため、活用の仕方が大きく変わることになります。派遣会社が派遣労働者と無期労働契約を締結してい れば、従来通り、期間制限を受けずに同じ派遣労働者を使い続けることができますが、有期労働契約を締結している(こ の割合が圧倒的に多い)場合は、意見聴取を行い、派遣の受入期間を延長したとしても、派遣労働者を交代しなければな りません。せっかく慣れてきたところで、派遣労働者が変わることは、歓迎しない派遣先も多いと思います。 このように制度変更が予定されています。詳細については、営業担当にご相談ください。
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