基本文の導入方法について 小牧中学校 黒田 さやか 1.はじめに 今年度、1 年生の英語を担当させていただいた。これまで「英語は1年生からきちんとやっておけば よかった」という2、3年生の声をよく耳にした。また、昨年度、2年生の授業をしている際には、1 年生で学習する基礎的な力がついていないがために、理解できていないと感じることが度々あった。例 えば、be 動詞と一般動詞の使い方を理解していない生徒に、過去進行形を理解させるのは難しい。基礎・ 基本の力をつけるためには、やはり基本文の導入が大切であると考える。基本文をしっかりおさえられ れば、教科書本文を復習という形で使うことができる。今年度は、基本文の導入方法について、生徒に わかりやすく、かつ、上位層も伸びていくような授業について研究、実践を試みた。 2.実践と考察 (1)Unit3 一般動詞 以下は教科書の基本文である。 ① I like soccer. ② Do you play the piano? ③ I do not have a car. Yes, I do. / No, I do not. 生徒は小学校の外国語活動で I like~.や Do you like~?などの文は学習済みである。多くの生徒がこれ らの文を聞き、答えることができる。答え方も、Yes, I do. No, I don't.と初めから答えられていた。ま た、Unit6 では3人称単数現在形を学習することになるが、そこで英語を苦手と感じる生徒が徐々に増 えていくのを、過去に見てきた。今回、Unit3 学習時に3単現形も取り入れた導入をしてみた。以下は、 教師と生徒の会話のやり取りである。 T: I like chocolate. A さん, Do you like chocolate? A: Yes, I like chocolate. A さん likes chocolate. E: A さん likes chocolate. I do not play tennis. B さん, Do you play tennis? B: Yes, I play tennis. You play tennis. E: B さん plays tennis. C さん, Do you play tennis? C: No. I do not play tennis. E: C さん do not play tennis. 正しくは C さん does not play tennis. T:教師 A, B, C:生徒 E:生徒全員 E: C さん does not play tennis. 生徒は初め、戸惑った様子で難しい顔をしている子もいた。全員で言ったり、個人で言ったりを繰り 返すうちに、 「そういうことか」と徐々に理解し始めた生徒が増えた。全員が理解できてはいないが、 この時点では良いと思う。あくまでも Unit6 の予習的な意味合いで取り入れてみたからである。二学期 になり、Unit6に入ったときは、多くの生徒が3単現形をすでに学習していることを覚えており、復習 する形で授業を進めることができた。 (2)Unit9 現在進行形 以下は教科書の基本文である。 ① Sakura is listening to music now. ② Are they making noodles? ③ What are they making? Yes, they are. / No, they are not. They are making fortune cookies. ここでは現在進行形だけを導入するのではなく、未来形(これから~する)、現在進行形(今~して いる最中である) 、過去形(~した)の3つの時間の流れを意識した導入を行なった。未来形は二年生 で、過去形は一年生の最終ユニットで学習する予定である。比較するものがあることで、どういうとき に現在進行形を使うことができるかがより明らかになると思われる。以下は実際の授業で用いた英文で ある。 コンピュータの前へ行き、 I will use a computer. 実際にマウスを動かしながら、 I am using a computer. マウスを動かすのをやめて、 I used a computer. チョークを持って、 I will write aiueo. 実際にチョークで書きながら、 I am writing aiueo. チョークを置いて、 I wrote aiueo. 生徒は私の動作を見て、英語を耳で聞いて、何と言っているのだろうと考える。もちろん、will も using も used も先に触れておかない。 「ウィルって何?」 「ユーズド?」と聞き慣れない単語に首を傾げてい た生徒がいたので、動作に注目するように言い、再度同じことをした。その後、生徒の口から、上記の ような言葉が出た。その後、生徒に動作をさせて、A くん will use a computer.など主語を換えて練習 を行なった。 3.ふりかえり 昨年度までは、教科書の基本文をどうすれば生徒たちにわかりやすく授業ができるか、と目の前のこ としか考えていなかった。今回、ユニットをまたいだり、未習文法も合わせて導入をしたりと、不安に 思うことも多かったが、生徒たちの呑み込みも早く、私自身も楽しく授業を行うことができた。塾でみ っちり予習をしている生徒にとっても、上記のような導入は新鮮であったと思われる。今後も、教育課 程を広く見て、よりよい導入を考え、実践していきたい。そして、導入後、英語の力を伸ばすためには どのような方法が最適であるのかも考えていきたいと思う。
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