鉄梯子格子を含む化合物 Ba 6 Fe 8 S 15 の低次元磁性

鉄梯子格子を含む化合物Ba6Fe8S15 の低次元磁性
物理システム工学専攻
修士1年 香取研究室 足立貴弘
梯子内に閉じ込められた電子の物性を研究
1. 背景と目的
測定
Ⅰ. 低次元磁性体
• 磁化測定
低次元磁性体の構造例
低次元磁性が現れるか解明するため
磁性元素の配列が三次元的でないため、
• メスバウアー分光測定
磁気相互作用のパスが少ない物質のこと
価数問題を持つ電子の状態を解明するため
構造的特徴由来の相互作用による 、
低次元磁性体ならではの現象が期待される
 磁性元素
4. 磁化測定の結果
 非磁性元素
Ⅱ. 構造
低次元性由来のブロードな山を観測
 Fe
 S
0.027
 Ba
( emu / mol )
鏡像対称
2 回回転軸
一次元系のモデル式で解析
Ba6Fe8S15
fit
0.026
𝓗= 𝑱
𝐍𝐀 𝑺 ( 𝑺 + 𝟏) 𝟐 𝟐 𝟏 + 𝐮(𝑲)
𝝌 =
𝐠 𝛍𝐁
𝟑𝐤 𝐁 𝑻
𝟏 − 𝐮(𝑲)
𝐜𝐨𝐭𝐡 𝑲 − 𝟏
𝟐 𝑱 𝑺 ( 𝑺+𝟏)
𝒖 𝑲 =
、 𝑲 =
𝐤𝐁 𝑻
𝑲
0.025
0.024
0
100
200
解析により得られたパラメータ
300
S = 4.0 ± 0.2
T(K)
(b) FeS4 四面体
( 直鎖 )
𝐢
0.023
(a) 結晶構造
𝑺𝐢 ∙ 𝑺𝐢+𝟏
(c) 回転した二本脚梯子構造
J = 12 ±
2
( Fe4当り )
、 g = 2.0 ± 0.1
[K]
5. メスバウアー分光測定の結果
Ⅲ. 価数問題
295K
① 鉄サイトは結晶学的に等価
→ 鉄の価数は全て等しい
鉄の形式価数は 2.25価 ( 非整数 )
Relative Absorption
② 鉄の形式価数が非整数
Ba を+ 2価 、 S を-2価 とすると組成式 Ba6Fe8S15から、
 ( ohm · cm )
10
10
10
10
• 四極子分裂による二本のピーク
鉄サイトは一種類
data
Ba6Fe8S15
Impurity
fit
• ISは鉄の2価、3価の
どちらでも解釈できる値
IS
③ 電気特性は半導体 † ( 局在電子系 )
10
• 内部磁場は発生していない
QS
-2
-1
7
0
1
価数問題
2
V (mm / s )
[Fe4] 9+内での電子の非局在化
5
電子はある原子周りに束縛されている
3
IS(mm/s) QS (mm/s) 半値幅
0.480
0.684
0.236
価数は整数でなければならない!
1
IS : アイソマーシフト
QS : 四極子分裂
-1
0
200
400
17 K
T(K)
①~③より、
価数状態の予想としては…
• 鉄4つを単位とする回転した梯子構造
• 形式価数2.25価より、鉄4つ単位では9価
であるため、右図のような[Fe4] 9+内では
Relative Absorption
等価に非整数価数であるが、電子はある原子周りに局在?
• 内部磁場によるピークの拡がり
• 鉄サイトは二種類 ( 強度比 1 : 1 )
data
S1
S2
fit
-8
-6
[Fe4] 9+の構造
S1
S2
鉄の形式価数は等価に2.25価
•
Fe2+ : Fe3+ = 1 : 1とすると、
鉄の形式価数は 2.5価
-2
0
2
4
6
8
•
V (mm / s )
電子は動き回ることができるのではないか? ( 電子の非局在化 )
2. 目的
-4
•
半導体
構造相転移の可能性
IS (mm/s) 内部磁場 (T)
0.579
19.33
0.620
22.22
QS (mm/s)
1.195
0.266
半値幅 ( mm/s )
0.405
0.366
• 低次元磁性体に特徴的な磁気的な振る舞いの有無を解明
• 局在電子系では説明できない電子状態の解明
3. 実験方法
合成
6. まとめ
• 帯磁率にブロードな山
一次元系
• メスバウアー分光測定 ( 295K )
1. BaS : Fe : S を 6 : 8 : 9 の割合で混合
鉄サイトは一種類
2. 円柱状のペレットに成型 ( 直径 6mm、長さ約 5mm )
ISは鉄の2価、3価どちらでも解釈可
3. 炭素コーティングした石英管に真空封入
4. 電気炉で右のステップのように焼成
[Fe4] 9+内で電子の非局在化
• メスバウアー分光測定 ( 17K )
内部磁場発生
鉄サイトは二種類 ( 強度比 1 : 1 )
構造相転移
† W.M.Reiff, et al., J. Solid State Chem. 13, 32-40 (1975)