海浜環境 確認種 - ResearchGate;pdf

福岡市およびその近郊の海浜に生息する有剣ハチ類
村尾竜起(九州大学大学院理学研究院 )
海浜環境
本調査の目的
高温や乾燥などにさらされ、陸上生物にとって過酷な環境
・福岡県の海浜に生息する有剣ハチ相の把握
→本講演では、これまで行ってきた福岡市およびその近郊の海浜に
おける有剣ハチ相調査の結果概要、新知見が得られた種や希少
種など注目すべき種の生息状況について報告
海浜環境に適応した生物が知られ、
固有の生態系が成立
ハマヒルガオ
ハマボウフウ
※有剣ハチ類
→セイボウ・スズメバチ(アリは除く)・ミツバチ上科
→海浜植物の送粉に大きく関わる
ハチ>ハエ>コウチュウ
(皆木ら、 2000;井上・遠藤、2006;郷右近、2006)
ハマゴウ
オオモンツチバチ
セグロアシナガバチ
調査方法・調査地点
調査方法: 見つけ採り、目視、イエローパントラップ
調査地点: 11地点(地点によって、調査回数は異なる)
埋め立てや護岸整備など、人為的改変を受けやすい
海浜環境の保全のためにも、海浜に生息する
生物のリストアップ(目録作成)が必要
糸島市志摩町幣の浜
・福岡県内における、近年の海浜性昆虫類の報告例
半翅目:澤田(2010)、中島ら(2011)、紙谷(2011)
脈翅目:鶴崎(2008)
甲虫目:山本(2009)
膜翅目:村尾(2009、2011、2012)
双翅目:祝(2008)
福岡市東区下馬ヶ浜
糟屋郡新宮町相ノ島
福岡市東区三苫
糟屋郡新宮町新宮浜
福岡市西区
玄海島
糸島市志摩町芥屋大門
福岡市東区奈多
Google earth
確認種:各科の種数
福岡市東区西戸崎
福岡市西区生の松原
セイボウ上科
アリガタバチ科:
1種
福岡市西区今津長浜
スズメバチ上科
ツチバチ科:
6種
ベッコウバチ科:
6種
ミツバチ上科:アナバチ群
ドロバチ科:
6種
スズメバチ科:
3種
アナバチ科:
3種
ミツバチ上科:ミツバチ群
ギングチバチ科:
2種
ドロバチモドキ科:
2種
これまでに14科56種を確認
未記載種:1種
北部九州新記録:2種
環境省RL対象種:3種
ムカシハナバチ科:
4種
ヒメハナバチ科:
2種
コハナバチ科:
3種
注目種
アカゴシベッコウ
(ベッコウバチ科)
ノウメンハナバチ
(ムカシハナバチ科)
ハキリバチ科:
7種
ミツバチ科:
10種
※注目種:海浜性種、RL対象種、新知見種、稀な種
ナミコナフキベッコウ
(ベッコウバチ科)
http://blog.goo.no.jp/
tanakagawa_shinogi
海浜性種。4地点で確認。砂
地に営巣し、コガネグモ類を狩
り、幼虫の餌とする。生息地で
は普通に見られる。
ケアシハナバチ科:
1種
採集地の環境
海浜性種。5地点で確認。砂
地に営巣し、非造網性のクモ類
を狩ると考えられている。生息
地では多産する。
サクラトゲアナバチ
(ギングチバチ科)
採集地の環境
海浜性種。1地点のみで確認。
RL対象種ではないが、稀な種
(羽田 私信)。砂地に営巣し、
ハエ類を狩る。
注目種の分布
ヤマトスナハキバチ
(ドロバチモドキ科)
採集地の環境
海浜性種。環境省RLの情報
不足(DD)に指定。4地点で確
認。砂地に営巣し、ヨコバイ類
を狩り、幼虫の餌とする。
シモフリチビコハナバチ
(コハナバチ科)
※和名左横の色丸と地図上の色丸が対応
海浜性種:8種(14.5%)
準海浜性種:7種(12.7%)
内陸性種:38種(67.3%)
不明:3種(5.5%)
ニッポンハナダカバチ
(ドロバチモドキ科)
営巣地の環境
海浜性種。環境省RLの絶滅
危惧II類(VU)に指定。3地点
で確認。砂地に営巣し、ハエ
類を狩る。幼虫に随時給餌を
行う亜社会性種。
内陸性
準海浜性
海浜性
キバラハキリバチ
(ハキリバチ科)
海浜性種:採餌から営巣まで、すべて海浜
のみで行う
準海浜性種:海浜を中心に採餌や営巣を行う
海浜性種。5地点で確認。地
中営巣性種ではないため、砂
浜以外の海岸でも見られる。
生息地では普通に見られる。
オキナワキバラハキリバチ
(ハキリバチ科)
Google earth
キヌゲハキリバチ
(ハキリバチ科)
ウスルリモンハナバチ
(ミツバチ科)
採集地の環境
準海浜性種。北部九州から初
確認。1地点のみで確認。本
調査によって、近縁種キバラハキ
リバチと同所的に分布している
ことが判明。
海浜性種。6地点で確認。海浜
植物ハマゴウの主要な送粉者とし
て知られる(前田ら、2004)。生
息地では普通に見られる。
準海浜性種。北部九州から初
確認(村尾、2009)。1地点
のみで確認。RL対象種ではな
いが、全国的にきわめて稀。
海浜性種。5地点で確認。良
好な砂浜海岸であれば、多産
する。海浜に生息する有剣ハチ
類の中でも数が多い種。
シロスジコシブトハナバチ
(ミツバチ科)
準海浜性種。環境省RLの準絶
滅危惧(NT)に指定。2地点で
確認(村尾、2011、2012)。
両地点とも海浜植物ハマナタマメ
花上のみで確認。
内陸性種:様々な環境で見られ、主に採餌のため、
海浜で見られる
ツヤハナバチ属 sp.
(ミツバチ科)
謝辞
採集地の環境
準海浜性種。1地点のみで確
認(村尾、2011)。RL対象種
ではないが、全国的にきわめ
て稀。
未記載種と思われる。1地点の
みの確認だが、生息地では多
産する。近縁種は小笠原固有
のオガサワラツヤハナバチや琉球列島
に産するトゲアシツヤハナバチ。
本調査を行うにあたり、以下の方々にご協力いた
だきました。記してお礼申し上げます(敬称略)。
羽田義任(福井県大野市)
清水晃(首都大学東京)
廣永輝彦(㈱地域環境計画)
村尾裕美(福岡県春日市)
中村千鶴(九州大学大学院理学研究院)