第2回日仏民間航空機産業協力に関する ワークショップに参加して

平成27年3月 第735号
第2回日仏民間航空機産業協力に関する
ワークショップに参加して
-エアバス社の購買戦略について-
経済産業省製造産業局(METI)とフランス航空局(DGAC)の主催による主題ワーク
ショップが、平成26年12月1日から4日間、仏国パリおよびツールーズで開催されこと
は航空と宇宙「平成27年2月号」で既に紹介した。その際掲載許可が得られなかったエ
アバス社資料に基づき全般許可が得られたのでプレゼンテーション内容と共に、追補と
して報告する。
1.Airbus社の購買戦略
界的な展望から調達先の変化をみると、2006
非公開での会議の中ではあったが、Airbus
年位は西欧が74%、米国が23.5%でアジアは
社Dúlio Cláudio氏、Global Sourcing Manager
1%にも満たなかったが、2012年には西欧が
Aerostructure & Materialsから「Organization of
63%と減った分、アジアが7%と伸びている。
the Airbus Japan Supply Chain」と題した講演
2020年には、西欧が57%、米国が27%、アジ
があった。
ア10%となる予想である。購買担当者は世界
同社の全社売り上げは600億ユーロで、内
中に4,000名が配置されて、12,700社のサプラ
訳は民間航空が400億ユーロ、ヘリコプター
イヤーを直接管理している。フランスの事務
が60億ユーロ、防衛が140億ユーロである。
所の他に、米国、ブラジル、インド、中国に
全社の従業員は14万5千人である。購買金額
購買の事務所を持っている。
は全社で428億ユーロ、売り上げの71%が買
管理の効率化のためには、サプライヤーの
い物である。その内訳として民間航空が254
数を減らすことが効果的と考えている。新た
億ユーロ、防衛が72億ユーロ、ヘリコプター
な取引先への要望は、1)増産体制に対する
が32億ユーロ、一般購入が86億ユーロ、本社
備えがあること、2)長期にわたり納期が守
ほかが38億ユーロとなっている。
れること、3)初回品から品質を確保できる
エアバスグループの購買戦略として、1)
こと、4)コスト削減の提案ができることで、
競合させるためのダブルソース化と他社にな
特に増産体制への協力ができることが新た
い技術を持った企業の取り込み、2)オフセッ
に、かつ重要な条件として示された。また、
トなど協力を考慮、3)価格に見合ったコス
サプライヤー選定は機体の開発が始まる前か
ト(人件費と生産効率、能力、キャパシティ)、
ら開始されており、サプライヤーには、新た
4)為替リスクの回避、5)カントリー・リス
な機体の開発に合致した新たな生産システム
ク管理、など5項目を挙げた。
の導入が要求される。
現在主要な日本企業18社と取引があり、調
達先の工場は国内の37工場に及ぶ。日本での
2.日本企業への要望
調達総額は9億9,000万ユーロで、大半はエン
日本企業に対する要望として、
「日本のTier2
ジン関連部品(8億300万ユーロ)である。世
にエアバスの協力会社となって欲しい、具体
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的には比較的大きな欧米の中小企業を支えて
いて、日本企業の各社自主的に資本投資する
ほしい」といった要望が出された。一方で、
ことを求める一方、同社としては、治工具な
日本の中小企業は国体的なビジネスを知らな
ど限られた範囲では協力も出来る、と述べた。
い企業もあり、商慣習も含め教育をSJACにお
また、長期的な契約、ダブルソース化なども
願いしたい、と要望もあった。名古屋地区を
考えており、興味のある日本企業と相談した
訪問した同社購買担当者は、欧州のSMEと日
い、と語った。同社は、基本的に多様化を模
本のTier2企業がパートナー関係を結ぶことが
索しており、1社に仕事を集中することは、
有益という見解を示した。増産への対応につ
避けたいと考えている。
〔(一社)日本航空宇宙工業会 国際部長 板原 寛治〕
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