前原信之介 - 北海道大学

乱流促進をした硬翼帆の単独性能に関する模型実験
前原 信之介
(北海道大学)
川田 悟史
(北海道大学)
芳村 康男 (北海道大学)
要旨
省エネルギー, CO2 排出を抑制する観点から再生可能エネルギーの利用は船舶においても不可欠である。本研究
は風力エネルギーを大幅に取り入れることを目的とした Wind Challenger Project(WCP)に用いられる硬翼帆を対象と
して, 乱流促進をしない場合, 乱流促進を施した場合の両方で帆の単独性能試験を行い, 乱流促進による試験結果
への影響を確認した。
キーワード : 硬翼帆, 揚力係数 CL, 抗力係数 CD, 乱流促進, サンドペーパー
1. はじめに
Fig1 に face 側のみにサンドペーパーを貼り付けた模
フルード相似則を合わせて模型実験を行う場合, 実
型帆の写真を示す。
船のレイノルズ数にたいして模型帆のレイノルズ数は著
しく小さく層流境界層となり, 摩擦抵抗が大きい。そこで
乱流促進法としてサンドペーパーを模型帆に貼り付け
流体流入方向
て WCP 帆の単独性能試験を行った。そして乱流促進を
backside側
しない場合と比べ, 乱流促進を施した場合の試験結果
face側
への影響を確認した。
10mm幅サンドペーパー
2. 模型実験
2.1 供試模型
実験に使用した模型帆の主要目を Table1 に示す。
この供試模型帆は Wind Challenger Project の帆装 84
型バルカーの帆装として設計されたものである。
Table 1 模型船の主要目
実機
C
H
As
m
m
2
m
20
50
1000
供試模型
(1/114.3)
0.1750
0.4375
0.0765
乱流促進として帆前縁から 8%弦長の箇所を中心と
して幅 10mm の# 100 サンドペーパーを以下の 4 パタ
Fig.1 face 側のみにサンドペーパーを貼り付けた模型帆
2.2 実験方法と装置
実験は北海道大学水産学部の大型水理実験水槽
ーンで帆に貼り付けそれぞれ実験を行った。
(長水槽)にて,流体を空気ではなく,水によって計測し
1) サンドペーパーなし(乱流促進なし)
た。実験は Fig. 2 のように模型帆を逆さにした状態で,
2) サンドペーパーあり(face 側のみ)
模型帆の支柱を 3 分力計に固定し,回転装置,昇降装
3) サンドペーパーあり(backside 側のみ)
置を介して曳引電車に取り付けた。検力計は汎用の精
4) サンドペーパーあり(face 側, backside 側の両
密型 3 分力計(LMC-3504-200N, Fx:200N/ Fy:200N/
方)
Mz:80Nm)を使用した。
CL と抗力係数 CD を次式で求めた。ただし,模型帆の支
柱に作用する力は別途計測し,これを計測結果から控
Turn table
除して支柱の影響を排除した。
曳航速度:U
3-component
Load cell
D
Fx
α
Fy
L
sail model
Fig.4 帆の流体力の座標系
ρ
⎫
C L = (Fx sin α + Fy cos α )
A S U 2 ⎪
⎪
2
(1)
⎬ ρ
2⎪
C D = (− Fx cos α + Fy sin α )
A SU ⎪
2
⎭
Fig.2 計測装置
ただし a は迎角である。また曳航速度は 1.0m/s で行っ
帆の没水深度は水面影響が少なくなるよう,Fig.3 に
た。
示すように,模型帆のスパン(H)の 1/2 以上を確保した。
帆の迎角は,模型帆の支柱を回転させることによって与
3. 実験結果
え,迎角の範囲は全体的な特性を把握する目的で
今 回 実 験 を 行 っ た (1) 乱 流 促 進 を 行 わ な い 場 合 ,
-20°~90°とし,最大揚力付近では迎角変化を細かくして
(2)face 側のみにサンドペーパーを貼り付けた場合,
計測した。帆の角度は電動サーボ駆動方式で 0.1°の精
(3)backside 側のみにサンドペーパーを貼り付けた場合,
度で設定可能である。
(4)face 側と backside 側の両方にサンドペーパーを貼り
付けた場合の揚力係数 CL, 抗力係数 CD の計測値の比
WL
較結果を Fig5 に示す。また CL を縦軸に CD を横軸にし
た特性を Fig6 に示す。
300mm
この実験結果から, 乱流促進をしない場合と face 側に
10mm幅サンドペーパー
サンドペーパーを貼り付け乱流促進を施した場合の揚
力係数 CL を比較すると, 計測値はそれぞれほぼ一致し
ている。Face 側にサンドペーパーを貼り付けても, 乱流
促進の効果は得られなかった。
437mm
また backside 側のみにサンドペーパーを貼り付け乱
流促進を施した場合には, 揚力係数 CL の計測値は減
少する。よって backside 側にサンドペーパーを張リ付け
175mm
Fig.3 帆の没水深度
ると帆の揚力特性が失われることが明らかになった。
backside 側, face 側両方にサンドペーパーを貼り付け
た場合も同様に帆の揚力特性が失われた。
帆の流体力の水平成分 Fx, Fy は Fig. 4 に示すように,
帆に固定した座標系で計測し,これらから揚力係数
CL
2.0
乱流促進なし
4. 結言
face側のみ
本論では乱流促進法としてサンドペーパーを模型帆
backside側のみ
1.5
face側とbackside側
に貼り付けて WCP 帆の単独性能試験を行った。そして
乱流促進をしない場合と比べ, 乱流促進を施した場合
1.0
の試験結果への影響を確認した。得られた結論を要約
する。
0.5
1) 乱流促進をしない場合と face 側にサンドペーパー
0.0
-20 -10 0
を貼り付けた場合の揚力係数 CL を比較すると, 計
10
20
30
40
50
60
90
測値はほぼ一致した。Face 側にサンドペーパーを
Angle(deg)
貼り付けても, 乱流促進の効果が得られなかった。
70
-0.5
80
2) backside 側のみにサンドペーパーを貼り付けた場
CD
-1.0
2.0
合は, 揚力係数 CL の計測値が減少する。backside
乱流促進なし
側にサンドペーパーを張リ付けると帆の揚力特性が
face側のみ
失われることが明らかになった。
backside側のみ
1.5
3) backside 側, face 側両方にサンドペーパーを貼り付
face側とbackside側
けた場合も同様に帆の揚力特性が失われた。
1.0
5. 参考文献
0.5
1) 芳村康男, 金井亮浩, 大内一之, 高須菫 : 硬翼
0.0
-20 -10 0
帆の単独特性に関する模型実験と CFD
10
20
30
40
50
60
70 80 90
Angle(deg)
-0.5
-1.0
CL
Fig.5 揚力係数 CL, 抗力係数 CD の計測値
2.0
乱流促進なし
face側のみ
backside側のみ
1.5
face側とbackside側
1.0
0.5
0.0
-0.5
0.0
0.5
1.0
-0.5
-1.0
Fig.6 CL―CD 特性
1.5
CD
2.0
2)
高須菫 : 新形式の帆を装備した漁船の推進性能
と減揺効果に関する研究