タンパク質を配列・配置する技術 (1)アビジンービオチン相互作用を利用したタンパク質の1次元配列 (2)表面にタンパク質が配置された金ナノ粒子のワンステップ調製法 九州大学 大学院工学研究院 応用化学部門 九州大学 未来化学創造センター 教授 神谷 典穂 1 (1)アビジンービオチン相互作用を利用したタンパク質の1次元配列 従来技術とその問題点 アビジンービオチン相互作用は生体分子を強固に連 結する手法として汎用されているが、 アビジン分子に存在する4カ所のビオチン結合部位 を等価と捉えると、生体分子を精密に配列化するた めの相互作用としては必ずしも適しておらず、結合の ベクトルが十分に考慮されているとは言い難い。 ≡ ≡ Streptavidin (SA) 2 (1)アビジンービオチン相互作用を利用したタンパク質の1次元配列 新技術の特徴・従来技術との比較 • 新規ビオチン分子を設計し、これをタンパク質に部位 特異的に導入して相互作用のベクトルを制御するこ とにより、タンパク質の1次元配列化に成功した。 • 従来の1次元化法は、適当な足場分子上にタンパク 質を配列する方法が取られていたが、本手法は足場 分子を必要とせず、対象タンパク質を自発的に配列 化できる点に大きな特徴がある。 • 本技術の適用により、タンパク質単体で利用する場 合に比べ、タンパク質集合体形成による高機能化に 応じたコスト削減が期待される。 3 (1)アビジンービオチン相互作用を利用したタンパク質の1次元配列 新技術の概念図 Site-specific labeling + SA Tetramer Mono-biotin Monomeric protein + SA Dimer Site-specific labeling Bis-biotin + SA Dimeric protein Site-specific labeling + SA Tetra-biotin 1D protein polymer 4 (1)アビジンービオチン相互作用を利用したタンパク質の1次元配列 新技術の実施例 Site-specific labeling Tetra-biotin + SA w/ Microbial Transglutaminase 1D protein polymer ≡ ≡ 180° + SA 発表当日、酵素の1次元配列化の基礎検討結果について報告します。 5 (1)アビジンービオチン相互作用を利用したタンパク質の1次元配列 想定される用途 • 本技術は、例えばカスケード型酵素反応系の ように、異種酵素間での共役反応が必要な系 (診断薬等)に適用することで、その特色がよ り効果的に発揮されると考えられる。 • 上記以外にも、タンパク質機能の高密度化と いう観点から、ワクチン開発といった医療分野 への展開も可能と思われる。 6 (1)アビジンービオチン相互作用を利用したタンパク質の1次元配列 実用化に向けた課題 • 2量体酵素アルカリホスファターゼをモデルに酵素 集合体を形成し、固相免疫測定系(ELISA)におけ るシグナル増幅が可能なことを実証している。 • 単量体酵素エンドグルカナーゼを1次元配列化する ことで、セルロース系バイオマスの分解効率を向上 可能なことを見出している。 • 何れのケースにおいても、今後、異種酵素の連携 による機能向上や、より現実的な系への適用可能 性を示す必要があると考えている。 7 (2)表面にタンパク質が配置された金ナノ粒子のワンステップ調製法 従来技術とその問題点 金ナノ粒子はその特徴的な分光学的特性からバ イオ分野で幅広く利用されており、その表面に機 能性タンパク質等の生体分子が固定化されたナ ノ粒子の応用範囲は広いが、 それらの調製法は、化学的手法で調製された 金ナノ粒子の表面に、抗体などを物理的に固定 する「2段階調製法」が一般的であり、固定される タンパク質の配向や汎用性の面で、必ずしも最適 化されているとは言い難い。 8 (2)表面にタンパク質が配置された金ナノ粒子のワンステップ調製法 新技術の特徴・従来技術との比較 • 従来の2段階調製法を、補酵素NAD+の還元反応 を介して金イオンを還元する酸化還元酵素反応を 活用することで、温和な条件下、「タンパク質修飾 金ナノ粒子の1段階調製」を可能にした。 • 酸化還元酵素のN末端に目的タンパク質を、C末 端に金に対する親和性を有するペプチドを遺伝子 工学的に融合する。これにより、当該酵素が自発 的に金ナノ粒子上に固定化され、目的とするタン パク質機能を金ナノ粒子上で安定に利用するた めの新たな方法論の確立に成功した。 9 (2)表面にタンパク質が配置された金ナノ粒子のワンステップ調製法 新技術の概念図 酵素部分が NADH の還元力を 利用して、金ナノ粒子の合成を 促進すると同時に、目的の機能 を有するタンパク質を提示する 足場分子として機能します。 1 2 3 10 (2)表面にタンパク質が配置された金ナノ粒子のワンステップ調製法 新技術の実施例 AuNPs prepared w/3 3 Active pG domain is displayed on AuNPs prepared with protein 3, enabling the detection of antigen (OVA) in ELISA. RSC Adv., 4, 5995-5998 (2014) Detection of ovalbumin (OVA, model antigen) using anti-OVA IgG and HRP-labeled IgG 発表当日、菌体内ナノ粒子調製の基礎検討結果について報告します。 11 (2)表面にタンパク質が配置された金ナノ粒子のワンステップ調製法 想定される用途 • 抗体(断片)等の固定化に応用することで、イ ムノクロマト等に利用可能なプローブ材料を簡 便に調製可能になると考えられる。 • 原理的には、生細胞内での1段階調製も可能 であり、in vivo 系への展開も期待できる。 • 機能性タンパク質を金ナノ粒子上へ高密度に 固定化する、という観点から、バイオ医薬関連 分野への展開も可能と思われる。 12 (2)表面にタンパク質が配置された金ナノ粒子のワンステップ調製法 実用化に向けた課題 • 現在、比較的安定に発現可能なタンパク質 (protein G)を用いたモデル系において、試験 管内での概念実証が済んだ段階である。 • 「細胞内での一段階調製技術」を確立すること で、従来法よりも簡便に多様なタンパク質修飾 金ナノ粒子が得られることを示す必要がある。 • 今後、金ナノ粒子へ固定化する機能性タンパク 質のレパートリーを増やし、金ナノ粒子形成機 構の解明と、本手法の汎用化を進めたい。 13 企業への期待 • 両技術について、共役酵素系や金ナノ粒子を 利用した診断薬・診断キットの開発や、高効率 なバイオマス分解生体触媒系の開発に興味を 有する企業様との共同研究を希望します。 • 両技術の肝は、タンパク質機能を異なる次元 で高密度に蓄積可能な点にあると考えていま す。新たな展開として、例えば、ワクチン開発 分野等、医療応用分野での共同研究が可能 な企業様とのディスカッションを希望します。 14 本技術に関する知的財産権 (1)アビジンービオチン相互作用を利用したタンパク質の1次元配列 • • • • 発明の名称:ビオチン化合物、ビオチン標識化剤、タンパク質集合体 出願番号 :特願2014-118174 出願人 :九州大学 発明者 :神谷典穂、森 裕太郎 (2)表面にタンパク質が配置された金ナノ粒子のワンステップ調製法 • 発明の名称:Method of Producing Metal Nanoparticles Decorated with a Protein • 出願番号 :特願2014-259045 • 出願人 :九州大学 • 発明者 :神谷典穂、二井手 哲平 15 産学連携の経歴 • 2008年-2010年 JST重点地域研究開発推進プログラムを 実施(徳島大学、アロカ株式会社と共同研究実施) • 2009年-2012年 NEDOバイオマスエネルギー先導技術研 究開発を実施(神戸大学、株式会社豊田中央研究所、トヨタ 自動車株式会社と共同研究実施) • 2012年 JST研究成果最適展開支援プログラム A-STEPを 実施(日立アロカメディカル株式会社と共同研究実施) • 2011年- JST-ALCA事業に採択 16 お問い合わせ先 九州大学 産学官連携本部 知的財産グループ TEL 092-832-2128 FAX 092-832 -2147 e-mail [email protected] Website http://imaq.kyushu-u.ac.jp/ja/index.php 17
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