Title 荷為替信用状の譲渡 : 西ドイツにおける最近の議論 - HERMES-IR

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荷為替信用状の譲渡 : 西ドイツにおける最近の議論を対
象として
桑原, 康行
一橋論叢, 95(2): 231-250
1986-02-01
Departmental Bulletin Paper
Text Version publisher
URL
http://hdl.handle.net/10086/12811
Right
Hitotsubashi University Repository
(109) 荷為替信用状の譲渡
荷為替信用状の譲渡
桑 原
康 行
すべき多くの問題が生ずる。例えぱ、譲渡の法的性質・
このような譲渡が行われた場合には、法律上検討を要
−西ドイツにおける最近の議論を対象として1
一 はじめに
譲渡の場合の関係当事者間の法偉関係を挙げることがで
^ユ︶
担保機能を、原受益者以外の者にも拡大するために利用
荷為替信用状︵以下、信用状と略称︶のもつ支払機能・
ては、わが国においても、一再ならず検討がなされてき
ている。譲渡の法的性質について、わが国においては、
きよう。これらの問趨のうち特に譲渡の法的性質につい
信用状︵自体︶の譲渡・信用状手取金︵唱o8&眈︶の譲
債権譲渡説が通説であるが、同じように償権譲渡説が通
される手段として、見返り信用状︵9鼻−庁9臣鼻昌&6・
渡等が考えられるが、この中で最も重要なのは、何とい
な批判をうけ、抽象的債務約東説が支配的となるに至っ
説であった西ドイツにおいては、債権譲渡説はさまざま
今日、大部分の信用状取引は、荷為替信用状に関する
ている。そこで、本稿においては、譲渡の法的性質・譲
っても、信用状の譲渡であろう。
統一規則およぴ慣例︵以下、統一規則と略称︶にようて、
渡の場合の関係当事者間の法律関係に関する、西ドイツ
における最近の議論を概観することとしたい。.
行われている。そこで、信用状譲渡の場合にも、譲渡は、
^2︶
この点に関する規定である統一規則第五四条によって、
行われることになる。
231
一橋論叢 第95巻 第2号 (110)
二 信用状譲渡の法的性質
のみ色対象とし、かつ、後からなされる譲渡契約を対象
ち、統一規則第五四条C項が、確認銀行または通知銀行
としていること、を。
さらに、銀行の二重の同意を必要とする見解によれぱ、
統一規則第五四条に基づく信用状の譲渡の法的性質に
第五四条C項とa項との間に矛盾を生ず名こととなり、
関与するにすぎないが、銀行の行動も重要性をもつ。銀
っいても、信用状自体の法的性質についてと同様に、さ
行に対する第一受益者による譲渡通知とともに、第二受
妥当でない。
債務約東説︵>σ県轟ζ窪ωo;巨く胃蜆勺冨亀昌︶の二つで
益者に対する銀行による通知も、重要性をもつのである。
まざまな見解が提唱されている。しかし、それらの見解
ある。そこで、以下では、この二つの説を、それぞれ、
第二受益者に対する銀行の譲渡通知によって、譲渡の正
現実の譲渡手続には、第一受益者・第二受益者のみが
反対説からの批判をも含めて、考察することとしたい︸
のうち現在でも有カな支持者を見出すのは、条件付債権
︵一︶ 条件付債権の譲渡説
規性︵oa昌轟竃篭耐ぎ5が宣言されるか、1譲渡不
の譲渡説︵No邑昌ま﹃σ&巨oqけ昌句oa雪冒o司︶と抽象的
この説は、信用状の譲渡を、条件付償権の譲渡、すな
権譲渡の不確定無効状態が取除かれるかする。
能信用状の場合にはー第一受益者の銀行に対する通知に
^3︶
た、銀行に対して有する第一受益者の信用状上の償権の、
^4︶
第二受益者への譲渡であるとする。
譲渡の承認によって、銀行が、第一受益者に対して有
わち、信用状条件一致書類の提供によって条件付けられ
この説を最も詳細に理由づけしている曽豊目の考え
する抗弁を、第二受益者に対して放棄することになると
を過少評価するものであって、凝問である。
含まれる契約変更の申込みを承諾することによって、償
を次に述べてみよう。 ・
の見解は、第二受益者の利益を過大評価し、銀行の利益
の二重︵第二︶の同意は必要でない。銀行の二重の同意
単なる債権譲渡によっては、書類捷供権は第二受益者
^ 5 ︶
彼によれぱ、信用状を有効に譲渡するためには、銀行
を必要とする見解は、次のことを看過している。すなわ
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(111) 荷為替信用状の譲渡
づき、この権利を行使することができる。
に移転しないけれども、第二受益者は、一種の授権に基
給付することを表示したことになる。
第二受益者が誰であるかに関心がなく、その者に対して
状の譲渡を条件付債権の譲渡とみなすことの妨げとはな
変更も、債権の同一性を侵害するものとはいえず、信用
譲渡のために、C項による同意が必要であるとする見
匡暮自は、二重の同意の必要性に反対して、その理由一
^9︺
をさらに次の如く述べている。
統一規則第五四条e項・9項によウて許容されている
らない。
解は、乱項と矛盾する。a項によって、第一受益者は、
^㎜︺
銀行に対して、譲渡を行うように﹁指図を与える権利﹂
それゆえ、譲渡の法的性質は、条件付償権の譲渡であ
債権譲渡説に対しては、五つの批判がなされている。
^6︺
次にそれらの批判の内容を概観しよう。
よって、第一受益者から直接に償権を取得するのである。
としているもの、と考えなけれぱならない、と。
のみを対象とし、かつ、後からなされる譲渡契約を対象
矛盾を避けるために、C項が、確認銀行または通知銀行
うとすることは、a項と明らかに矛盾する。このような
を有する。それなのに、C項で、このような権利を奪お
第一の批判は、債権譲渡説によっては、債務者の協カ
しかしながら、a項にいう﹁指図権﹂というのは、第
って、第二受溢者は、条件一致の書類を提供することに
行為すなわち銀行による二重の同意の必要性を明らかに
一受益者が、銀行に対して拘束カのある1依頼された譲
渡の許容性につき銀行の自由な決定を制限するような−
^7︶
しえないことにある。
ドイツ法の債権譲渡︵ドイツ民法、田Ω民第三九八条
指図を与えることができるという意味における指図権な
のではない。この点に関連して指摘さるべきなのは、現
^11︶
以下︶によれぱ、譲渡の場合に、償務者の協カ行為は必
要でない。すなわち、銀行の同意は必要でない。この意
味で、この批判は、正当であるともいえよう。
という表現が、﹁要求する権利﹂という表現に改められ
統一規則第五四条a項において、﹁指図を与える権利﹂
たことである。これによって、第一受益者が拘束カある
そこで少数説は、二重の同意は必要でないという立場
をとっている。譲渡可能信用状の発行によって、銀行は、
^8︶
233
第2号(112)
第95巻
一橋諭叢
串ま目は、さらに、C項が、確認銀行・通知銀行を、
間に矛盾は存在しない。
らかにされたといえよう。したがって、a項とC項との
るが、このことは、信用状譲渡の場合には、関係当事者
し、他の連帯債務者に対する債権を保持することができ
には、債権者は、一連帯債務者に対する債権のみを譲渡
もとにとどまるからである。なるほど、連帯債務の場合
みが譲渡され、発行銀行に対する償権は、第一受益者の
かつ、後からなされた譲渡契約を対象としているものと
の利益に合致しない。第一受益者が条件一致の書類を提
指図を与えることができるわけではないことが、一層明
理解する。
う依頼された場合、同行は、自由に同意を与えることが
そこで、譲渡不能信用状の確認銀行が、譲渡を行うよ
二二条・三六二条によって、第二受益者の債権が消滅し
銀行が第一受益者に信用状金額を支払うと、︸Ω田第四
供して信用状を使用する可能性があるからである。発行
、 、
できる。確認銀行の同意によって、同行は、同意まで譲
このように二重の同意が必要でないとする見解には、
てしまう。
る特別かつ独立した条件付債権を、譲渡可能償権とする
賛成できない。
渡不能で、1連帯償務であるとはいえ1同行自身に対す
︵u︶
ことができる、とされる。
これに対して、通説は、二重の同意の必要性を承認し
ている。この必要性は、何よりも、統一規則の文言自体
^u︶
︵u︶
しかし、譲渡不能信用状は、確認銀行によっても譲渡
されえない。たとえそうしたとしても、確認銀行は、発
の最初の同意によって、発行銀行は、信用状の譲渡を一
二耳彗乱宵ぎ一⑦、と明示した信用状の発行に同意する。こ
うな批判がなされうる。すなわち、第一受益者は、依然
般的・原則的に承認する。次にC項によって、発行銀行
から明らかである。第五四条b項によって、発行銀行は、
として、発行銀行に対する譲渡不能債権の所持人である。
は、第一受益者によって依頼された、個別的・具体的な
行銀行に対して補償請求権を取得することはできない。
第二受益者も、確認銀行に対して債権を取得する。とい
譲渡に同意を与えるのである。
この点を別としても、=串巨の見解に対しては、次のよ
うのは、第一受益者の確認銀行に対する独立した債権の
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(113) 荷為替信用状の譲渡
通説は、さらに、次のような理由をも挙げている。ま
ず、信用状取引が、ある程度まで信頼に基づくことであ
る。提供誓類が契約物品が船積されたことの絶対的保障
とはならない以上、信頼しうる第二受益者が書類を提供
することに、依頼人は 関 心 が あ る 。
次に、譲渡方法が銀行に困難を惹起しうることがある
ことも、通説がその理由とするところである。例えぱ、
第一受益者が多数の第二受益者に信用状を一部ずつ譲渡
しようとする場合が挙げられよう。銀行は、このような
譲渡には同意しがたい で あ ろ う 。
さら に 指 摘 さ る べ き な の は 、 一 九 七 四 年 の 改 訂 に よ っ
て、他国への信用状の譲渡が可能とならたことである。
この場合、各国の外国為替管理法等が信用状取引に重大
な障害をもたらすことも考えられるので、銀行の二重の
同意が必要とされよう。 .
ところで、償権譲渡説に対するこの第一の批判は、
団Ω田第三九九条を考慮するならぱ、説得カがあるとは
いえない。団o︸第三九九条によれぱ、債務者との合意
^砧︶.
によって譲渡が禁止された場合には、債権譲渡しえない。
譲渡禁止にも拘らずなされた譲渡は、無効である。譲渡
の効カを全く奪うことができるならぱ、債務者との合意
にょってその効カに一定の客観的要件を結びつけること
も可能であろう。それゆえ、民Ω■第三九九条は、譲渡
の効カを、債務者の同意にかからしめる可能性を与えて
いる。
の譲渡を、債権譲渡と解するこ上の妨げとはならない。
結論として、発行銀行による同意の必要性は、信用状
生じないことにある。すなわち、発行銀行が、田Ω団第
^16︺
債権譲渡説に対する第二の批判は、抗弁切断の効果を
四〇四条によって、譲渡人たる第一受益者に対して有す
る抗弁を、譲受人たる第二受益者に対して対抗しうるこ
ととなるが、このことは、関係当事者特に第二受益者の
意恩に反する。
債権譲渡説に対する第二の批判は、説得的であるよう
に恩われるが、民o田第四〇四条が強行規定ではなく、
任意規定であることを看過している。償務者は、譲渡人
と、両者間の抗弁を譲受人に対抗しないことを、債権譲
渡前でも合意することができる。債務者は、債権譲渡後、
譲受人に対して、その抗弁を放棄することもできる。
償務者による譲受人に対する債権譲渡の承認は、償務
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一橋論叢 第95巻 第2号 (114)
者が、譲受人に対して、既存の抗弁を切断して、新たな
地位を付与する意味をもつものとみることができる。こ
のことは、債務者が債権譲渡が有効に成立することに自
らの利益を有する場合に、特によくあてはまる。銀行の
^g
このような利益は、譲渡手数料の取得にあり、この手数
料は、第二受益者に抗弁の附着しない債権を付与するた
めのいわば代償なのである。それゆえ、債権譲渡説に対
する第二の批判は、必ずしも正当でないといえよう。
なお、︸筈目は、この批判に対して、次のように反論
^蝸︶
している。債権譲渡の承認によって、銀行が抗弁を放棄
したことになるとの考えは、第二受益者の利益を過大評
価し、銀行の利益を過少評価するものである。また、第
二受益者が、第一受益者の地位から導き出される地位を
占めることを知っていることからも、統一規則の規定か
らも、抗弁切断の効果を付与する必要はないことが、理
解される、と。
このような反論は、必ずしも成功しているとはいいが
たいように思われるが、いずれにせよ、すでに述べたと
ころから明らかなように、債権譲渡説に対する第二の批
判は、必ずしも正当でない。
債権譲渡説に対する第三の批判は、書類提供権者如何
に関連する。第五四条は、第二受益者が譲渡された信用
^19︶
^20︶
状を自分自身の書類、特に自身で作成した送り状でもっ
て使用することができることを、出発点としている。
第二受益者に対する単なる償権譲渡によって、彼が自
分自身の書類を提供することができるか否かを検討する
ためには、書類提供の法的性質が間題とされる。この点
に関しては、一応次のように言うことができよう。
条件一致書類の有効期間内提供は、受益者切間接義務
︵O;晶竃幕6である。他方このような書類提供は、形
^21︶
成権でもあり、受益者は、発行銀行に対して、有効期間
^”︶
内に書類を提供し、条件付償権を無条件償権とすること
ができる。
第二受益者への条件付債権の譲渡によって、書類提供
権も彼に移転するかについて、見解が対立する。
匡き■は、否定説の立場に立ち、償権譲渡とともに、
第一受益者は、第二受益者に対して、薔類の提供を授権
するとされる。
^鴉︶
これに対して、峯鶉器﹃昌彗目は、肯定説の立場に立
ち、第二受益者への償権譲渡によって、書類提供権も、
236
(115) 荷為替信用状の譲渡
同時に自動的に彼に移転するとし、授権の必要性を否定
債権譲渡説に対する第四の批判は、第五四条e項によ
^鴉︺
る信用状条件変更の可能性に関する。
によってはもたらされない。それゆえ、信用状上の債権
が交付するだけである。提供権の内容変更は、債権譲渡
ることになるので、信用状の譲渡を債権譲渡とみなすこ
る。このような変更によって、償権の同一性が侵害され
ちのどれか、またはそのすべてを減額あるいは短縮でき
^幽︶
する。
信用状記載の単価およぴ有効期間あるいは積出期間のう
第五四条e項3文によれぱ、信用状は、信用状金額一
が成立するためには、債権譲渡後も依然として、譲渡人
とはできない、と。
^26︶
れぱならない。書類提供権が移転されても、権利の主体
肯定説の立場に立つ場合でも、次のことに注意しなけ
の書類が提供されなけれぱならない。
したがって、債権譲渡説に対する第三の批判は、正当
もできない。
また、受益者は、信用状条件を一方的に変更すること
類を提供しうることを、説明しえない。
条に規定されていく如く−第二受益者が、自分自身の書
否定説をとるにしろ、償権譲渡説によっては、−第五四
したがって、この間魑について、肯定説をとるにしろ、
が提供されなけれぱならない。
て、第一受益者自身の書類特に彼が作成した商業送り状
に移転するが、その内容は変更されないので、依然とし
合には、第二受益者が信用状を使用することを妨げるこ
期間を経過していても、原有効期間を経過していない場
両当事者間の対内的合意だけでは、その合意で定めた
当事者の利益に反しよう。
けれども、この考えは、統一規則第五四条およぴ関係
第二受益者と対内的に含意するのである、と。
の一定の時期までに使用すべきことを、第一受益者は、
渡する。第二受益者が譲渡された信用状を原有効期間内
を短縮した償権ではなく、原有効期間を有する債権を譲
間を短縮して信用状を譲渡する第一受益者は、有効期間
︸豊目は、この批判に対して、例えぱ、有効期間の短
茅︺
縮について、次のように述べている。すなわち、有効期
このように、債権譲渡とともに、書類提供権も譲受人
であるといえよう。
23?
第95巻 第2号(116)
一橋論叢
とはできない。第二受益者が譲渡された信用状を合意し
^31︺
まい。
有効期間内であれぱ、条件一致の書類を提供して、信用
みなすことはできないといえよう。
判は正当であり、それゆえ、信用状の譲渡を債権譲渡と
このようにみてくると、償権譲渡説に対する第四の批
状を使用することができる、とされている。
た期間内に使用しなかった場合には、第一受益者は、原
しかし、この結果は、︸里巨の考えによってはもたら
なわち、第一受益者は、譲渡した範囲で、完全に自己の
串筈目は、差換権につき、次のよづに述べている。す
^33︶
ち第一受益者は、債権関係から全く排除されてしまう。
まる。けれども、債権譲渡の場合には、前債権者すなわ
の権利について、第一受益者は、譲渡後も権利者にとど
者の送り状を自己の送り状と差換えることができる。こ
項によると、第一受益者は、信用状譲渡後も、第二受益
債権譲渡説に対する第五の批判は、第五四条︷項によ
^醜︶
る送り状差換権を十分に説明できないことにある。同条
されない。信用状の有効期間中、第二受益者が、条件付
債権の所持人だからである。
^㎎︶
︸き目は、また、次のようにも述べている。第二受益
者が対内的合意に違反して信用状を使用した場合には、
第一受益者は、第二受益者に対して損害賠償請求権を有
する。さらに、第二受益者に対して有する不作為請求権
権利を放棄する。しかし、彼は、信用状関係め主体にと
を、第一受益者が銀行に対して譲渡し、それに基づいて、
銀行は、第二受益者に対して、期間超過を抗弁として対
権譲渡は、債権者の交代という形での主体の交代をもた
と考えることは、債権譲渡と相いれない。なぜなら、債
けれども、第一受益者が信用状関係の主体にとどまる
とができる、と。 . 、
どまるので、契約成立から流出する差換権を行使するこ
抗することができる、と。このような考えは、関係当事
^”︶
者特に第一受益者の利益に反しよう。
償権譲渡説に対する第四の批判は、第五四条g項によ
れを、給付内容の変更ではなく、給付の態様の変更にす
る支払銀行の変更についてもあてはまる。■註目は、こ
ぎないとしている。けれども、信用状取引における支払
らすものであるからである。
^ヨo︺
銀行の重要性を考えるならぱ、彼の考えは妥当とはいえ
238
(11ア)荷為替信用状の譲渡
さらに、受益者の信用状上の債権を、条件付債権と差
換権とに分け、条件付償権のみが第二受益者に譲渡され、
差換権は信用状関係の主体のもとにとどまると考えるこ
とは、あまりにも技巧的であるように思われる。
それゆえ、償権譲渡説に対する第五の批判にも理由が
あるので、信用状の譲渡を償権譲渡とみなすことはでき
ない。
比較的近時に至るま で 通 説 で あ っ た 償 権 譲 渡 説 は 、 前
述したようないくつかの欠点を有することから、漸次そ
の支持を失い、現在では、次に述べる抽象的債務約東説
が通説であるといえよう。
︵二︶ 抽象的債務約東説
通説は、.信用状の譲渡を、新信用状の発行、すなわち、
発行銀行が第二受益者に対して与える抽象的償務約束で
あるとする。
^糾︺
第二受益者に対して支払約束を与えることによって、
銀行は、第一受益者との譲渡契約上の義務を果たしたこ
とになる。譲渡は、bΩ饒第三六四条の意味における代
物弁済であり、発行銀行に対する第一受益者の請求権は、
譲渡の範囲で消滅する。しかし、この代物弁済は、解除
条件付である。第二受益者が譲渡された信用状︵新信用
状︶の有効期間内にそれを使用しなかった場合に、第一
受益者は、原信用状の有効期間内であるならぱ、書類を
提供して信用状を使用することができる。また、第二受
益者は、。抗弁の附着しない講求権を取得する。
抽象的債務約東説に対しては、原信用状の消減︵全部
または一部の︶を説明することができないとの批判がな
されている。そこで、この批判に答えるために、原信用
^鍋︺
よ・つo
状と譲渡された信用状との関係如何という問趨を検討し
同行は、第一受益者との譲渡契約上の義務を果たしたこ
発行銀行が第二受益者に信用状を譲渡した場合には、
とになる。同時に、銀行が代物弁済によって原信用状上
負担する義務を果たすべきことも、第一受益者・銀行間
で合意される。代物弁済は、第二受益者に対する摘象的
^陥︶
債務約束の付与にある。︸Ω田第三六四条によって、発
行銀行に対する第一受益者の講求権は、譲渡された金額
だけ消滅する。
これに対して、田o︸第三六四条二項によって代物弁
茅︶
済は疑わしい場合には推定されないとの批判がある。し
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一橋論叢 第95巻 第2号 (118)
かし、この批判は正当でない。なぜなら、同条項は、償
^珊︺
務者が 債 権 者 に 対 し て 新 た な 債 務 を 負 担 し た 場 合 に の み
適用されるからである。信用状譲渡の場合には、銀行の
第二受益者に対する新たな償務が成立するのである。
第二受益者に対する信用状上の債務負担を銀行に対す
る第一受益者の請求権の代物弁済とみなすことは、発行
^39︶
銀行および第一受益者の意恩にも含致する。信用状の譲
渡が、第一受益者の信用状請求権の履行のためにする給
付にすぎないなら、この請求権は、第二受益者が信用状
金額を取得した時に初めて消滅する。この見解によると、
銀行は、譲渡された信用状の有効期間中、︸O︸第七八
○条による二つの条件付請求権、すなわち第一受益者の
それと第二受益者のそれとに服する。しかし、このこと
は、関係当事者特に発行銀行の利益に反する。同行は、
原信用状金額分だけ責任を負うべきである。
では次に、発行銀行のいかなる行為が代物弁済である
と考えられるのであろうか。この点につき、次の二つの
説が主張されている。
第一説は、第二受益者に対する支払約束の付与である
とし、第二説は、第二受益者に対する支払約束の申込み
︵柵︶
であるとする。
^41︶
第一説によれぱ、第二受益者に対する支払約束によっ
て、第一受益者の講求権が消滅する。支払約東の付与と
は、第二受益者に対する信用状債務の成立であるといい
^珊︶
かえることができよう。
しかし、第一受益者の信用状請求権が、譲渡された金
額だけ、第二受益者の信用状請求権の成立によって消滅
するとすることは、関係当事者の利益に反すると批判さ
れている。
^珊︺
第二受益者に対する譲渡書面の送付時から、︸o団第
一四六条による承諾期間を経過するまで、発行銀行は、
第二受益者に対して、信用状上義務を負う可能性がある
ことを考慮しなけれぱならない︵︸Ω団第一三〇条.一
四五条参照︶。第一受益者は、銀行に対し、条件一致の
書類を提供し、まだ消滅していない権利を行使すること
ができる。この場合、銀行は、第一受益者に対して支払
う義務があり、さらに、第二受益者に対しても支払義務
を負う可能性がある。第二受益者が申込みを承諾した場
合、第一受益者がその間に原信用状を使用したことを、
^糾︺
銀行は、第二受益者に対して対抗することはできない。
240
(119) 荷為替信用状の譲渡
それゆえ、第二説のいうように、第一受益者の請求権
ができるといえよう。 、
説によって、信用状の譲渡をかなりうまく説明すること
︵一︶第一受益者・第二受益者間の法偉関係
場合を中心として、検討する。
混乱を避けるため、発行銀行が譲渡取扱銀行でもある
ここでは、譲渡の場合における当事者間の法律関係を、
^ψ︶
抽象的償務約束説の立場から概観する。
一一一信用状譲渡の場合の法律関係
は、第二受益者に対する銀行の信用状償務の成立ととも
に消滅するのではなく、第二受益者に対する発行銀行に
よる契約の申込時、すなわち、第二受益者に対する発行
銀行に よ る 譲 渡 書 面 送 付 時 に 、 消 減 す る 。
もっとも、第一受益者の講求権は、最終的に消滅すべ
きではない。第二受益者が譲渡された信用状を使用しな
かった場合に、第一受益者は、原信用状の有効期限まで、
信用状を自ら使用する権利をもつべきである。第一受益
らぱ、この結果はもたらされない。それゆえ、代物弁済
用状開設約款を舎んでいる。この約款に基づき、第一受
けると同じように、売買契約が存在し、この契約は、信
この両当事者間には、発行依頼入・第一受益者間にお
による第一受益者の講求権の消滅は、解除条件付のもの
益者が第二受益者に対し、いかなる義務を負うことにな
者の請求権が信用状の譲渡とともに最終的に消滅するな
とみなされる。第二受益者が信用状を使用しなかった場
るかについては、見解が対立している。第一説によると、
^郁︶
含には 、 第 一 受 益 者 は 、 原 信 用 状 の 有 効 期 間 内 に 、 条 件
可能信用状の開設を合意することにある。これに対して、
第一受益者の義務は、発行依頼人との売買契約で、譲.渡
ることができる。第一受益者の請求権の消滅事由が遡及
第二説によれぱ、第一受益者の義務は、それに加えて、
一致の書類を提供することによって、原信用状を使用す
的に消滅し、発行銀行・第一受益者間の法律関係が復活
銀行が第二受益者に信用状を譲渡するよう、配慮するこ
能信用状が開設されただけでは十分でなく、第二受益者
とにある。第二受益者にとっては、第一受益者に譲渡可
^蝸︺
するからである。
^蝸︶
したがって、抽象的債務約束説によっては、原信用状
の消滅を理由づけえないとする批判は、あたらず、この
24j
は、信用状が自分自身に実際に譲渡されることに利益を
有する。そこで、第二説のいうように、第一受益者は、
ように、銀行は、依頼人に対㌧て譲渡する義務を負わな
発行依頼人の過失によって、譲渡不能信用状が、第一
いのであるから、発行依頼人は、銀行に対して譲渡を依
^塁
頼する義務を負うにすぎない。
^靱︶
をも負うものと考えるべきであろう。
受益者に対して発行されたような場合には、第一受益者
信用状 開 設 約 款 に 基 づ い て 、 銀 行 に 譲 渡 を 依 頼 す る 義 務
第二 受 益 者 は 、 信 用 状 開 設 約 款 上 、 第 一 受 益 者 に 対 し
は、発行依頼人に対して解除権およぴ損害賠償請求権を
︸Ω■第二七八条の意味における履行補助者とみなされ
る義務がある。書類提供義務に関して、第二受益者は、
第一受益者は、譲渡後、書類を第二受益者に提供させ
取得する。
^珊︶
て、譲渡された信用状を使用するため、条件一致の書類
^馳︶
を適時に提供する義務を負う。第二受益者がこの義務に
六・三六﹂条・︸o︸第三七六条に基づく権利を取得す
違反した場合、第一受益者は、d0団第三二五二ニニ
る。この場合、第一受益者の損害は、依頼人との売買契
約上の義務を履行することができず、彼に対して損害賠
信用状譲渡後も、信用状の独立抽象性の原則のゆえに、
れることはない。ただ、信用状の発行は、支払のためな
発行依頼人・第一受益者間の売買契約に変更がもたらさ
発行依頼人が銀行に対して信用状の発行を依頼し、銀
︵三︶ 発行依頼人・発行銀行間の法律関係.
限りで消滅する。
発行依頼人に対する第一受益者の売買代金債権も、その
ているので、第二受益者への信用状金額の支払によって、
され、第一受益者が第二受益者に対する支払いに同意し
^肌︺
益を失うこと、にある。。
ぺき義務を負うだけではなく、譲渡可能と明示した信用
譲渡に関する決定権が銀行に存することから明らかな
状を開設すぺき義務を負う。
^駆︶ .
発行依頼人は、第一受益者に対して、信用状を開設す
能約款︵oσ昌可晶σ彗ぎまζ四冒邑︶が含まれる。
両当事者間の売買契約の信用状開設約款には、譲渡可
︵二︶発行依頼人・第一受益者間の法律関係
償費任を負うこと、さらに、依頼人との売買契約上の利
箏
第2号(120)
第95巻
一橋論叢
242
(121)荷為替信用状の譲渡
契約−信用状開設契約ーが成立するに至り、銀行は、第
第六七 五 条 の 意 味 に お け る 事 務 の 処 理 を 目 的 と す る 請 負
行がそれに同意した場合には、この両当事者間に、団Ω田
の金額だけ支払をした場合には、第一受益者の信用状上
発行銀行が、第二受益者に対して、譲渡された信用状
茅︺
益者提供の送り状を点検しなけれぱならない。
約において、譲渡可能信用状の発行が規定されている場
第一受益者が発行銀行に対して信用状の譲渡を依頼
︵四︶ 発行銀行・第一受益者間の法律関係
の請求権も、この金額だけ、消滅する。
合には、銀行は、信用状を譲渡可能と明示して発行する
し、同行がそれに同意した場合には、譲渡︵取扱︶契約
一受益者に対して信用状を発行する義務を負う。開設契
義務を負う。
義務を負うわけでない。
この譲渡契約については、まずその申込者如何が問趨
発行銀行は、信用状を譲渡する義務を負う。
︵ζσ胃苛晶冒o目睾①冨巨σ嘗昌品︶が成立し、これによって、
同行は、譲渡を行う場合には、原則として、原信用状
とされよう。この点に関して、次の二つの説が主張され
もっとも、発行銀行は、依頼人に対して、譲渡を行う
条件で譲渡しなけれぱな ら な い 。
もっ と も 、 銀 行 が 、 開 設 契 約 に 違 反 し て 譲 渡 不 能 信 用
さらに、手数料支払義務も負う。
なく、同時に、譲渡契約の申込みをも行う。信用状開設
て、団Ω︸第七八○条による契約の申込みを行うだけで
前説によると、銀行は、譲渡可能信用状の発行によっ
者であるとする説である。
ている。すなわち、発行銀行であるとする説と第一受益
︵嗣︺ ^弱︶
状を発行したため、第一受益者がその信用状を拒絶し、
書面上の﹁本信用状は譲渡可能である﹂との文言が、契
発行依頼人は、発行銀行に対して、補償義務を負い、
は、それらの義務を負わず、かえって、銀行が依頼人に
依頼人との売買契約を解除したような場合には、依頼人
約の申込みである。
しかし、この説に賛成することはできない。
^ω︶
この説は、銀行による二重の同意の必要性と相反する。
^脆︺
対して損害賠償義務を負うことになる。
銀行の書類点検義務の内容は、譲渡によっても変わら
ないので、同行は、第二受益者提供の書類およぴ第一受
泌3
第2号(122)
第95巻
一橋論叢
上述の茎言は、銀行の同意のうちの第一のものである。
負う。銀行の第二の同意が契約申込みの承諾なのである。
ることもできる。
銀行は、第一受益者の申込みを承諾することも拒絶す
第一受益者がこの申込みを承諾する限り、銀行は、田Ωω
譲渡契約の法的性質については、発行依頼人・発行銀
この第一の同意が法的意味における申込みであるなら、
第一四五条によって拘東され、信用状を譲渡する義務を
行間の契約と同様に、事務の処理を目的とする請負契約
づい。て、譲渡義務を負うことになるのである。
一受益者に対して譲渡義務を負わないが、譲渡契約に基
発行銀行は、譲渡可能信用状を発行しただけでは、第
きるパ
である︵dΩ日第六七五条・六三一条︶ということがで
^蘭︺
負うことになる。しかし、銀行は、明示的に第二の同意
を与えた場合に初めて譲渡義務を負うのである。
この説に対しては、さらに、銀行・第一受益者間に二
つの譲渡契約が成立するかの印象を与える点および契約
1 ︵血︺
したがって、第一受益者が申込者であるとする説が正
第一受益者は、発行銀行に対して、譲渡に関する諸費
申込みの内容の確定性の点にも批判が加えられている。
当である。この説にしれぱ、開設書面に含まれる﹁本信
用を支払う義務を負うが、第二受益者の送り状を自己の
^硯︺
用状は譲渡可能である﹂との文言は、巨く岸註O邑O茅−
もできる。第一受益者のこのような差換えを可能とする
送り状と差換える権利を有し、さらに手形を振出すこと
銀行が信用状を譲渡可能としただけでは、第一受益者に
の書類が提供されたことを通知する義務を負うものと考
ために、発行銀行は、第一受益者に対して、第二受益者
﹃彗旨ヨすなわち契約申込みの誘引にすぎない。これは、
対して譲渡義務を負わないとする考えと一致する。
象的債務約東説に対する批判のところですでに検討した
原信用状と譲渡された信用状との関係については、抽
えられる。
^ω︶
第一・受益者が発行銀行に譲渡を依頼した場合に、その
に関する条件を含む第一受益者の申込みを承諾した場合、
ので、ここでは触れない。
ような申込みがなされる。銀行が第二受益者等の、譲渡
れる信用状の金、額だけ、摘象的債務約東を与える義務を
譲渡契約が成立する。それに基づいて、銀行は、譲渡さ
244
(123) 荷為替信用状の譲渡
︵聾
損害を与えたとしても、発行依頼人は、第二受益者に対
い。それゆえ、第二受益者が過失によって発行依頼人に
発行銀行に対する第二受益者の関係は、同行に対する
して、損害賠償請求権を有しない。
︵五︶ 発行銀行・第二受益者間の法律関係
第一受益者の関係とほぼ同じである。第二受益者に対す
が含まれている。第二受益者がこの申込みを承諾した場
ついて賛任を負うか、少なくとも、第二受益者に対して
囲内で、民Ω︸第二七八条によって第二受益者の行為に
しかし、第一受益者は、発行依頼人との売買契約の範
合には、彼は、発行銀行に対する独立かつ抽象的講求権
る譲渡書面中に、田Ω■第七八O条による契約の申込み
を取得する。信用状条件一致の書類が提供された場合、
う義務を負う。
コルレス先が信用状譲渡に参加する場合には、さらに、
︵七︶ コルレス先をめぐる法偉関係
れぱならないであろう。
有する損害賠償請求権を発行依頼人に譲渡するかしなけ
轟︺
銀行は 、 譲 渡 さ れ た 信 用 状 の 金 額 を 、 第 二 受 益 者 に 支 払
発行銀行・第二受益者間の法律関係は、信用状譲渡の
コルレス先をめぐる法律関係を検討することが必要とな
^砧︺
他のすべての法律関係から独立している。それゆえ、銀
るが、以下では、発行銀行・コルレス先間の法偉関係に
限定して、考察することとしたい。
^刑︺
行は、 第 二 受 益 者 に 対 し て 、 第 一 受 益 者 に 対 す る 法 律 関
係上有する抗弁も、発行依頼人に対する法偉関係上有す
受益者 間 の 売 買 契 約 も 、 第 二 受 益 者 の 請 求 権 に 影 響 を 及
うにとの委任には、発行銀行の代理人として譲渡を行う
対して義務づける。受益者に譲渡可能信用状を支払うよ
支払銀行は、譲渡によって、発行銀行を第二受益者に
ぼさない。銀行は、譲渡自体の有効性に関する抗弁・譲
銀行は、第二受益者に対して譲渡書面を送付することに
る抗弁も、対抗することはできない。第一受益者・第二
^一〇〇︺
渡内容から生ずる抗弁・銀行が第二受益者に対して有す
^研︶
る人的抗弁のみを、対抗することができるにすぎない。
よって、発行銀行の代理人として、田Ω田第七八○条に
よる契約の申込みを行う。第二受益者がこの申込を承諾
^η︶
ことの授権をも合んでいると考えられる。そこで、支払
^加︶
︵六︶ 発行依頼人・第二受益者間の法偉関係
発行依頼人・第二受益者間には、契約関係は存在しな
245
●
した場合、発行銀行が直接に義務を負うことになる。
実務においては、単なる通知銀行が譲渡を行うことも
多い。このことは、法的には若干の問題がある。受益者
に譲渡可能信用状を通知するようにとの委任に、発行銀
行の代理人として譲渡を行うことの授権も含まれている
か若千疑問であろう。合まれないとする.と、通知銀行は、
^閑︶ ^む
代理権がないにも拘らず、発行銀行のため行為している
の で 、発行銀行の義務 は 、 ︸ Ω 射 第 一 七 七 条 一 項 に よ っ
^ 花 ︶
て不確定無効である。けれども、譲渡は完全に有効とな
る。この理由は、通知銀行が発行銀行に譲渡の事実を通
することがよく行われる。この場合、譲渡の事実だけが
^”︶
通知され、譲渡条件例えぱ第二受益者名は通知されない
このような譲渡通知は歓迎すべきことであるが、さら
に通知義務も肯定すべきであろう。そうすることによっ
^80︶
て、第一受益者が、譲渡後に、発行銀行に書類を提供し
て、信用状金額を取得することが妨げられる。
四 結び
以上、西ドイツにおける最近の議論を対象として、譲
渡の法的性質・譲渡の場合の当事者間の法律関係を概観
ことがまず指摘されねぱならないであろう。すなわち、
どのように考えるべきかを検討するにあたっては、次の
してきた。謹渡をめぐる問題について、わが国において、
しない場合には、同行は、譲渡を黙示的に追認したもの
わが国においては、輸出金融上・外国為替管理上の理由
知していることに求められる。発行銀行が遅滞なく責問
^%︶
とみなされよう。
た信用状を譲渡するケースー統一規則第五四条e項.︷
の代金債務の支払担保を供与するため、自己に与えられ
から、原受益者たる売主が、自己への売主に対して自ら
しかし通知銀行が譲渡不能信用状を譲渡した場合には、
事情は異なる。発行銀行が譲渡通知をうけ、その譲渡を
張することができる。通知銀行が、田Ω国第一七九条に
項が予定するようなケースーが、これまで存在しなかっ
責問しなかった場合でも、発行銀行は、譲渡の無効を主
基づき第二受益者に対して責任を負うから、第二受益者
たことである。そこで、譲渡の法的性質について、わが
^η︶
は、不利益を蒙らない。
国においては、債権の同一性が失われないため、債権譲
^湘︺
ドイツでは、支払銀行が発行銀行に対して譲渡を通知
■
第95巻 第2号(124)
一橋論叢
246
(125) 荷為替信用状の譲渡
^趾︶
渡説が有カに主張されたのであるといえよう。
︵6︶ 以下の内容については、衝権譲渡説なかんづく、︸豊昌
;、§ミミ秦竈§﹄婁ミ壽畠雨s§助boぎ§§“§黒導&舳ミ竈§一
説に対して最も詳細な批判をなしているミ窃ω胃昌彗pb膏
^磐
これに対して、比較的近時、新信用状発行説が提唱さ
︵7︶ ωo巨晶o旨胃o目R、向g實昌oげ一きsき亭窓亀這ざ§㎞>自o.
−湯−の諭述に負うところが大きい。
れ、両説の間で論争がなされるに至っている。次に、こ
のような論争を含めて、譲渡に関する間魑を検討しなけ
れぱならないが、その検討は、他日を期したい。
恥ミ§§“§畠奪ミきミ竈ぎb§“竃ミs彗具、§sぎ&oきミs軋§、
ωp−<Lミ①>目ヴ竃σ目豊伽ωα仰>目昌竃†■旨珂b§bo−
ミ§﹂奪ミ§き︸§ミミs魯ぎ§、§曇s註訂§喜§、N>邑’
ωミ§貴宅ぎω1宝〇一里叩O昌彗具目茅津Fb§bOぎ§耐−
︵1︶ 本稿では、荷為替信用状の中でも、取消不能のものの
︵2︶ 統一規則は、数次の改訂を経てきており、現在適用さ
みを検討の対象としている。
れるのは、一九八三版である。そこで、以下の論述におい
ζ&三‘ミミしosω.冥ひぷo彗胃貝b§ぎミミ奈寒§ミ
>算﹃&冒くσ嘗寿N弓ζ9H巨晶冒岬き昌UOぎ昌耐算O目算−
︵8︶なお、霊昌ま祭畠■U庁ら毛勺隼。N畠庄曽旨昌岬o呂
−oNoω一Hωo〇一4く鶉器目目印■目一里一串O‘ω一N阜∼Nρ
九七四年版︶第四六条、参照。
ている。なお、統一規則︵一九六三年版︶第四六条、︵一
ミ§き、売竃ミざ§まO§も沖§§§§“山>昌1−−<少 筍OOH
ては、統一規則の条項は、 一九八三年版のものに一致させ
︵3︶ 受益者が銀行に対して有する信用状上の謂求繊につい
肉匝目1Ho讐.参照。
昌§ミ茎§“竃ざboぎ§§、sミト§ミ呉9辻ミし漂㎞ω.ざ一
︵12︶ 葭巴一P串芭l〇一ω一ご−
︵11︶ 司一器昌冊膏具向σo箒戸串葭一〇一ω一ご弁
版︶第四六条a項、参照。
︵10︶統一規則︵一九六三年版︶第四六条一項、︵一九七四年
︵9︶国豊∼芭−顯.O.oo−﹀∼Nω.
て詳しくは、例えば、浜田一男﹁商業信周状受益者の権利
の性質﹂法政研究第二一巻一号︵一九五三年︶二二員以下、
参照。
雪夢貝bミq冨ミ泰§軸竃ミboぎ§ミ§富奪ミ§さ冊ぎ
︵14︶ ≦j色9P瞠一〇.ω.曽∼NN︸田印昌自=9o目o■寧串O.ω1
︵13︶ 団賞−昌ゴα寂■o﹃一里−串O.ω一H傘ひ∼∼ω一
︵4︶彗監一b婁皇ぎ§ミ雨ミー﹂奪ミ§さ§軋ミ§菩−
−8ooω。N3判例として、O■OU詩器巨o貝ミ冨H薯Pω■
N筈∼N富ミミ轟ミミN§§ミ溶竃§ミ§軸ぎ﹄s膏ミ§軋良
↑卓αω∼卓一ωo巨o岬o旨亀oqo之雷o汗﹃昌〇三一P串〇一>⋮目一N山H一
二㎞一なお、射耐巨一彗ま一〇豊>窯﹃&−庄‘N竃δぎω.ご
も参照。
︵5︶ =印す夕顯1PO.ω.N−−ooo.
24?
橋論叢 第95巻 第2号 (126)
舳>目P↑oNひω’伽“一向−窒目−嘗冒之丙σo﹃匡一掌四.O1ω1一ωω.
︵30︶ 匡閏すP芦閏.O1ω−oooo∼ooo1
からみて疑間とされよう。
︵㎝︶ 支払銀行の地位については、ωo巨昌害o﹃二︼oω8旨自轟
︵15︶ 妻宮窒胃昌臼目貝串串O.ω.N0∼ooo
旦O﹃N雷=−而叶O自O−目−−︺O岸自−自O自斤O目1>斥斥賞Wα−巨く一、雨吻、吻Oき、S遵、
︵κ︶ ω一四一]ρ耐■−U−o^︺σo﹃一﹃固o〇一﹄−一〇qo砧蜆 −︺o斥自目5目一〇自固片斥Hoo−.
匡く9﹄ミbδαooω一︷、一︸曽E昌=9o目宰一芭.纈.O.ω一軍①阜一
︵㏄︶ 婁里肋朋o﹃昌−ρ目目−與−芭.o.ω・−oo∼−o−・
完雨ぎミ一5さω一8N:参照。
︵“︶ =芭げ目一臼−胆10.ω.O〇一
■旨o片9串一串一〇一ω一 ご〇一 向−蜆o昌彗旨、向げo昌F 芭.芭1〇一ω1
︵“︶ ωO巨−血O目O−σO﹃OqO﹃、雪O−OH目一〇プト 葭−顯1◎1>自目−1Nω阜⋮]﹁饒O片O.
Hωoo∼Hいo︸o里目芭﹃山9 胆.顯.o■勾α目. −oωひ⋮∼く顯m餉血H自−雪昌目.p・
︵〃︶ なお、匝豊目一閏.四−o.ω.ざ参照。
芭.芭lO.ω一ごo〇一〇凹■胃貝酉一芭一〇一⋮∼く鶉器旨自彗=−一寧.里一◎一
與.串O1ω.ミ〇一N凹︸P芭−葭−〇一ω一〇3向︷器昌雪■之同σ胃艘一
寧〇一ωlooo∼o0N.
︵18︶ 虫芭︸夕P匝−〇一なお、宛9o−彗口F凹・串O・ω・N①∼NN
︵20︶ その内容については、考鶉器H昌彗P臼.撃ρω.8∼
■旨鼻9葭−寧O.ω﹂亡も参照。 、
︵∬︶ 工四−自’閏‘凹.◎1ω.㎞伽−ω一顯目OO■ 里・凹・O・ω・︷OO なお、
ω.−〇十
も参照。 ・
まーに詳しい。
︵η︶ 丈顯すP雪一四一〇一ω一〇介
︵36︶ この点については、問題があるので、以下で検討する
︵19︶ ミ窒器﹃昌m冒P閏−牢Olω−o0N∼ooo・
︵21︶ 向ポo冒田膏目㌔向σo斗戸串四一〇一ω一−阜午
︵39︶ 4く富閉睾目四昌P票p.OIなお、葭葭σ貝PPOlω.α︸も
︵38︶ξ鶉窒﹃目竃目一甲串O.ω二塞1
︵”︶ なお、 ︹︸耐籟−O■ −︶舳血<O﹃毛^W﹃け冒自Oq くO自 −︺O庁自︼已価自一血目芭片.
︵23︶ 曽ρげP串一固1 O . ω 一 N N ∼ S ・
写&旨く彗一﹂ミbδgω.N8参照。
︵40︶ ωけ印■ρo﹃一曽.芭lO∴N葭−戸顯.葭.O・ω・o企⋮■口o斤9票
参照。
葭.〇一ω.−阜−.
︵以︶ ’く鶉竃﹃冒固⋮■距−四lO.ω.o㎞.
︵41︶ξ鶴8冒匿P葭−葭−O・oo・冨①・
︵刎︶ 峯豊㎜亀旨葭目P葭−芭lO.ω・ooo∼Hoo・
︵26︶ 現統一規則のもとでは、変更許容事項として、書類呈
︵42︶ 炭O団第七八○条による抽象的債務約束は、申込みと
︵43︶ 匡里巨∼寧豊〇一m一①戸
承諾とによって成立する契約である。 。
︵27︶ =顯巨貝寧串一〇一ω一〇〇〇〇・
︵28︶ 国昌旨一里−豊O1
示期間およぴ付保率が追加されている。
︵29︶ また、このような考えは、信用状の独立抽象性の原則
(127)荷為替信用状の譲渡
︵44︶ ξ鶉器H目寧目Pp1寧O1ω‘S㎞∼HNひ−
︵60︶ 奉監蜆胃昌p自目 芭−凹一〇一ω一=①∼旨N一
乱貝葭lPρω−お.参照。
︵63︶ ミ鶉岬實昌芭目目 寧顯.O.ω.巨ol
︵62︶ 婁鶴竃﹃昌顯目■ 固−顯lO−ω‘=oo∼=〇一
︵61︶ ミ鶴8﹃∋顯コ目 pl芭.O.ω一HHNl
︵45︶ N閏−P凹.里lO‘ω.o企一向尿o昌臼目具向一︺o具戸P讐〇一ω一
︵46︶ ξ鶉餉弩昌p目P印1p−O1ω.竃N.なお、N芭巨P凹.葭−O−
HωO⋮ ミ凹㎞閉O﹃﹃口芭昌−一一 芭. P. ︵︶1 ω■ −∼ひー
︵〃︶ より詳しくは、考窒蜆鶉昌凹目貝芭一Pρω一−o舳∼一
も参照。
︵研︶ ω冨一己睾一P票O.
︵66︶N顯==一顯1POω.oω.
︵砺︶ ω冨Eq實一臼.臼−〇一
︵64︶ω冨自o雪一凹凹.Oω.8−
︵48︶ 第−説をとる者として、ω冨邑智一凹.顯.O.ω二〇〇.第2
ω冨巨員里.里−01ω.嵩∼参照。
︵49︶ 冬鶉m雪昌凹目目 四.固.O1ω.ε①∼−oN一
説をとる者として、奏畠器﹃昌単目P寧、凹。ρω一Ho9
ω冨目o胃一葭−串〇一ω−け9㎞H⋮N唐巨P凹.串〇一ω.oω一〇芭目pユμ
︵70︶ コルレス先をめぐる法律関係につき、より詳しくは、
︵69︶ 奉爵8﹃昌顯目自 芭.曽1O.ω‘こN1
︵68︶ ミ唐m器﹃昌閏目P閏−PO’ω1一S.
︵皿︶ω9自庄o■甲凹.Oω.嘗一
顯−葭1O−宛旨1−o肯.参照。
︵50︶ ω冨自o血■串串O.ω.卓ool
︵52︶ 4く鍔器﹃∋固自自 豊凹.〇一ω一Hoド
︵n︶ ω冨目oo﹃一芭.P〇一ρ2一向川器昌凹昌目、向σo暮戸葭.固一〇.
︵“︶ ︸芭目ヨブ9ω目o﹃一芭−芭.O.ω一一阜αい︸ω“顯冒oo■串凹一〇一ω.
壮ool
︵72︶ ミ鶉8﹃昌固コP芭.凹lO.ω一ご阜一 、
ωーこ㎞1 .
︵乃︶ 肯定すると思われるものとして、望彗ま﹃一芭・凹・O∴
︵“︶ ω蟹目oo■顯.凹1O1ω1︷oo.
︵“︶ ミ鶉器H目凹目P寧串〇一ω.=o.なお、ωo巨ooq色σo晶實、
︵∬︶ ㎝冨自qo■寧串O.
■g竃冨亘纈.葭。ρ>=昌.曽いも参照。
︵︶. 肉o−一. 一〇阜H.
・Nω阜一両尿o昌葭目具向σo斗F凹−凹.O.ω一こ㎞一〇四自p﹃亘凹.凹
N四げ貝芭.凹.O∴ωo巨o軸oヨU昌岬ω具主艮宰昌〇三一p1印.O1>コ目1
︵〃︶ ω冨筥創宰一芭.PO1ω一㎞一一
︵乃︶ ミ窃器﹃目固=P顯.芭.Ol
︵μ︶ ミ葛器﹃昌臼昌P串PO1ω一ご㎞一
︵珊︶ いずれの説も、ミ蟹器H昌彗pβ。里、◎■ω。巨α∼二〇〇に
︵59︶ 婁鶴器﹃冒彗自は、ω冨邑宰がこの説を支持していると
︵76︶ 冬鶉8﹃ヨ串コ﹃一p−凹1O’
よる。
されるが、二れは疑問である。この点については、卑彗−
249
8 ■
(12 )
一橋論叢 第95巻 第2号
︵η︶ ωo巨血胴oラo晶oユ=oδコ一一〇=一票凹・O・>≡自・Nω戸
︵花︶ 一く鶉8﹃昌彗旨一票寧O・
︵η︶ ≦富器﹃昌彗p p 寧 ◎ 1 ω ’ 5 N ・
︵80︶ 冒一員閏IPO.oo1温一反対、O彗彗亘芭・PO・宛旨・
︵81︶ 債権譲渡説を支持するものとして、伊釈孝平﹁荷為替
−oωN.
信用状の譲渡とその法的性質﹂法学論集第一八巻一号︵一
九六八年︶三〇頁以下、小峰登﹃一九七四年信用状統一規
︵82︶ 橋本喜一﹁荷為替信用状譲渡の現状とその法的佳質に
則︵下︶﹄︵一九七九年︶六四五頁以下、等。
下、等。
ついて﹂司法研修所諭築第三六号︵一九六六年︶四八頁以
︵小樽商科犬挙助教授︶
250