Nd1−x Tbx Co2 の磁場中の輸送特性 琉球大理, キリ短大 A , 東大物性研 B 与那嶺翔太,金城敦,高江洲義尚,内間清晴 A ,辺土正人,仲間隆男,矢ヶ崎克馬, 松林和幸 B , 上床美也 B Transport Properties of Nd1−x Tbx Co2 in Magnetic Field Fac. Sci., Univ. of the Ryukyus, Okinawa Christian Junior CollegeA , ISSP, Univ. of TokyoB S. Yonamine, A. Kinjyo, Y. Takaesu, K. UchimaA , M. Hedo, T. Nakama, K. Yagasaki, K. MatsubayashiB , Y. UwatokoB 希土類−遷移金属間化合物 RCo2 は,立方晶ラーベス相 (C15 型) 結晶構造を持つことが 知られている.RCo2 系で,R が非磁性の Y, Lu および Sc の化合物は増強されたパウリ 常磁性体で Co の d 電子は強磁性に非常に近い状態にある.常磁性化合物のうち YCo2 お よび LuCo2 は,それぞれ 70 T および 85 T の外部磁場で常磁性から強磁性への遍歴電子 メタ磁性転移をすることが知られている.一方,R が磁性をもつ化合物では磁気オーダー した R 副格子の 4f 磁気モーメントから,スピン-スピン相互作用による,交換磁場を受け Co 副格子は磁化を持つようになる.その結果,R が軽希土類の化合物は R の 4f 局在磁 気モーメントと Co の 3d 遍歴磁気モーメントが平行にそろう強磁性,R が重希土類の場合 は,反平行にそろうフェリ磁性を示す. 重希土類 Tb の化合物 TbCo2 は,キュリー温度 TC = 230 K のフェリ磁性体で, 軽希土 類 Nd の化合物 NdCo2 は,キュリー温度 TC = 100 K 以下で強磁性を示す.Tb を Nd で置 換した Nd1−x Tbx Co2 系は,Nd と Tb の 4f 磁気モーメントは磁気転移点以下で反平行に 揃うため,Nd と Tb の 4f 磁気モーメントから Co に働く内部磁場は同一方向である.今 回は,重希土類 Tb を軽希土類 Nd で置換したとき,磁性と系の輸送特性がどのように変 化するかを調べるため,電気抵抗率 ρ および熱電能 S を温度範囲 2∼300 K,0∼10 T まで の磁場中で測定した. 試料は,希土類とコバルトを R : Co = 1 : 1.93 の比に秤量しアーク熔解して作成した. その後,900 ℃ で 7 日間の焼鈍を行った.X 線回折測定を行い,試料がラーベス相の結晶 構造になっていることを確認した.測定には,∼ 1 × 1 × 10 mm3 に切り出した試料を用 いた.電気抵抗率および熱電能の測定は,それぞれ標準四端子法およびシーソーヒーティ ングを用いた微分法で行った.磁場中の測定は,電流磁気および磁気熱量効果による余分 な起電力が発生しないよう電流および熱勾配が磁場と平行になるようにして測定した. この先の電気抵抗率についての議論には,300 K における電気抵抗率 ρ(300) で規格化し た ρ(T )/ρ(300) を使用する.これは,RCo2 系の試料では一般に言えることであるが,試 料に入るマイクロクラック等の影響で試料の有効断面積が小さくなり,電気抵抗率が大き く見積もられてしまうためである.この効果による電気抵抗の変化が大きいと,電気抵抗 率の組成変化などのように他の試料との比較が困難となる.このマイクロクラック等によ る抵抗率の変化は,室温付近における抵抗率で規格化することにより影響を小さくするこ とができる.(ただし,この方法は室温近傍の電気抵抗率の R 依存が非常に小さい RCo2 系に対して有効であり,一般の化合物,合金に対して無条件に用いることはできない.) 250 1.0 x=0.2 0.8 Nd1-xTbxCo2 200 *r TC [K] 0.6 0.4 0.4 0.2 0.0 0 150 10T 100 B=0T 0.8 Nd1-xTbxCo2 100 200 300 T [K] 図 1: ρ∗ (= ρ/ρ(300)) の温度依存. 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 x 図 2: TC の x 依存. 図 1 に,Nd1−x Tbx Co2 化合物の ρ∗ (= ρ(T )/ρ(300)) の温度依存を示す.ρ∗ は温度上昇 とともに大きくなり,磁気転移点近傍で折れ曲がりを示す.ρ∗ の急激な変化を示す温度を 磁気転移温度 TC とした.TC 以上の温度領域では,x に関係なくほぼ同じ温度依存性を示 し,この系の常磁性領域の電子散乱が R にほとんど依存しないことが分かる. 図 2 に,ゼロ磁場中および 10 T の磁場中における ρ の温度依存から得た,磁気転移温 度 TC および TC′ の Tb 濃度 x に対する変化を示す.TC′ は,10 T の磁場中における電気抵 抗率の温度依存が急激に変化する温度から求めた.TC は Tb の濃度 x の増加とともに直線 的に高温側にシフトしている.これは x の増加にともない Co に働く交換磁場が増加して いくためであると考えられる.TC′ は,0.2 . x . 0.4 の組成領域で確認できた.x < 0.35 で高温側,0.35 ≤ x ≤ 0.4 では低温側に移動している.x ≥ 0.6 では急激な変化がなくな り,TC′ は確認できなかった. 図 3 に,マグネトレジスタ M R(={ρ(10,T) − ρ(0,T)}/ρ(0,T)) の温度依存を示す.ほと んどの組成濃度の化合物は,ゼロ磁場中での磁気転移点 TC で M R は負のピークをもつ. しかしながら,10 T 磁場中での磁気転移温度 TC′ が TC よりも低温側にシフトする組成領 域 (0.35 ≤ x ≤ 0.4) では,磁場の効果が小さく,磁気転移点におけるピークも正で大きさ が小さくなっており,他の組成領域とは違う特異な振る舞いを示している.図 4 に熱電能 S の磁場効果 (∆S = S(10, T ) − S(0, T )) を示す.0.35 ≤ x ≤ 0.4 の組成領域は,熱電能 S でも ρ の振る舞いと同様磁場効果が小さくなっていることがわかる. ρ および S の磁場依存が特異な振る舞いを示す 0.35 ≤ x ≤ 0.4 は,反平行に整列してい る Nd と Tb の 4f 磁気モーメント MNd および MTb がほぼ同じ大きさになっている組成領 域である.この領域では,Co 副格子の磁気モーメント MCo が小さくなっていることが報 告されている [1].RCo2 系の ρ および S は,フェルミレベル近傍に大きな電子状態密度を もつ遍歴 3d 電子状態に非常に敏感であるため,0.35 ≤ x ≤ 0.4 の組成領域における ρ お よび S の特異な振る舞いは,この MCo の変化と密接に関係しているものと考えられる. 4 Nd1-xTbxCo2 0 3 Nd1-xTbxCo2 x = 0.2 0.8 0.4 -5 S [µV/K] MR [%] 0.35 x = 0.2 2 0.4 D 1 -10 0.35 0 0.8 -15 0 100 200 -1 0 300 T [K] 100 200 T [K] 図 3: M R の温度依存. 図 4: ∆S の温度依存. [1] Z. W. Ouyang et al., J. Phys.:Condens. Matter 15 (2003) 5599-5613. 300
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