地表での地震動特性を支配する3要素 1) 震源特性 2) 伝播経路特性 3) 地盤増幅特性(サイト特性) 振動工学 地震動の増幅 地表 表層地盤 深部堆積層 工学的基盤 第12回 地盤の振動 軟 硬 地震基盤 地殻・マントル 震源 1 2 表層地盤の地震動増幅 地盤の動特性 地震動解析に必要な地盤の動特性には, • • • 質量 弾性係数 減衰定数 がある。 ただし,地盤を線形弾性体と仮定。 地表での地震動と建物応答は表層地盤構造の影響を大きく受ける。 3 4 質量 弾性係数 弾性体を表現する係数には各種ある。線形弾性体 ではそのうちの2つが独立である。 単位体積当たりの質量すなわち質量密度 (単位:kg/m3)を用いる。 既往の実測データから平均的な値は以下のとおり である。 粒径区分 (mm) 2 0.075 0.005 • • • • 礫 砂 シルト 粘土 2.10 1.85 1.70 1.50 • • 関東ローム 水 1.35 1.00 (単位:×103kg/m3) 5 • ヤング率(縦弾性係数) E (N/m2) • せん断弾性係数(剛性率) G (N/m2) 無次元 • ポアソン比 砂 : =0.3 程度 粘土 : =0.5 程度 • P波速度(縦波速度) VP (m/s) • S波速度(せん断波速度) VS (m/s) 沖積地盤: VS = 50~200 m/s 程度 洪積地盤: VS = 200~400 m/s 程度 せん断弾性係数,せん断波速度 弾性波動場の基本方程式 各軸方向に関する応力のつり合い方程式は 以下のように成り立つ。 地盤のせん断弾性係数とせん断波速度(S波 速度)の間には,以下の関係がある。 G VS2 , VS y G x yx zx ux 0 x x y z dx xy y zy y Y軸: uy 0 yx x y z xy x yz xz yz z xz uz 0 Z軸: zy x y z zx 単位体積に z z 作用する慣性力 X軸: ちなみに,P波速度は VP 6 2G E , (1 )(1 2 ) 7 8 問題の単純化 応力のつり合い方程式の単純化 水平動 • 地盤は水平成層地盤 X方向(水平方向)にのみ変位することから u x 0, u y u z 0 • 入射波はS波 • 鉛直下方から入射 スネルの法則(屈折の法則) sin n 1 VSn 1 sin n VSn 一般に地表に近づくほど VSは小さくなる n-1 n n-1 n 地盤の応力-ひずみ関係 10 u→ueit とおいて整理すると d 2u 2 1 2ih u 0 dz 2 G d 2u 2 * u 0, G * G 1 2ih : 複素剛性 2 dz G t となる。ここで :減衰定数(無次元) u z zx ux u z z 調和振動解 減衰のある場合の応力-ひずみ関係は, 2h G dz よって,応力のつり合い方程式から 9 h z u x u x u x 0, 0 x y z x y z xy yz 0, zx 0 S波(横波・せん断波) t x Z方向(深さ方向)にのみ変位の 空間的変化があることから d 2u 2 p u 0 , p dz 2 G* :せん断ひずみ(無次元) これを z で偏微分し,前頁の式を代入すると 上式の2階同次微分方程式の解は 2 u G 3u 3u 2 h 2 tz 2 t t 3 u Ee ipz Fe ipz u Ee ipz Fe ipz e it 11 12 上昇波,下降波 成層地盤の波動伝播(1) x 今,減衰を無視(h=0)すると p u Ee G z VS z i t V S Fe z i t V S E 右図のように水平な境界をもって,層をなした成層地盤 を考える。各層において ui Ei e ip z Fi e ip z e it F i i i i i i Gi* pi Ei e ip z Fi e ip z e it 上式から,第1項はz軸の負の方向に進む波(上昇波), 第2項はz軸の正の方向に進む波(下降波)を表す。 i i i i 境界条件として,地表面でせん 断応力が 0,層境界における 変位とせん断応力の連続より 1 Z 0 0 E1 F1 1 13 成層地盤の波動伝播(2) 1 1 Ri Ei eip H 1 Ri Fi e ip H 2 1 Fi 1 1 Ri Ei e ip H 1 Ri Fi e ip H 2 i i i i i Ri iVSi i 1VSi 1 * i Gi * i 1Gi 1 i ui 1 Z i Zi H i i 1 Z i 1 i 1 0 Hi zi+1 i+1, Gi+1, hi+1 Hi+1 0 14 i i 下式より地表のE1, F1が決まれば、地表から順に任意 のEi, Fiが次々と求まる。 Ei 1 1 1 Ri e ip H ip H F i 1 2 1 Ri e Ei Rii 1 Fi i i i 1 Ri e ip H Ei 1 Ri e ip H Fi i i i i E1 Rii1 R12 Rii 1 F1 i Gi 1 2ihi i 1Gi 1 1 2ihi 1 iVSi 1 2ihi 1 2ihi 1 i 1VSi 1 i ここで,Riはインピーダンス比である。 Gi* pi Gi*1 pi 1 Zi H i zi x i, Gi, hi 成層地盤の波動伝播(3) 結果を整理すると,以下のような i層とi+1層との漸化 式が求まる。 Ei 1 ui x 15 ここで、地表は自由端であるから波動は全反射し、 上昇波と下降波の振幅は一致する。 すなわち E1 = F1 16 成層地盤の波動伝播(4) 2種類の地盤の伝達関数 2 E1 En Fn 逆に,第 n 層上端の入射波Enに対する任意の境界で の応答の比が計算できる。 En E1 r11 2 E1 n Rn 1 R1 r F1 r21 F1 Fn En r11 E1 r12 F1 r11 r12 E1 H E1 F1 2 E1 1 2 En 2 En r11 r12 r12 E1 r22 F1 E1 = F1 表層地盤 E1 F1 基盤 これを地盤の伝達関数という。 伝達関数:入力に対する出力の スペクトル比 > En Fn 内部基盤面 解放基盤面 En ≠ Fn En = Fn 下降波 Fnが表層地盤 の影響を受けている。 →地中地震計など 17 2層地盤の伝達関数 下方からの入力のみ →設計用入力地震動 基盤露頭波 18 2層地盤の1次固有振動数(4分の1波長則) 1次固有振動数 E1 E2 F1 1 =1.7 VS1=100m/s h1 =0.02 t/m3 4分の1波長則 H1= 25m V V 4H1 f S1 f1st 4HS1 1 1st :波長 (m) f1st :1次固有振動数 (Hz) 2 =1.85 t/m3 F2 V =400 m/s S2 h2 =0.02 解放基盤面 2 E1 2 En 2 E1 2 E2 地表面=自由端(位相ずれなし) 2 E1 H1 内部基盤面 E F 2 2 基盤面≒固定端(位相ずれ180°) 19 20 2層地盤の伝達関数(表層地盤の層厚) f1st E1 E2 F1 1 =1.7 t/m3 VS1=100m/s h1 =0.02 VS 4H Ri 2層地盤の伝達関数(表層地盤のS波速度) iVSi f1st i 1VSi 1 E1 H1 =1.85 t/m3 F2 V2 =400 m/s S2 h2 =0.02 E2 H1 (m) 8 12.5 25 F1 1 =1.7 t/m3 VS1 h1 =0.02 VS 4H Ri iVSi i 1VSi 1 H1= 25m =1.85 t/m3 F2 V2 =400 m/s S2 h2 =0.02 VS1 (m/s) 100 200 300 21 22 2層地盤の伝達関数(表層地盤の減衰定数) 2層地盤の伝達関数(基盤のS波速度) f1st E1 E2 F1 1 =1.7 t/m3 VS1=100m/s h1 =0.02 VS 4H Ri iVSi f1st i 1VSi 1 E1 H1= 25m =1.85 t/m3 F2 V2 S2 h2 =0.02 E2 VS2 (m/s) 300 400 600 F1 1 =1.7 t/m3 VS1=100m/s h1 VS 4H Ri iVSi i 1VSi 1 H1= 25m =1.85 t/m3 F2 V2 =400 m/s S2 h2 =0.02 h1 0.01 0.02 0.05 23 24 小千谷市内の強震記録(2004年新潟県中越地震) JMA 小千谷 PGA= 898cm/s2 計測震度 6強(6.3) 水仙の家(SSI) PGA= 808cm/s2 計測震度 6強(6.1) K-NET 小千谷 PGA=1314cm/s2 計測震度 7(6.7) 26 表層地盤の地震応答解析例 2004年新潟県中越地震 新潟県小千谷市 25 JMA小千谷 地 表 か ら 3m 程 度 ま で の 表層地盤のS波速度(VS) が大きく異なる。 K-NET小千谷 VS 小 JMA小千谷 VS 大 0.6 震源:新潟県中越地方 マグニチュードMJ5.3 震度4 K-NET小千谷 0 0.4 PGA 0.34 m/s2 加速度 (m/s2) K-NET小千谷 各強震観測点の余震記録 水仙の家 -0.6 0.6 PGA 0.46 m/s2 水仙の家 震度3 PGA 0.20 m/s2 5 10 15 0.2 0.1 0 -0.6 0 K-NET JMA 水仙の家 0.3 震度3 JMA小千谷 0 -0.6 0.6 フーリエスペクトル (m/s2・s) 強震観測点の地盤構造 20 0 0 5 10 振動数 (Hz) 時間 (s) 解放基盤面 27 振幅が比較的小さいので地盤の非線形性の 影響が小さい→地盤を線形弾性体と仮定 28 地盤の周波数応答解析 表層地盤の地震応答解析 入力地震動 水仙の家 XB 砂礫層 岩盤層(基盤) 地盤の理論 伝達関数 基盤露頭波XBを砂礫層の下部に入力し、 周波数応答解析を行い 地表での地震動XSを求める。 29 地震応答解析結果 0.6 K-NET小千谷 加速度 (m/s2) 0 -0.6 0.6 観測 0.34 解析 0.33 JMA小千谷 0 -0.6 0.6 PGA (m/s2) 観測 0.46 解析 0.48 水仙の家 0 PGA (m/s2) -0.6 0 観測 0.20 5 10 15 フーリエ逆変換 周波数領域 フーリエ変換 表層地盤 XB 応答加速度波形 時間領域 K-NET小千谷 JMA小千谷 XS 20 時間 (s) 31 入力地震動の フーリエスペクトル (振幅・位相) 地盤の伝達関数 (複素数) 地表応答の フーリエスペクトル (振幅・位相) 30
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