適応信号処理レポート課題 KIM DONGHYUN (24A12035) 平成 26 年 1 月 30 日 問題1 チャネル行列 H が次に与えられる 2 × 2 の MIMO システムに関して以下の問いに答えよ. [ ] 1/2 √ 3/2 1 H= 0 (1.1) (a) 送信信号行列 S が次に与えられる直交 STBC を用いたとき, 受信機において STBC 復号を行った後の SNR を求め, その値を用いて通信路容量 CST BC を計算せよ. ただし総送信電力は P とし, また雑音電力 は σ 2 とする. [ S= s1 s2 −s∗2 s∗1 (解答) まずチャネル行列 H ∈ C2×2 を一般的な形 [ H11 H= H21 ] (1.2) H12 H22 ] とおいて SNR と通信路容量を計算して, それから (1.1) を代入して具体的な値を計算する. 送信信号行列 S が (1.2) で与えられる直交 STBC を用いた時, 受信信号 y は次のように表現される: [y(k) y(k + 1)] = HS + [n(k) n(k + 1)] [ ][ ] H11 H12 s1 −s∗2 = + [n(k) n(k + 1)]. H21 H22 s2 s∗1 (1.3) ここで n は雑音ベクトルである. 式 (1.3) は直行行列 He を用いて次の式 (1.4) でも書ける: e = He s + n e. y ここで y1 (k) y1∗ (k + 1) e= y y2 (k) , y2∗ (k + 1) H11 ∗ H12 He = H21 ∗ H22 H12 ∗ −H11 , H22 ∗ −H21 (1.4) [ ] s s= 1 , s1 である. He が直交行列であることは易しく確認できる. つまり [ HH e He |H|2F = 0 である. ここで | · |2F は Frobenius ノルム, つまり |H|2F = 0 |H|2F ∑2 n1 (k) n∗1 (k + 1) e= n n2 (k) n∗2 (k + 1) ] i,j=1 |Hij |2 を表す. ZF detection を行ったと H 2 すると, 式 (1.4) と行列 He の直交性 (H−1 e = He /|H|F ) より b e= s = H−1 e y HH HH e e e e =s+n b (H s + n ) = s + n e |H|2F |H|2F 1 (1.5) b= が成り立つ. ここで n HH e |H|2F e である. そして Effective Noise を計算してみると, n ( )( )H H H [ ] 2 H H σ2 e e = σ HH bn bH = E e e E n n n H = I2 e |H|2F |H|2F |H|4F e |H|2F (1.6) になる. ここで I2 は 2 × 2 単位行列を表す. したがって, 式 (1.5)–(1.6) より, この場合 Effective SNR γ STBC は γ STBC ∑2 2 i,j=1 |Hij | 2σ 2 P P |H|2F = = 2 Mt σ (1.7) に与えられる. この時, 通信路容量 CSTBC は Shannon の公式によって, ( CSTBC = log2 (1 + γ STBC ) = log2 1+ P ∑2 i,j=1 |Hij | 2σ 2 2 ) (1.8) が得られる. 最後に (1.7)–(1.8) に (1.1) のチャネル行列 H の具体的な数値を代入すると, γ STBC P = 2, σ CSTBC ( ) P = log2 1 + 2 σ (1.9) が得られる. (b) 送信信号ベクトル s が次に与えられる空間多重伝送を行ったとき, 受信機において ZF 復調を行った後 の各ストリームの SNR を求め, その値を用いて通信路容量 CZF を計算せよ. [ ] s s= 1 s2 (2.1) (解答) まず受信信号 y は雑音ベクトル n を用いて y = Hs + n (2.2) ( で表現される. また、ZF ウェイト W は一般的に left–pseudo inverse H+ = HH H )−1 HH で表現され ますが, 現在 2 × 2 MIMO システムであるから, 簡単に W = H+ = H−1 になる. したがって, 推定信号は b e s = H+ y = H−1 y = s + H−1 n = s + n (2.3) e = H−1 n である. Effective Noise を計算してみると, になる. ここで n ( )−1 ] [( [ )( )H ] en e H = E H−1 n H−1 n = σ 2 HH H E n になるから, i ストリームの SNR γiZF は γiZF = ( P Mt σ 2 HH H )−1 = ( P 2σ 2 HH H ii )−1 , ii 2 i = 1, 2 (2.4) で得られる. 実際に, ( H H H )−1 [ = − 23 4 3 − 23 ] 4 3 であるから, (2.4) は γ1ZF = γ2ZF = 3P 8σ 2 (2.5) になり, 通信路容量 CZF は CZF ( ) ( ) 3P ZF log2 1 + γi = 2 log2 1 + 2 = 8σ i=1 2 ∑ (2.6) になる. (c) SVD–MIMO では, チャネル行列 H を特異値展開し, 送信側では右特異行列 V を, 受信側では左特異 行列 U を用いることで直交伝搬路を構築する. この SVD–MIMO の送信ウェイト V および受信ウェイト U を実際に求め, 実現される各モードの SNR を計算し, その値を用いて通信路容量 CSV D を計算せよ. (解答) まず Rr := HHH の固有値 ξi を求める. [ √ ] ( )( ) 5 3 3 ξ −√ 54 − 43 det (ξI − Rr ) = det = ξ− ξ− − =0 3 3 4 4 16 ξ−4 − 4 を満たす ξ は ξ1 = と [− 12 √ 3 T 2 ] 3 2 と ξ2 = 1 2 である. ξ1 と ξ2 に対応する大きさ 1 の固有ベクトルはそれぞれ [ なので左特異行列 U は [√ U= 3 2 1 2 1 − √2 √ 3 2 1 T 2] ] 3 2 になる. また, Rt := HH H の固有値 ηi を求める. [ det (ηI − Rt ) = det ] 1 η − 1 − 12 = (η − 1)2 − = 0 − 12 η−1 4 3 1 2 と η2 = 2 である. 同じように η1 と η2 に対応する大きさ [− √12 √12 ]T で計算される. したがって右特異行列 V は を満たす η は η1 = れ [ √12 √1 ]T 2 と [ V= √1 2 √1 2 − √12 1 の固有ベクトルはそれぞ ] √1 2 になる. ここで U と V は UH U = I, VH V = I を満たす. 最後に固有値行列 Λ と Σ を [3 Λ= 2 0 0 1 2 [√ ] , 1 2 Σ=Λ = 0 3 2 ] 0 √1 2 で定義すると, Rr = HHH = UΣVH VΣUH = UΣ2 UH = UΛUH , Rt = HH H = VΣUH UΣVH = VΣ2 VH = VΛVH が成り立って, H は H = UΣVH 3 で分解される. これを用いると受信信号 y は e (t) = Σs(t) + n e (t) y(t) = UH HVs(t) + UH n(t) = UH UΣVH Vs(t) + n で表現できる. したがって各モードの SNR γi は次のようになる: ( ) 3 λ1 P 3P 第 1 固有モード λ1 = : γ1SVD = 2 = 2 σ 2σ 2 ( ) 1 λ2 P P 第 2 固有モード λ2 = : γ2SVD = 2 = . 2 σ 2σ 2 (3.1) (3.2) したがって, 通信路容量 CSVD は CSVD ) ( ) ( ) ( 3P P λi P = = log2 1 + 2 + log2 1 + 2 log2 1 + 2σ 2 4σ 4σ i=1 2 ∑ (3.3) で求められる. (d) 上記 (a), (b), (c) で求めた CST BC , CZF , CSV D をグラフにプロットし, その特徴を比較考察せよ. た だしグラフのよこ横軸は γ = P/σ 2 としその範囲は適宜選択せよ. (解答) 式 (1.9), (2.6), (3.3) で求めた通信路容量を γ = P/σ 2 の関数として書くと, ( ) ( ) ( ) 3 3 1 CSTBC (γ) = log2 (1 + γ) , CZF (γ) = 2 log2 1 + γ , CSVD (γ) = log2 1 + γ + log2 1 + γ 8 4 4 となる. 図 1 に横軸を γ として, これらをプロットした. 10 CSTBC CZF CSVD Channel Capacity @bitsHzD 8 6 4 2 0 0.1 0.5 1.0 5.0 10.0 Γ = PΣ2 50.0 100.0 図 1 STBC, ZF, SVD を用いた時それぞれの通信路容量 4 図 1 を観察してみると十分大きい γ に対しては CSTBC ≪ CZF < CSVD であることが分かる. ただし, 小さい γ (γ ≤ 16 9 ) に対しては STBC の通信路容量が ZF の通信路容量より 大きくなる. (e) チャネル行列が偶然 H′ であったとき STBC, ZF, SVD–MIMO の特性の優劣はどの様に変化するか定 性的に考察せよ. √ ] [ √ 1/√2 −1/√ 2 H = 1/ 2 1/ 2 ′ (5.1) (解答) (a), (b) と同じように STBC, ZF, を用いた時の通信路容量を計算してみると, ( ) ) ( P P CSTBC = log2 1 + 2 , CZF = 2 log2 1 + 2 2σ 2σ になる. また, SVD–MIMO の場合, チャネル行列 H′ がユニタリー行列, つまり H′ H′H = H′H H′ = I で あるから, H′ = UΣVH = H′ I IH で分解できる. この場合二つの固有モードの SNR, γ1SVD , γ2SVD は同じく γ1SVD = γ1SVD = P σ2 となり, 通信路容量 CSVD は問題 (c) と同じステップより ( CSVD = 2 log2 P 1+ 2 2σ ) (5.2) で求められる. 即ち, この場合には CSTBC < CZF = CSVD になり, こういう特殊なチャネル行列に対して は, SVD–MIMO の通信路容量と ZF の通信路容量が等しくなる. 問題 2 本講義ご後半の感想を書いて下さい. 来年度の参考にします. (解答) 大学院に進学してから工学研究科の授業は今回がはじめでした。理学研究科で応用数学を専攻して いますが、自分の研究領域を広くしたいと思って、基礎工学研究科や工学研究科の授業も単位を申請する ようになりました。工学研究科事務室には聞いてみましたが、担当先生に受講申請の前あらかじめご連絡 差し上げなくて、本当に申し訳ございません。授業の内容は僕にとって少し難しかったと思いますが、レ ポート問題を解きながら内容が少しずつ理解できるようになりました。授業ありがとうございました。宜 しくお願いいたします。 参考文献 [1] 阪口啓, 適応信号処理講義資料. [2] 三瓶政一, 適応信号処理講義資料. 5
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