追加的な共変量をもちいた高次元共分散行列の推定

追加的な共変量をもちいた高次元共分散行列の推定
東京大・経済・院 池田 祐樹
東京大・経済 久保川 達也
1 はじめに
近年,様々なアプローチで高次元の共分散行列を推定する議論が行われている. 以下では y1 , ..., yN ∼
i.i.d. Np (µ, Σ) のとき N, p → ∞ の枠組みで Σ を推定することを考える. この問題に対する有力な
アプローチの一つは,標本共分散行列 S を高次元ファクターモデルのもとでの共分散行列へ縮小
するものである. 具体的には,yj に加えてファクター xj が観測されるとき,ファクターモデルは
yj = Bxj + uj , uj ∼ i.i.d.(0, Σu )
で与えられ,このモデルのもとで yj の共分散行列は
BCov(xj )B t + Σu
と書ける. このときの推定量を SF とすると,S を SF の方向へ縮小することを考えることになる.
Σu の代表的な例としては対角行列
Σu = D, D = diag(d11 , ..., dpp )
が考えられるが,その他様々な構造を入れることができる.
2 研究内容
ここでは,yj に加えて q 次元の追加的な共変量 xj が与えられているという上述の問題を,次のよ
うな多変量正規分布の枠組みで捉えることから始める.
(( ) (
))
( )
µ
Σ11 Σ12
yj
,
∼ i.i.d. Np+q
ν
Σ21 Σ22
xj
このとき, xj を与えたときの yj の条件付き分布は
yj = Σ12 Σ−1
22 xj + uj , uj ∼ i.i.d. Np (0, Σ11·2 )
となる. 従って,Σ11·2 = D という構造をいれると,ファクターと誤差項に正規性を仮定した上述
のファクターモデルに対応することがわかる. そこで本発表では, D を Σ11·2 の対角行列とし,そ
ˆ として,Σ11 の推定量のクラス
の推定量を D
ˆ 11 = wS11 + (1 − w)SF , SF = S12 S −1 S21 + D
ˆ
Σ
22
を考える. このとき最適なウエイト w を求め,Ledoit and Wolf (2004), Kubokawa and Srivastava(2013)
と同様,ウエイトに (n, p) 一致推定量を plug-in した推定量を提案し,その漸近的な最適性とリス
クについて議論する.
参考文献
[1] Kubokawa, T. and Srivastava, M.S. (2013). Optimal Ridge-type Estimators of Covariance Matrix in
High Dimension. Discussion Paper Series, CIRJE-F-906.
[2] Ledoit, O. and Wolf, M. (2004). A well-conditioned estimator for large-dimensional covariance
matrices. J. Multivariate Analysis, 88, 365-411.