特集 付加価値向上と適用分野の拡大へ 金型・部品製作における放電加工の新たな活用技術 機能解説 4 離型性に優れる加工条件開発と グラファイト電極の応用事例 ㈱牧野フライス製作所 江 田 勝* 形彫り放電加工には常に加工時間の短縮、高精度、 スファー成形が一般的である。しかし、エポキシ樹脂 電極消耗の低減が求められる。近年では放電痕の形状 は粘着性が高いため、金型へ付着しやすいという問題 を改良し、放電加工面に機能性をもたせることがさら 点がある。成形を繰り返しているうちに、金型へ付着 に求められてきている。また、めざましい発展を遂げ した樹脂が原因で離型性や成形品の外観の悪化につな ている医療分野でも放電加工を利用する事例が多く見 がる。これを防ぐため、作業者は定期的に成形作業を 受けられるようになってきた。 中断して金型の洗浄作業を行う必要がある。つまり、 本稿では、付加価値の向上と適用分野の拡大をテー マに、半導体向け封止金型を事例として放電加工面に 機能性を付加したフラワーパターンを、医療用品向け いかに金型洗浄作業の周期を延ばせるかが、生産性の 向上につながる。 成形中には放電痕 1 穴ごとに樹脂が残留していく。 金型の事例として脛骨ベースプレートの樹脂型を紹介 Ra(算術平均粗さ)や Rz(最大高さ)などの高さ方 する。 向の粗さパラメータが同じ場合、RSm 値が小さいと フラワーパターン 1 つの放電痕は小さくなり、加工面に存在する放電痕 の数は多くなる(図 1) 。逆に RSm 値が大きいと 1 IC モールドなどの半導体で用いられる封止金型で つの放電痕は大きくなり、加工面に存在する放電痕の は、放電加工で得られた加工面は磨きを行わず、その 数は少なくなる(図 2)ため、全体での樹脂の残留が まま成形される。そのため、ピンホールの少ない均一 少なくなり、金型洗浄の間隔は延びる。 な表面粗さの加工面が要求される。さらに最近では、 2.表面粗さの種類 良好な離型性を長く持続させるために RSm 値(粗さ Ra や Rz の違いで、成形品の面品質は大幅に変わ 曲線要素の平均長さ)の大きな加工面も要求される。 る。成形面へ施されるレーザー刻印が浮き立つように RSm 値が大きい放電痕は花の形に似ていることから、 粗い表面粗さが求められることもあれば、刻印が行え この加工面を当社ではフラワーパターンと呼ぶことと ないような小さな半導体の場合には、より細かい表面 した。 粗さが求められる。これらの幅広い表面粗さの要求に 1.フラワーパターンの効果 半導体の封止では、エポキシ樹脂を使用したトラン 応えるため、Ra が 0. 2∼2. 6μm の範囲で加工条件を 開発した。すべての表面粗さにおいて RSm 値は 100 μm を超えていることが望ましい(表 1) 。 * Masaru Eda : MAKINO ASIA PTE LTD Research & Development EDM Technology Development・Principal Engineer 〒629649 2 GUL AVENUE SINGAPORE TEL(+65) 6861−5722 058 3.フラワーパターン加工事例 図 3、表 2 は半導体モールドのフラワーパターン の加工事例である。この事例では 1 つの電極で 35 カ 所のキャビティを同時に加工した。各キャビティ間で、
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