機能解説

特集
付加価値向上と適用分野の拡大へ
金型・部品製作における放電加工の新たな活用技術
機能解説
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離型性に優れる加工条件開発と
グラファイト電極の応用事例
㈱牧野フライス製作所 江 田
勝*
形彫り放電加工には常に加工時間の短縮、高精度、
スファー成形が一般的である。しかし、エポキシ樹脂
電極消耗の低減が求められる。近年では放電痕の形状
は粘着性が高いため、金型へ付着しやすいという問題
を改良し、放電加工面に機能性をもたせることがさら
点がある。成形を繰り返しているうちに、金型へ付着
に求められてきている。また、めざましい発展を遂げ
した樹脂が原因で離型性や成形品の外観の悪化につな
ている医療分野でも放電加工を利用する事例が多く見
がる。これを防ぐため、作業者は定期的に成形作業を
受けられるようになってきた。
中断して金型の洗浄作業を行う必要がある。つまり、
本稿では、付加価値の向上と適用分野の拡大をテー
マに、半導体向け封止金型を事例として放電加工面に
機能性を付加したフラワーパターンを、医療用品向け
いかに金型洗浄作業の周期を延ばせるかが、生産性の
向上につながる。
成形中には放電痕 1 穴ごとに樹脂が残留していく。
金型の事例として脛骨ベースプレートの樹脂型を紹介
Ra(算術平均粗さ)や Rz(最大高さ)などの高さ方
する。
向の粗さパラメータが同じ場合、RSm 値が小さいと
フラワーパターン
1 つの放電痕は小さくなり、加工面に存在する放電痕
の数は多くなる(図 1)
。逆に RSm 値が大きいと 1
IC モールドなどの半導体で用いられる封止金型で
つの放電痕は大きくなり、加工面に存在する放電痕の
は、放電加工で得られた加工面は磨きを行わず、その
数は少なくなる(図 2)ため、全体での樹脂の残留が
まま成形される。そのため、ピンホールの少ない均一
少なくなり、金型洗浄の間隔は延びる。
な表面粗さの加工面が要求される。さらに最近では、
2.表面粗さの種類
良好な離型性を長く持続させるために RSm 値(粗さ
Ra や Rz の違いで、成形品の面品質は大幅に変わ
曲線要素の平均長さ)の大きな加工面も要求される。
る。成形面へ施されるレーザー刻印が浮き立つように
RSm 値が大きい放電痕は花の形に似ていることから、 粗い表面粗さが求められることもあれば、刻印が行え
この加工面を当社ではフラワーパターンと呼ぶことと
ないような小さな半導体の場合には、より細かい表面
した。
粗さが求められる。これらの幅広い表面粗さの要求に
1.フラワーパターンの効果
半導体の封止では、エポキシ樹脂を使用したトラン
応えるため、Ra が 0.
2∼2.
6μm の範囲で加工条件を
開発した。すべての表面粗さにおいて RSm 値は 100
μm を超えていることが望ましい(表 1)
。
*
Masaru Eda : MAKINO ASIA PTE LTD Research & Development EDM Technology Development・Principal Engineer
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6861−5722
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3.フラワーパターン加工事例
図 3、表 2 は半導体モールドのフラワーパターン
の加工事例である。この事例では 1 つの電極で 35 カ
所のキャビティを同時に加工した。各キャビティ間で、