水流からのエネルギー 回収効率を高めた開水路型水車 〇長野高専 技術支援部 技術職員 佐藤 孝幸 長野高専 電気電子工学科 教授 大澤 幸造 1 日本の水力発電 日本の水資源 (資源エネルギー庁データベース 2013年3月) ○包蔵水力(4,699 地点) 最大出力 : 4,601 万kW ○既開発(1,953 地点、工事中は除く) 最大出力 : 2,790 万kW ○未開発(2,724 地点) 最大出力 : 1,899 万kW ※最大出力において、未開発は全体の4割を占める 2 従来の技術とその問題点 水力発電は、水車を用いて水の落差と流量か ら発電する方法である P = 9.8QH×ηG×ηT [kW] P:出力, Q:流量[m3/s], H:落差[m], ηG:発電機効率, ηT:水車効率 問題点 ◯水量が豊富な水源が限られる ◯高い落差を得るためには、付帯設備が大 規模となり、コストの制約を受ける ◯ダム建設による環境への影響 3 水力発電用水車 ○管路型水車:ペルトン水車、フランシス水車、 プロペラ水車、クロスフロー水車など ○開水路型水車:上掛け水車、下掛け水車など (a) 管路型水車による発電 (b) 開水路型水車による発電 図1. 発電システムの比較 4 開水路型水車の利点 1.開水路型水車は発電出力は小さいが、大規 模な付帯設備を必要としないため、建設費を 抑えられる。 2.1の理由により、設置が比較的容易である。 3.水量が少なく、落差も小さい小規模な河川や 用水の積極的なエネルギー回収を目指すこ とができる。 5 下掛け水車の特徴 1.古くから、農業用水路の動 力源として使用されている 2.小規模な河川や用水への 設置が容易なフロート型に 適用できる 回転方向 水流 図2. 下掛け水車 3.環境への影響が少ない 6 ランナ入水・離水時の損失 下掛け水車に多く使用される平板型ランナは、 ○入水時:水面にランナ前面が衝突する ○離水時:ランナ背面が水を巻き上げる ⇒回転方向と逆の力が発生(水車効率低下) 回転方向 水流 (a) 入水時 (b) 側面図 (c) 離水時 図3. 入水・離水時の損失 7 新技術の特徴 入水・離水時の水車効率低下を改善するため、 鋭角的な先端を有するランナ形状とする ○ランナの鋭角な先端部から入水するため、 入水時の抵抗が減少する ○入水後は、平板型と同様に、ランナの面全 体で流れを受ける ○離水時には、ランナ先端部からランナ背面 に空気が流入し、滑らかに排水されるため 離水時の抵抗が減少する 8 ランナ形状の比較 ◯平板型水車の寸法 外径(ローター直径)φ 300mm×幅(ランナ幅)200mm ◯三角型水車と山型水車は、平板型と同寸法とした (a) 平板型 (b) 三角型 (c) 山型 図4. 試験用水車のランナ形状 9 ランナ入水・離水時の効果 (a) 三角型入水時 (b) 山型入水時 (a) 三角型離水時 (b) 山型離水時 ※先端部が鋭角である ため、 水面からの 抵抗が減少する 図5. 入水・離水時の効果 10 試験用発電機 図6. 発電機を組み付けた水車 ○アウターローターコアレス 発電機 ○仕様 三相交流 ブラシレス 永久磁石 磁極p=32極 定格電流 1.993 [A] 定格回転数 500 [min-1] 定格電力 100 [W] 11 水車効率の算定方法 U 三相交流 発電機 V ○出力P’ 水車 W あ ○回転数N P’:出力 ρ:水の密度 A:ランナ面積 υ:流速 ηG:発電機効率 ηT:水車効率 オシロ スコープ + U V W 三相 全波 整流 回路 f:周波数 p:磁極 ○効率η + A あ V - ○水車効率ηT ○出力P V:電圧 I:電流 あ 図7. 試験用回路図 12 比較試験の様子1 図8-(a) 平板型水車の試験 図8-(b) 三角型水車の試験 13 比較試験の様子2 図9 山型水車の試験 14 試験結果1 図10-(a) 出力-負荷電流グラフおよび 回転数-負荷電流グラフ 図10-(b) 発電機効率-負荷電流グラフ 15 試験結果2 図11-(a) 水車効率-負荷電流グラフ ○水車効率ηT 図11-(b) 総合効率-負荷電流グラフ ○総合効率η 16 試験結果3 図12-(a) 出力-負荷電流グラフおよび 回転数-負荷電流グラフ 図12-(b) 発電機効率-負荷電流グラフ 17 試験結果4 図13-(a) 水車効率-負荷電流グラフ 図13-(b) 総合効率-負荷電流グラフ 18 比較試験の結果 ○最大出力において ・平板型に対する三角型の出力 約1.5倍 ・三角型に対する山型の出力 約1.2倍 ⇒平板型に対する山型の出力 約1.8倍 ○水車の最大効率において ・三角型に対する山型水車の効率が6%高くな り、山型のランナ形状の優位性が認められた 19 実用化に向けた課題 • 山型水車の最適なランナ取付け位置の検討 • ランナに流入する速度を高める装置の開発 • 流量・流速に対応した発電装置の検討 • 大出力への対応 20 想定される用途 〇発電機を含めた一体型の水力発電システム のため、独立型電源として利用される ・山間部など無電源地域の電源 ・農業用電源 ・災害時の非常用電源 〇電動機と組み合わせた高効率撹拌装置 など 21 企業への期待 • 低回転における高効率発電機の導入 • 高効率の同軸増速機構に関する技術導入 • 海洋エネルギー(海流・潮流)の回収に関する 応用技術の導入 22 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称:開水路用水車、発電装置、及び、 開水路用水車の使用方法 • 出願番号:特願2014-073435 • 出願人:独立行政法人国立高等専門学校機構 • 発明者:大澤幸造、佐藤孝幸 23 お問い合わせ先 長野高専 ・総務課研究協力・産学連携係 E-mail:[email protected] TEL. 026 - 295 – 7134 FAX. 026 - 295 - 4356 ・電気電子工学科 教授 大澤 幸造 E-mail:[email protected] 24
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