2P047 イオン液体中での一重項酸素とアミン系消光剤による消光反応速度 定数の測定 (東工大院理工)○加藤舞,吉田剛,河合明雄 Measurement of quenching rate constants of singlet oxygen by amines in ionic liquids ( Tokyo Tech) ○ Mai Kato, Tsuyoshi Yoshida, Akio Kawai 【序】イオン液体はアニオンとカチオンからなる室温で液体として存在している有機化合 物塩であり、従来の分子性溶媒と大きく異なる物性を持つ。例えば、イオン液体中での溶 質 分 子 間 の エ ネ ル ギ ー 移 動 や 電 子 移 動 に よ る 二 分 子 消 光 速 度 定 数 が Stokes-Einstein の 式 を 元に理論計算した拡散速度定数より数倍大きい事が報告されており、並進拡散に対する溶 媒 効 果 が 分 子 性 溶 媒 と は 異 な る こ と が 示 唆 さ れ て い る 。 [1-3] 本 研 究 室 で は 、 代 表 的 な 活 性 酸 素 の 一 種 で あ る 一 重 項 酸 素 1 O 2 ( 1 Δ g )を 励 起 分 子 の モ デ ル と し て 、イ オ ン 液 体 中 に お け る 寿 命へのアニオンによる影響等を研究してきた。このような実験では、一重項酸素の燐光強 度はイオン液体に依存して著しく強度が異なっており、アニオンによる電荷移動消光が示 唆されていた。本研究では、光増感反応により生成した一重項酸素とアミン系消光剤によ る消光速度定数を測定し、電荷移動を伴う消光反応に対するイオン液体の影響の解明を目 的とした。 【 実 験 】 イ オ ン 液 体 [P y 1 4 ][Tf 2 N](Chart.1 )中 に 光 増 感 剤 で あ る ロ ー ズ ベ ン ガ ル (Chart.2)お よ び 一 重 項 酸 素 の消光剤を溶解し、試料とした。消光剤としては、 [Py 1 4 ] + ア ミ ン 系 の ト リ エ チ ル ア ミ ン (TEA),1,4-ジ ア ザ ビ シ ク ロ [2.2.2]オ ク タ ン , ト リ -n-ブ チ ル ア ミ ン , N,N-ジ Chart.1 [Tf 2 N] 使用したイオン液体 エ チ ル ア ニ リ ン ,2,2,6,6 -テ ト ラ メ チ ル ピ ペ リ ジ ン を 使 用 し た 。ま ず 光 増 感 反 応 に よ り 一 重 項 酸 素 を 生 成 し 、そ の 寿 命 を a 1 Δ g →X 3 Σ - g 光 遷 移 に 伴 う 近 赤 外 領 域 の 燐 光 強 度 (1275 nm)の モ ニ タ ー に よ り 測 定 し た 。次 に 消 光 速 度 定 数 k Q を 決 定 す る た め に 、サ ン プ ル 中 の 消 光 剤 濃 度 を 変 え 、 そ れ ぞ れ の 寿 命 を 測 定 し 、そ の 結 果 を Stern-Volmer プ ロ ッ ト し た 。 励 起 光 源 に は ナ Chart.2 ローズベンガル ノ 秒 Nd : YAG レ ー ザ ー 第 二 高 調 波 (532 nm)を 用 い 、 測定はすべて室温、空気飽和条件で行った。 Chart.3 電 荷 移 動 を 伴 う 1O2 消 光 反 応 【 結 果 と 考 察 】 Fig.1 に [Py 1 4 ][Tf 2 N] 中 で の 一 重 項 酸 素 燐 光 の 時 間 減 衰 を 消 光 剤 ( こ こ で は TEA)の 濃 度 を 変 え た サ ン プ ル に 対 し て 測 定 し た 結 果 を 示 し た 。 こ れ ら の 減 衰 は 全 て 単 一 指 数 減 衰 を 示 し た た め 、消 光 剤 に よ る 擬 一 次 反 応 を 想 定 す る こ と で 減 衰 速 度 定 数 を 決 定 し た 。 Fig.2 は 、 解 析 で 得 た 減 衰 速 度 定 数 を 消 光 剤 の 濃 度 に 対 し て Stern-Volmer プ ロ ッ ト し た も の ln(Intensity@1275nm) /a.u. で あ る 。直 線 解 析 の 結 果 か ら TEA に よ る 一 重 項 酸 素 の 消 光 速 度 定 数 の 値 を k Q =(1.70±0.05)×10 8 M - 1 s - 1 と 決定した。 アミン系消光剤と一重項酸素の消光機構には電 荷移動とエネルギー移動の 2 種類が考えられるが、 振 動 準 位 の 電 子 の エ ネ ル ギ ー 移 動 は 約 10 1 0 M - 1 s - 1 と 測 定 さ れ た k Q よ り 速 い た め [ 4 ] 、今 回 の 消 光 反 応 で は 0mM 0.28mM 0.56mM 0.84mM 1.1mM 1.4mM 0 20 40 電 荷 移 動 を 伴 う こ と が 言 え る (Chart.3)。 ま た 、 電 荷 移動消光では消光剤から一重項酸素へと電子が移 60 80 Time /μ s [P y 1 4 ][Tf 2 N]/ ロ ー ズ ベ ン ガ ル Fig.1 動 す る た め 、消 光 剤 の 酸 化 電 位 が 低 い ほ ど 反 応 が 進 サンプル中の一重項酸素時間減衰の 行 し や す い 。 Fig.3 に は 、 [Py 1 4 ][Tf 2 N]中 で の 各 ア ミ TEA 濃 度 依 存 性 ン 系 消 光 剤 に よ る 消 光 反 応 速 度 kQ の 対 数 を 消 光 剤 分子の酸化電位 に対してプロットしたも 25 の を 示 し た 。[ 5 - 7 ] こ こ で 2,2,6,6 -テ ト ラ メ チ ル ピ ペ リ の大きさに依存し て 変 化 す る こ と が わ か る 。 こ の こ と か ら 、 /104[s-1] 見 ら れ る こ と か ら 、k Q が -1 プ ロ ッ ト 点 は 、ば ら つ き が 大 き い も の の 比 例 関 係 が 20 15 10 τ ジンの酸化電位にはピペリジンのものを代用した。 5 [Py 1 4 ][Tf 2 N] 中 で の 消 光 反 応 に お い て 電 荷 移 動 相 互 0 0.0 作用が関与している可能性が高いと考えられる。 0.5 1.0 1.5 TEA[mM] 討 論 会 で は ア ミ ン 系 消 光 剤 に よ る kQ の 測 定 結 果 [P y 1 4 ][Tf 2 N]/ ロ ー ズ ベ ン ガ ル を 増 や し 、 Rehm-Weller 式 に 再 配 向 エ ネ ル ギ ー の 補 Fig.2 正 を 加 え た 系 の 自 由 エ ネ ル ギ ー 変 化 ΔG か ら 、 一 重 /TEA サ ン プ ル に お け る 一 重 項 酸 素 項酸素とアミン系消光剤の電荷移動を伴う消光反 寿 命 の Stern-Volmer プ ロ ッ ト 応メカニズムについて議論する予定である。 9 8 logkQ 【文献】 [1] McLean, A. J.; Muldoon, M. J.; Gordon, C. M.; Dunkin, I. R., Chem. Commun., 2002, 1880 [2] Skrzypczak, A.; Neta, P., J. Phys. Chem. A, 2003, 107, 7800 [3] Liang, M.; Kaintz, A.; Baker, G. A.; Maroncelli, M., J. Phys. Chem. B, 2012, 116, 1370 7 6 5 [4] C. Schweitzer, R. Schmidt, Chem. Rev. 2003, 103, 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1 1.2 1.3 Eox [V] 1/2 1685 [5] G.Porcal, S.G.Bertolotti, C.M.Previtali, M.V.Encin , Phys. Chem. Chem. Phys ., 2003, 5, 4123 [6] S.Yasui, M. Tsujimoto, K. Itoh, A. Ohno, J. Org. Chem. 2000, 65, 4715 [7] Daniel G. Nocera, Harry B. Gray., J. Am. Chem. S oc. 1981, 103, 7349 Fig.3 [P y 1 4 ][Tf 2 N]中 で の 一 重 項 酸 素 の消光速度定数と消光剤分子の酸化 電位の依存性
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