磁気損失性媒質中の伝搬定数
科
v1.1f Jul.2014
1. 磁気損失媒質中の波動方程式
√
α = ω µε
が,今度は媒質の磁気導電率が σ ∗ [R/m] の場合を考えると
⃗ = jωεE
⃗
∇×H
(1)
∗⃗
⃗
⃗
∇ × E = −jωµH − σ H
(2)
となる。式 (1) の両辺に ∇× を掛けて,右辺に式 (2) の関係を使うと
⃗ = jωε∇ × E
⃗
∇×∇×H
(
)
⃗ − σ∗ H
⃗ = ω 2 µεH
⃗ − jωεσ ∗ H
⃗
= jωε −jωµH
(3)
2β 2 = ωε
σ∗
γ = −ω µε 1 − j
ωµ
)
(
,
γ = ±jω
σ∗
µε 1 − j
ωµ
⇒ ω 2 µε
√
β = ω µε
√
⇒ ω 2 µε
1+
(
σ∗
ωµ
)2
−ω 2 µε = ω 2 µε


1+
(
σ∗
ωµ
)2
(23)

(
σ∗
)2
ωµ
+ω 2 µε = ω 2 µε
√


(
1+
σ∗


)2
ωµ
+ 1 (24)
 √

1
2
(
1+
σ∗

1
2
)2
ωµ
+1
(25)

√
ωεσ ∗
2
で近似され,同様に式 √
(25) より
√
√
1 σ∗
ωεσ ∗
=
β ≃ ω µε
2 ωµ
2
1 σ∗
=
2 ωµ
(26)
(27)
で近似できることが分かる。従って,伝搬定数
γ√
は次式となる。
√
√
(8)
γ = α + jβ =
ωεσ ∗
+j
2
ωεσ ∗
= (1 + j)
2
ωεσ ∗
2
(28)
3. 表皮厚み
式 (28) から明らかなように,磁気良導体中に電磁界が侵入したと
き,その振幅は e−αz で減衰してゆく。磁気導体表面の振幅に対して,
その大きさが 1/e = 0.368 (36.8 %) まで減衰するのに必要な距離
z = 1/α を磁気表皮厚み (magnetic skin depth) と呼ぶ。即ち,磁
気良導体の磁気表皮厚みは次式で近似計算することができる。
√
δS =
1
=
α
2
ωεσ ∗
(29)
4. 良磁気導体中の波動インピーダンス
次に磁気良導体中の波動インピーダンスを求めてみる。簡単のために
z 方向に進む Ex , Hy の平面波セットを考えると,アンペアの法則
⃗ = jωεE
⃗
∇×H
(30)
において,∂/∂x = ∂/∂y = 0, Ey = Ez = Hx = Hz = 0 より
1 ∂Hy
Ex = −
(31)
jωε ∂z
の関係が得られる。仮に Hy の一般解を式 (10) と同じようにおくと,
式 (31) から Ex は次のように求まる。
)
(
)
1 (
Ex = −
(32)
−γAe−γz + γBeγz = η Ae−γz − Beγz
jωε
ただし,η は磁気損失性媒質の波動インピーダンスで次式となる。
γ
η=
(33)
jωε
ここで,式 (28) の磁気良導体の伝搬定数 γ を式 (33) に代入すると,
次式のように波動インピーダンス
√ η が複素数となる。
√
1 + j ωεσ ∗
σ∗
1−j ∗
η=
= (1 − j)
=
σ δS
(34)
jωε
2
2ωε
2
式 (34) は,磁気良導体中の電界 E と磁界 H の位相差が π/4 = 45◦
であることを示している。
(21)
√
−1
ωµ
ω 2 µ2 + σ ∗2 + ω 2 µε
1+
√
α ≃ ω µε
∂ 2 Hy
− γ 2 Hy = 0
(9)
∂z 2
となり,式 (9) の一般解を仮に
Hy = Hy + + Hy − = Ae−γz + Be+γz
(10)
とおいて式 (9) に代入すると,式 (10) は明らかに式 (9) の解である
ことが分かる。所で,式 (8) で σ ∗ = 0 とすると
√
γ = ±jω µε
(11)
となるが,磁性損失を考慮するために複素透磁率 µ˙ (complex permeability) を導入すれば
(
)
µ′′
′
′′
′
µ˙ = µ − jµ = µ 1 − j ′ = µ′ (1 − j tan δ)
(12)
µ
と置くことができるので,これを式 (11) に代入すれば
√
γ = ±jω µ′ ε (1 − j tan δ)
(13)
となることが分かる。式 (8) と式 (13) を比べると
σ∗
µ′′
= ′ = tan δ
(14)
ωµ
µ
の関係があり,磁気導電率を角周波数で割った磁気導電損失項 σ ∗ /ω
と磁気損失 µ′′ は類似していて区別できないことが分かる。
2. 磁気損失媒質の α と β の導出
さて,式 (8) から減衰定数 α (attenuation constant) と位相定数 β
(phase constant) を具体的に求めてみる。
γ 2 = (α + jβ)2 = α2 − β 2 + 2jαβ = −ω 2 µε + jωεσ ∗
(15)
式 (15) の実部と虚部を比較すると,次の連立方程式が導出できる。
α2 − β 2 = −ω 2 µε
(16)
2αβ = ωεσ ∗
(17)
2
2
ここで,式 (16) と式 (17) をそれぞれ計算すると
( 2
)2
α − β 2 = ω 4 µ2 ε 2
(18)
4α2 β 2 = ω 2 ε2 σ ∗2
(19)
となる。式 (18) + 式 (19) より
(
)
α4 + β 4 + 2α2 β 2 = ω 2 ε2 ω 2 µ2 + σ ∗2 = (α2 + β 2 )2
(20)
ω 2 µ2 + σ ∗2
が得られる。最後に式
(16) + 式 (27) より
√
2
2
2
∗2
2α = ωε ω µ + σ − ω 2 µε

1+
1
2
)2
σ∗
良磁気導体の条件,σ ∗ √
≫ ωµ 即ち,σ ∗ /ωµ ≫ 1 のとき式 (23) より
となる。簡単のため式 (7) を 1 次元のスカラー波動方程式で考えると
α2 + β 2 = ωε
(
従って,位相定数 β は次式となる。
)
となる。従って,
√
1
2
√
⃗ = ∇(∇ • H)
⃗ − ∇2 H
⃗
∇×∇×H
(4)
⃗ = 0 より
を適用すると,µ∇
•
H
)
(
∗
⃗ = ω 2 µε 1 − j σ
⃗
−∇2 H
H
(5)
ωµ
したがって,次式
( (6) の磁気損失性媒質の波動方程式が導出できる。
)
σ∗ ⃗
2⃗
2
∇ H + ω µε 1 − j
(6)
H=0
ωµ
ここで次式 (7) のように γ を使って式 (6) を書き換える。
⃗ − γ2H
⃗ =0
∇2 H
(7)
式 (6) と式 (7) の比較より
√
(
 √

となる。同様にして,式
(27) − 式 (16) より
√
となる。さらに,式 (3) 左辺に次のベクトル公式
2
番 氏名:
従って,減衰定数 α は
これまでは無損失の場合と電気導電率 σ [S/m] の場合を扱ってきた
2
年


− 1 (22)

1