小規模建築物の地盤補強用極細径鋼管の支持力評価

日本建築学会大会学術講演梗概集
(関東) 2011 年 8 月
20294
小規模建築物の地盤補強用極細径鋼管の支持力評価
その 3 摩擦抵抗確認用の鉛直載荷試験結果
正会員
同
小規模建物
鉛直載荷試験
地盤補強
座屈耐力
○長坂光泰*1 真島正人*1 長尾俊昌*2
高田 徹*1 石井祐子*1 小川侑子*1
極細径鋼管
鉛直支持力
における鋼管の軸力分布を示す。また,図 5 に図 2~図 4
1.はじめに
本報その 3 では,その 2 に引き続き,細径鋼管の施工
の各深度の軸力差より求めて区間摩擦応力度と載荷荷重
直後及び 4 週後に実施した鉛直載荷試験結果について報
ついては降伏に達していなものが多い。特に,L = 12 m の
告する。
鋼管においてこの傾向が強いが,図 2,表 1 から明らかな
2.荷重-沈下量関係
図 1 に施工直後と 4 週後の載荷荷重-鋼管頭部沈下量(P-
ように,P - S 関係が極限状態に達していないためである。
S)関係を,表 1 に最大荷重 Pmax を一括して示す。これら
SWS 試験の抵抗値が深さ方向に一定1)となるような地盤
の結果によれば,4 週後の Pmax は施工直後の値を 1.3~3
でも,深い位置ほど摩擦抵抗が大きくなっている。
倍程度上回っている。ただし,載荷能力の都合で,全 12
試験中 5 試験で極限荷重に達する前に試験を終了してい
4.載荷試験結果と計算値の比較
載荷試験による最大荷重 Pmax 時の軸力分布と文献 1 に
るので,この点を考慮すると,施工直後に対する 4 週後
示した各種地盤調査・土質試験結果(BO,SWS,CPT)
の極限支持力の伸びは更に大きいと予想される。
より計算した軸力分布を図 6 に示す(施工 4 週後,L = 12
3.鋼管の軸力分布と区間摩擦応力度
図 2~図 4 に,施工 4 週後の載荷試験による各荷重段階
m)。また,施工直後及び 4 週後の載荷試験による Pmax 時
荷重P(kN)
0
10
20
30
0
40
荷重P(kN)
20
10
6
8
10
0
10
20
4週後
2
4
6
8
沈下量S(mm)
4
6
8
5
10
4週後
6
直後
8
35.1
26.9
32
16
40.1
30.4
22.1
4.6
7m
8
C‐12m
12m
B
5
10
15
7m
20
C
4週後
4
7m
直後
備考
非極限
非極限
非極限
極限
非極限
極限
非極限
極限
極限
極限
極限
36
20
19.5
14
12m
極限
6
8
10
12
P max(kN)
A
6
2
4
鋼管長
12m
C‐7m
B‐7m
12
記号
直後
4
12
20 0
0
15
10
A‐7m
40
表 1 載荷試験結果一覧
10
B‐12m
2
直後
30
2
直後
4012 0
0
30
0
10
4週後
10
A‐12m
荷重P(kN)
20
4週後
沈下量S(mm)
沈下量S(mm)
4
10
0
2
直後
0
40
沈下量S(mm)
2
沈下量S(mm)
における実測区間摩擦応力度と BO,SWS,CPT より計算
30
4週後
沈下量S(mm)
一方,各試験結果を見ると,載荷初期段階を除いて,
0
0
12
の関係を示す。図 5 によれば,深い位置の摩擦応力度に
12
図 1 載荷荷重-鋼管頭部沈下量(P-S)関係
A
0
10
軸力P(kN)
軸力P(kN)
N 値
20
0
10
20
30
40
0
10
20
30
40
2
4
6
1.99
3.96
6.06
7.91
9.94
11.92
14.01
17.87
19.94
24.12
28.05
32.00
軸力P(kN)
N 値
B
0
0
10
20
0
10
軸力P(kN)
20
30
0
10
20
2.09
4.08
4
7.96
12.07
15.92
18.05
6
20.09
22.07
3.99
11.97
12.06
15.91
20
19.99
24.10
28.05
23.95
27.95
10
32.17
32.00
36.03
35.11
12
40.08
12
図 2 荷重段階別の軸力分布(試験 A)
図 3 荷重段階別の軸力分布(試験 B)
Bearing Capacity of Slender Pipe for Ground Reinforcement
under the Small Building Foundation Part-3
― 587 ―
4.04
8.03
8
15.89
10
40
2
8.04
8
30
0
M.Nagasaka, M.Masato, T.Nagao
T.Takata, Y.Ishii, Y.Ogawa
した区間摩擦応力度の関係を図 7 に示す。ただし,BO,
0
軸力P(kN)
軸力P(kN)
N 値
C
0
10 20
10
20
30
0
10
20
30
SWS,CPT より軸力分布を計算するための摩擦応力度 fs,
fc は実測または換算 N 値,qu を次式 2)に代入して求めた。
砂質土: fs = 10N/3
(kN/m2)
粘性土: fc = qu/2
(kN/ m2)
2
3.00
6.00
9.00
4
12.00
15.00
先ず,図 6 に着目すると,試験地盤や深度によってば
16.50
6
らつきはあるものの,BO,SWS,CPT によって計算され
18.00
4.00
19.50
8.00
12.00
た軸力分布(極限支持力)は載荷試験によって得られた
8
16.00
20.00
値を下回っている。表 1 で示したように,試験 A 及び試
24.00
10
験 B は極限状態に達していないことを併せて考えれば,
28.00
32.00
計算値は安全側に評価していると見なすことができる。
36.00
12
次に,図 7 に着目すると,4 週後の載荷試験による摩擦
25
0~1.0m
20
1.0~5.0m
5.0~8.0m
15
8.0~12.0m
10
・載荷試験による極細径
摩擦応力度(kN/m2)
10
5
0
12.0 0.0
30
0
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
頭部沈下量(㎜)
10.0
12.0 0.0
40
2.0
4.0
A‐7m
30
30
25
20
15
10
注)0~1.5mは先行削孔
2.0
4.0
6.0
8.0
頭部沈下量(㎜)
10.0
鋼管の極限支持力と軸力差より計算さ
Pd(kN)
れる区間摩擦応力度は,BO,SWS,
0
z(m)
り,計算値は安全側の評価となる。
直後の値を 1.3~3.0 倍上回っており,
・SWS 試験による Wsw < 1 kN の粘
20
1.0
2.0
3.0
頭部沈下量(㎜)
4.0
15
10
5
5.0
0.0
1.0
40
0
10
Pd(kN)
20
40
0
B‐12m
2
4
4
4
8
6
8
10
10
12
12
45
限支持力を確認できなかったが,軟弱粘性土が厚く堆積
40
した地盤でも,極細径鋼管の極限支持力を BO,SWS,
35
CPT より計算しても安全側の評価となり,また,作用す
30
SWS
BO
CPT
EXP
6
SWS
BO
CPT
EXP
10
35
L=12m
載
荷 25
試
験
20
に
よ
る 15
L=7m
30
Bo‐4週
SWS‐4週
CPT‐4週
Bo‐直
SWS‐直
CPT‐直
Bo‐4週
SWS‐4週
CPT‐4週
Bo‐直
SWS‐直
CPT‐直
25
20
載
荷
試 15
験
に
よ 10
る
Pmax
Pmax=Pd
5
5
Pmax=Pd
非極限荷重
0
非極限荷重
0
0
5
10 15 20 25 30 35
地盤調査・土質試験による Pd
40
45
0
5
10
15
20
25
地盤調査・土質試験による
Pd
図 7 実測値と計算値の最大荷重(極限支持力)の比較
*1:㈱設計室ソイル
*2:大成建設㈱
40
12
10
1) 高田徹他:各種地盤調査に基づく小規模建築物用地盤物性評
価-その 1~2,2011 日本建築学会大会
2) 日本建築学会編:建築基礎構造設計指針,2001
30
8
Pmax
参考文献
20
図 6 実測値と計算値の軸力分布の比較
最後に,その 1~3 を総括すると,載荷試験により極
とを確認できた。
10
C‐12m
2
SWS
BO
CPT
EXP
5.0
0
2
6
4.0
Pd(kN)
30
0
る鉛直荷重が 30 kN 程度であれば座屈現象を生じないこ
2.0
3.0
頭部沈下量(㎜)
図 5 載荷荷重-摩擦応力度関係
30
性土が厚く堆積した軟弱地盤でも周
面摩擦抵抗は深さ方向に増加する。
20
0
0.0
A‐12m
得られる極限支持力と同等以上であ
この間に支持力が増加する。
10
注)0~1.5mは先行削孔
0
CPT より計算されるこれを積分して
・施工 4 週後の極限支持力は施工
12.0
8.0
5~7m
10
0
6.0
3~5m
25
15
5
4.0
頭部沈下量(㎜)
0~3m
4.8~6.8m
20
0
2.0
C‐7m
25
5
0.0
10.0
1.8~4.8m
3.0~5.0m
5.0~7.0m
8.0
0~1.8m
B‐7m
35
1.0~3.0m
35
6.0
頭部沈下量(㎜)
0~1.0m
ない試験ケースである。。 40
以下のようになる。
10
15
5
45
試験結果をまとめると
注)0~1.5mは先行削孔
15
20
z(m)
50
3~6m
6~12m
20
0
時には降伏に達してい
0~3m
25
25
5
下回ったものは,Pmax
5.まとめ
その 3 で示した載荷
30
摩擦応力度(kN/m2)
30
z(m)
擦応力度が同等または
30
0~1.8m
1.8~4.8m
4.8~8.3m
8.3~11.3m
B‐12m
35
注)0~1.5mは先行削孔
摩擦応力度(kN/m2)
ように,試験による摩
A‐12m
摩擦応力度(kN/m2)
図 6 を見ると明らかな
35
摩擦応力度(kN/m2)
計算値を上回っている。
図 4 荷重段階別の軸力分布(試験 C)
40
40
摩擦応力度(kN/m2)
応力度は一部を除き,
40
0
*1:Soil Design Inc.
*2:Taisei Corporation
― 588 ―
30
35