95 回薬剤師国家試験 問4 化合物が、括弧内に示す項目の大小関係に関して正しく並んでいるのはどれか。2つ選べ。 1 NH 3 (塩基性の強さ) N H 2 3 4 1 2 3 N N H フェノール>m-ニトロフェノール>p−ニトロフェノール (酸性の強さ) ベンゼン>エタン>エチレン>アセチレン (炭素-炭素結合距離) 塩化アセチル>無水酢酸>酢酸エチル>アセトアミド (求核試薬、例えば OH-に対する反応速度) 解説 正:窒素の非共有電子対の電子密度が高いほど、H+ を受け取りやすいため塩基性が強くなる。ピロ リジンにおいて、窒素に結合している 2 つのアルキル基は電子供与基である。このため、窒素に電 子を与えることで窒素の非共有電子対の電子密度が高まり、アンモニアより塩基性が強くなる。 また、非共有電子対が収容される混成軌道の s 性の小さい窒素原子ほど、非共有電子対が窒素原 子より遠くに広がることができるため、H+を受け取りやすくなり、塩基性が強くなる。このため、 窒素の非共有電子対が sp3 混成軌道(=s 性 25%)に収容されているピロリジン及びアンモニアは、 窒素の非共有電子対が sp2 混成軌道(=s 性 33%)に収容されているピロリジンより塩基性が強い。 さらに、ピロール窒素の非共有電子対は、p 軌道に収容され、芳香族性に寄与しており、非局在 化しているため、H+ を受け取れず、塩基性を示さない。したがって、塩基性の強さは次のように なる。 誤:酸性の強さは、p−ニトロフェノール>m−ニトロフェノール>フェノールとなる。 化合物の酸性の強弱は、H+ を放出した後の共役塩基の安定性が大きいほど酸性は強くなる。設 問におけるニトロ基は電子吸引基であり、電子をより非局在化して共役塩基を安定化するので、ニ トロ基が結合した化合物は、酸性が強くなる。ニトロ基がパラ位にある場合、共鳴効果と誘起効果 の両方の効果で電子を吸引して共役塩基を安定化するが、メタ位にある場合には誘起効果しか働か ないため、パラ位に比べて安定化が小さい。このため、ニトロフェノールにおいてニトロ基は、メ タ位にある場合よりパラ位にある場合の方が、酸性は強くなる。 誤:炭素−炭素結合距離は、エタン>ベンゼン>エチレン>アセチレンである。 一般に炭素−炭素結合距離は、不飽和度が高いほど短くなる。また、ベンゼンの炭素−炭素結合は、 単結合と二重結合が共役しているため、通常の単結合より二重結合性を帯び、通常の二重結合より 単結合性を帯びているので、単結合と二重結合の間の結合距離であると推測できる。 次に設問における炭素−炭素の結合距離を示す。 95 回薬剤師国家試験 4 正:アシル化剤の求核試薬に対する反応性の順序は、塩化アセチル(酸塩化物)>無水酢酸(酸無水 物)>酢酸エチル(エステル)>アセトアミド(アミド)である。 問4 解答 1、4
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