DGGE法による嫌気消化液中のメ タ ン生成細菌フローラ解析

酪農学園大学ハイテクリサーチセンター事業「酪農場における物質と情報の循環J(公開シンポジウム〉
DGGE法による嫌気消化液中のメタン生成細菌フローラ解析
岡本英竜
酪農学園大学酪農学部酪農学科
農業微生物学
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l以上または酢酸に対するプロピオン酸の割合
1.いま何故家畜ふん尿のメタン発酵処理か
畜産業から排池される家畜・家禽の排池物は、
以上となると、メタン発酵が抑制的に働く
が1.4
飼養規模に見合うだけの施設の不備などから、水
などの指標を提言している。しかし、それらは発
質汚濁や悪臭などの環境汚染問題を引き起こして
酵材料や環境によって指標とした数値が当てはま
きた。このような状況を抑止するために、家畜排
らないこともあった。指標となる物質は主に微生
池物を資源とし、資源循環型の社会への移行を目
物が生み出していることを考えると、微生物学的
指すことを目的とした「環境三法」が施行された。
な解明を行うことにより、より効果的にこれらの
今後は排池物を有用な生物資源として利用し、さ
指標を利用し、メタン発酵の安定化につなげる事
らに、施設面でも汚染物質の地下浸透、空気中へ
が出来ると思われる。しかし、メタン発酵におけ
の揮散の防止など施設的改善を行っていかなけれ
る微生物学的な解明は、ほとんど行われてこなかっ
世物も貴重な生物資源(バイ
ばならない。家畜排j
た。その理由として、従来の培養法ではメタン発
オマス)であり、肥料化、燃料化など様々な分野
酵の最終段階を担うメタン生成細菌の増殖速度が
での有効利用が可能である O これらの問題を解決
非常に遅いなど、その生態を暴くには多くの時間
し、さらに、エネルギーを得ることの出来るメタ
を費やすなどの問題も関係していると思われる O
ン発酵は、今後注目される技術である。
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. DGGE法
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. メタン発酵の安定化に向けて
メタン発酵は、有機物を様々な微生物の発酵過
GGE) 法は、元来染色体 DNAの点変異検出に用
程を経て、最終的にメタン生成細菌の作用によっ
いられた技法である。この原理は、 GCクランプ
て、メタンガスを生産する方法である。
(GCに富む配列)付きプライマーセットを用いた
この発酵は、肥料効率の向上、有害種子の死滅、
PCRにより増幅された 2本鎖DNAを
、 DNA
変性
温室効果の低減など多くの有用性を生み出すこと
剤(尿素とホルムアミド)で濃度勾配をつけたポ
から、各地で家畜ふん尿処理のためのメタン発酵
電気泳動を行う
リアクリルアミドゲ、ノレ中で DNA
プラントが稼動および予定されている O しかし、
ことにより、塩基配列の違いによる変性剤に対す
バイオガスプラントが、稼動不能に陥ると、再び
る変性が、移動度に影響することを利用したもの
安定な状態を保つまでにかなりの月日がかかるた
である。この方法は、環境中の微生物から直接抽
め、その聞に排池されたふん尿処理などの 2次被
出した DNAをPCR
増幅し利用するため、微量の
害を引き起こし、すべての工程に影響が生じてし
試料からその環境中に存在する微生物の遺伝子を
まう。安定的にメタン発酵を行うために H
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lらは、
培養過程を経ずに検出できる O この点、クローニ
物質代謝のモデルを作成し、そこから ,7SO-酪酸と
法は可視化できるため、
ングと似ているが、 DGGE
,7SO吉草酸の各濃度が
北海道家畜管理研究会報,
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以上、酢酸濃度が 8
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7
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その環境中の微生物構成を容易に判断でき、環境
-38-
岡本英竜
細菌と 98%の相向性を示したバンドが検出され、
サンプルのモニタリングなどにも適している。
Cでは、牛ルーメンから分離された報告のある未
4
. 発酵温度の異なるバイオガスプラントのメタ
同定メタン生成細菌と 100%の相向性であるバン
ン生成細菌群の解析
ドが検出された。このことから発酵温度が同じで
乳牛ふん尿を材料にしている発酵温度の異なる
もプラントにより異なった細菌群構成をしている
メタン発酵消化液中のメタン生成細菌群の構成に
ことが明らかとなった。高温発酵の Dでは、他の
どのような違いが認められるのかを DGGE
法を用
温度処理を行っているプラントとは、かなり異なっ
いて検討した。
たバンドパターンを示し、特有のバンドの塩基配
試料 Aが低温発酵、試料 Bおよび Cは中温発酵
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列を決定したところ、 Meth
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mと高い相向性を示した。
であり、試料 Dが高温発酵の消化液試料である。
DGGE法から見たメタン生成細菌群構成は、低温
以上の結果から、乳牛ふん尿メタン発酵は、発
発酵の Aでは、最もシンプルなメタン生成細菌構
酵槽によって特有のメタン生成細菌が構成れるこ
成であり、検出された最も高濃度なバンドの塩基
とが明らかとなった。また、今回、酢酸利用メタ
配 列 を 確 認 し た と こ ろ 、 Meth
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ン生成細菌が検出されなかったことについては、
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iと100%の相向性であった。中温発酵 B
分析感度を高めるなど、方法の改善が課題として
および Cでは、低温発酵 Aで検出された以外にバ
残る結果となった。
ンドが検出され、 Bでは、原虫内共生メタン生成
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北海道家畜管理研究会報,第 3
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