22595 - 株式会社 呉建築事務所

日本建築学会大会学術講演梗概集
(近畿) 2014 年 9 月
22595
スケーリング・フレームを有する鉄骨骨組の終局耐震挙動と制振効果に関する研究
その 2 骨組の水平載荷試験の実験概要と実験結果
鉄骨造
制振
スケーリング・フレーム
水平載荷試験
正会員
同
同
同
骨組試験体
○谷 槙一朗*1
伊藤 拓海*2
南雲 隆司*4
島田 誓也*1
齋藤 真美*1
呉 東航*3
平田 春彦*5
同
同
同
1.はじめに
前稿(その 1)では,SF 構造の力学的特性,制振効果につ
2.3 載荷計画
載荷プログラムは漸増繰返しとする。試験体頂部の水
いて述べた。本稿(その 2)では,SF 構造を有する鉄骨骨組
平変位を制御して載荷を行った。制御変位は,層間変形
の弾塑性挙動や耐荷機構を明らかにするために,SF の有
角 1/300rad,1/200rad,1/100rad,1/75rad,1/50rad におい
無をパラメータとした骨組実験を実施したので,その実
てそれぞれ 3 回ずつ,1/30rad において 2 回繰り返した。
験概要と実験結果を報告する。引続き次稿(その 3)では,
なお,SF 有りの実験において,1/75rad の 2 ループ目で制
実験結果の詳細な分析を行い,耐荷機構や弾塑性挙動に
御に問題が生じ,同振幅では 1 ループのみとなった。
ついて考察を行う。
1800
450
450
450
2.実験概要
2.1 試験体の構成と形状
試験体の構成と寸法を図 1 に示す。梁(鋼種 SS400,
PL-4.5
PL-4.5
2×[-60×30×2.3
1350
反力フレーム
1-M16
330
□-100×100×3.2
可搬式ジャッキ
400
ひずみゲージ
PL-4.5
1-M16
2-M12
2×[-100×40×2.3)は 2 本の溝形鋼を厚さ 4.5mm のプレー
ト(鋼種 SS400)を挟み込むように組合せ,柱(鋼種
2×[-100×40×2.3
巻き込み式変位計
棒状変位計
2×[-100×40×2.3
□-100×100×3.2
450
棒状変位計
反力フレーム
SS400,□-100×100×3.2)と溶接することで剛接フレーム
としている。間柱(鋼種 SS400,2×[-60×30×2.3)はプレ
ートとボルト接合した。SF 有りの試験体において,SF は
(a)SF 有り
柱に取り付けたガセットプレート(鋼種 SS400),斜材
1800
450
450
450
PL-4.5
図 2 に SF の試験体寸法を示す。板厚 9mm の鋼材(鋼
PL-4.5
ひずみゲージ
縮小率は 10%とした。
可搬式ジャッキ
□-100×100×3.2
1350
□-100×100×3.2
鋼材(鋼種 SS400)を挟み込んで溶接して構成している。
PL-4.5
2×[-100×40×2.3
2-M12
種 SS400)から切削加工した 2 つの SF を,板厚 6.2mm の
実験で用いた試験体の鋼材の機械的性質を表 1 に示す。
450
棒状変位計
2×[-60×30×2.3
(鋼種 SS400,□-30×30×3.2)を介して柱と接合した。
反力フレーム
棒状変位計
2×[-100×40×2.3
反力フレーム
2.2 計測計画
セットアップ図を図 1 に示す。水平荷重は可搬式ジャ
ッキに内蔵されたロードセルより検出し,水平変位は梁
(b)SF 無し
に取り付けた棒状変位計から計測した。SF 有りの試験体
図 1 試験体の構成とセットアップ図
において,SF の対角線変位を計測するために斜材に巻込
み式変位計を設置した。斜材の剛性は SF に比べて大きく,
6.2
9 9
58.4
φ17
斜材の変形は無視できることを確認している。
17
R4
めた。斜材のひずみは角型鋼の中心部の表裏両面に貼付
175.3
143
127
フレームに貼付したひずみゲージから各部材の応力を求
R8
R8
8
3-4
7-8 11-12
21
22
23
8
したひずみゲージの平均値とした。図 3 の SF はゲージ番
37
53
1-2
209.3
9
図 1 にフレームと斜材のひずみゲージ貼付位置を示す。
18
19
20
5-6 9-10
13-14
15-16
24
号を見やすくするために,図 2 に示す試験体寸法とは異
なるものを用いている。
図 2 SF の構成と寸法
A study on ultimate seismic behavior and response mitigation effects of
steel framed structures with scaling-frame.
Part2 Outline of horizontal loading tests on framed test specimen
― 1189 ―
図 3 SF ゲージ貼付位置
TANI Shinichiro, SAITO Mami, ITO Takumi,
Wu Donghang, NAGUMO Takashi,
HIRATA Haruhiko, and SHIMADA Seiya
表 1 使用鋼材の機械的性質
降伏強さ
引張強さ
3.2 剛性と耐力
表 2 に初期剛性と耐力を示す。実験結果の耐力として,
破断伸び
[N/mm ]
[N/mm ]
[%]
骨組の比例限(小文字 e),general yield 法による降伏点
柱
369
449
32
(小文字 g),骨組に最初に局部座屈が発生した点,すな
間柱
350
470
37
わち上梁右端部に局部座屈が発生した点を求めた。SF あ
2
2
梁
316
458
38
りの試験体においては SF の降伏時耐力も求めた。なお
斜材
271
407
45
SF の降伏ひずみは 1,146μ である。
SF
319
469
27
図 6 に包絡曲線と各耐力点を示す。包絡曲線の求め方
は既往の研究 1)を参考にしている。
3. 実験結果
3.1 荷重‐水平変位関係
4. 結び
SF 有りの試験体と SF 無しの試験体における水平荷重
本稿(その 2)では,SF の有無をパラメータとした骨
と水平変位の関係を図 4 に示す。両試験体ともに層間変
組実験の概要や実験結果を示した。引き続き次稿(その 3)
形角の小さい範囲で紡錘型の履歴挙動を示した。また層
において,実験結果の考察を行う。
間変形角 1/50rad の 1 ループ目において上梁右端部に局部
座屈が観察された。その後,下梁右端部,上梁左端部,
水平荷重[kN]
50
下梁左端部の順に局部座屈が発生した。局部座屈の写真
を図 5 に示す。SF 有りの試験体は,層間変形角 1/75rad の
40
1 ループ目において間柱下の柱脚部に,わずかな浮き上が
30
りが確認された。
20
水平荷重[kN]
60
水平荷重[kN]
60
40
40
20
20
0
0
-20
-20
-40
-40
-60
-60
-50
-30
-10
10
30
50
比例限
general yield法
局部座屈発生
SF降伏
10
0
0
20
40
水平変位[mm]
60
(a) SF 有り
-50
-30
水平変位[mm]
-10
10
30
50
水平変位[mm]
水平荷重[kN]
50
(a)SF 有り
(b)SF 無し
図 4 水平荷重‐水平変位関係
比例限
general yield法
局部座屈発生
40
30
20
10
0
0
20
40
水平変位[mm]
60
(b)SF 無し
図 5 局部座屈発生部分(上梁右端部)
図6
包絡曲線と各耐力
表 2 初期剛性と耐力の実験結果
初期剛性[kN/mm]
変位[mm]
荷重[kN]
実験値
理論値
δe
δg
局部
座屈
SF
降伏
Pe
Pg
局部
座屈
SF
降伏
有り
1.8
2.3
7.3
25.6
32.8
2.6
14.8
35.0
38.6
5.2
無し
1.4
1.4
15.6
27.6
22.8
―
21.5
30.7
28.1
―
SF
*1 東京理科大学大学院工学研究科建築学専攻 修士課程 学士(工学)
*1Grad. Stud., Dept. of Arch., Fac. of Eng., Tokyo Univ. of Sci. *2Associate
*2 同 准教授 博士(工学),*3(株)呉建築事務所 代表 博士(工
Prof., Dep.t Arch., Fac. of Eng., Tokyo Univ. of Sci., Dr. Eng. *3 President,
学),*4 ホリー株式会社 執行役員 開発本部 本部長,*5 ホリー株式
WU Building Office Corporation,Dr.Eng., *4 G.M., Development Div.,
会社
Hory Corporation, *5 Struc. Equip. Sales Department, Hory Corporation
構造機材営業部
― 1190 ―