3 教育課題研究「学級経営」 [PDFファイル: 241.3KB]

教育課題研究「学級経営」【3年研究の2年目】
「ソーシャルスキルトレーニングプログラムの実践」
春木 純子・高橋 健・大城 美恵・中野 由紀子
「hyper-QU(より良い学校生活と友達づくりのためのアンケート 河村茂雄著)を活用して
クラスの現状を把握し、課題となるスキルを向上させるために、ソーシャルスキルトレーニ
ング(SST)プログラムを開発した。
はじめに
本研究会では、クラスや個人の実態を
把握するために、日常の教師の観察に加
えて学級集団アセスメント(hyper-QU)
を活用し、分析を行った。
そして、不登校やいじめ、暴力行為な
ど様々な課題解決の手立てとして、社会
性に着目し、クラスの課題にあったソー
シャルスキルトレーニングプログラムを
実践するとともに、新たなプログラムを
開発してきた。
また、芝浦工業大学工学部准教授 岡
田佳子先生に、hyper-QU の分析及びソー
シャルスキルトレーニングプログラムの
開発についてご指導いただいた。
研究の内容
1.学級状況分析とより良い学級づくり
研究員4名が担任している学級(小学
校6年、中学校1年・3年)で実施した
学級集団アセスメント(hyper-QU)の結
果をもとに、学級の分析を行った。
今年度は研究のスタート時に、岡田先
生から hyper-QU の概要及び分析につい
てご講義いただき、分析の視点を共通理
解して研究を進めた。
hyper-QU は、次の3つの尺度で構成さ
れている。
・
「学級満足度尺度」
・
「ソーシャルスキル尺度」
・
「学校生活意欲尺度」
この3つの尺度の中から、主に「学級
満足度尺度」と「ソーシャルスキル尺度」
の結果をもとに、児童・生徒の学級への
帰属感や個々の社会性(対人関係を円滑
にするための技術)の獲得度に関する意
識について考察した。
そして、第1回目の結果などから集団
及び個人の社会性の課題を探り、発達段
階に応じた適切なソーシャルスキルトレ
ーニングプログラムを実践し、より良い
学級づくりの研究を進めた。
2.ソーシャルスキルトレーニングプロ
グラムの開発と実践
学級状況の分析から、課題となるスキ
ルを向上させるために、研究員が次にあ
げる新しいソーシャルスキルトレーニン
グプログラムを開発した。
ターゲット
スキル
みんなでリフレーミング 自己理解
【小学校 高学年】 他者理解
No Gap
自己理解
【小学校 高学年】
セルフカウンセリング
他者理解
【中学校】
クラスの目標を考えよう きまりの
【中学校】
遵守
プログラム名
1
2
3
4
成果と課題
児童・生徒にとって、所属している学
級が居心地の良い安全で安心な場所であ
ることは、学校生活を送るうえで非常に
重要である。
集団としての規律や共有された行動様
式(ルール)と、集団内での良好で親和
的な人間関係(リレーション)が確立し
ていることが、より良い学級集団の条件
である。
学級集団アセスメント(hyper-QU)で
は、学級におけるルールとリレーション
の確立の状況を見ることができる。結果
を分析することで、データと観察のずれ
や児童・生徒の意識と現状のずれなどが
見えてきた。
学級で何か問題が起こると、どうして
も対応策に走りがちである。しかし、同
じ現象が起きても、その背景は様々であ
り、目の前の対応を急ぐだけではなく、
丁寧な情報収集によりアセスメントを行
い、仮説を立てた上で対応策を講じてい
くことが、結果的には早い解決へとつな
がっていく。
客観的な資料である学級集団アセスメ
ント
(hyper-QU)
を活用した本研究では、
教師の主観的な観察だけでなく、客観的
な視点から学級の状況を把握することで、
短期的・長期的な目標設定をし、より良
い学級づくりに向けたてだてを効果的に
考えることができた。
また、新しいソーシャルスキルプログ
ラムを検討する中で、児童・生徒に必要
なスキルが見えてきた。
ソーシャルスキルトレーニングは、実
施したその1時間で成果が見えるもので
はない。
児童・生徒に身につけさせたいスキル
を、ソーシャルスキルトレーニングを含
めた学校生活の様々な場面の中で培って
いけるような教師の意識が必要である。
また、児童・生徒のスキルの向上を進
-3-
めていくためには、ひとつの学級やひと
つの学年でソーシャルトレーニングプロ
グラムを実施するだけではなく、学校全
体で継続的かつ体系的に実施できる環境
を整備していくことが必要である。
来年度は、研究のまとめの年となる。
開発したソーシャルスキルトレーニング
プログラムの検証をおこない、先生方が
活用しやすいよう、プログラム集を発刊
予定である。