対格付き不定詞構文の歴史的発達と意味機能

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対格付き不定詞構文の歴史的発達と意味機能
大村, 光弘
人文論集. 49(1), p. 197-215
1998-07-31
http://dx.doi.org/10.14945/00001105
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対格付き不定詞構文の歴史的発達 と意味機能
1
弘
1
は じめに
現代英語には例外的格標示構文 (exceptional Casemarking construction)
と呼ばれるものが存在する。これは、埋込節中の意味上の主語が、統語的には
母型動詞 (心 理的知覚動詞)の 目的語になっている構文である。
(1)I believe[him to be honest].
この構文を持つ言語は数の うえで限られてお り、他のグルマン系言語や フラ
ンス語などのロマンス系言語には見られない。では、なぜ現代英語に例外的格
標示構文が存在するのだろうか。また、いつ頃か ら存在 しているのだろうか。
本稿では、通時的観点からこれらの疑間に回答を与える。その中心的主張とは
以下のようなものである。OE期 には、他のグルマン系言語同様、英語には(1)
のような構文は存在 しなかった。 しかし、ME期 になって、不定詞構造に(1)
の構文を許すような変化が生 じた。結果 として、現代英語に(1)の 構文が存在
している。
解説 の都合上、以下の議論 では、<母 型動詞 +対格名詞 +埋 込動詞 >と い っ
た統語形式 を持つ構文 を対格付 き不定詞構文 、 または、AI構 文 と呼 ぶ ことに
する。次節 では、本稿 で用 いる理論的枠組 みを提示す る。3節 と4節 では、不定
詞 の発達を通時的に観察するとともに、例外的格標示構文 の起源 と発生要因を
探 る。
2
枠組 み
2.1 意味 と形式 の対応
まず初 めに、本稿が採用す る理論的枠組みを解説 してお きたい。本稿 は、機
-197-
能文法 (Functional Grammar;Bolkestein(1990),Hengeveld(1987,1989,
1990,1996),etc。 )が 提案す る発話 の 階層構造 (Layered Structure of the
Utterance)に 、Hornstein(1990)の 提案す る時制理論 を融合 させた意味的
0
機能的枠組 みを考案 し、さらに、 この意味的・機能的枠組 み と近年 の生成統語
論 との融合 を図る。
上記 の機能文法 の文献 で盛んに論 じられて きているのは、発話 の基底 をなす
意味的・機能的構造が順序づ け られた階層構造 を成す とい うものである。
(2)発 話 の 階層構造 2:
(El:[(Fl:ILL(Fl))(S)(A)(Xl:[
](Xl))](El))
(el:[(fl:Predβ (fl))(xl:)](el))
(El) 創ほ(Clause)
(el) 叙iさ (Predication)
(Fl)発話内述語 (mOcutionary Predica")(fl)述 語
(Xl)命 題 (PrOposition)
(xl)名 辞
(Predicate)
(Term)
それぞれの層 は、独 自の指示対象 (designation)を もつ。
(3)各 層 の指示対象
層
(El)
(Fl)
(Xl)
(el)
(fl)
(xl)
:
指示対象
発話行為 (Speech Act)
発話内の力 (11locutiOn)
命題内容 (PrOpositional Content)
事態 (State of Affairs)
関係/特 性 (Relation/Property)
個体 (Individual)
名辞 (x)は 述語 (f)の 項 となることがあ り、 この とき、叙述層が形成 される。
叙述 は可能事態 の集合 である。 この可能事態 の集合 は時制 によって特定の事態
に限定 される。すなわち、話者力らいに描 く特定 の事態を指示す る潜在的力 を得
る。叙述 (o)は 真偽値 をもつ ことがあ り、 この とき命題層が形成 される。命題
(X)は (S)(A)と ともに発話内述語 (F)の 項 となることが あ り、 この と き発話 内
述語層が形成 さる。話者が、何 らかの伝達的状況 の下 で発話内述語層 を用 いた
-198-
ものが節 (E)で あ る。言 い換 えるならば、節 (E)と は 、発話行為 の結果 と して
の文 その ものである。
Hornstein(1990)は 、時制が発話時 (Speech time)、 基 準 時 (Reference
出来事時 (Event time)の 3要 素 か ら構成 されると考 えている。発話
の階層構造に Hornsteinの 考え方 を融合 させ 、更 に統語構造 との対応関係 を示
time)、
したものが本稿の提案す る(4)で ある。
に)統 語構造 とそ の意味機 能
:
統語構造
指示対象
1[vP V
関係/特 性
出来事時(E)
│
│
2 l"
時制構造 との対応
Infl(tenseless)
[w
L― 繋 ぎ留 め操 作
V
基準時 (R)
(R口 をEn‐ 1に 結 びつ け よ)の 適用 ―一 」
3[P Infl(tensed)[vP V
事態/命 題
時制形態素
発話時 (S)
│
│
4[cP C[P Infl(tensed)[vP V...]]]
事態/命 題 /
発話内の力/節
(4)に お い て 、VPの 存在 は出来事 時 の存在 を、Inflの 存在 は基 準 時 の 存 在 を
それぞれ意味 して い る。Inflが 非定形 の と き、埋 込節 の基 準 時 は母型節 の 出来
事 時 に連結 す る。 また、時制形態素 の存在 は時制構造 にお け る発話 時 に対応 し
て い る。
(5) a. I believe John to have told a lie。
b.
Sl, Rl, El
E2
│
R2
-199-
発話の階層構造とい う観点から見れば、VPは 関係や特性を表 し、IPは 事態
を表 している3。 IPが 独立時制を持つ ということは、主節 として用 い られ うる
ことを意味する。別の言い方をすれば、潜在的に命題 として用いることができ
ることを意味する。おそらく、発話内の力はCに 存在 していると思われるが、
このことは本稿の趣旨とは直接関係 しないので詳しい議論は避けることにする。
3 0E期 のA!構 文
3.1 データ
OE期 のAI構 文には、以下にあげた3つ のタイプが観察されている4。
タイプA: 使役 (Verbs of Causing(latan,don,etc。
(6)
ChronE 116. 10 (963)
---
)
Denison (1993: 172)
him locon pa gewrite pe Er
w@ron gefunden
and caused him look-at the writings that earlier were found
'and had him look at the writs which had been found'
& leot
(7) frCHorn I 31. 468. 20 --- Denison (1993: 172)
Swa swa 6u dydest minne bro6or his god forletan
as as you made my brother his god forsake
.
'Just as you made my brother forsake his god'
タイプB: 物理的知覚 (Verbs of Sense Perception(gehieran,geseon,etc。
(s)
2
Bed,e
4
ba
semninga gehyrdon we
21,. 322.
then suddenly
cleopian
)
----- Denison (1993: 175)
heard
pa
abbudissan
inne
hludre stefne
we the
abbess
inside
loud
voice
.
call (INF)
'then suddenly we heard the abbess calling inside in a loud voice'
-200-
タイプC: 心理 的知覚動 詞 (Verbs of Mental Perception(gdiefan,witan,etc。
)
(9)PsCa4 1(Kuhn)13.5-… … Denison(1993:176)
6orh
usic arisan
h01de mode
we
δOne
through him/whO us arise(INF)devout mind(INST)we
gelefaδ
believe
twe devoutly believe that through hiln we will rise again'
ここで注意 しておか な くて は な らな い のは 、OE期 の タイ プ C動 詞 (す な わ
ち、心理 的知覚動詞 )の AI補 文が ラテ ン語 の 翻 訳 に 限 られ てお り、 ラテ ン語
のAI構 文 の形式 をそのまま真似 た ものであ った とい うことで あ る。 この こ と
は、OE期 の心理的知覚動詞に見 られたAI補 文が、OE本 来の文法ではないこ と
を意味する (DenisOn(1993),Fischer(1988,1989,etc。 ))。 言 い換 えれば、
OE期 のAI構 文 は、タイプAと タイプBの 動詞 (す なわち、使役動詞 と物理的知
覚動詞 )の 補文 に限られていたことになる。 ここで、使役動詞 と物理的知覚動
詞 の間の意味的共通点 に着 目してみたい。その意味的共通点 とは、母型動詞に
よつて表 される行為 と埋 込動詞 によって表 される行為が同一場面 に位置づ け ら
れることである。たとえば、使役構文 を例示 した(6)と (7)で は、母型主語が埋
込主語 に対 して特定 の要求 を課 し、続 いて埋 込主語がその場 で要求 された行為
を遂行 している。言 い換えれば、埋込動詞が表す出来事が母型動詞 の表す出来
事 の一部 を成 し、全体 として 1つ の場面 を構成 していることになる。つ ぎに物
理的知覚構文に目を向けてみ よう。 (8)に おいて も、埋込動詞が表す行為 と母
型動詞が表す行為 は同一場面 で生 じている。 しか も、母型主語 は埋 込主語が大
声 で叫ぶの を直接耳にしているのであるから、これら2つ の行為は同時的である。
3.2 意味機能に基 づ く構造分析
2節 で提示 した枠組みに基づいて、OE期 の使役構文 と物理的知覚構文 を分析
してみよう。前節で述べ たように、使役動詞 と物理的知覚動詞が AI構 文 を従
えるとき、母型節が表す出来事 と埋込節が表す出来事 は同一場面で生 じてい る
とい うことが観察 される。 このことは、埋込節の表す出来事が母型節 の表す出
-201-
来事に対 して時間的 。空間的に厳 しく制約されていることを意味する。ここで、
OE期 の使役構文 と物理的知覚構文に対 して(10)を 想定 してみよう。Vlと V2と
ACCは それぞれ、母型動詞 と埋込動詞 と対格名詞句 を表 している。
001[IP Subj[1,Infl[vP Vl[vP ACC[v,V2...]]]]
埋込節 はVPで あるので、繋 ぎ留 め規則 (Hornstein(19901154‐ 156))の 適用
によって、埋込節 の出来事時E2は 母型節 の出来事時Elに 連結 される。
S,
E II E
R
llつ
(11)に 示 される時制要素 の連結関係 によつて、埋込節 の出来事が時間的
。空間
的 に主節 のそれに依存 している ことが導かれる。
4 Al構 文 の歴史的発達
4.1 0E期 の与格不定詞
4.1.1 不定詞 の歴史的発達
まず初めに、 く
不定詞 の歴史的発達〉 とい う言葉が合意す るところを明 らか
にしてお く。印欧言語 において、不定詞 は行為名詞 から次第に動詞体系 に組 み
5。
っ ま り、今 で
込 まれる方向で発達す る傾向にあることはよ く知 られている
こそ様 々な動詞的・文的特徴 をもつ不定詞 であるが、歴史 を遡れば、純然 たる
名詞 だつたのである。グルマ ン祖語 の不定詞 もやはり行為名詞であつて、対格・
与格 。属格 といつた屈折話尾 を伴 つていた。Wiight and Wright(1908:260)
は、不定詞 の属格不定詞 はOE期 までに消失 し、対格不定詞 と与格不定詞 が生
不定詞 の歴史的発達〉 とは、純然
き残 ったと述べ てい る。いずれに して も、 く
たる行為名詞 であつた不定詞が 、次第に動詞化 されてい く過程 として言 い換 え
ることがで きる。
現代英語 をみてみる と、不定詞 と呼 ばれているものには原形不定詞 と to不
定詞 の 2つ がある。前者 は対格不定詞が発達 した ものであ り、後者 は与格不定
詞が発達 した ものである。すでに述べ たように、原形不定詞 も to不 定詞 も、
-202-
行為名詞 で あ った不定詞が名詞体系 か ら動詞体系 に移行 した結果生 じた もので
あ る。後 の議論 に関わって くるので 、対格不 定詞 と与格不 定 の語尾 につ い て 、
ここで若干 の説 明 を加 えてお くことにす る。対格不 定詞 の語尾 は名詞 の対格語
尾 と同形 で あ った が 、 い わ ゅ る動詞 の無屈折形 と して位 置づ け られて い た 。
0
″Cttο れ
131:468.20-― Denison(1993:172)
Swa swa bu dydest minne broδ or his god fOrlat―
as as yOu made my
brother his god fOrsake‐
.Just as you made my brother forsake his god'
an . . .
ACC
一 方 、与格 不 定詞 の語尾 は名詞 の与格 語尾 と同形 で あ って 、対格不定詞 の語尾
と比較すると明らかに有標 (marked)で あった。
C31 Z「 0屁 .I。 142___Callaway(1913:137)
Crist, seδ
e
conl to geha)1-enne ure wunda
Christ behold came tO cure‐ DAT Our injuries
eLook!Christ caIIle to cure our iniuries'
不定詞が動詞的になればなるほど名詞体系 の特徴である格語尾の消失を意味す
るであろ うから、よ り有標な属格不定詞語尾や与格不定詞語尾から消失 してい
くことが予測される。既に述べたように、不定詞の動詞化 にともない、OE期
では既に属格不定詞が消失 していた。
では、なぜ与格不定詞が生き残 り、現代英語の to不 定詞 に発達するに至っ
たのであろうか。まずはじめに、現代英語の to不 定詞 の起源に関する仮説を
提示 したい。
C41 与格不定詞と対格不定詞の形態的区別を保持するために、格付与子とし
ての前置詞 toを 補 った形式が、to不 定詞の起源である。
つ ぎに、(14)の 仮説を支持する根拠を述べ る。OE期 の与格不定詞 は、 (13)
に示 したように、前置詞 toを 伴 っていたが、それ以前 の印欧言語では状況は
異なっていた。たとえば、ヒッタイ ト語では、前置詞を伴わない与格不定詞が
用いられていた。
-203-
0う
Hittite,K1/73 XXX 15,I,1‐ 2-‐ ― Disterheft(1989:167)
nu SALo MES ukturiya
pt women
hastiyas
lessuwanzi6
pallZi
ukturiya(DAT)bones(DAT)collect(INF)go(PR sPL)
.The women go to the ukturiya to collect bones'
印欧祖語 か ら英語に至るある派生段階 において、与格不定詞に前置詞 toを 補 つ
た形式が生 まれたと考えられ るが、 この理由 として推測 されるのは、不定詞 の
動詞化 に伴 う与格不定詞衰退の危険性が生 じたとき、意味領域 を異に していた
与格不定詞 と対格不定詞 め間の形態的区別 を保持するために、与格付与子であつ
た前置詞 toを 補 い与格不定詞語尾 を保持 しようとしたとい う ことで あ る。 そ
して、 これが to+動 詞 とい う形式の起源であ る。
では、なぜ前 置詞 toが 選 ばれたのであろ うか。考 えられる重要 な要 因 は 、
前置詞 toが 担 つていた意味領域 と与格語尾が担 つていた意味領域 との間に重
着地点 (Goal)〉
なりがあつたことである。具体的にいえば、両者が広い意味での く
を表 していた とい うことである。たとえば、(16)と (17)に あげ た to前 置詞句
はそれぞれ、 く
方向〉 と く目的〉 を表 してお り、(18)と (19)に あげた与格不定
方向〉 と く目的〉を表 している。
詞 の例 もそれぞれ、 く
α0 0rο si“ s,19,17‐ 一‐小野・ 中尾 (1980:469)
o6
he cymδ to Scirincges heale
until he came to Sciringesheal
euntil he came to Sciringesheal'
0 0rο si“ s,18,3-一 月ヽ野・ 中尾 (1980:469)
hiora hyd bi6 swibe god
their hide is
very
to sciprapum
good for ship's ropes
etheir hide is very good for the ropes of ship'
… Callaway(1913:42)
。れ。H。 346… …
圧ぶ
lle ノ
Hwi onscunast δu to underfonne δisne lichaman ?
why fear
you to receive
this
corpse
tWhy do you fear to receive this corpse?'
-204-
09 Z「 oれ .I.142-‐ ― Callaway(1913:137)
Crist, sebe
com tO gehalenne ure wunda
Christ behold came tO cure
our iniuries
tLook! Christ came to cure our injuries'
また、(15)に あげた ヒッタイ ト語 の与格不定詞が く目的〉 の意味を表 している
こ とか らも、OE以 前 の印欧言語では、前置詞を伴わない与格不定詞が く着地
点〉 の意味 を表 していた と思われる。
この節 をまとめてみ よう。不定詞 は もともと純然たる名詞であったのが 、次
第に動詞化 しなが ら発達 した。 この発達の過程 で、不定詞 は名詞的特徴 を失っ
て きた。 と りわけ、与格語尾消失の危機 は同時 に、文法 の中で 〈
着地点〉 とい
う重要な意味領域 を担っていた与格不定詞 の用法 に重大な影響 を及 ぼす危険が
あ つたと考え られる。 この理由か ら、類似 した意味領域 をもち且 つ与格付与子
であ った前置詞 toを 補 って、与格不定詞 の形態語尾を維持 しよ う とした もの
が ,o不 定詞 の起源である。
4.1.2 与格不定詞の構造
この節 では、OE期 の与格不定詞 の内部構造について論 じる。結論 か らい え
ば、OE期 の与格不定詞 の内部構造 と して (20)を 仮定す る (Fisher(1996)、
Kageyama(1992)、 Tanaka(1994)な どを参照 )。
?.0)
["" to ["" V-enne . . . ]]
(20)で は、前置詞 toが 補部 としてVPを 従 えている。現代英語 の tO不 定詞が
IP構 造 をなす とい う定説 を前提 にすると、(20)の 構造 では、Infl投 射 に依存す
る現象が観察 されない とい う予測が成 り立つ。実際、OE期 の与格不定詞 は、
完了形や進行形で現れるこ とはなか った し、また、否定標識 neと 共起す る こ `
ともなか った (Kageyama(1992)参 照 )。 与格不定詞 の全体的範疇がPPで あ
ることを支持する統語的証拠 も存在する。たとえば、OE期 の与格不定詞は、
前置詞句と等位接続されること力ゞ
あった (Callaway(1913)、 Mitchell(1985:
§965)な どを参照)。
-205-
2つ
Bc&162,7-― ‐Callaway(1913:139)
Ut eode to his gebede o60e to leornianne mid his geferum。
out went to his prayer or
to study
with his friends
'He went out to say his prayers or to study with his friends'
4.2 ME期 の変化
ME期 の不定詞構文 に議論 を移す前 に、OE期 のAI構 文 につい て論 じて きた
ことをまとめてお くことにす る。すでに3節 で見 た ことだが 、OE期 のAI構 文
は、使役構文 と物理的知覚構文 に限られていた。 したが って、現代英語 のよう
に、心理的知覚構文 にAI構 文が用い られる ことは なか つた 。使役構 文や物理
的知覚構文 では、母型動詞力ヽT補 部を取 っているため、母型節 が表す 出来事
と埋込節が表す出来事 の間に同一場面性が観察 された。 この意味的特徴 は、埋
込節 の出来事時が母型節 の出来事時に連結 される ことか ら導 かれた 。 4.1節 で
は、OE期 の to不 定詞構文 に焦点 を当て、その意味的・統語的機能 につい て論
じ、OE期 の to不 定詞 (与格不定詞 )が (20)の 内部構造 をもつ ことを観察 した。
現代英語 の to不 定詞力ЧP構 造 をなす とい う定説 を受け入 れ る と、当然引 き出
される推論 は、to不 定詞 の内部構造が英語 の歴史の中でPPか らIPに 変化 した
とい うことである。4.2節 では、この仮説 を裏付ける証拠 をあげなが ら、本稿
の理論的枠組みに基づいた歴史変化の説明を試みる。
4.2.1 与格不定詞内部の変化
ME期 には、与格不定詞内部で幾つかの形態的・統語的変化が生 じた。 この
節では、これらの歴史的変化が持つ意味について考察する。
第 1に 、(22)‐ (24)に 示 した分離不定詞 (split infinitive;Visser(1966:
1035ff。 )、 Mustanoia(1960:515f。 ))と (25)に 示 したprO不 定詞 (Visser
(1966:1061ff。 ))か ら始めよう。
2
± 1390,Gα ″.&GK,88-― ―
he lovied
e lasse
レ
he loved the less
Mustanoia(1960:515)
auレ er t0 1onge lye or to longe sitte
either to long lie or to long sit
the loved either to lie long or to sit long'
-206-
0 1275,LayBr“ ι,Otho,6915-― ―Gelderen(1993:41)
fo[r]to londes
for
seche
tO cOuntries seek
eto seek countries'
0
± 1380,Wyclif,Mαι
ι
λο″
5,34… …―Gelderen(1993:41)
Y say to 5u, to nat swere on al manere
l say tO you to not curse in all ways
tl tell tO you not to curse in any ways'
29 1400,Mannyng,比 れごJyttg Syttπ θ,6401‐ 6402… ……Gelderen(1993:42)
ey
wlde
nat do//For hylrl レ
at レ
ey Were Ordeyned tO
they wanted not dO for hiln what they were appointed to
tthey did not want to dO for hiln what they were appointed tO'
OE期 では、分離不定詞とprO不 定詞の例 は見 られず、ME期 になって初めて
現れるようになった。これら2つ のタイプの構文が生起するようになったこと
は、toと 不定詞 との結びつ きが弱まったことを示 している。
第 2に 、(26)に あげた受動不定詞 (van der Gaaf(1928a,b)、 Fischer
MustanOja(1960:519ff。 ))と (27)に あげた完了不定詞 (MustanOia
(1991)、
(1960:516ff。
))に ついて考察 してみよう。
261 1400, Mannyng,肋 dり屁g
Syπ ttθ , 1546… …… Mustanoja(1960: 520)
レey be to be blamed eft
レarfOre
they are to be blamed again for that reason
ethey are to be blamed again for that reason'
0 1350,動 θ猥
%ι
θO/Gα れοJyπ ,291-‐ ¨ MustanOia(1960:517)
Gamelyn cOnl erto for to have comen in
Gamelyn came there fOr to have cOme
.
。
in
Gamelyn came there in Order tO have come in'
-207-
これら2つ のタイプの構文も、OE期 には見 られずME期 になって初めて生 じ
たものである。受動形式の不定詞や完了形式の不定詞が生 じるようになつたこ
とは、不定詞の動詞化 。節化が著 しく高まったことを表 している。
e(n)
e(n)の 消失について考察 してみよう。不定詞語尾 ‐
最後 に、不定詞語尾 ‐
enneが 弱化 したものである。Gray(1985:493ff。 )に よれ
は与格不定詞語尾 ‐
‐
ば、不定詞語尾 e(n)は 15世 紀末までに単なる表記上の要素 にまで弱化 して
e(n)は 16世 紀 の
いた。また、Roberts(1993:261)に よれば、不定詞語尾 ‐
初め頃に消失 した。すでに4。 1.1節 で概観 した ことだが 、不定詞 はもともと純
粋な名詞であつたのが次第に動詞的特徴 を強め、ついには節的な特徴 も持つ ま
でに至るという歴史的過程 を経て現代 に至る。格語尾が名詞の典型的特徴であ
ることを考えると、格語尾を失うとい うことは、典型的な名詞的特徴 を失 うこ
enneが
とを意味する。Grayや Roberts等 の観察から推測す ると、与格語尾 ‐
ME期 の末までには格語尾 としての位置づけを失つていたと思われる。
ここで、ME期 のto不 定詞に関して生 じた変化 と、その変化が もつ意味 に
ついてまとめてみよう。OE期 に名詞的特性 を色濃 く保持 していた不定詞 は、
ME期 には入つて動詞的特性 を強めていつた。 とりわけ、15世 紀から16世 紀頃
に迂言的受動形や完了形 を取 るようになったことは、to不 定詞が節 のように
感 じられるようになったことを反映している。このことは、to不 定詞が (20)
に示 したPP構 造から(28)に 示 したIP構 造へ移行 し始めたことを示 している。
の
[P[1』
to][vP V
(28)で は、前置詞 toの 文法化が進み Inflと して再分析 されている。 この変化
は15世 紀 か ら16世 紀頃 に生 じ、完了 したのは初期近代英語期 と考 えられる。
4.2.2 AI構 文の拡張 と機能的分析
to不 定詞補文 に関 して、ME期 に見 られる興味深 い変化 の 1つ に、AI構 文が
心理的知覚補文 に拡張 された ことがある
7。
の 1380,Wyclif,3jbた ,Luke 8,46-― Visser(1966:2313)
I have knowe vertu to haue gon out of me
tl have known virtue to have gone out of me'
-208-
la1 1445,Pecock,動 ODれ θι,104,7-― ‐Visser(1966:2309)
I beleeue euerlasting liif to bO or to come
tl believe everlasting life to exist or to come into existence'
3.1.節 で述 べ た よ うに、OE本 来 の 文法 と して 、 心 理 的知覚 動 詞 の 補 文 と し
てAI構 文 が用 い られ るこ とは なか つた 。 ここで 、なぜME期 になつて この よ う
なAI構 文 の拡張が起 こった の か とい う疑 間 が 生 じる 。 本 稿 の 主 張 に 関 連 す る
仮 定 を(31)に 示 してお く。
1311 a.
b。
時制が (独 立 して)解 釈されるのは、発話時・基準時 :出 来事時の
3要 素が存在するときであり、この ときに限る。
不定詞補文の基準時が母型節の出来事時に結合される (El=R2)と 、
補文内の時制は (依 存時制ではあるが)、 あたか も発話時 (es2'(≒
R2))を 持つかのように解釈される。
IP構 造を持つ不定詞節は、繋ぎ留め操作が適用された結果、あたか
も全ての時制構成要素 (す なわち、S,R,E)を 持つかのように解
釈され、結果 として、命題層の機能を果たし得 る8。
2節 で概観 した枠組みを用 い ると、OE期 の与格不定詞構 造(20)は 、 VPは 含
んでい る力ЧPを 含 んでいないので、動詞が もつ論理的意味構造 (た とえば、述
語項構造 )の レベ ル を表す ことはで きて も、話者力ちきに描 く特定 の事態 を表す
ことはで きない。 これは、VPの 表す事態 を空間的 0時 間的 に位 置づ け る手段
を欠 いてい るか らである。 しか しなが ら、to不 定詞 の 内部構造がIP構 造 に移
行 した ことは、機能範疇 Inflの 存在 によつて 、依存時制 では あ るが基 準時 を
もつ手段 を得た ことを意味す る。 さらに、(31b,c)に 示 した仮定 に よつて 、
不定詞 は、話者 の心 に描 く特定の事態 を指示する潜在的能力 を得 た ことを意味
す る。す なわち、IPが 表す事態 は、心理的知覚動詞 の補文 として用 い られたと
き、命題内容を表す ことがで きる。
本稿 の分析 を支持す る証拠 がる。英語が AI構 文 を心理的知覚動詞 の補文 と
して用 いるモデルとしたのが ラテ ン語文法である。ラテ ン語 では、不定詞 に現
在 0過 去 ・未来を表す形態素が付加 していた。
-209-
ω Latin
a. E)icit
te
veni‐
re
say(PRE 3SG) you(ACC)cOme(INF PRE)
。
He says that you come'
bo Dicit
te
ven‐
isse
say(PRE 3SG) you(ACC)come(INF PER)
'He says that you came'
c. Dicit
ventu‐ rum
te
esse
say(PRE 3SG)you(ACC)come(INF FU)
lHe says that you will came'
この ことは 、不定詞補文が母型節 との 関係 で 、独 自の基準 時 を もっていた こ と
を意 味す る。 さらに、不定詞補文が基 準 時 を持 つ ことは 、心理 的知覚動詞 の補
文 となって命題 内容 を表す こ とがで きた ことを意味す る。
131 Latin
credo
terranl
esse
believe(PRE lSG)earth(ACC) be(INF PRE)
.I believe the earth to be round'
ギ リシャ語 の不定詞 も、 ラテ ン語 の不定詞 と同様 の形態 的特徴 をもっていた。
す なわち、現在 ・ 過去 ・ 未来 を表す形態素 が接尾辞 と して付加 して い た 。予測
され る こ とで あるが、ギ リシ ャ語 の心理 的知覚動詞 もまた ラテ ン語 の心理 的知
覚動詞 と同様 に、不定詞補 文 を従 える ことがで きた。
O Greek
το θεοζ
Σωκρατηζ ηγει
Socrates
παυτα
ει
σCυ αι
believed Gods(ACC)all(ACC)know(INF PRE)
tSocrates believed Gods to know every thing'
-210-
英語 は、盛んにラテ ン語 を借入 した り翻訳 した りした言語 であるので、 ラテ
ン語 の影響 を強 く受けていたことが予測 される。 したが って、心理的知覚動詞
力沈 I構 文 を従えていたラテ ン語 をモデルと して、 同様 の構文 を発達 させ た こ
とは十分 に考え られる。また、不定詞補文 に基準時が存在す るラテ ン語やギリ
シャ語 のような言語 で、心理的知覚動詞 の補文 としてAI構 文 が用 い られて い
た ことと、IP構 造 を得た ことで心理的知覚構文 の補文 としてAI構 文 を用 い始
めた英語 の歴史を見る と、不定詞が′
い理的知覚動詞 の補文 となることと基準時
の存在 (IP構 造 の存在 )が 密接 に結 びついていることがわかる。 これは、あ る
言語表現 が命題内容 を表す ためには、その言語表現 が表す事態が時間的・空間
的 に位置づ けられ うる統語的環境が要求 されるか らである
9。
5
結語
元 々純然 たる名詞 であ つた不定詞 は、次第 に動詞化 されて きた。 と りわけ、
to不 定詞 (与 格不定詞 )は 、ME期 か らModE期 にか けてIP構 造 に再分析 され
た。 ラテ ン語 の影響 もあ って、to不 定詞 は心理的知覚動詞 の補文 となる資格
を得た。 この歴史変化 は、(4)と (31)に 示 した統語構造・ 意味機 能 。時制構造
の対応関係 に基づいて説明 された。
本稿が対格付 き不定詞構文 (accusat市 e with infinitive)と 呼 んで い る
のは、埋込節中の意味上の主語が 、統語的 には母型動詞の 目的語 になって
い るものである。
ILL,S,Aは それぞれ、発話内の力
(11locution)、
話者 (Speaker)、 聞 き
手 (Addressee)を 示す。また、ILLが とりうる値 には、断定 (declarat市 e)、
疑問 (interrOgat市 e)、 命令 (imperat市 e)な どがある。
VP内 主語仮説
(VP‐ internal subiect hypothesis)を
想定すれ ば 、VPは
さらに述語 と項 の論理的意味関係 も表 してい るといえる。
Callaway(1913:107‐ 131),Denison(1993: 172ff。 ),Fischer(1988,
1989, 1991, 1992, etc。
), Fischer and van der Leek (1981), Nagucka
(1985),Roberts(1993),Tanaka(1994),Trnka(1930),Visser(1973:
2234‐ 2336),Warner(1982)等
を参照。
-211-
5 Disterheft(1989)参 照 。
6(15)に お い て不定詞 に接辞化 して い る形態素 (u)wanzitは 、 与 格 不 規 則
)で あ る。
この変化 に関 しては、Gelderen(1993:61)、 MustanOja(1960:526ff。
変化接辞 (dative heteroclite suff破
7
Visser(1966:2309ff。
8
)、
)、
Warner(1982:134ff.)を 参照 。
言語 に よっては、命題 を表す不定詞補文力℃ Pの 場合 もあ り得 る。
‐
―Kayne(1981:359)
(i)French¨ ‐
Je crois[cP C[IP PRO Infl[vP avoir fair une erreur]]]
I believe
have made a
mistake
.I believe myself tO have made a mistake。
'
(ii)Italian… ……Kayne(1981:353)
Gianni crede[cP di[IP Infl[vP essere intelligente]]]
be
Gianni believe
intelligent
lGlianni believes himself to be intelligent.'
‐Raposo(1987:87)
(iii)European Portuguese― ―‐
Eu penso/afirmO[cP terem[P os deputados[vP trabalhado pouco]]]
I
think/claim
have
the deputies
worked
little
.I think/clailn that the deputies have worked little。
'
9
英語 の心理的知覚動詞がAI構 文 を従 える よ うになった ことは 、 モ デ ル と
なるラテ ン語 のAI構 文 が あ った こ と (Trnka(1930:84)、 MustanOia
(1960:527)、 Visser(1973)、 Lightfoot(1981:113))に 加 えて、語順
の変化 (SOV→ SVO)(Fischer(1989,1991,1992,1994a,b,1995)が
考 えられる。
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