当院における過酢酸系除菌洗浄剤サナサイド-NX の使用経験 社会医療法人かりゆし会 ハートライフ病院 臨床工学科 ○宮城 直史,内里 司,仲松 晋也,野原 剛,大城 安 ・目的。当院で従来使用していたミンテック社の過酢酸系除菌洗浄剤ミンケアから、高いバイオフィルム 剥離除去効果、除さび効果にすぐれているとされるアムテック社サナサイド-NX(以下 NX)に変更したの でその使用経験を報告します。なお、当院では 2010 年 11 月に、患者監視装置、供給装置、透析液配管を 入れ替えたため、入れ替え後を評価対象としました。 ・方法です。評価期間はスライドに示す通りです。①除菌効果の評価としてエンドトキシン(以下 ET)値 及び生菌数の推移としました。 ・サンプルポイントは 4 か所あり、まず一つ目が RO 装置ピュアフロー、 ・次に供給装置 DAB-50E の透析液採取口、ETRF 前としました。 ・末端のサンプルポイントは、当院の透析室は 2 室あるため、それぞれの末端を A、B とし、それぞれ患 者監視装置の透析器入口としました。 ・②除さび効果の測定は、さびがあると紫色になる中性除さび剤フェノン「7Q-B」を使用し、供給装置ポ ンプ部及び患者監視装置カスケードポンプ部のさびの有無を確認しました。③原液暴露の部材の影響の確 認として、タンクから供給装置までのシリコンチューブ劣化を顕微鏡観察と高感度けいこう染色法で分析 しました。ミンケアでは 3 倍希釈していましたが、NX では原液補充に変更しました。 ④安全性として、ミンケア社過酢酸残留テストストリップにより、過酢酸濃度が未検出までの時間を測定 しました。 ⑤その他、保管場所、アンケートの実施、コストの比較を行いました。 ・洗浄、消毒方法です。当院では、塩素系除菌洗浄剤と過酢酸系除菌洗浄剤を交互に行っており、過酢酸 では、それぞれのメーカ推奨の倍率で使用し、洗浄時間は同じとしました。また、塩素系除菌洗浄剤の併 用、濃度、時間、曜日は変えないものとしました。 ・結果①-1 ET 値では末端 A、B で検出限界以下を示しており、変更直後から変更後に供給装置で一時的 な上昇がみられますが、2012 年 12 月以降 9 カ月は検出限界以下で経過しています。 ・結果①-2 生菌数は NX への変更直後に RO で一時的な上昇を認めていますが、管理目標値以内であり、 一方、透析液では評価期間内に供給装置、末端ともに検出されませんでした。 ・結果② 除さび効果です。供給装置ポンプ部、患者監視装置カスケードポンプ部にフェノン「7Q-B」を 30 分程度漬け染色試験をおこなったところ、変更前後でさびは検出されませんでした。 ・結果③ 原液暴露の部材への影響を分析したところ、シリコンチューブ内表面は、劣化も認められず、 清浄な状態が維持されていると推察されました。また、電磁弁の影響もみられませんでした。 ・結果④ 残留試験では、水洗開始後 25 分経過したところで、過酢酸濃度が検出感度以下となりました。 ・結果⑤-1 ミンケアは過酸化水素を 22%含むため、医薬用外劇物であり、鍵付保管庫使用の義務があり ますが、NX は過酸化水素 6%以下で劇物ではないため、保管場所を選ばず、保管しやすくなりました。ま た、アンケートより、NX では補充が簡素化でき、酢酸臭も弱くなったと感じられるという結果が得られ ました。 ・結果⑤-2 コスト面での比較は、1L あたり約 19 円のコスト削減となりました。1 年にかかるコスト差 は、約 200 万円のコスト削減となりました。 ・考察です。 ET 値は供給装置で一時的な上昇を認めましたが、その後の経過観察で管理目標を達成できました。同時期 に RO 水で生菌数を認めたことから、透析用水の汚染が供給装置側で検出された可能性と、形成されたバ イオフィルムが剥離除去され、その経過の中で検出された可能性が考えられます。 除菌効果については、本研究後も長期的に継続して観察していく予定です。 今回変更前後どちらでもさびは検出されず、一定の除さび効果あることが示唆されます。 原液の部材への影響に関して、我々は 2010 年の第 20 回日本臨床工学会で、原液のミンケアでは粘着性の 物質が発生し、部品の劣化、性能が低下あることを報告していますが、NX では観察期間内での影響はな く、原液補充が可能と考えられます。 今回使用している患者監視装置は ETRF を 2 本設置していますが、水洗性は良好で安全に使用が可能と考 えられます。 技士の使用感はミンケアと比較して良好であり、経済面を合わせればメリットは大きいと考えられます。 ・結語。当院における NX への変更の経験から、除菌効果は一過性の上昇から経過観察のみで管理目標を 達成できたものの、除さび効果と合わせて、今後長期観察による判断が必要です。一方で、安全性、操作 性、経済性はミンケアに比して、十分良好な結果が得られたと考えられます。 ・ご清聴ありがとうございました。
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