一人KY

はじめに
うっかり災害、ぼんやり災害の典型とされている、転倒、はさまれ・巻き込まれ、切
れ・こすれの 3 つの型の災害は、現場で日常よくみかける、繰り返し発生している災害
です。
これら 3 つの死傷災害の過去 3 年間の推移をみると、 1 年間平均で、転倒が1,568人、
はさまれ・巻き込まれが1,812人、切れ・こすれが1,671人となっています。
災害全体に占める割合では、転倒が 9 %、はさまれ・巻き込まれが11%、切れ・こす
れが10%を占めており、これらの 3 つの災害を合わせると30%になります。
これらの災害の特色は、人をえらばず、時をえらばず、場所をえらばず発生しているこ
とです。ヒヤリハットを含めるとほとんどの方が、この 3 つの災害に出会っておられる
ことと思います。
転倒災害… 9%
はさまれ ・ 巻き込まれ災害… 11%
切れ ・ こすれ災害… 10%
出所:厚生労働省職場のあんぜんサイト「業種、事故の型別死傷災害発生状況(平成24年、
23年、22年)
」より著者作成
本書では、日常、現場でよく発生している 3 つの型の災害事例を取り上げ、その防止
対策を示すとともに、この災害防止に最も有効な手段である「一人KY」
、
「指差呼称」な
どについてその実施方法を分かりやすく説明しています。これらの対策を実施され、 3
つの型の災害ゼロを目指してください。
目 次
C O N T E N T S
はじめに
転倒災害
50歳以上は30歳未満の7倍転ぶ… …………………………………………………………… 3
❶ すべり 敷き鉄板上で転倒した… ………………………………………………………… 4
❷ すべり 残材を両手にもってスロープを降りようとして転倒した… ………………… 5
❸ つまずき サニーホースに足を取られて転倒した… …………………………………… 6
❹ つまずき フラットバーを運搬中、キャブタイヤをまたごうとして転倒した… …… 7
❺ つまずき 風で飛ばされてきたPPバンドが足にからみつき転倒した… …………… 8
❻ 踏みはずし 階段を降りるとき、足を踏みはずして転倒した… ……………………… 9
❼ 踏みはずし 段差を踏みはずして転倒した… ………………………………………… 10
一人KY………………………………………………………………………………………… 11
はさまれ・巻き込まれ災害
❶ はさまれ 移動式室内足場を開こうとして、手首をはさんだ… …………………… 15
❷ はさまれ 体のバランスを崩して足場板とスラブ筋の間に手をはさんだ… ……… 16
❸ はさまれ スライドしてきた高所作業車の作業台に足をはさまれた… …………… 17
❹ 巻き込まれ モルタルミキサーに手袋を巻き込まれ挫傷した… …………………… 18
❺ 巻き込まれ 地盤改良機のロッドの接続部から飛び出していた鋼製ピンに
着衣もろとも巻き込まれた… …………………………………………… 19
ひと声かけ……………………………………………………………………………………… 20
指差呼称………………………………………………………………………………………… 22
切れ・こすれ災害
❶ 切れ 軽量鉄骨をつかみ手を切った… ………………………………………………… 26
❷ 切れ 手ノコでビニール製のバンドを切断したとき、
勢い余って手首を切った…… 27
❸ 切れ カッターでボードを切断中に誤って手を切った… …………………………… 28
❹ 切れ 手から滑り落ちたヘラの刃先が手首に当たり切り傷を負った… …………… 29
❺ こすれ 惰性で回転していた電動工具の刃に接触した… …………………………… 30
現場の人間関係をよくして災害を減らす…………………………………………………… 31
現場の人間関係をよくするコツ……………………………………………………………… 32
転倒災害
❷すべり
残材を両手にもってスロープを
降りようとして転倒した
災害発生状況
ロングスパンエレベーター用のスロープを、残材を両手にもって降りようとして転倒した。
当日は雨が降り、スロープは滑りやすくなっていた。また、両手に残材をもっていたた
め、スロープの中央(一輪車用通路部分で、桟木のないところ)を降りようとしたことも
大きな原因となった。
残材
桟木のないところを降りようとした
防止対策
雨の日の作業は、通常日と異なる注意が必要であることを十分認識する。
スロープから残材を降ろす前に、一人KYを行い、転倒防止のために何を行
うべきかその対策を考え、実施する。
残材は、片手で手すりをつかんで降りられる程度の量を運ぶ。
スロープの中央は、一輪車用なので通行しない。
雨で滑りやすいときは、足元に十分注意する。
転倒災害 5
一人KY
建設業でKYを導入し始めたのは、1977年頃からです。はじめは、 4 ラウンドKYか
らスタートしました。その後、現地KYが行われるようになり、今は一人KYが行われ始
めました。
一人KYは最近現場で普及し始めている最も新しいKYです。
(4ラウンド)
どんな危険が
ひそんでいるか
危険のポイント
を絞る
対策を
出し合う
行動目標
を決める
4ラウンドKY
グループのみんなで朝礼
場所で行うKY
4 ラウンドで行います
現地KY
小グループに分かれて実際の
作業場所、現地で行うKY
一人KY
作業員一人ひとりが、作業場所
において、作業開始前や作業変
更時に一人で行うKY
一人KY 11
はさまれ・ 巻き込まれ災害
❷はさまれ
体のバランスを崩して足場板と
スラブ筋の間に手をはさんだ
災害発生状況
スラブ筋の配筋作業中、アルミ板の上に仮置きしていた鉄筋材が邪魔になったので、かがん
だ状態のまま右手で足場板ごと鉄筋材を横に移動した。
移動後に立ち上がろうとしたとき、右手にはいていた皮手袋の破れ目が足場板の角に引
っかかった。このため、右手が引っ張られる状態となり、その反動で体のバランスを崩
し、右足で足場板を踏んだため、足場板とスラブ筋の間に右手の甲をはさんで負傷した。
バランスを崩して
足場板を踏んで
しまった
皮手袋の破れ目が
足場板の角に
引っかかった
防止対策
作業の開始前に、作業場の片づけを行う。
鉄筋の敷材には、端太角を使用する。
積んである物の移動は上から順序よく行う。
破損している保護具は使用しない。
16 はさまれ・ 巻き込まれ災害
切れ・ こすれ災害
❶切れ
軽量鉄骨をつかみ手を切った
災害発生状況
可搬式作業台を使用して、ウレタン吹付作業をしていたとき、外壁PC凹凸部の奥の部
分を吹き付けるため、可搬式作業台上で作業姿勢を変えようとしてバランスを崩した。
転落を免れようとして、とっさに手近かにあった軽量鉄骨を左手でつかみ、中指および
薬指を裂傷した。
バランスを崩したとき、
軽量鉄骨をつかんでしまった
感知手すりは使用
していなかった
防止対策
作業計画時に、墜落・転落の恐れのある作業では高所作業車の使用を検討す
る。
作業前に一人KYを行い、危険なもの、有害なものはないか、よく見極め、
対策を考え実施する。
可搬式作業台から墜落・転落する恐れがあるときは、感知手すりを使用す
る。
可搬式作業台上では、無理な姿勢での作業はしない。
26 切れ・ こすれ災害