1113. アーム搭載クローラロボットHELIOS IXの研究

アーム搭載クローラロボット HELIOS IX の研究
-センサを用いた環境適応動作○上田紘司 (東工大), Michele GUARNIERI(東工大), 程島竜一 (消防研),
福島 E. 文彦 (東工大), 広瀬茂男 (東工大)
Development of Helios IX: an arm-equipped tracked vehicle
-Sensor-based environment-adaptive motion○ K.UEDA(Tokyo Tech), M.GUARNIERI(Tokyo Tech), R.HODOSHIMA(NRIFD),
E.F.FUKUSHIMA(Tokyo Tech) and S.HIROSE(Tokyo Tech)
Abstract— An arm-equipped tracked vehicle HELIOS IX has been developed for search and rescue in
devastated buildings. The ability to open doors and go up/down stairs are needed for this kind of activity.
This paper focuses on door opening. A force sensor is introduced to measure forces in the end-effecter and
absorb the extra force when opening the door. A new technique is proposed for enhancing the measurement
range by installing an elastic plate in parallel with a small 3 axis force sensor.
1.
2·1
緒言
被災した建物内(地下鉄, 地下街, 高層ビルなど)は,
きわめて危険性が高く, 人命救助等においてロボットに
よる支援が望まれている. アーム搭載クローラロボッ
ト HELIOS IX [1](Fig. 1) はレスキュー隊員からの遠
隔操作と自律判断機能によって並列的に探索救助活動
を行なうことを目的として開発された. 建物内での探
索救助活動ではドアの開閉, 段差乗越える能力 [2] が必
要となる. 今回はドアの開閉に着目し, 開閉時の手先に
かかる力を計測し余計な内部力を逃がすことを可能に
する力センサの導入を検討する. 本研究では, 市販の小
型軽量の 3 軸力センサを採用し, これに, 起歪体を並列
に取り付けて, 測定レンジを拡張する手法を提案する.
2.
HELIOS IX
ハードウェア
我々が開発している HELIOS IX は, 平地での 6km/h
の走行と階段上昇が可能な独自開発のアクチュエータ
系を装備した 2 つのクローラユニットの中心部に, 物
資のハンドリングと障害物踏破を補助する6自由度マ
ニピュレータが能動的に取り付けられて多様な形態を
取れる独創的な形態をしており, それにより, コンパク
トながら安定な階段昇降, ドアの開閉などのハンドリ
ング作業を可能にするものである [1]. また, 遠隔操作
のための2つのモニタカメラ, 姿勢センサ, レーザレン
ジファインダ, 3 軸力センサも搭載している. アーム部
に取り付けられている2次元レーザレンジファインダ
(北陽電機製, URG-04LX)は, アームを回転させるこ
とで 3 次元データを取得し, 対象物体までの相対位置
を計測可能としている (Fig. 4, 5). HELIOS IX の仕様
を Table 1 に示す.
Table 1 HELIOS IX Specifications
2·2
Fig.1 HELIOS IX actuators distribution
Item
HELIOS IX
Mass
40 kg
Width
490 mm
Length
570 mm
Arm(extended)
1220 mm
Gripper Payload
8 kg
Track unit (width)
160 mm
Track unit (height)
202 mm
Speed on flat ground
over 7 km/h
遠隔操作
ロボットと操縦者は無線 LAN を介して通信する. 操
縦者は, モニタ画面 (Fig. 3) と GUI 上の 3D モデル
(Fig. 4, 5) を見ながら任天堂 Wii コントローラを使用
第10回システムインテグレーション部門講演会(SI2009)(2009年12月24日~26日・東京)
-1314-
SY0013/09/0000 - 1314 © 2009 SICE
して直感的に 6 自由度のマニピュレータとクローラを
操作する構造とした [3]. 基本的にはこのロボットに自
律的な動作をさせることではなくて, ドアの開閉のよう
な細かい作業において操縦者を支援するという目的の
以下のような自律動作を取り入れることとした.
1. ドアの手前で停止する.
2. レーザレンジファインダでドアノブ周辺をスキャ
ンし, ドアの 3 次元画像を生成する.
3. 3次元画像が表示されている GUI 上 (Fig. 4, 5)
を操縦者がマウスでクリックし, ロボットとの相対
的な3次元座標を指定する.
4. 自動でドアノブの届く場所まで移動し, エンドエ
フェクタでドアノブをつかむ.
5. ドアノブを回転させ, ドアを押し引きする. このと
き 3 軸力センサの情報から余計な内部力を逃がす
方向に位置を修正する.
Fig.2 Scanning a Door
Fig.4 3D Door Knob
front view
3.
Fig.3 Gripper Camera
Load Rating
x
y
z
80
80
80
N・cm
N・cm
N
Max.Static Load
160
160
160
N・cm
N・cm
x
y
z
Displacement of
edge of stick
x
y
z
0.1
0.1
0.05
mm
mm
mm
N
販のセンサそのままでは Table 2 より x, y 軸方向には
6.2N までしか計測できない. そこで 3 軸力センサとグ
リッパ間に起歪体中心部を固定し, その起歪体周辺部
を 3 軸力センサを支持するフレームに固定して, 両方で
荷重を受けさせるという新しい構成法を導入した. 目
標測定範囲を Table 3 に示すが, 具体的には 70N を受
けたときに力センサの先端が 0.1mm 変位するようにし
た. 一方, z 方向(圧縮・引張)は元々80N まで測定で
きるため, x,y 方向には硬く z 方向には柔らかくする.
Fig. 7 に示す製作した起歪体の材料は A2017 を用い
た. この形状は目的の硬さとなるように, x, y 軸回りの
モーメント, z 軸方向の力をそれぞれ Pro/MECANICA
Wildfire4.0 を用いて構造解析を繰り返し行った. 力セ
ンサ PD3-32-10-80 は z 方向に定格荷重を受けたとき
0.05mm しか変位せず, 起歪体やセンサを取り付ける部
品の加工精度が要求されるため, 起歪体周辺部と 3 軸
力センサを支持するフレームとの間に僅かな隙間がで
きるように作っておき, 接着剤でその間を埋めることで
固定時に内部応力が発生しないようにした.
Fig.5 3D Door Knob
side view
起歪体で測定範囲を補正した力センサの
開発
マニピュレータで物をつかんで持ち上げたり, ドアを
開けたりする際に力を計測できれば, 操作性の向上や,
マニピュレータやドアの破損を防ぐことができる. こ
のような用途では, 精度はそれほど要求されないもの
の, 小型軽量であり, またセンサ部からかなり離れた指
先部で 3 軸の力を計測出来ることが望まれる. このよ
うな特性を有する力センサは残念ながら市販されてい
ない. そのため本研究では, 市販の小型 3 軸力センサ
(ニッタ PD3-32-10-80 )(Fig. 6, Table 2) に, 起歪体を
並列に取り付けることによって望みとする場所での 3
軸力を計測可能とする新しい 3 軸力センサ構成法を提
案する.
3·1
Table 2 Nitta PD3-32-10-80 Specifications
起歪体の設計
グリッパ部に取り付ける 3 軸力センサとグリッパ先
端の力の作用点は, Fig. 8 のように離れているため, 市
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Fig.6 3 Axes Force Sensor
Fig.7 Elastic Plate
Table 3 Target Modified Measurement Range
Load Rating
x
y
z
70N×13cm = 910
70N×13cm = 910
134
N・cm
N・cm
N
3·2 測定結果
x, y, z の各軸方向へ力をかけ, その時の力センサの
出力を計測した. Fig. 9, 10, 11 に, 起歪体による補正
前を赤, 補正後を緑で示す. 補正により x, y 軸の測定
レンジが拡張され, z 軸はそのままになるという所望の
Fig.8 Arrangement of 3Axes Force Sensor and Elastic Plate
Fig.11 z Axis
仕様を満足する特性が得られることが確かめられたが,
x, y, z の各軸において目標測定レンジよりも小さい値
となった (Table 4). この原因として以下のことが考え
られる.
1. Table 2 示す定格荷重を受けた時の 3 軸力センサ
の先端の変位データの精度が不足
2. 構造解析シミュレーションの誤差
3. 接着剤の弾性.
Table 4 New Measurement Range
New range
Load Rating
4.
x
y
z
656
766
88
N・cm
N・cm
N
Target range
910
910
134
N・cm
N・cm
N
結言
遠隔操作が可能なアーム搭載クローラロボット HELIOS IX のドアの開閉, 段差乗越え, 不整地踏破などを
遠隔地にいる操縦者がカメラ画像の情報だけで行うの
は困難であり, 力センサやレーザレンジファインダを利
用し操縦者を支援するような自律動作が不可欠である.
本稿では, ドア開け動作などにおいて, 手先にかかる力
を計測し, 余計な内部力を逃がすことを可能にする力セ
ンサを検討した. そして, 市販の力センサと並行に起歪
体を取り付け, 測定可能域を拡張する手法を提案し, 実
験的にその有効性を検証した. 今後は導入した力セン
サを用いた実際の操作性実験の検証などもしていく予
定である.
Fig.9 x Axis
参考文献
[1] M. Guarnieri, P. Debenest, T. Inoh, K. Takita,
E. F. Fukushima and S. Hirose, ”HELIOS IX
Tracked Vehicle for Urban Search and Rescue Operations:Machanical Design and First Test”, Proceedings.
2008 IEEE/RSJ,International Conference on Intelligent Robots and Systems, Sep 2008.
[2] M. Guarnieri et all, ”HELIOS Carrier: Tail-like Mechanism and Control Algorithm for Stable Motion in
Unknown Environments”, Proceedings. 2009 IEEE
International Conference on Robotics and Automation, May 2009.
[3] M. Guarnieri, R. Kurazume, H. Masuda, T. Inoh, K.
Takita, P. Debenest, R. Hodoshima E. F. Fukushima
and S. Hirose, ”HELIOS System: A Team of Tracked
Robots for Special Urban Search and Rescue Operations”, Proceedings. 2009 IEEE/RSJ,International
Conference on Intelligent Robots and Systems, 2009.
Fig.10 y Axis
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