焦点移動のないX線源で 非破壊・三次元計測を実現

Nanotech リーフレット /「ささえる _ ナノテク」A4_4P(表 1- 表 4)
No.36_ ナノ領域の非破壊・三次元計測を実現する次世代X線管の研究開発
ナノピラーターゲットを有するX線源は、
ナノ領域における計測分野への応用を拡大
今後の展望
半導体の三次元実装をはじめとする高集積化、電力貯蔵(リチウムイオン電池、キャパシタ)の高密度化、新機能性
材料開発におけるナノマテリアル構造解析、バイオ分野への新たな応用等においてナノ分解能を有する非破壊検査
の要求は高まっております。
ナノピラーターゲットを有するX線源は、従来にない優れた特性(安定性、再現性)を確認することができました。今
後の実用化に向けては、従来のX線源やX線方式では実現困難であった用途への貢献を目指すため、分解能、信頼
性、操作性を向上させるために開発・改良を続けていきます。
36
焦点移動のないX線源で
非破壊・三次元計測を実現
プロジェクト名称
ナノ領域の非破壊・三次元計測を実現する
次世代X線管の研究開発
【TSV cross section / SEM】
Hole(Top)
Depth
計測は力なり、
NEDOがささえる未来のくらし
: 10um
: 90um
ナノ加工技術を採用することで焦点移動のない
X線源による三次元計測が可能に
【TSV nanoX-ray image】
Top view
成果の概要
X線源には、高い分解能を得るために電子ビームを小さなスポットとし、
また高いX線強度を得るために入射電流量
を増やしたいという要望があります。
そこで、収束イオンビーム/FIB(Focused Ion Beam)装置を用いて高い熱伝導率を有するダイヤモンド基板に微
細な孔を開け、FIB装置を用いてタングステンを堆積することで、溶融せず安定的なX線を発生するナノピラーター
ゲットを開発することに成功しました。
Tilted
(15deg)
直径200nm、深さ1,000nmのナノピラーターゲットを搭載し40keVの電子ビームを照射した結果、空間分解能
100nmおよびX線量0.07R/min、性能指数(*1)として7.0R/min/μm2を達成しました。
Optical magnification X500
プロジェクト参加機関
問い合わせ先
浜松ホトニクス
(株) 東京エレクトロン
(株)
(独)
新エネルギー・産業技術総合開発機構
電子・材料・ナノテクノロジー部 TEL:044−520−5220
*1) 性能指数はX線量を空間分解能の2乗で規格化した値で、
X線量が大きいほど、
また空間分解能が高いほど大き
な値を示す。
Nanotech リーフレット /「ささえる _ ナノテク」A4_4P(2-3)
No.36_ ナノ領域の非破壊・三次元計測を実現する次世代X線管の研究開発
物理限界を克服する次世代X線管の実現に向けて
プ ロ ジェクト の 目 的
電子ビーム制御系の開発
技術内容
従来のX線管は、電子ビームを小さく絞ってターゲットに照射することにより高分解能化を図っているものの、1μmより
スキャンコイルにて電子ビームをスキャンして、
小さなX線焦点を実現するには物理限界とも言える壁が立ちはだかっています。
まず、微小焦点で電子ビーム量を上げる
吸収電子量と特性X線を測定可能とするしくみを
とターゲットが溶融劣化するという課題があります。一方、加速した電子ビームはターゲットに照射された後に広がり焦点
開発しました。
また吸収電子量差を画像化すること
サイズを広げる要因になります。更に、大電流電子ビームをターゲットの1点(100nm以内)
に固定することは極めて難し
で、
ターゲットの位置の確認を可能としました。
く、
ビームの変動でX線焦点が見かけ上大きくなるという課題もあります。
これらの課題により、従来のX線管では空間分
更に上記を統合した制御系を構築することで、分
解能とX線量(計測のスループット)
を両立できません。
解能を犠牲にせずX線量の変動の少ない安定した
この限界を克服するための、ナノ加工技術を利用する革新的ターゲットを導入した次世代X線管(ナノピラーターゲット
X線エネルギー検出器
X線を発生する電子ビーム制御系を実現しました。
X線管)
を開発しました。
30
m
ナノピラーターゲットの開発
要素技術の検証とプロトタイプの開発
技術内容
ウエット、
ドライ等様々な加工方法の中から、高いア
スペクトを実現する穴明加工が可能なFIBによる加工
方法を採用しました。
穴明加工時にはチャージアップが問題となり加工深
度は得られませんでしたが、導電膜を成膜することで
問題を回避することができました。
200~
2,000nm
W(CO)6
W
Diamond
技術内容
ナノピラーターゲット評価実験系を改良して約
500nm径の電子ビーム径を直径200nmのター
ゲットに照射することで、空間分解能は100nm、
また、FIBによりタングステンを堆積する際にボイド
X線量は0.07R/min、性能指数(*1)は7.0R/min
の発生が問題となりますが、イオンビームを連続的に
/μm2を実証しました。
最適化する方法で課題を解決しました。
また空間分解能は、ナノピラーターゲット径の
上記の取組みにより、ボイドの少ない体積比率の高
1/2に比例すること、電子ビーム径がナノピラータ
いタングステンを微細かつ高アスペクト比の穴に堆積
ーゲットの2.5倍以上では所望の分解能が得られ
でき、目的のナノピラーターゲットの製作に成功しま
ないことを確認しました。
した。
30-100keV