開会挨拶 「ものづくりマイスター制度」は、厚生労働省が「若年技能者人材育成支援等事業」 の一環として、平成25年度より進めている継続的な取組みです。関係省庁、ものづく りに関わる関係業界、企業、労使、学校、さらに技能者団体と、幅広い方々のご協力 を経て創設しました。 昨年と本年に閣議決定された日本再興戦略でも、ものづくり産業の心棒、これを支 える人材育成が大変重要な柱として言い続けられています。その中で、特に建設業の 人手不足が顕著になっている現状があり、労働行政においては、若者の雇用確保も大 変重要な課題です。ものづくり分野での就業が発展性のある働き方として大きく期待 されていることからも、技能労働者をはじめとする人材育成は、さらに積極的に進め ていく必要があります。 ものづくりマイスター制度は、技能検定、あるいは技能競技大会といった技能振興 に係わる拡大施策としての重要な役割を果たすものでもあります。現場を支える技能 労働者をはじめとする人材育成の取組みが、我が国の産業、経済の競争力の基盤となり、 また国民生活や地域社会の発展の基盤となるということは、いうまでもありません。 現在、既に全国で5,000人近い優れた技能経験をお持ちの方々をものづくりマイス ターとして認定し、企業や学校での指導において優れた事例も多数生まれています。 今回の講演、討議が、今後のものづくりマイスター制度、ものづくり分野の幅広い職 種における人材確保、育成に大きく寄与すること、その重要な契機となることを祈念 申し上げます。 厚生労働省職業能力開発局 能力評価課長 伊藤 正史 氏 2 c ontents 02 開会挨拶 04 第1部:基調 講 演 科学技術の先達に学ぶ 08 第2部:パネ ル デ ィ ス カ ッ シ ョ ン ~「ものづくりマイスター制度 」がもたらす 相乗 効果について~ 3 創! Roman 第1部 基調講演 科学技術の先達に学ぶ 「創造」という仕事を通して社会貢献を 今回、私がお伝えするのは、将来、ものづくり 分野で活躍したいと考えている人、あるいは技 たとえば、人間とコンピュータ。どちらが勝って 能検定を目指したいという20代、30代の若者 いるのか比べてみると、計算の早さ、記録の量な 向けの内容になっています。もしご参考になれ どでは、人間はコンピュータに太刀打ちできませ ば、職場などでの教育指導に役立てていただ ん。では、新しいことを発見する力、新しいもの ければと思います。 を創り出す力となると、どうでしょう。これは、 人間のほうが勝っています。 「創造」とは、最も人間らしいことです。たと えば作曲家、画家、作家、科学者、そして技術者、 技能者など、「創造する」仕事は、まさに人間ら しさを発揮できる仕事だと思います。 私は化学に携わっており、化学においての「創 造」を通して、社会に貢献しています。なぜ働く かというと「仕事を通して社会に役に立つため」 です。仕事をするのは、お金を稼ぐためではない。 お金は結果として付いてくるもの。そのために勉 強することが必要だというのは、私がいつも学生 に話していることです。 「創造」することの喜びとは また、 「創造」する仕事の喜びは、 「社会に貢献」 できることだけではありません。仕事を通して「人 生を記録できる」ことにもあります。自分の作品 淑徳大学人文学部表現学科 教授 が世に残り、それが自身の人生の記録となります。 北野 大 氏 さらに、他者から評価、感謝されるということも 大きな喜びにつながるものです。 (財)化学品検査協会(現:化学物質評価研究機構)・企画管理 部長、淑徳大学国際コミュニケーション学部教授を経て、明治大 そのためには、しっかり学ぶことが必要となっ 学理工学部応用化学科教授、2014年4月より現職。経済産業省・ 化学物質審議会委員、環境省・中央環境審議会委員などを歴任。 てきます。ここで、先達の言葉を紹介したいと思 数多くの著書を持ち、コメンテーターとしても活躍。タレント、ビー トたけし氏の実兄。 4 科学技術の先達に学ぶ 基調講演 います。 ことで競争させていました。これは、現代におい ても参考になる教育方針ではないでしょうか。 「学問のあるところに技術は育つ。 一方で、独立して60 〜 70年となる東南アジア 技術のあるところに産業は発展する。 の国が、未だに途上国であるのはどうしてなので 産業は学問の道場である」 しょうか? 衣食住に不安がないことで、関心は 物理学者、本多光太郎先生の言葉です。技術に 今世紀より来世紀となっているのもその理由のひ は学問の裏付けが必要ということを説いています。 とつだと考えられます。それに比べて、日本は春 夏秋冬という四季による適度な自然の厳しさもあ 「人間の生活のあるところには必ず技術がある。 ります。そのような環境にあることも、日本人を 技術のあるところには必ず知性が働いている」 勤勉にしたのではないかと思うのです。 さいぐさ ひ ろ と これは、哲学者、三枝博音先生の言葉です。学 ■技術が伴って、はじめて「資源」となる び、考えることの大切さは、論語にもあります。 私の定義として、 「資源」というのは技術が伴っ くら 「学びで思わざればすなわち罔し、 て始めて成り立つものだと考えています。たとえ あや 思いて学ばざればすなわち殆うし」 ば石油。これに蒸留という技術を伴ってガソリン ただ教えてもらうだけ、暗記するだけのような 等の資源となります。いわゆる石油化学ですね。 学び方では、身に付かない。だからといって、学 石炭等も同じで、それを使う技術があってこそ、 ばずに自己流で考えては、生きた知識として役に 資源になるわけです。 立たない。きちんと学んで、かつ考えることが重 私が財団法人に勤務していたとき、友人がサウ 要だと説いています。 ジアラビアの王様とお話しする機会がありまし た。そのとき、友人が「日本ではエネルギー資源 江戸時代の教育システム である石油がほとんど出ないから、貴国が羨まし 四季の環境が日本人を勤勉に い」と話したところ、王様は「石油は使えばなく さて、日本は江戸時代に200年以上鎖国状態に なってしまう。日本には人材という資源がある ありました。それから開国後わずか20 〜 30年で、 じゃないか。しかも再生産が可能だ」ということ 日本が経済的にも社会的にも急成長することがで をおっしゃったそうです。さすが王様、とても素 きたのはなぜでしょうか。それには、江戸時代の 晴らしい言葉です。 寺子屋、藩校という教育システムがその貢献に大 しかし、人材というのは「人間=人材」ではあ きく関わっています。 りません。教育という学問や躾を受けることで「人 しつけ ひ ろ せ たんそう かんぎ 江戸時代後期に、儒学者の廣瀬淡窓先生が咸宜 材」になる。教育という技術が伴って、人的資源 えん 園という私塾を大分県に開いています。約5,000 となるのです。「家庭教育」 「学校教育」 「地域教育」 人がここで学んでいたというのですから、ものす と、教育を受ける場はたくさんあります。そこで ごい規模です。 頑張って学ぶことで、日本が誇れる人的資源とな ことごと よろ 咸宜園の咸宜とは「咸く宜し」 、すべてのこと り得るのです。 がよろしいという意味です。咸宜園では、入門時 ■「頑張る」のは、なりたい自分のため に学歴・年齢・身分のすべてを問わないとして、 すべての門下生を平等に教育し、成績を公表する 今日この会場にいらしているのは、若い人を育 5 基調講演 科学技術の先達に学ぶ てる立場の方たちがほとんどだと思います。若い 「独創は学問ばかりでなく、 人たちから、 「なぜ一生懸命やらなきゃいけない 実業界その他あらゆる面で最高の指針だ」 んですか?」と聞かれることがあるのではないで しょうか? 私も、学生たちから「なぜ、頑張ら これは、農芸化学者、鈴木梅太郎先生の言葉。 なくてはいけないのですか?」と聞かれることが 「なぜ」という視点、そこから観察していくことで、 あります。そんなとき、私は「なりたい自分にな オリジナリティが生まれるのです。 るためだ」と指導しています。 「個性の入らぬ技術は価値の低い、 たとえば、医者になりたいなら頑張って勉強を 乏しいものである」 して医学部に入り、そこで6年間、頑張って学ば なくては医者になることは出来ません。私自身の ホンダの創業者であり、技術者だった本田宗一 経験でも、大学を卒業してから民間の会社に2年 郎先生もオリジナリティの重要性を説いています。 間勤めましたが、どうしても大学の先生になりた オリジナリティを発揮させるために、観察するこ いという思いがあり、そのあと5年間大学院に行 と。考えること。ミキモトの創設者、御木本幸吉 き、学んでいます。 先生も 「天才とは1%の霊感と99%の発汗からなる」 「悪い案も出せないやつに 良い案が出せるはずがない」 発明家であり、起業家でもあったトーマス・エ ジソンの言葉です。 努力の必要性を説いています。 という素晴らしい言葉を残しています。 現実を素直に受け止め 「愚かな質問という物はない。質問しなくなった そこからオリジナリティへと進化させる ときに人間は愚かになるのだ」 学問と技術、技能の関係についてお話しさせて とは、電気工学者、スタインメッツの言葉です。 いただきましたが、技術、技能の取得、さらにそ ■I型人材ではなく、T型人材が求められる時代 の技を磨いていくためには、努力に加え、知性も 必要です。それには、 「なぜ」の視点を持つこと。 自分の技術、技能を磨いていくためには、その 視点を変え、 発想を逆転してみることも重要です。 技能に特化するのではなく、幅広い知識、教養を 観察することの大切さは、ドイツの天文学者、ヨ 身に付けることも重要だと思います。ここで、物 ハネス・ケプラーが発見した「ケプラーの法則」 理学者、江崎玲於奈先生の言葉を紹介します。 えざき れ お な も良い例ではないでしょうか。 「優れた科学者は一芸に秀でた人間というよりも、 「実験は常にまっとうな結論を むしろあらゆる視野を兼ね備えた教養人です。 もたらしているものだ。こんなはずではないと この幅広く、多角的な視点を持つということが、 考えるのは、人間のほうが間違っているのだ」 創造性の原動力になるのかもしれません」 八木アンテナの発明家として知られる、 工学者、 これからの技能者は、専門分野だけに特化した〈I 八木秀次先生の言葉です。自分の考えに凝り固ま 型人材〉ではなく、専門性に加えて幅広い知見も るのではなく、現実を素直に受け止めろとおっ 持ち合わせている〈T型人材〉が求められる時代 しゃっています。 ではないでしょうか。免疫学者、多田富雄先生も 6 基調講演 科学技術の先達に学ぶ 私の人生観として、自分が上の立場になるほど、 「科学者はシェークスピアを 同じか、下になるような態度という考え方が大切 文学者は相対理論を読まなければならない」 だと思っています。 とおっしゃっています。 「財を遺すは下、事業を遺すは中、人を遺すは上」 ■あらゆる経験が自身の財産に とは、政治家、後藤新平先生の言葉です。日本の 人間の才能には個人差があります。自分の才能 資源は人材です。人を育てるというのはとても素 をちゃんと理解できている人が、利口な人です。 晴らしいことです。 不十分なところは、努力で埋めれば良いのです。 日本の未来のために、マイスターの経験から学 先ほど紹介したエジソンの言葉にもありますし、 び、技能を継承するということはとても重要です。 工学博士、畑村洋太郎先生の「失敗学」という学 「努力は必ず報われる。もし報われない努力が 問がありますが、成功の前には何倍もの失敗があ あるとすれば、それはまだ努力と呼べない」 るものです。この失敗の経験を共有することも、 とは、王貞治さんの言葉です。 大切なことだと思います。 人生には運不運があるものですが、それを長い 我らに燃ゆる希望あり 目で見ることも必要なのではないでしょうか。ど んな経験も、無駄な経験はないと思うのです。 最後に。 「我らに燃ゆる希望あり」とは、私が 常日頃学生たちに伝えている言葉です。燃える希 ■日本の未来のために、技能の継承を 望を持って生きていくことが、大事だと思うので 1人ひとりの能力に差はあるものの、基本的に す。人を育てていくということ、マイスターから は人間は平等です。ただし、仕事の面では上下に 学び、新たな技能を身に付けていくということ、 なります。たとえば、お金を払う側が上で、お金 それに誇りを持っていただきたいと思います。 をいただく側が下という考えがあります。 しかし、 7 創! Roman 第2部 パネルディスカッション 「ものづくりマイスター制度」がもたらす 相乗効果について ものづくりマイスター制度は、平成25年度から始まった、我が国の産業の基盤であり、ものづくり 産業を担う若手技能者の育成を積極的に支援していく制度です。高度な技能を持つ熟練技能者を「も のづくりマイスター」に認定し、より高い技能を目指す中小企業・学校に派遣して指導を行い、技能 育成に尽力しています。現在、既に全国で4,826人のものづくりマイスターが認定されており、全国 各地で指導に携わっています。 今回、“「ものづくりマイスター制度」がもたらす相乗効果について”をテーマに、技能指導に従事 するものづくりマイスター、その指導を受けている企 業・学 校 、そしてこの双方のコーディネート 担当者と、ものづくりマイスター制度に関わる方々にお集まりいただきました。さらに、第1部で基 調講演をしていただいた北野大氏にもご参加いただき、パネルディスカッションを行いました。 8 パネルディスカッション ~「ものづくりマイスター制度」がもたらす相乗効果について~ パネラー紹介 ものづくりマイスター 受入企業(製造系) 有限会社 小林製作所 常務取締役 遠藤 昭司 氏 小林 隆 氏 旧厚木自動車部品株式会社(現:日立オートモティブ システムズステアリング株式会社)にて設計部試作課 に所属、事業内職業訓練所で機械科指導員。その後、 秋田県内の技術専門学校で機械科・メカトロニクス科 の指導員、校長、秋田県庁産業労働部労働政策課に 勤務。昭和60年度に「機械加工(普通旋盤作業)」1級 技能士取得。平成25年7月に「機械加工」職種でもの づくりマイスターに認定。キャリア支援事業として求職 者に対する職業講話にも携わっている。 昭和44年、 父が有限会社小林製作所(群馬県)を創業。 主要製品は自動車試作板金加工、主にボディー部品。 自身が技能者としてものづくりに従事してから32年。現 在は常務取締役に。最先端技術と昔ながらの技術が必 要とされる現場で働く従業員は20名。高齢化が進んで おり、次世代を担うものづくりのできる若者を育てたい という気持ちから、ものづくりマイスター制度導入に至 る。この制度導入を機に、 〈会社経営者側〉 と受講する 〈従 業員〉の考え方に相違があったことを認識。 受入企業(建設系) 受入教育機関(製造系・建設系) 有限会社 栗栖工業 労務安全部長 埼玉県立浦和工業高等学校 機械科教諭 松村 秀治 氏 宇田川 悟史 氏 とび工事全般(プラント内の足場仮設工事)を請け負 う有限会社栗栖工業(山口県)勤務。労務安全部長と して、人材育成に従事。正社員20名、常駐職人49名、 協力会社12社(97名)。自身も職人として現場に携わり ながら職業訓練指導員も兼務していた経歴を持つ。現 在は山口県鳶工業連合会技能士会の事務局長も務め、 業界全体の技能士の育成にも尽力している。とび職だ けではなく、業界全体で職人が足りない現状を踏まえ、 建設業の地位向上にも貢献したいと模索している。 機械科、電気科、設備システム科、情報技術科の4科 を持つ埼玉県立浦和工業高等学校で機械科教諭を務 める。設備システム科は、県内に15校ある工業高等学 校の中で同校が唯一。何かに一生懸命取り組むという 姿勢や意識を身に付けさせるために、平成23年から技 能検定を導入。 「ものづくりマイスター制度」も、生徒 の技能検定合格という目標達成の一助になればという 思いから活用に至る。規定範囲内で材料費の経費負担 があることも、導入の後押しに。 9 パネルディスカッション ~「ものづくりマイスター制度」がもたらす相乗効果について~ パネラー紹介 基調講演 技能振興コーディネーター 淑徳大学人文学部表現学科教授 大阪府技能振興コーナー 北野 大 氏 林田 和也 氏 技能検定業務に32年間携わり、製造、建設、サービス といった多岐にわたる職種の実技試験や訓練状況を見 つめてきた経験を持つ。自身でも技能検定実施職種の 実技を一通り体験している。昨年度より、 「ものづくり マイスター制度」の立ち上がりからコーディネート業務 を兼務。技能指導を求める企業や学校と、マイスター のマッチングを担当している。昨年度は12件、今年度 は9月現在で22件をコーディネート。制度を通じて、技 能検定の社会的な認知度を上げていくことも目指して いる。 司会 中央技能振興センター 滝澤 秀樹 氏 ものづくりマイスター制度 高度な技能をもった「ものづくりマイスター」が技能競技大会の競技課題等を活用し、 中小企業や教育訓練機関で広く若年技能者への実技指導を行い、効果的な技能の継 承や後継者の育成を行うもの 技能振興コーディネーター ものづくりマイスター 受入教育機関(製造系・建設系) 10 受入企業(製造系・建設系) パネルディスカッション ~「ものづくりマイスター制度」がもたらす相乗効果について~ 「ものづくりマイスター制度」の運用は 受入側とマイスターのマッチングから 滝澤 本日は「ものづくりマイスター制度」が各 ケート調査を実施しました。そのうち、「指導を 都道府県の現場でどのように運用されているのか 希望する」 「マイスター制度に関心がある」との を含め、議論を進めていきたいと思います。 回答は約200社。直ちに「指導を希望する」とお まず、この制度では技能指導を受けたいという 答えいただいた企業にアポイントを取ってお伺い 企業や学校と、人材育成に自分の技能を活かした し、経営者や現場担当者と打合せをしました。 いというマイスターとのニーズがマッチするよ 事前の打合せでは、ニーズの詳細、社員構成、 う、コーディネートすることが重要です。その 製造物に関して確認をします。学校であれば、ど 業務を各都道府県コーナーのコーディネーターが ういった実習内容を行っているのかを確認してい 担っているわけですが、実際にどのように進めて ます。さらに、設備はどの程度整っているかを把 いるのか、林田さんにお聞きしたいと思います。 握した上でマイスターを設定し、2回目の事前打 合せにはマイスターを伴って現場にお伺いしてい ます。 林田 大阪府の工科高校では、技能検定2級、3 級の資格取得への取組みがあります。そういった 点から、マイスターの指導を受けたいというニー 滝澤 マイスターの指導が始まる前の段階から、 ズは多くあります。 時間をかけてコーディネートしているということ 中小企業に関しては、昨年10月に製造業、建 ですね。 設業などに関わる中小企業5,000社を対象にアン ものづくりマイスター ❶ 技能検定の特級・一級・単一等級の技能士またはこれと同等の技能を有していると 認められる方、技能五輪全国大会の成績優秀者(第3位まで)のいずれかに該当する方 ❷ 実務経験が15年間以上ある方 ❸ 技能の継承や後進者の育成に関して意欲を持って活動する意思及び能力がある方 この3つすべてに該当する優れた技能、経験を有する方をマイスターとして認定・登録 しています。マイスターは、中小企業や教育訓練機関等で若年技能者への実技指導を 実践し、効果的な技能の継承や後継者の育成を行っています。 11 パネルディスカッション ~「ものづくりマイスター制度」がもたらす相乗効果について~ 「ものづくりマイスター制度」の 活用に至るまで 滝澤 では、実際にマイスターを受け入れた企 業をしながら細かいところまでの指導とまではい 業・学校の立場からの意見もお伺いしたいと思い かないのが現状です。マイスターによる勉強会は、 ます。どのようなきっかけで、この制度を活用し 若者への技能継承には効果的だと実感しました。 ようと思われたのでしょうか? 小林さんから順 今回はテストケース的な活用でしたが、今後は組 にお聞かせください。 合にも紹介して推進したいと思っています。 小林 群馬県の職業能力開発協会で行われた、職 滝澤 ありがとうございます。では学校への導入 業能力開発推進者講習に参加したときにこの制度 について、宇田川さんに伺いたいと思います。 を知りました。2年ほど前から従業員のスキル アップの方法で悩んでいましたので、まさに求め 宇田川 昨年、職業能力協会で制度リーフレット ているものだと思い、すぐに工場板金の講習をお を拝見しまして、この制度を知りました。前任校 願いしました。 での技能検定受検への取組みで、高度熟練技能者 初期投資として、技能検定のために普段使って の派遣指導を活用していましたので、これが復活 いない道具を人数分揃える必要があり、費用をか したと思い、嬉しくなりました。 けるには、本気でやっていくという気持ちがない 多くの生徒が、確固たる目的を持てずにいます。 となかなか難しいと感じました。しかし、講習に ものづくりマイスターからの指導が、職業観の啓 よって従業員のスキルアップにつながりましたの 発や技能向上、学習への自信を付けさせるために で、今後も活用していきたいと考えています。 役立つとして、この制度の導入に至りました。 実際に指導を受けたことで、生徒たちの前向き 滝澤 育成方法に悩まれていたことから、この制 さや積極性、作業に取り組む姿勢などに変化が見 度の活用に至ったということですね。では、松村 られたことは、とても大きなメリットだと思って さんはいかがでしょう? います。 松村 技能検定を通じて、この制度を知りまし た。技能五輪の課題をテーマに数名を受講させる ことにしたのですが、何しろ施工現場が忙しいの で、受講者とマイスターのスケジュール調整が大 変で、休日を使って講習を組んでいただいたこと もありました。 現場には素晴らしい職人もいるわけですが、作 12 パネルディスカッション ~「ものづくりマイスター制度」がもたらす相乗効果について~ 制度を活用するために苦労したこと 活用して得たメリットとは 滝澤 次に、内容が重なる部分もあるかもしれま いきません。従業員あっての会社ですから、その せんが、 この制度を使って苦労したところ、 メリッ 点は自主性に任せました。 トを感じたところをお伺いしたいと思います。 給与面でも、休日出勤しているわけですから、 2~3ヶ月様子を見て、そのまま継続して学びた 小林 当社では、勤務時間の中でいつ、これを導 いという意欲を汲んで、残業代、休日出勤手当と 入するのか、時間的にどうやりくりをするか、と して組み込む形にしました。 いうことが大変でした。 半年間講習を受けたことで、技能の向上につな 講習を受ける従業員とも話し合い、本来は休日 がったのはもちろん、今までとは違う作業の進め である土曜日の午前中を使って取り組むことにし 方なども学ぶことができました。基本的な動作の ました。昨年10月から導入したのですが、月に 確認としても、非常に役に立っています。今後の 平均2回、今年の4月までを目安に講習内容を組 仕事に活かせることを多く学べたと思います。 んでいただきました。 また、講習を受けている従業員は、講習後の練 滝澤 ありがとうございます。では、松村さんの 習を自由に出来るとしました。講習を受けただけ 意見をお聞かせください。 では身に付かないこともありますので、実技練習 で確実な技能向上を図って欲しかったのです。我 松村 現場では工期があり、そのためには高度な が社は量産工場ではないので、実技練習の時間は 技能を持った職人が現場最優先で携わらなくては 割と作りやすい環境にあると思います。しかし、 作業が進みません。そういった中での技能継承に 本人たちには疲労感があったりと、そう簡単には は、時間やタイミングが必要になり、なかなか難 しいものがあります。 そこでマイスター制度を活用して学ぶ時間とい うものを設けますと、教わる側もそれなりの対応 が出来ます。また、マイスター側も、現場では教 える時間を割けずに妥協していることを細かい部 分まで指導するなど、より高度な技能継承をする ことが出来ます。これが、この制度のいいところ です。 また、この制度の申請も、今までよりスムーズ に出来るようになりました。こういった点でも、 活用しやすくなったと思います。 13 パネルディスカッション ~「ものづくりマイスター制度」がもたらす相乗効果について~ 滝澤 ありがとうございます。宇田川さんの意見 をお聞かせください。 宇田川 以前、授業では旋盤加工を行う場合、安 全に安全を重ねるため、460回転しか回さない、 切込量も最大で0.5mmとする等としていました が、ある先生が本当にいいのだろうかと疑問を投 げかけたことがきっかけで技能検定受検の導入、 制度活用に至っています。 生徒にとって、何かの目標に向かって一生懸命 取り組むこと、達成感を味わうことはその後の大 きな力となります。そのためにも、現場に近い内 容を学べるマイスター制度は、重要な役割を担っ ていると思います。 活用にあたって苦労したのは、工具類を揃える ための費用が必要だったことです。学校長と掛け 合い、学校予算から捻出してもらうことが出来た ので、マイスターを活用した技能検定への取組み が実現しました。 14 パネルディスカッション ~「ものづくりマイスター制度」がもたらす相乗効果について~ ものづくりマイスターとしての取組み、苦労 滝澤 次に、マイスター側からの意見を伺いたい と思います。どのように指導ニーズを把握して、 またそれを踏まえてどのようにカリキュラムを組 んでいるのか、お聞かせください。 遠藤 指導のニーズについては、県コーナーから の派遣依頼に基づき、直ちに県コーナー及び先方 の担当者と事前協議することを徹底しています。 その中で重点を置いているのは、 「依頼の目的」 滝澤 引き続きお伺いしたいのですが、指導する 「要望内容の確認」 。また「これまでの学科、実技 上で苦労していることや工夫していることはどん の授業内容や関連知識」についても確認します。 なことでしょうか? さらに「これまでの実習内容とそれに費やした 時間」「設備状況」 「先生から見た技能の評価等」 遠藤 いざ講習となると、講師の近くに生徒がな を基本に踏まえて、講習内容をその場で提案します。 かなか集まってこないことがあります。遠巻きに その後、 指導内容の細目とそれぞれの時間配分、 なってしまい、距離があるのです。そんなときは、 指導の目標を作り上げ、担当者に再確認して了解 質問しやすい環境づくりに配慮することで、自分 を得た上で、実際の講習に入ります。 の近くに生徒が集まるようにしています。 また、先生にも聴講していただき、技能の魅力 や技を伝えたいと考えています。実際に、今まで 指導を担当した学校では、どの先生も聴講してい ただいています。 技能検定 技能検定は、 「働く人々の有する技能を一定の基準により検定し、国として証明する国 家検定制度」です。技能に対する社会一般の評価を高め、働く人々の技能と地位の向上 を図ることを目的として、職業能力開発促進法に基づき実施されています。 昭和34年度に5職種からスタートし、現在では128職種について実施されています。 技能検定の合格者は平成24年度までに518万人(指定試験機関で実施するものを含む) を超え、確かな技能の証として各職場において高く評価されています。 15 パネルディスカッション ~「ものづくりマイスター制度」がもたらす相乗効果について~ 滝澤 今までの指導で、印象に残っている事例は 滝澤 そういうご苦労もあったのですね。ここで、 ありますか? 北野先生のご意見も伺いたいと思います。 遠藤 ある工業高校で、技能検定3級受検を目標 北野 私個人の意見として、このマイスター制度 に定めた指導を担当したときのことです。女子生 は、まだまだ知名度が低いのが実情ではないかと 徒が数名いたのですが、チャッキング作業をしよ 思っています。制度活用に関しては、時間の問題 うにも力が弱く締め付けられないのです。その指 や道具を揃えるための費用のこともありますが、 導には試行錯誤しましたが、技能検定受検まで事 従業員の意欲をどう高めていくかも、大事だと感 故もなく、また、試験では身に付いた技能を発揮 じました。昇給や昇格など、インセンティブを与 し結果を出すことが出来ました。 えることも必要なのかもしれません。 また、実技指導では生徒の手をとりながら作業 昔は「仕事は盗むもの」という風潮がありまし をする際の立ち方、道具の持ち方などを教えるこ たが、今の若者には、山本五十六さんの言葉にあ とが多いのですが、女生徒となると難しさを感じ るような「やってみせ、言って聞かせて、させて ました。昨年、個人情報やパワハラ、セクハラな みて、褒めてやらねば、人は動かじ」と、褒めて どについての講習を受けていますので、 「私はこ 育てることも必要です。マイスターさんにも研修 ういう指導をしますが良いですか?」と了解を得 があるようですが、「名選手は名監督、名コーチ て、指導をしました。 とは限らない」という言葉もあります。技能を伝 える側にも課題があるわけです。 16 パネルディスカッション ~「ものづくりマイスター制度」がもたらす相乗効果について~ 滝澤 ありがとうございました。ここまでの討議 宇田川 学校では一通りの作業について学びます で、 ほかのパネラーの方への質問がありましたら、 が、時間は限られているので広く浅くしか学べな お聞かせいただきたいと思います。 い部分もあります。とはいえ、実技系を増やすよ うにはしているので、板金加工の実技指導も行っ 小林 宇田川さんへ質問があります。我が社で求 ています。生徒は楽しんで学んでいると思います。 人を行ったとき、 応募してきた若者のほとんどは、 ただし、それが将来的に板金加工の職種に就きた マシニングやコンピュータで削る作業には興味を いかどうかというと、分かりかねるところです。 持ったものの、板金加工には興味を示しませんで した。若い世代の動向として、生徒たちの板金加 小林 ありがとうございます。当社では最先端の 工への興味はいかがでしょうか? 設備投資にも力を入れていますが、設計者が求め るものをきちんと作るためには、手作業での工程 も発生します。そんな板金加工に対する若者の意 識が、現状からかけ離れているような危機感を感 じたので質問させていただきました。 17 パネルディスカッション ~「ものづくりマイスター制度」がもたらす相乗効果について~ コーディネーターとしての気遣い、気づき 滝澤 次に、コーディネーター側からの意見を伺 いたいと思います。 企業・学校とマイスターのマッ チングで苦労するのはどんなことでしょうか? 林田 大阪では、機械関係の技能指導を求める中 小企業とのマッチングを多く担当しました。大 企業に従事されていた経歴を持つマイスターは、 整った環境での訓練指導を得意としています。一 方、中小企業では特化した製品の部分的加工や、 かってしまうというマッチングもありました。 「OJT型」の指導を求めています。 また、趣旨を十分理解いただけていていないと、 作業環境や設備が整っていない状況で、マイス 「マイスターは技能を持っているのだから、請負 ターが指導に工夫を余儀なくされることに気を遣 的に仕事もしてもらえる」と勘違いなさる中小企 います。足りない工具などを自身で持ち込んで指 業もあります。それを軌道修正することも、コー 導していただいたり、派遣先まで2時間以上掛 ディネーターの役目です。 滝澤 コーディネートで気を使うのはどんなこと でしょうか? 林田 マイスターから、中小企業においては基本 的な「5S」の欠落、学校に関しては急な「生活 指導」が入っての早退、遅刻などに対して苦言を 呈されることがあります。「5S」の欠落に関して は、その改善も指導のうちで、実技に反映される ものだとして納得をいただいています。 また、できる限りミスマッチは避けたいと思っ ていますので、そのためには経営者のお悩みを理 解することも大切なことです。派遣先の企業や学 校の担当者と日頃から連絡を取り合い、課題解決 に向けてはマイスターを含めた3者が一緒に、効 果的な指導が出来るよう「ケア」することを心が けています。 技能検定職種を紹介した鳥かん図 18 パネルディスカッション ~「ものづくりマイスター制度」がもたらす相乗効果について~ 「ものづくりマイスター制度」の効果、発見 滝澤 次に、マイスターを受け入れる側にとって 滝澤 宇田川さんの意見もお聞かせください。 「ものづくりマイスター制度」を活用したことに よる効果について、また新たに得られた発見につ 宇田川 技術に自信のない生徒を中心に講習を受 いてお伺いしたいと思います。小林さんから、お けさせたのですが、マイスターの技に目が輝き、 願いします。 技能向上はもとより、前向きさや積極性、道具を 丁寧に扱うなど作業への取組姿勢にも変化が見ら 小林 受講者はみんな技能的に成長出来ていま れました。 す。また、 時間を作って学んでいるわけですから、 今後、技能検定受検の対策としてだけではなく、 本人たちの志にも変化がありました。 授業の一環として、あるいは春休みや夏休みを利 この制度は、小さい会社にはとても良いと思い 用してマイスターから職業紹介、技能講習をして ます。ただ、その前に人材不足で若手が集まらな いただくという活用法も考えられると思います。 い。どうしたら当社のような小さい会社に若手の 機械のメンテナンス法を学ぶ講習会なども役に立 技能者が就職してくれるのか、そういった面も含 つのではないかと思います。 めて、この制度を上手く活用していけたらと思っ ています。 滝澤 松村さんはいかがでしょう? 松村 マイスターが若者を指導していくというこ の制度は、 素晴らしいと思います。企業としては、 他の企業の職人に「教えて欲しい」とはまず言え ません。その点、マイスターなら公的な立場で指 導してくれるわけです。職人の世界では、40代 でもまだまだ若手ということもあります。そんな 就業して日が浅い40代にも指導していただける ものづくりマイスターの技能を、ぜひとも継承し ていきたいものです。 19 パネルディスカッション ~「ものづくりマイスター制度」がもたらす相乗効果について~ ものづくりマイスターも共に成長してゆける制度 滝澤 マイスターとしての活動を通じて、気づか れたことを遠藤さんから伺いたいと思います。 遠藤 受講生から私が教わる、ということもたく さんありました。例えば、コミュニケーションを 取ることの大切さ、人を育てることの喜び、自分 自身の向上心などです。 受講生の成長を素直に喜び、自らも満足感を得 られるのは、これ以上の仕事はないと思えるほど 非常に楽しいものです。準備の段階から大変なこ とは多々ありますが、それが成長に結びつくと考 えると、大きなやりがいを感じます。 技能検定制度・技能士のロゴマーク 平成26年3月に技能検定制度・技能士を広く周知、普及する ことを目的とした「技能検定制度・技能士に係るロゴマーク」 (以 下、ロゴマーク)が公募により策定されました。 ●「Global」 「Ginou(技能)」の「G」をモチーフとして作成。 ●日の丸はその中心であり続ける人たちの決意を、人が原点で あり、原点を忘れないことでもあります。 ●整然と並ぶ姿は、 「正確なすり合わせ」 「職人」 「努力」 「技術の蓄積」 「等級」を表 しています。 今後、このロゴマークを政府、企業、団体、個人など、技能検定制度や技能士に 関わる様々な方に広く使っていただくことにより、技能士をはじめとする優れた技 能を持つ方々が社会で評価され、より多くの若年者が技能の道を志すことを期待し ています。 20 パネルディスカッション ~「ものづくりマイスター制度」がもたらす相乗効果について~ これからの「ものづくりマイスター制度」のあり方とは 滝澤 最後に、皆様からこの制度がさらに多くの もうひとつ、高校などで基礎知識を学んでから 企業や学校で活用され、若手の人材育成に効果を 実務に携わることは効率的だと思うのですが、と もたらすには、どういう点に留意していけば良い び職種では、指導をしてくれる学校はほとんどあ と思いますか? ご意見を伺いたいと思います。 りません。そういった視点から、教育機関に向け てのアプローチも必要かと思っています。 小林 この制度は、会社のためにも本人のために も役立つ制度だと思います。制度を活用しながら 宇田川 マイスターから指導を受けることで、生 資格を取得すれば、給料アップにもつながり、会 徒たちのやる気や技能力、知識が目に見えて向上 社のスキルもアップにもつながると信じていま します。マイスターから学んだ生徒が、卒業後に す。 就職して活躍しているという話もたくさん聞いて しかし、小さい会社に若い技能者が入ってこない います。教員による授業だけでは伝わらない部分 と、マイスター制度も活用したくても活用できな もあるので、経験の長い先輩から学ぶことは、生 いという現状があります。中小企業の魅力をどう 徒にとって良い刺激になっていますし、我々教員 伝えていくかも、課題だと思っています。 にとっても勉強になっています。現状では旋盤の 指導だけを受けていますが、今後はほかの技能指 導も活用していきたいと思っています。 松村 技能検定3級は、経験がなくても現職であ れば受けられると緩和されました。今後は、3級 技能士に向けてのマイスター制度の取組みも増え 遠藤 人材育成には、環境と雰囲気作り、つまり てくるかと思います。また、技能士の活躍の場が 土壌を作ることが大切だと思っています。私の父 増えれば、マイスター制度の活用向上にもつなが が農業の季節になるとよく語っていたのが「米作 るではないでしょうか。 りには88の手間ひまがかかる」ということ。米 21 パネルディスカッション ~「ものづくりマイスター制度」がもたらす相乗効果について~ 作りは、収穫して終わりではありません。加工か に産業は発展する」という本多光太郎先生の言葉 らお客様に届くまで関わるのです。人材育成でも は、まさにこの制度の認知度を高める内容として この米作りを見習い、工夫と努力を重ねることを 運用できるのではないでしょうか。今後も、あら 常々胸に刻み、長い目で見て育てていくことを肝 ゆる方々にこの制度を活用していただきたいと思 に銘じたいと思います。 います。 林田 マイスターに認定された方々は、技能レベ 北野 講演でお伝えしたように、日本の資源は人 ルが高く、知識もかなり豊富です。これを伝承す 材です。今の社会は事務屋さんが優遇されている るというのは、すごいことです。 風潮にありますが、技能を持って身を立てていく マイスターから、 「五感を使え」という言葉を ことはすばらしいことです。長期的な視点でマイ 聞くことが多いのですが、 これは「気づきを持つ」 スターというものを社会的に位置づけ、技能者を ことがいかに大切かということです。気づきを持 優遇する社会にしていく必要もあるかもしれませ つことで、会社のモチベーションをあげる。自信 ん。 が付くことで、もっと頑張ろうという意識につな 企業に関しては、従業員に対してマイスター制 がります。 度を活用して資格を取ることによって、給料アッ 基調講演で北野先生が紹介してくださった「科 プにつながるというインセンティブ。また、安全 学のあるところに技術は育つ。技術のあるところ を第一に考えることも徹底して欲しいですね。安 22 パネルディスカッション ~「ものづくりマイスター制度」がもたらす相乗効果について~ 全あってこその技能です。どこまで安全にすべき か、それは、ある業務を社員に担当させることに なったときに、その仕事を自分の息子や娘にも任 せることができるのか。そこが目安になるのでは ないでしょうか。 大変素晴らしい制度なので、さらに普及させて いきたいものです。 滝澤 ありがとうございました。この討議が、も のづくりマイスター制度がさらに活用されること のきっかけになることを祈念して、本日のパネル ディスカッションを終了したいと思います。 23 ものづくりマイスター制度の詳細は、次のホームページをご参照ください。 https://www.monozukuri-meister.javada.or.jp/
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