北園の受検を控えた中学生の皆さんへ(北園高等学校長からのメッセージ)

北園の受検を控えた中学生の皆さんへ(北園高等学校長からのメッセージ)
いよいよ間近に迫った高校入試、年末年始もなく勉強に励んでいることと思います。受検勉強は辛く苦しい
ものだと思いますが、努力は人を裏切りません。体調管理に気を付けて、最後までしっかりと勉強をやり切っ
てください。
さて、受験勉強というものに対して、現在私が考えていることを書いてみます。
皆さんのお父さん、お母さんはこういうことをおっしゃいませんか? 「もう一度学校へ行って勉強してみ
たい」と。こういうことを大人はよく思い、よく口にします。それはなぜかというと、大人は現在の仕事に関
する専門的な知識は身につけているのですが、さらにその専門性を高めようとすると、専門以外の知識が必要
になってくることを感じているからなのです。例えば皆さんは、「地理の知識は歴史を理解するのに必要だ」
とか、
「国語の説明文(評論文)を読解するのに数学の論理的思考が役に立つ」などということを聞いたこと、
あるいは感じたことはありませんか。つまり学問というものは、その系統のものだけで成り立っているようで、
実はそれがつながっていくことが最も重要なことなのです。先ほどの国語や数学といった学問が「縦」の流れ
ならば、その両者の知識を融合して活かしていくことは「横」の流れとなります。この「横」のつながりをよ
り広げていくため、つまり自分の専門性をより高めていくためには、専門とは一見関係がない知識が必要とな
ってくるのです。遺伝子工学を研究するならば、倫理などの知識は欠かせない。経済のマーケティングを行う
のに、行動心理学の知識があればより精度が上がる。こういったことを大人は経験的に知っているから「もう
一度学校へ行けたら…」と口にするのです。
この、知識が横のつながることを、私は「知の統合」と呼んでいます。私の経験では、この「知の統合」の
面白さに気が付き始めるのは、早い人で高校2年から3年生にかけてあり、社会に出ている大人は大多数の人
が実感しているようです。こうなると学習意欲は飛躍的に伸びてきます。では、中学生の皆さんに、今この「知
の統合」を自覚してもらいたい、というのでしょうか? 違います。これは将来その時が来たら体感してもら
えれば結構です。大事なのは、将来のその時に備えて、今受験勉強にしっかり取り組んで欲しいということで
す。なぜなら受検勉強というのは、例えば数学なら数学を最初から復習しますね。これは先ほどの「縦」の学
習、つまり「系統立った学習」をすることになります。受験というぎりぎりのプレッシャーの中で、自主的に
「系統立った学習」に取り組んでいく。このことが知識をより確かなものに定着させていきます。多くの都立
高校が5教科を受検科目に課していますが、中学時代により多くの教科で知識を確かなものにしていくことが
大事で、これが将来の「知の統合」の大きな基盤となるのです。これが私の考える「受験勉強の意義」です。
私は、本校の生徒に「進学先に迷ったら国公立大学を目指しなさい」と言っています。それは国公立大学が
多くの受験科目を設定しているから、つまり「知の統合」に必要な知識を身につける機会が、より多くなるか
らなのです。そういう意味で、中学生の皆さんには、是非この5教科の力を十分につけて、本校の、あるいは
都立高校の受検に臨んでもらいたいと切に思っています。皆さんが将来の「知の統合」の基盤をしっかりと胸
に抱いて、本校に来てくださることをお待ちしています。
東京都立北園高等学校
校長
牧野 敦