金属と木材の接着性: 金属-木材接着におけるエポキシ樹脂の接着性と物性

SURE: Shizuoka University REpository
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金属と木材の接着性 : 金属-木材接着におけるエポキシ樹
脂の接着性と物性
佐野, 敦子; 吉田, 弥明; 滝, 欽二; 山田, 千香子
木材学会誌. 44(3), p. 192-198
1988-05-25
http://hdl.handle.net/10297/4606
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192
[木 材学会誌
Vol.44,No.3,p.192198(1998)(二 般論文 )]
金属 と木材 の接着性
金属―
木材接着におけるエポキシ樹脂の接着性 と物性 *1
佐野敦子*2,吉 田弥明*2,滝
欽二*2,山 田千香子*2,3
Bondability Of L〔 etal to Wood Joint
Bond quality of epoxy resin wood‐ adhesives
in metal‐ wood iointS fOr structural use
Atsuko SANO*2,HirOaki YosHIDA*2,Kinii TAKI*2 and Chikako YAMADA*2,3
To make clear the bond quality of epoxy resin adhesives for structural use in metal‐
wood joints,
wood single lap shear specirnens were bonded after the application of
different surface treatments to metals. Bond quality tests were made on thenl, and visco‐ elastic
metal‐ Inetal and metal‐
properties of cured resin filrns of these adhesives were measured.
In the case of rnetal‐ metal bonding,chernical degreasing remarkably impFoved both bond quality
in dry and wet uses,except metal processed specially with zinc,恥 ′
hose wet strength deteriorated
o、
ving to easy penetration of water into the glueline because of the coarse surface.
vater‐
In the case of the metal‐ wood bonding, wet strength was reduced considerably by the 、
soaking treatment,and the glueline was delarninated completely in 24 hours. Peak temperatures of
the loSs lnodulus of the cured films soaked in water were shifted to the lower temperature region,but
recovered by a drying treatment,and the bond strength also recovered. It strongly suggests that
water penetration intO the glueline remarkably reduces the bond quality in wet uses.
Й〔
υ
θras: bondability,epoxy resin,visco‐ elastic property,surface treatment,metal‐
の場
wood ioint.
木 質 構 造 用 エ ポ キ シ樹 脂 接 着 剤 を用 い て ,金 属 と金 属 ,金 属 と木 材 の 接 着 を行 い ,金 属 の 表 面
処 理 と接 着 性 ,耐 久 性 につ い て 試 験 を行 つた 。 これ と同 時 に ,接 着 剤 硬 化 フ ィル ム の 動 的粘 弾性
を測 定 し,そ の 接 着 性 ,耐 久 性 との 関連 につ い て検 討 した 。
金 属 と金 属 の 接 着 で は,溶 剤 に よ る金 属 表 面 処 理 に よ り,接 着 性 が 大 き く向上 した 。 金 属 と金
属 の 接 着 にお い て エ ポ キ シ樹 脂 は 良 い 接 着 性 能 を示 した が ,Z― S処 理 鋼 材 は Z― S処 理 に よって
接 着 界 面 とな る表 層 へ 水 が 浸 入 しや す い構 造 にな っ て い る と推 測 され ,耐 水 接 着 強 さ は大 き く低
下 した 。
一 方 ,金 属 と木 材 の 接 着 は水 分 の 影 響 を大 き く受 け,水 浸 せ き時 間 の増 加 に伴 っ て 接 着 強 さ は
徐 々 に低 下 し,24時 間 で 完 全 に剥 離 した 。 接 着 剤 フ ィル ム で は,24時 間 の水 浸 せ き に よ って 損 失
弾 性 率 の ピー ク温 度 の 低 下 が 認 め られ ,硬 化 エ ポ キ シ樹 脂 自体 の 強 度 性 能 も水 分 の 影 響 を大 き く
受 け る こ とが 明 らか とな った 。
1.緒
University,shizuoka 422-8529
我 が 国 における大規模本構造 の普及 は目覚 しく,
問題点 とされてい る接合部 の改善 のために様 々な試
みがなされ てい る。 このよ うな状況の中で,従 来 の
鋼板 ,ボ ル ト等 による機械的接合 に,接 着剤 を併用
した構 (工 )法 ⇒が注 目されてお り,金 属 と木材 の接
Present address I株 式 会 社 キベ Kibe Co.Ltd.,
Nagoya 454-0012
2,0は
散見 されるが,ま だ十分 なデー
着 に関す る報告
タが蓄積 されてい るとは言 い難 い。
Received September 22,1997; accepted December
25,1997.本 研 究 の一 部 は第 47回
日本 木 材 学 会 大 会
(1997年 4月 ,高 知 )で 発 表 した 。
静 岡大 学 農学 部 Faculty of Agriculture,Shizuoka
金属―
木材接着 におけるエ ポキシ樹脂 の接着性 と物性
1998年 5月 ]
エ ポキ シ樹脂 は揮発分 を多 く含 まな い ため,硬 化
に伴 う体積 収縮 が ほ とん どな く,い わ ゆ る空 隙充填
性 の ある接着剤 として知 られて い る。 したが って
面 とし,飽 削仕上 げを行 った。金属 は接着 の直前 に
#150の サ ン ドペーパ で研磨 し,① 洗剤 による洗浄②
溶剤 (ト リクロロエチ レン)で 洗浄後洗剤 による洗
この ような構造部材 間 の接合部 には,エ ポキ シ樹脂
浄③ Z― S処 理 な どの表面処理 を行 った (Table 2)。
Z― S処 理 は金属表面 の接着性 を高 めるための下地
処理 であ り,詳 細 は後述す る。接着剤 の塗布量 は220
g/m2と し,金 属―
金属接着 では接着剤 を一方の試片
の片面 に塗布後約 3 kgf/cm2で 圧締 し,金 属 ―木材
木材接着 は被着面 の
接着 は木材面 に片面塗布 ,木 材 ―
,
接着剤 が 多用 されて い る。 しか しなが ら,構 造 用 と
しての エ ポキ シ樹脂 を考 える とき,そ の耐久性 を明
らか に してお くこ とが必要 で あ る。
そ こで本研 究 で は,構 造用接着剤 として最 も一 般
的 に使 用 され て い る常温硬化 タイプの エ ポキ シ樹脂
接着剤 を用 い て金 属 と金属 ,金 属 と木材 ,木 材 と木
材 の接着 を行 い,金 属 の表面処理 と接着性 ,耐 久性
について検討 した。 さ らに,接 着剤 の物性 と接着性
との関連 を調 べ る こ とを 目的 として,接 着剤硬化 フ
ィルム の動的粘弾性 の測定 を行 った。
2.実
両面 に塗布後約 10 kgf/cm2で 圧締 した。1日 圧締後
解圧 し,20° Cの 恒温室で 1週 間養生 した。
接着試験 は,常 態 および室温水浸せ き繰 り返 し処
理 (室 温水浸せ き24h→ 乾燥70℃ ±3° C24hの 2,5
回繰 り返 し),室 温水浸せ き処理後行 った。試験機 に
は容量500 kgfの 引張試験機 (島 津 オー トグラ フ S―
験 方法
500)を 用 い,ク ロスヘ ッドスピー ド10 mm/minで
2.1 供試接着剤
行 った。
接着剤 は,Table lに 示 す 2種 類 の常温硬化 タイ
プの エ ポキ シ樹脂 を使 用 した。 レ ジ ンAは 粘度 が低
2.3 動的粘弾性 の測定
く,集 成材 ボル ト接合部 へ の充填 に用 い られ ,レ ジ
ン Bは 一 般 的 に使 用 され てい るエ ポキ シ樹脂接着剤
で あ る。
2.2 接着性能試験
金属 ―
金属接着 ,木
木材接着 と比較 のた めに金 属 ―
―
材 木材接着 につ い て接着試験 を行 った。 80× 25× 5
mmの マ カバ
(気 乾比 重0.67含 水率 9.7%)と 同 じ形
状 の金属 (普 通鋼材 ,ス テ ンレス鋼 ,ア ル ミニ ウム)
を用 い,接 着面積 25× 10 mmの シング ル ラ ップの引
張 せ ん断試験 片 を作成 した。木材 の接着面 は まさ目
Table 2.
接着剤 を硬化後 の フ ィルム厚 が0.2∼ 0.5mmに
なるようにテ フロン板上 にのばし,20° Cの 恒温室で
1日 硬化 させ た。 この フ ィルム をさ らに-20° C,
20° C,60° Cで 1週 間養生 した。 また,フ ィルムヘの
水分 の影響 を調 べ るため,各 フィルム を室温水 に24
時間 または 1週 間浸せ きした。
作成 した フ ィルム を約 8× 12 mmに カ ッ トした
後,水 分 の影響 を調 べ るための試料以外 は測定 にお
ける水分の影響 を避 けるため に,減 圧乾燥機 で 3日
間乾燥 させた。 この乾燥 した フィルム をレオ ログラ
フソリッド (東 洋精機製作所)を 用 いて,測 定周波
数 10 Hz,平 均昇温速度 2° C/min,静 的引張力180 gf
を加 えて動的粘弾性 を測定 した。
Ⅳletal plates and their surface treatments
for tests.
3。
Materials and surface treatments.
S
S
P
Codes
S
P
Plain steel with sanding
Plain steel with chemical degreasing after
sanorng
ZS
Z-S treated steel with chemical degreasing
ZS/P Z-S treated plated steel with chemical degreaslng
with chemical
Stainless steel
after sanding
Al
Aluminum with chemical degreasing after
degreasing
sanding
Table
n n
A B
R R
Epoxy
Modified
* This is the
epoxy
3.1 金属 の表面処理 と接着性
Fig.1に 金属 の表面処理 と接着強 さの関係 を示 し
た。溶剤 による処理の効果 は顕著 で あ り,洗 剤 によ
る洗浄のみ行 った場合 の80 kgf/cm2(平 均値)か ら
140 kgf/cm2(平 均値 )ま で大 き く向上 した。 さらに
溶剤 による処理 を行 うことによ り,接 着強 さの向上
,
SS
Base resins
結果 と考察
1.
だけでな くばらつき幅 の低減 がみ られた。溶剤 を用
いた洗浄 では,金 属表面 の油膜 をはじめとする表面
Adhesives for tests.
Typicial
Curing agents
Polyamide amine
Modified polyamide amine
ratio of curing agent to base resin.
40 phr
100 phr
poise
600 poise
10
uses
Joints in wood structures
Bonding metals and woods
佐野敦子,吉 田弥明,滝
8 ooooo o
〇 〇 〇
●●● 各■U●
Fig。
SS
Vol.44,No.3
O U 0 〇 一 〇
Improvement effect of different surface
∩Ж希o 0 0 0
PS
zS/P
treatlnents on dry bond strength in metal―
metal joints(resin A).
Note: (― )shows the average values.
Codes: PS/S: Plain steel with sanding treatl■ ent.
PS: Plain steel with chenlical degreasing
after sanding. ZS: Z― S treated steel with
● ●廿U●
zs
o
Fig.1.
Ps
o
PS/S
8
50
:3
o ^
UOτ 2︾
O
150
0 0
0 5
一︰
Oy︶ 〓ノ
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百1 ● ●
100
200
[木 材学会誌
O O
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口
o o ■8
︱
︵撃o ヽ﹂O Ⅳ ︶ 〓FO E o﹂P0 0 E O “
150
● ● ●●+ ・lu ●
200
欽二 ,山 田千香子
AL
2. Bond strength in metal― metal ioints after
cyclic water‐ soaking test(resin A),
Legend:● :Contr01,〇 :After 2 cycles of water―
soaking treatments.◎ :After 5 cycles of
water‐ soaking treatments.
Note: (一 )shows
Codes:
chemical degreasing. ZS/P:Z― S treated
plated steel with chellnical degreasing.
the average values,
PS: Plain steel with chernical degreasing
after sanding. SS: Stainless steel with
chenlical degreasing after sanding. AL:
Aluminum 、vith chemical degreasing after
sanding.
汚 染 物 質 が ほ ぼ 完 全 に 除 去 さ れ て い る と思 わ れ
4)。
る
Z―
S処 理 鋼 材 (ZS)は 金 属 表 面 の 接 着 性 の 向上 を
期 待 して ,亜 鉛 ―鉄 合 金 被 覆 粒 を金 属 表 面 に機 械 投 射
して 得 られ る亜 鉛 ―鉄 合 金 皮 膜 に 特 殊 ク ロ メ ー ト処
理 を施 した ものである。 Z― S処 理鋼材 メッキ (ZS/
P)は ,Z― S処 理鋼材 (ZS)の Z― S皮 膜 と基材 の間
に亜鉛 メ ッキ層 を形成 させた構成 で あるつ。 これ ら
の Z― S処 理鋼材 には接着す る前 に溶剤 による処理
を施 した。本実験 において も,Z― S処 理鋼材 (ZS)
は普通鋼材 (PS)に 比 べ て高 い接着強 さを示 したが,
接着 の場合 と異 な り,金 属 と金属 の接着 で は接着層
へ の水 の進入 が 少 な く,乾 燥時 の加温効 果 に よる と
考 え られ る。
硬化温度 を変化 させ た フ ィルムの動 的粘弾性 を測
定 した と ころ損失弾性 率 の ピー ク温度 は,20° C硬 化
で は60° C付 近 に存在 したが 60° C硬 化 で は90° C付 近 に
移動 した。 これ は硬化 温度 が 高温 にな る と 為 は高
くな り,架 橋 密度 も高 くな る ことを示 して い る (Fig.
3)。
以上 の こ とか ら,室 温水浸 せ き繰 り返 し処理後
の乾燥 時 の加温 に よ り硬化 が 進 んで 接着 強 さが大 き
くな った もの と考 え られ る。
Z― S処 理 鋼材 に よる金 属 ―
金属接着 に室 温水浸 せ
メッキを施 した鋼材 (ZS/P)で は接着強 さがやや低
下 し,ば らつ きも増大 した。 メ ッキ処理 による表面
が均―で ないため,一様 な接着層が形成 されていな
い ことが観察 された。 この ことが接着強 さを低下 さ
せた原因 と考 えられ る。
3.2 金属 ―金属接着 の接着性能
場合 と異 な り,接 着強 さは大 き く低下 した (Fig.4)。
Z― S処 理鋼 材 (ZS)の 表面粗度 は Rmax20 μm"で あ
Fig。 2に 金属 ―
金属接着 の室 温水浸 せ き繰 り返 し
処理 による接着強 さの変化 を示 した。処理回数の増
カロに伴 って接着強 さは増大 した。 これは木材同士の
った が ,水 に浸 せ きした場合 は水 の浸入 しやす い構
造 で あ り,マ イナ ス効果 とな って い る と思われ る。
き繰 り返 し処 理 を行 っ た 結 果 ,前 述 の 普 通 鋼 材
(PS),ス テ ンレス鋼 (SS),ア ル ミニ ウム (AL)の
り,常 態 において は この表 面粗 さが 接着 に有効 で あ
1998年 5月
金属―
木材接着 におけるエポキ シ樹脂 の接着性 と物性
]
3.3 金属―木材接着 の接着性能
Fig.5に 普通鋼材 (PS)一 木材接着 の室温水浸 せ き
処理 による接着強 さの変化 を示 した。接着強 さ,木
破率 ともに浸 せ き時間 の増加 に伴 つて徐 々に低下
し,浸 せ き後24時 間で完全 に剥離 した。破壊面 を見
る と金属側 についた接着層 の割合 は,浸 せ き後 0
∼ 3時 間 の間ではほ とん どが金属側 に付着 していた
が, 6時 間 を過 ぎたあた りで木材側 へ の付着 が多 く
な り始 め,24時 間後 では接着層 の80%以 上が木材側
に付着 していた (Fig.6)。 この ことか ら金属―
木材接
せ
とともにま
の
ず木材
着 では,室 温水浸 き時間 増カロ
へ,次 に接着層へ と水が進入 し,は じめは木材 と接
1011
着層 の接着が緩 み,続 いて接着層 と金属間 の接着 が
緩 む と考 えられる。木材 は多孔質 で あるためにア ン
カー効果 で接着性 が ある程度保持 されるが,金 属 で
00
101°
00
QO
︵
\OCゝ0︶ ヽ国 ヽ
国
電●
。
O : 20"C cure, O :
60'C
cure.
Notes: E : storage
modulus, E" : loss modulus.
●
PS
ZS
Water-soaking time (hr)
Fig.
5.
Note:
0 09 0 す O n ︶0
0
●●+ ^lu ●
n 日u o o
,
50
0 1 2 3 61224
● ・●
●
100
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0〓︶ 〓メ。Eo﹂
●ヽ﹂
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︵
平
150
● ● u 一
■ ■ ●
200
●〓u十
: O: -20"C cure,
螢 u ●口 下o ● ●
tures.
Legend
●● ●■丁 ● ●
Dynamic visco-elastic properties of cured
resin A films by various curing tempera-
●・●キ●U
3.
0 0 0
5 0 5
Fig.
●● ●
200
●● ■ ︱ ● o
100 150
50
Temperature ('C)
● ● ●●●
0
。メ︶ 〓ギOCo﹂
oヽ﹂
のOCOm
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事
-50
0
200
■︱丁 〓
107
● ●● ● ●
”﹂﹁op 多
︵ぺ ︶ o﹂⊇ 一
0 0
100
80
60
40
20
ZS/P
Bond strength of plain steel-wood joints after
continuous water-soaking (resin B).
(-) shows the average values.
Bond strength of Z-S treated metal-metal
joints after cyclic water soaking test (resin
A).
Legend: O: Control, O : After 2 cycles of water
Fig.4.
Note:
Codes:
soaking treatment.
(-) shows the average values.
PS: Plain steel with chemical degreasing
after sanding. ZS: Z-S treated steel with
chemical degreasing. ZS/P: Z-S treated
plating steel with chemical degreasing.
佐野敦子,吉 田弥明,滝
はその ような効 果 が な く,最 終 的 に接着剤層 の付着
が 木材側 に傾 い た もの と考 え られ る。
しか しなが ら,木 材 同士 の接着 の場合 で も,24時
間 の浸 せ きで はア ンカー部 に水 が 浸透 し,そ のア ン
カー効 果 が 薄 れ て接着強 さが低下 した もの と思われ
[木 材学会誌
Vo1 44,No.3
る (Fig.7)。
金属 と木材 の接着 にお い て室温水浸 せ き処理 によ
って接着強 さが 大 き く低下 した理 由 として,水 浸 せ
きに よって金 属 は寸 度変化 しな い が ,木 材 は膨 潤 す
るた め に接着層 に応力 がかか った こと も原 因 の一 つ
と考 え られ る。しか し両 方 が膨 潤 す る木材 ―木材接着
の場 合 で も接 着 強 さが 大 き く低 下 して い る こ とか
●
● ● ●
● ●
0
8
ら,接 着層 自体 に も変化 が起 こってい る と考 え られ
る。
そ こで ,フ ィルム に室温水 浸 せ き処理 を して動的
粘 弾性 を測 定 した結果 ,損 失弾性 率 の ピー ク温度 は
常態 の50℃ か ら40℃ に低下 した,貯 蔵弾性率 も浸せ
き時 間 の増加 に よ りやや低下 した (Fig.8)。 エ ポキ
0
6
∽o﹂﹁0〓0一
︵
“
へ︶ E一
P
∽
●● ● ●
100
欽二,山 田千香子
0
4
シ樹脂 は架橋構造 が 網 目構造 のた め,吸 水率 の小 さ
0
2
●
0 1 2 3 6 12
24
Water-soaking time (hr)
れたア ミン系硬化剤 のア ミンが水 と置換 し,そ の水
分子 を樹脂 中 に取 り込 むた めで あ るの。 したが って
,
Fig.6. Adhered resin on the fractured surface of
metals in plain steel-wood joints after continuous water-soakng (resin B).
室温水浸 せ き処理 に よって接着剤 は可塑 化 され て柔
らか くな り,接 着剤層 の強 さを低 下 させ てい る と思
われ る。
即 ち,金 属 と木材 の接着 で は室 温水浸 せ き処理 に
1011
● ●●
1010
︵
福ヽo長ザ︶ ヽ
国L
︵ぺ ︶ o﹂⊇ 扇﹂﹁oo3
100
80
60
40
20
な接着剤 で あるが ,吸水 に よ り接着層 が 吸水膨 潤 し,
接着層 にひず み を発 生 させ ,結 果 として接着強 さを
低減 させ るの。エ ポキ シ樹脂 の吸水 は,樹 脂 に配合 さ
0
200
108
ー
ユー
●
●●ユ●●●
︱ 丁
0 0 0
5 0 5
0〓︶ 〓ψOCo﹂
︵
ヽ﹂
︺∽oCOm
ヽo
109
7
1。
-50
0
50
100 150 200
femperature ("C)
0 1 2 3 6 12
24
Fig.8.
Water-soaking time (hr)
Fig.
7.
Note:
Bond strength of wood-wood joint after continuous water-soaking (resin B).
(-) shows the average values.
Dynamic visco-elastic properties
of
cured
resin B films with various water-soaking
treatments.
Legend:
O: Control, O: Water-soaking, O:Dry
after water-soaking.
Notes:
E' : storage modulus, E" : loss modulus.
金属―木材接着 におけるエ ポキシ樹脂 の接着性 と物性
1998年 5月 ]
,乾 燥 に よ リフ ィル ム内
よ り,木 材 の膨 潤 に伴 って接着層 に応力 が生 じる と
に もどった こと (Fig.8)は
ともに,接 着層 自体 も可塑化 され て柔 らか くな るた
め,金 属 と接着層間 の接着 が 弱 まって,接 着強 さが
の水 分 が取 り除かれ ,本 来 の ピー ク温度が 得 られた
もの と思 われ る。 この よ うに,可 塑化 され て柔 らか
低下 した と考 え られ る。
以上 の ことよ り,エ ポキ シ樹脂 の接着性能 には水
くなって いた 接着剤 は乾燥 して硬 さを取 り戻 し,ア
ンカー効 果 も本 来 の 役 割 を果 た す こ とが 可能 に な
り,高 い木破率 を示 す ようになった と思われ る。
分 が 大 き く影 響 して い る こ とが 明 らか にな っ た た
め,室 温水浸 せ き後乾 燥 して接着性能 の挙 動 を調 べ
4.結
た。その結果 ,Fig.9に 示す よ うに室温水浸 せ き処理
に よって大 き く低下 した接着強 さは,乾 燥 に よ りあ
る程度 回復 した 。 3時 間 の室温水浸 せ きで 5%以 下
となっていた木破率 は,乾 燥 に よ り常態 の とき とほ
ぼ 同等 となった 。 また , 6時 間 の浸 せ きで はす べ て
の試験 片 で木破率 は0と な ったが ,乾燥 に よ り50%を
示す もの も現 れた。 この こ とは,以 下 に述 べ る固化
した接着剤 自体 の粘弾性挙動 か ら判 断 して,乾 燥過
程 にお ける接 着性能 の 回復 が 関係 して い る と思 われ
エ ポキ シ樹脂 を用 いて金属 と金 属 ,金 属 と木材 の
接着 を行 い,そ の接着性 ,耐 久性 につ いて試験 し,
また,接着剤硬化 フ ィルムの動 的粘弾性 を測 定 して,
次 の結論 を得 た 。
1)金 属 の表面処 理 はサ ンデ ィ ング後洗剤 に よる
洗浄 のみ よ り,溶 剤 に よる処理 を加 えた方 が 高 い接
着強 さを示 した 。適 当な表面処理 を行 う こ とで ,接
着強 さが 向上 しただ けでな く,ば らつ き幅 も小 さ く
なった 。
る。
す なわ ち,室 温水浸 せ き処理後 ,乾 燥処 理 を施 し
た接着剤 フ ィルム の損失弾性 率 の ピー ク温度が 60° C
0
6
0
4
0
2
けな い ため,室 温水浸 せ き繰 り返 し処理 に よるカロ
温
効 果 によって 向上 した。しか しなが ら,Z― S処 理鋼
材 に よる金 属 と金属 の接着 で は,処 理面 の粗 さに よ
0
0
〇
一 8 8
50
り水 が 進入 しやす い構造 になって い る と推 察 され,
接着強 さが低下 した 。
4)金 属 と木材 の接着 で は,水 浸 せ き時間 の増カロ
▲
〓︶ ●■ 下0● 0
o o 3o 8
■● ●■丁●
■︱ 丁 ■
100
0
036
Water-soaking time (hr)
9.
S処 理鋼
3)普 通鋼材 (PS),ス テ ンレス鋼 (SS),ア ル ミ
ニ ウム (AL)に よる金 属 と金属 の接着 で は,接 着層
へ の水 の浸入が少 な く,接 着強 さは水分 の影響 を受
O O OO O O
● ●● ● ● ●
0
8
0〓︶ 〓POCo﹂
むヽ﹂
O﹁EOm
︵
ψ
準
150
2)常 態 にお い て Z― S処 理鋼 材 (ZS)は ,普 通鋼
材 (PS)よ り優 れた接着性 を示 したが ,Z―
材 メ ッキ (ZS/P)は Z― S処 理鋼材 (ZS)に 比 べ て
20%程 度 の接着強 さの低下 が認 め られた。
0
0
︵ぺ︶ Φ﹂
里お﹂﹁oo3
200
Fig.
論
Bond strength recovery by drying treatment
of plain steel-wood joint after water-
に伴 って接着強 さは徐 々 に低下 し,浸 せ き後 24時 間
で 完全 に剥離 した 。 しか し,水 浸 せ きによって低下
した接着強 さは乾燥 に よ りあ る程度 回復 す る こ とが
確認 された。
5)動 的粘弾性 の測定結果 で は,損 失弾性率 の ピ
ー ク温度 は水 浸 せ きによって低温側 に移行 した 。 エ
ポキ シ樹脂 が水 の影響 で 可塑化 された ことが 原 因 の
一 つ と考 え られ る。 また ,水 浸 せ き後 の フ ィル ム を
再 度乾燥 させ る こ とに よ リフ ィル ム 内 の水分 が 取 り
除 かれ,本 来 の ピー ク温度 に回復 す る こ とが認 め ら
れた。
以上 の ことか ら,金 属 と木材 の接着 にお けるエ ポ
キ シ樹脂接着剤 の使 用 には,耐 水性 に関 して何 らか
の対 策 を とる必 要 が ある と思われ る。
soaking treatment. (resin B)
After water-soaking treatment, C:
After additional drying treatment.
Legend: O :
Note: (-)
shows the average values.
謝
辞
本研究 の遂 行 に当 た り,接 着剤 を提供 して い ただ
佐野敦子,吉 田弥明,滝
いた大鹿振興榊,コ ニ シ帥及 び試料鋼材 を提供 して
いただいた住金鋼材側 に厚 く御礼申 し上 げます。
文
献
1)手 塚 升, 山田伸典 :木 材工業 49(6),269273(1994).
2)和 田 博 ほか 4名 :木 材学会誌 41(2), 151-
欽二,山 田千香子
[木 材学会誌
Vo1 44,No.3
158(1995).
3)和 田
博 ほか 4名 :木 材学会誌 42(4),369
375(1995).
4)柳 原栄 一 :接 着 の技術 13(1),8-15(1993).
5)住 金鋼材い :“ 装飾建材 (ア ダ ンテル)"資 料
6)元 起 厳 :接 着 の技術 14(3),25-29(1994).
7)益 田 豊 :接 着 の技術 14(3),34-40(1994).
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