公共経済分析II 1 講義ノート7 佐藤主光(もとひろ) 一橋大学経済学研究科・政策大学院 税負担の帰着 2 税金の通念と実際 通念 実際 誘因効果 減税は労働供給 所得効果(-)と代替効果(+) や貯蓄を喚起する が反対に作用する 税の負担 税を払う主体(企 業等)が税を負担 する 市場の構造(弾力性等)に依 拠して税負担は転嫁する 税のコスト 納税額がコストで ある コストは逸失利益(超過負 担)であり、納税額は所得移 転に過ぎない 3 参考:法人税の負担の建前と実際 建前(制度) 実際(経済的帰結) 利益を出している 法人企業 雇用・賃金の低下⇒労働者の負担 製品価格への上乗せ⇒消費者の負担 税の支払い≠税の負担 4 税負担の転嫁 課税の帰着(部分均衡分析) 5 税負担の帰着 法律(制度)上、税を負担することになっている主体が 経済的に税を負担するとは限らない 税負担の転嫁⇒税の帰着問題 経済的税負担=課税による支払う価格の上昇、受け取 る対価(例:賃金など)の下落 税の経済的帰着は法律上の条文や制度の理念・意図 ではなく、市場の構造(=価格弾力性)に依存して決ま る。 ⇒市場の構造(需要・供給の価格弾力性=経済主体 の反応(誘因))への理解が不可欠 6 税の負担:法律対経済学 誰の負担? 法律学 直接税=所得税・ 法人税 納税者=個人・企業 市場構造(価格弾 力性)によって税は 転嫁 間接税=物品税な 消費者 ど 経済学 ⇒ 税の支払い≠税の 負担 7 モデルの前提 X財市場に着目した部分均衡分析 ⇔ 一般均衡分析=他の市場の変化も考慮 X財市場は完全競争的 -消費者・企業は価格受容者 X財市場に物品税を課す(従量税) 制度上、物品税(間接税)は消費者の負担 8 市場均衡の変化 q=X財価格 消費者負担 q1 q0 = p0 p1 F 税率=t E G Dx (q ) 生産者負担 0 S x (q ) x1 9 x0 X財生産量 市場均衡の変化(消費者サイド) q=X財価格 消費者負担 S x (q ) 税率=t q1 q0 = p0 p1 F 税率=t G Dx (q ) 生産者負担 0 E x1 10 x0 X財生産量 市場均衡の変化(生産者サイド) q=X財価格 消費者負担 q1 q0 = p0 p1 S x (q ) F 税率=t E G 税率=t Dx (q ) 生産者負担 0 x1 11 x0 X財生産量 市場均衡の変化 q=X財価格 消費者負担 S x (q ) 税率=t q1 q0 = p0 p1 F 税率=t E G 税率=t Dx (q ) 生産者負担 0 x1 12 x0 X財生産量 市場均衡の変化(例) X財価格 消費者負担 =X財1単位に つき10円 S x (q ) 税率=20円 F 110円 20円 100円 E G 90円 税率=20円 Dx (q ) 生産者負担 =X財一 単位につ き10円 0 x1 13 x0 X財生産量 価格弾力性 ・ 需要や供給の価格に対する感応度は「弾力性」によって測られる: 需要の価格弾力性=(需要の減少率)/(価格の変化率) − ∆D ( q ) / D ( q ) ∆q / q = − D ' (q ) q D (q ) = 供給の価格弾力性=(供給の増加率)/(価格の変化率) = p ∆S(p) / S(p) = S' (p) S(p) ∆p / p 価格弾力性は他の消費・生産に対する代替可能性の程度に依存 14 数式による表現 S ( p ) = D( p + t ) ⇒ S ' ( p )dp = D' (q )(dp + dt ) q D' dp D' (q) −εD D ⇒ = = = dt S ' ( p ) − D' (q ) p S '− q D' ε S + ε D S D εS dq dp ⇒ = 1+ = dt ε S + ε D dt D=S 課税前:p=q 15 ケース:税負担は消費者に帰着 X財価格 X財価格 Dx (q ) q 1 F Dx (q ) S x (q ) 0 税率=t q0 = p0 0 E x0 F q1 q =p 0 X財生 産量 0 税率= t E S x (q ) x0 X財生 16 G x1 産量 ケース:税負担は生産者に帰着 X財価格 X財価格 S x (q ) S x (q ) q =p 0 q0 = p0 E p1 税率=t p1 G 0 x0 F 0 E Dx (q ) 税率= t G Dx (q ) X財生 産量 0 x1 x0 X財生 17 産量 まとめ 需要の価格弾力性 ゼロ 供給の価格弾力 性 有限 有限 有限 無限大 ゼロ 無限大 有限 税負担の帰着 消費者 生産者 価格弾力性が相対的に低い方に、税負担がより多く帰着 需要の価格弾力性><供給の価格弾力性 ⇔ 消費者への帰着=Δq<>Δp=生産者への帰着 18 再論:課税の部分均衡分析 X財価格 賃金 収益率 需要サイド負担 S x ( p) 税率=t q1 q0 = p0 p1 =供給関数 F 税率=t E 雇用(労働) 投資(資本) G 税率=t 要素課税 に拡張 Dx (q ) =需要関数 X財生産量 供給サイド 負担 0 x1 19 x0 社会保険料と税等価 20 社会保障の機能 社会保障(年金・医療・介護)の位置づけ=機能の曖昧さ 保険か再分配か? 社会保障の機能 財源の原則 社会保険料 保険 応益負担 受益と負担に対応関係 受益への対価 (所得)再分配 応能負担 再分配=受益-負担 実質的には税 21 「こうもり」としての社会保険料 社会保険料は労使で折半されている ⇒事業主負担は誰の負担? 事業主負担の位置づけ 企業の労働コスト 企業側 社会保障の世代間格差 経済学者(内閣府) 労働者 厚生労働省 企業 22 社会保障財源の内訳 社会保険料 55.4兆円 (23%) 国 29.3兆円(31%) 民間事業主拠 出 21.6兆円 (23%) 地方 9.9兆円 (10%) 23 被保険者拠出 29.3兆円(31%) 税 39.2兆円 (23%) 公的事業主拠 出 4.5兆円(5%) 健康・介護保険 6.8兆円 (医療4.9兆円) 厚生年金 12.1兆円 (介護1.9兆円) 出所:「平成21年度社会保障給付費」 国立社会保障・人口問題研究所 ※医療・介護の内訳に関しては試算値 雇用・ 労災 保険 2.0兆 円 児童手当 その他 0.2兆円 0.6兆円 社会保険料労使折半 制度上、厚生年金、健康保険の保険料は労使で折半 =雇用主・労働者は半分ずつ保険料を「支払う」 ⇒ 労働者・雇用主の社会保険料「負担」は半分ずつ? 保険料率を一定に、雇用主の拠出割合を引き上げれ ば、労働者の負担は軽減? 基礎年金の「消費税化」で雇用主拠出が減ることは雇 用主のみの利益? 24 社会保険料の労使折半 賃金率 例:厚生年金の保険料 料率15.35%(2008年度) 対象:月収・ボーナス 保険料分担:労使折半 労働者に支払う賃金 =労働コストー雇用主負担 労働供給: LS (w) B 労働コスト: W 1 社会保険料 労働者に支払う賃金 雇用主負担 A 労働者負担 手取り賃金: w1 C 労働需要: LD (W ) 0 L1 L0 労働者に支払う賃金 =手取り賃金+労働者負担 労働 25 社会保険料の労使折半 賃金率 労働者に支払う賃金 (=労働コストー雇用主負担) の低下 B 労働コスト: W 1 社会保険料 例:厚生年金の保険料 料率15.35%(2008年度) 対象:月収・ボーナス 保険料分担:労使折半 労働供給: LS (w) 労働者に支払う賃金 雇用主負担 A 手取り賃金: w1 労働者負担 C 労働需要: LD (W ) 0 1 L L0 労働者に支払う賃金 (=手取り賃金+労働者負担) の低下 労働 26 社会保険料の労使折半 賃金率 労働供給: LS (w) 社会保険料 労働者に支払う賃金 B 労働コスト: W 1 D 雇用主負担 A 労働者負担 手取り賃金: w1 C 労働需要: LD (W ) 0 1 L 2 L 0 L 労働 27 給付付き税額控除の均衡分析 給付付き税額控除の利益は部分的に雇用主(企業)に帰着 ⇒「帰着」の 程度は労働需要の「弾力性」に依存 雇用主の利益=賃金の低下⇒労働需要を喚起 賃金の低下なしには雇用は増加しない⇒賃金を低下させないで、雇用を 高めるには労働需要の上方シフトが必要⇒労働需要促進政策! 給付付き税額 控除の機能 低所得層支援 現行の労働者を対象 就労促進 賃金の調整、需要の構造的 28 変化が不可欠 賃金率 給付付き税額控除の帰着 労働供給 C 税額控除 (賃金補助) A 均衡賃金 (当初) 雇用主 の利益 均衡賃金 (改革後) B 労働需要 0 雇用量 (当初) 雇用量 (改革後) 29 社会保険料(事業主負担)の帰着 30 岩本=濱秋(2006)「社会保険料の帰着分析:経済学的考察」 税の資本化 31 資本化 地方公共サービスからの受益、固定資産税の負担が土地・住宅の 価格に反映 土地・住宅価格 =F(受益、税負担、環境要因) =定数項+α*公共サービス+β*地方税負担+γ*環境要 因+かく乱項 土地・住宅の購入=将来の固定資産税の支払い義務も抱き合わせ で購入 土地・住宅への課税⇒現在の土地・住宅保有者に帰着 ポイント:「足による投票」=住民移動に伴う土地・住宅需要の変化 土地(住宅)価格と固定資産税の「資本化」 地方公共財 土地価格 固定資産税率 33 V = Σ t =1 将来の固定資 産税支払い B( g ) − τV B( g ) − τV = t (1 + r ) r 市場金利 V= B( g ) = V (g, t) r +τ 現在の地価に反映 (+) (-) Oates, W.E., 1969. The effects of property taxes and local public spending on property values: Anempirical study of tax capitalization and the Tiebout hypothesis. Journal of Political Economy77(6), 957-971. 林正義,2003.「社会資本と地方公共サービス:資本化仮説による地域別社会資 本水準の評価」『経済分析』(171),28-46,2003. 被説明変数:賃貸住宅の割引現在価値、推定方法:固定効果モデルと変量効果モデル、サンプルの大 きさ=通常の推定では 230、2SLS では 184 固定効果モデル 有意に マイナス 変量効果モデル 固定効果モデル 変量効果モデル (2SLS) (2SLS) 固定資産税実効税 -0.478 *** -0.527 *** -0.496 ** -0.816 *** 率 (0.042) (0.043) (0.252) (0.146) 市町村社会資本ス 0.033 0.154 ** 0.620 0.621 *** トック (0.062) (0.061) (0.506) (0.183) 人口一人当たり県 -0.213 -0.153 -2.078 * -0.105 民所得 (0.272) (0.256) (1.328) (0.499) 宅地面積 1.388 *** 0.650 *** 1.475 ** 0.213 (0.359) (0.113) (0.864) (0.180) 0.489 ** 0.224 *** -0.001 0.193 *** (0.268) (0.067) (0.627) (0.081) -0.102 ** -0.100 ** -0.204 ** -0.124 ** (0.051) (0.050) (0.113) (0.081) -0.082 ** -0.004 -0.008 0.009 保護者数 (0.047) (0.043) (0.106) (0.065) 人口当たり犯罪認 0.037 0.065 -0.503 0.055 知件数 (0.041) (0.041) (0.081) (0.061) 人口当たり離婚件 0.693 *** 0.853 *** 0.666 *** 0.786 *** 数 (0.123) (0.109) (0.253) (0.179) 第一次産業比率 -0.179 ** -0.175 *** -0.882 -0.005 (0.057) (0.050) (0.110) (0.074) 3.353 4.427 *** -5.019 -0.385 (2.858) (1.218) (7.974) (2.120) 人口密度 地方交付税依存度 人口あたり被生活 定数項 注: ***は 1%、**は 5%、*は 10%の有意水準で帰無仮説が棄却されたことを示し、括弧内の数値は係数の標準誤差 を示す。また、2SLS は 2 段階最小二乗法による推定結果である。なお、年次ダミーは、通常の推定では 4 ヵ年分、2SLS を用いた推定では 3 ヵ年分含まれている(報告結果は省略) 。被操作変数=固定資産税実効税率、人口当たり県民所得と 市町村社会資本。操作変数=すべての外生変数と、説明変数と被操作変数の 1 期前の値。 財政要因 の「資本化」 推計期間:1983年、1988年、 1993年1998年、2003年 サンプル:東京都を除く46道 府県 注:その他、経済要 因等を説明する変数 の効果は一部略 出所:宮崎・佐藤 (2008) 節税(タックス・プランニング)の利益は? 法人税率 現在の株価=将来収益(配当等)の現在価値 課税前収益 Π − (τΠ − ∆T ) Π (1 − τ ) + ∆T P = Σ t =1 = t r (1 + r ) Π (1 − τ ) + ∆T ⇔ r= P 節税による納税 額の圧縮 裁定条件 他の資産(国債等) の収益率=株購入の 機会コスト 将来の節税の利益は現在の株価に反映 節税額 ⇒株価 新たに株を購入する投資家の収益率は(節税機会のない)他の資 産の収益率と同じ⇒節税の利益は現在の株主に帰着 35 課税帰着の一般均衡分析 36 帰着の決定要因 部分均衡分析 価格弾力性 ⇒弾力性の相対的に低い(高い)方に税負担が 多く(少なく)帰着 一般均衡分析 生産技術 -生産要素(労働・資本)間の代替可能性 ⇒要素需要の弾力性に影響 -生産要素の集約度 財・サービス間の代替可能性 ⇒需要の価格弾力性に影響 37 経済循環図 労働力・投資資金 製品(財)・サービス 生産者ら 賃金・利払い(配当) 売上金 市場 市場 賃金・利払い(配当) 家計ら 労働力・投資資金(貯蓄) 代金 製品(財) ・サービス 38 例:税負担の帰着の一般均衡 奢侈品への物品税 生産者価格の減少・生産水準の減少 生産に投入する労働など生産要素への需要減 雇用の減少・賃金率の低下 労働者の負担 39 課税の一般均衡 賃金 X財価格 労働市場 X財市場 Lx ( w, p0 ) LS (w) w 0 w1 Lx ( w, p1 ) 労働者 の負担 E q =p 0 G L1 0 物品税 率=t E 供給サイ ド負担 L0 G p1 労働市場 に波及 0 S x (q ) F q1 Dx (q ) 生産の縮小 雇用量 0 x1 x0 X財生 40 産量 法人税の帰着(?) 通念 課税ベース 利潤=レント 実際 企業所得(資本所得) π = pF (K , L ) − wL − rK π + rK = pF (K , L ) − wL 法人税=企業の投資に対する課税 41 「部分要素税」としての法人税 要素税 ・インプットとしての資本(=設備投資)への課税 -労働所得税も要素税(労働はインプット) 部分的 ・「法人部門」の資本のみに対する課税 ・非法人部門(自営業者等)の投資には法人税は 課せられない 42 法人課税の論点 法人税の負担 ⇒ 転嫁=誰が経済的に負担? 法人課税の経済効果⇒企業の投資・雇用を阻害? 経済学者のコンセンサスと世論の認識のギャップ: 例:法人税・社会保険料の労使折半、法人企業への応益課税 ⇒経済的帰結・帰着について経済学者の間で(少なくとも一 定の)合意があっても、世論を納得させ、政治的合意を形成 するに至っていない ⇒世間は「合理的」経済主体ではない?経済学者はBad Teacher? 43 国内立地企業の利潤最大化 Max{ L , K } pF (K , L ) − wL − ( ρ + τ ) K 法人課税 ( ) pFK K * , L* = ρ + τ = r pFL ( K * , L* ) = w 労働需要に も影響 資本の使用 者費用 ・(海外を含む)投資家に最低限保証 するべき収益率 ・当該企業が外国で 得られる収益 =国内投資の機会コスト 44 法人税の帰着 法人企業 投資収益率 S (ρ ) 企業サイド負担 「人間」に転嫁 r1 r0 = ρ0 ρ1 税率=t =供給関数 =投資家 F 税率=t E G K (r )=投資関数 =企業 投資家サイ ド負担 0 45 投資 K1 K0 法人税と経済主体 経済主体 需要サイド 企業 =組織 供給サイド 投資家 ステイクホル ダー 経営者 労働者 消費者 株主 帰着パターン 報酬の低下 賃金・雇用の低下 製品価格の上昇 配当(収益率)の 低下 46 法人課税の「一般均衡効果」 「風吹けば桶屋が儲かる」 ある財貨・部門への課税が他の市場に対して波及効果 を及ぼす 法人課税=直接的には法人部門で需要される投資か らの収益(=配当+内部留保)に対する課税 ⇒法人企業製品市場、非法人企業製品、労働市場、 非法人部門を含む資本市場まで波及 ⇒消費者、労働者、(非法人部門を含む)資本家に影 響 留意:法人課税=法人企業の資本コストに影響 47 法人税負担の帰着の一般均衡 法人税 設備投資の減少 =生産水準の減少 生産に投入する労働など 生産要素への需要減 投資家(株主) =資金供給者に帰着 製品価格の上昇 消費者の負担 雇用の減少・賃金率の低下 労働者の負担 48 法人課税の一般均衡 賃金 資本収益率 労働市場 L ( w / p, r 0 / p ) 資本市場 K ( r / p, w / p ) S L (w) r 1 F 1 L ( w / p, r / p ) w 0 1 w 労働者 の負担 E 国際的 資本移動 ρ =r G 法人税 =τ 0 E G 労働市場 に波及 0 L1 L0 生産設備の縮小 雇用量 0 K1 K0 投資 49 法人税 法人所得 = 配当 + 内部留保 法人税の帰着 法人企業の「資本コスト」 (=資金調達コスト)増 製品価格へのコストの上乗せ 生産を労働で代替 代替効果 法人企業製品の価格増 =>消費者負担 資本需要減 労働需要増 =(1) =(2) 法人企業製品への需要減・非法人企業製品への「代替」 産出量効果 法人企業の生産水準減 非法人企業の生産水準増 50 資金(資本)需要減 =(3) 労働需要減 =(4) 資本需要増 =(5) 労働需要増 =(6) 法人税の帰着(その2) 表2.4:法人課税の波及効果 負担の帰着 変化 財市場 法人企業製品価格の上昇 消費者の負担 労働市場 労働需要の変化 <0ならば労働者の負担 = = 資本市場 (2) + [(4)+(6)] 代替効果(-)+産出量効果(?) 資本需要の変化 = = (1) + <0ならば投資家の負担 [(3)+(5)] 代替効果(-)+産出量効果(?) 51 法人課税の一般均衡 賃金 資本収益率 労働市場 資本市場 代替効果=(2) 代替効果=(1) 産出量効果 w 0 E 非法人部門=(6) 産出量効果 E r0 法人部門=(4) 非法人部門=(5) 法人部門=(3) 労働需要 0 L0 雇用量 資本需要 0 K0 投資 52 法人税の帰着(その3) 法人企業の製品価格の上昇(=消費者への帰着)の程度は、 同製品に対する需要の価格弾力性(より厳密には、他の財 貨との「代替」の容易さ)に依存。 ⇒価格弾力性が高いほど、消費者への帰着の程度は低い 「産出量効果」(労働需要変化=[(4)+(6)];資本需要変化= [(3)+(5)])は、法人企業が非法人企業に比べて、資本(機械 設備)を労働に比して多く需要している(=「資本集約的」)か、 労働を資本に比して多く需要しているか(=「労働集約的」) に依存する。 法人税負担の帰着(消費者、労働者、投資家の誰がどれだ け多く負担するか)は、製品需要の価格弾力性、資本と労働 への需要の価格弾力性、生産技術(資本集約的か、労働集 約的か)に依存しており、確定的ではないが、帰着のパター ンは単純(=企業が負担する)ではない。 53 二つのアプローチ 資本供給 着目点 静学モデル 一定 法人課税等が他部門に及ぼす効果 産出量効果 代替効果 動学モデル 可変的 法人課税等が時間を通じて経済成長(資 本蓄積)に及ぼす効果 54 税の帰着(短期と長期) 短期供給関数 税率 F(長期) S x ( p ) 長期供給 関数 q1 短期 E p0 = q0 p1 長期 G(長期) H(短期) 税率 Dx (q ) 0 x1 x0 生産量 55 短期と長期 均衡 帰着 例 短期 E⇒H 全て供給者に 帰着 企業数は一定 長期 H⇒G 一部需要者に 転嫁 新規の参入等あり 56 法人税の帰着(短期と長期) r 短期資本供給 r F 1 税率 G ρ0 = r0 短期 E 長期資本 供給 長期 資本の 流出 H 税率 K (r ) 0 K1 K0 資本 57 短期と長期 均衡 帰着 短期 E⇒H 長期 H⇒G 全て株主(投資家) に帰着 需要者(法人企業) サイドに帰着 ⇒労働者等に転嫁 ただし、内部留保資金の場合、投資家=法人企業 58 法人税の長期的効果 法人課税 投資収益率の低下 投資家の投資意欲の低下 海外への資金流出 課税に対して資本(資金)供給は弾力的 雇用機会の縮小・賃金の低下 労働者の負担=帰着 59 グローバル化と法人税 r 国内外投資家は 海外市場で一定 の収益率を確保 r F 1 税率 ρ0 = r0 G E 長期資本 供給 H K (r ) 0 K1 K0 資本コストの増加 ⇒資本需要の低下 =資本(企業)の流出 資本 60 グローバル化と法人税(その2) π = pF ( K ) − rK − W ⇒ π + W = pF ( K ) − rK 賃金等 F r = ρ +t 資本税率 E 課税後 収益率 ρ 資本需要 r = pFK ( K ) 0 課税後 投資 課税前 投資 ⇒ K D = K (r /61p ) 法人課税の「帰着」 帰結 負担の転嫁 企業の他地域 への流出 負担の帰着 製品価格の引き上げ 消費者 雇用の縮小・賃金の引き下げ 労働者 配当・投資収益の低下 ⇒長期的には成長が低下 投資家(長期的 には労働者等) 地域内雇用の縮小、空洞化 労働者等 62 参考: 63 生産可能性フロンティアの導出 F(X,Y)=0: 生産効率的なXとYの組み合わせ ⇒所定のYに対して、Xの生産量を最大化 資源(生産要素)制約と生産技術の下、(1)技術的効 率性と(2)配分効率性を充足 技術的効率性=生産関数上での生産 配分効率性=X財生産とY財生産の「技術的限界代 替率」が一致 64 生産可能性フロンティア Max{ K X , KY , LX , LY } X = G X ( K X , LX ) Subject to G Y ( K X , LY ) = Y K X + KY = K LX + LY = L =>最大化されたXは最適化問題の「外生変数」の関数 X = G X ( K X* (Y , K , L), L*Y (Y , K , L)) = f (Y , K , L) 65 エッジワース・ボックス:生産可能性フロンティア LX K 0Y KY MRS KL ρ X ∂G X / ∂K X (K , L ) ≡ ∂G X / ∂LX * X * X ∂G Y / ∂K Y Y = ≡ MRS KL ( K Y* , L*Y ) Y ∂G / ∂LY D L E ρ /(1 − T ) KX 0X Y X LY 66 参考:生産可能性フロンティア Y E D Y 生産非効率 0 F ( X ,Y ) = 0 X = f (Y , K , L) X 67
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