IL-27を介した抗炎症反応の修飾薬としてのトシリズマブの新たな効用

#2877
American College of Rheumatology 2014
Oral Session
2014年 米国リウマチ学会 NEWS FLASH
November 14–19, 2014 in Boston, Massachusetts
IL-27を介した抗炎症反応の修飾薬としてのトシリズマブの新たな効用
Novel function of tocilizumab as a modulator of interleukin-27-mediated anti-inflammatory responses
橋詰 美里 氏 中外製薬株式会社 プロダクトリサーチ部
IL-27の2つのサブユニット構造はIL-6およびIL-6R受容体
(IL-6R)
に類似するが、
免疫機構や血管新生においてIL-27とIL-6は逆の作用を示す
(表1)1-7)。
本研究ではIL-6RがIL-27の構造や機能に及ぼす影響を検討するとともに、
抗IL-6抗体および抗IL-6R抗体であるトシリズマブ(TCZ)の影響の違いを
評価した。その結果、可溶性IL-6受容体(sIL-6R)はIL-27シグナル経路に拮抗し、
IL-27の抗炎症作用を阻害するとともに、
TCZはIL-6抑制薬、
IL-27
修飾薬としての2つの作用を有することが示唆された。
・BIAcore T200システムを用いた評価では、IL-27p28/EBI3のsIL-6Rへの結合が認められた。
・関節リウマチ(RA)患者は健康対照に比べ血清中IL-27p28/IL-6R複合体濃度が有意に高値であった(p<0.05、
t検定)。
・IL-27は濃度依存的にCD14 +細胞から破骨細胞への分化を抑制したが、sIL-6Rにより作用は阻害された。また、IL-27とsIL-6R存在下で抗IL-6抗
体もしくはTCZを添加すると、TCZで分化が抑制された(図1)。
IL-27とsIL-6R存在
・IL-27はナイーブCD4+細胞から制御性T細胞(Treg)への分化を促進したが、sIL-6R添加により促進作用は阻害された。また、
下で抗IL-6抗体もしくはTCZを添加すると、TCZでCD4+細胞からTregへの分化が亢進した(図2)。
2010年3月∼2012年3月に初回生物学的製剤治療としてTCZ点滴静注
(8mg/kg、4週毎)を
・1剤以上の疾患修飾性抗リウマチ薬に効果不十分で、
開始した患者39例(表2)を対象に、
ベースライン時、52週後の各種臨床検査および免疫フェノタイプ検査を実施したところ、
TCZにより末梢血中の
Tregの増加と単球の減少が認められた(図3、p<0.05、Wilcoxon順位検定)
。
表1
IL-6とIL-27の免疫機構や血管新生における役割(
)
〈IL-6とIL-27の違い〉
・ 関節炎におけるIL-27の作用
制御性T細胞の分化
Th17の分化
血管新生
IL-27
誘導1)
阻害 3)
阻害 4)
IL-6
阻害 2)
誘導 2)
誘導 5)
コラーゲン誘導関節炎マウスにおいてIL-27注入は関節炎スコアを低下させた 6), 7)
1)
Wang H, et al. Immunol Lett 2011; 36: 21-28.
2)
Samson M, et al. Arthritis Rheum 2012; 64: 2499-2503.
3)
Murugaiyan G, et al. J Immunol 2009; 183: 2435-2443.
4)
Hasegawa E, et al. J Leukoc Biol 2012; 91: 267-273.
5)
Hashizume M, et al. Rheumatol Int 2009; 29: 1449-1454.
6)
Pickens SR, et al. Arthritis Rheum 2011; 63: 2289-2298.
IL-6/IL-6Rは炎症作用を有するが、IL-27は抗炎症作用を示す。
7)
Niedbala W, et al. Ann Rheum Dis 2008; 67: 1474-1479.
+
図2 IL-27を介したナイーブCD4 細胞からTregへの分化に対する
sIL-6RとIL-6阻害薬の影響
(
)
図1 IL-27による破骨細胞分化抑制とsIL-6Rおよび
IL-6阻害薬の影響
(
)
ナイーブCD4+細胞からTregへの分化
TRAPアッセイ
RA患者の全血から
CD14+細胞を単離
IL-27、
sIL-6R、
トシリズマブ、
抗IL-6抗体
RANKL+M-CSFとともに
4日間培養
TRAP溶液にて
染色し、
破骨細胞数を計測
(%)
8
#
IL-27、
sIL-6R、
トシリズマブ、
抗IL-6抗体
RA患者の全血から
CD14+細胞を単離
CD3/CD28コートプレートを
用いて7日間培養
*
40
0
40
0
30
0
30
0
6
10
0
b※
Treg/CD4 +
細胞数
破骨細胞数
破骨細胞数
20
0
0
IL-27
sIL-6R
Tregマーカーで染色し、
細胞数を計測
4
c※
a※
20
0
2
10
0
25
0
25
10
25
100
0
IL-27
sIL-6R
抗体
25
100
対照
25
100
抗IL-6抗体
25
100
TCZ
平均+SD
(n=3)
0
IL-27
sIL-6R
抗体
0
0
−
10
0
−
10
100
対照
10
100
抗IL-6抗体
10
100
TCZ
平均+SD
(n=4)
※a、b群およびb、c群をt-検定を用い解析したが、
統計学的な有意差はなかった。
#:p<0.05、Jonckheere-Terpstra検定 *:p<0.05、Dunnett多重比較検定
・ IL-27による破骨細胞への分化抑制はsIL-6Rにより阻害された。
・ sIL-6Rの阻害作用はTCZにより減少したが、抗IL-6抗体の影響は受けな
かった。
企画・提供:
・ IL-27によるナイーブCD4+細胞からTregへの分化促進は、
sIL-6Rによ
り阻害された。
・ sIL-6Rの阻害作用はTCZにより減少したが、抗IL-6抗体の影響は受け
なかった。
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Oral Session
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November 14–19, 2014 in Boston, Massachusetts
IL-27を介した抗炎症反応の修飾薬としてのトシリズマブの新たな効用
表2
TCZ治療開始前の患者背景
背景因子
n=39
年齢(歳)、平均(SD)
54.8 (13.3)
女性、例数
35
期間(年)、平均(SD)
4.7 (3.3)
メトトレキサート投与例、例数
12
メトトレキサート用量(mg/週)、平均(SD)
8.0 (1.2)
ステロイド投与例、例数
10
ステロイド用量(mg/週)、平均(SD)
5.1 (2.8)
リウマトイド因子陽性、例数
35
抗シトルリン化ペプチド抗体陽性、例数
35
DAS28-ESR、平均(SD)
5.0 (1.1)
CDAI、平均(SD)
図3
19.6 (9.3)
TCZ治療
(52週)
によるベースラインからの細胞サブセットの変化率
CD4 T細胞
CD4/ly
メモリー CD4/CD4
ナイーブ CD4/CD4
活性化 CD4/CD4
Treg/CD4
メモリー Treg/Treg
ナイーブ Treg/Treg
活性化 Treg/Treg
Th1/CD4
活性化 Th1/CD4
Th2/CD4
活性化 Th2/CD4
Th17/CD4
活性化 Th17/CD4
CD8 T細胞
CD8/ly
メモリー CD8/CD8
ナイーブ CD8/CD8
活性化 CD8/CD8
B細胞
単球
NK細胞
*
p=0.0188
*
p=0.0188
p=0.0048
*
*
p<0.0001
*
p=0.0004
*
p=0.0054
B cell/ly
CD80+B/B cell
CD86+B/B cell
メモリー B/B cell
ナイーブ B/B cell
活性化 B/B cell
*
p=0.0451
p=0.0094
p<0.0001
*
*
*
p<0.0001
*
p=0.0484
CD14/ly
CD80+CD14/CD14
CD86+CD14/CD14
non-classical mono/CD14
classical mono/CD14
*
p=0.0002
*
p=0.0002
NK/ly
-50
p<0.05、39例をWilcoxon順位検定にて解析
-25
0
25
50
75
ベースラインから52週までの変化率(%)
52週間のTCZ治療により末梢血中のTregの増加とnon-classical monocyte、
メモリー B細胞の減少が認められた。
企画・提供:
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