採択番号 10A0001 ゼオライト鋳型炭素を利用した新規触媒の開発 Development of new catalysts based on zeolite-templated carbon 西原洋知 a,糸井弘行 a,ベレンガー-ベトリアン ラウル a,京谷隆 a,小林広和 b, 福岡淳 b Hirotomo Nishihara,a Hiroyuki Itoi,a Raul Berenguer-Betrian,a Takashi Kyotani,a Hirokazu Kobayashi,b Atsushi Fukuokab a 東北大学, b 触媒化学研究センター a Tohoku University, bCatalysis Research Center, Zeolite-templated carbon (ZTC) is an ordered microporous carbon with a huge surface area up to 4000 m2/g. A catalytic activity of ZTC for hydrolysis of cellulose was examined. In addition, a large amount of oxygen functional groups was introduced into ZTC in order to enhance its catalysis. Two methods were compared: a chemical oxidation method and an electrochemical oxidation method. It was found that the electrochemical method allows an oxidation of ZTC with retaining its high surface area and ordered structure. Thus, the electrochemical modification technique is adequate for tailoring the surface chemistry of ZTC and a promising tool for designing new carbon catalysts. 背景と研究目的:ゼオライトの細孔に炭素 を充填した後にこれを溶解除去して得られ る「ゼオライト鋳型炭素(zeolite-templated carbon; ZTC)」 (Fig. 1)は、ゼオライトの規 則構造が転写された規則性ミクロ多孔性炭 素である[1, 2]。Fig. 1 に示すように、炭素 骨格は 1 nm 程の幅のナノグラフェンが規 則的に連結したジャングルジム状の構造を しており[3]、 細孔径は 1.2 nm で均一である。 ZTC は約 4000 m2/g もの比表面積と約 1.8 cm3/g の極めて大きいミクロ孔容積をもつ。 さらに、Fig. 1c の分子構造モデルが示すよ うに、ZTC は大量のエッジサイト(グラフ ェンの端の部分)をもつことも特徴である。 本研究の目的は、ZTC をベースとする新規 触媒の開発と応用である。まず、セルロー ス分解反応により、ZTC の触媒および触媒 担体としての性能を評価した。さらに、ZTC の触媒能を高めるために、ZTC が大量にも つエッジサイトへの含酸素官能基の導入に (a) Window: 0.74 nm Supercage: 1.3 nm Carbon loading (b) (c) Template Pore: 1.2 nm removal Nanographene network Figure 1. Synthesis scheme of the zeolite-templated carbon (ZTC). (a) zeolite Y template. A Si–O–Si bond is expressed by a line. (b) carbon/ zeolite complex. (c) ZTC liberated from the zeolite template. ついて検討を行った。 実験: ①ZTC および Ru 担持 ZTC の触媒活性評価 ZTC、Ru 担持 ZTC(Ru/ZTC)、CMK-3、 Ru 担持 CMK-3(Ru/CMK-3)を触媒とし、 セルロース分解反応を行った。具体的には、 触媒 50 mg、粉砕セルロース 324 mg、水 40 mL を高圧反応器(ハステロイ C22、100 mL) に仕込み、バンドヒーターにて室温から 230 °C に加熱した。230 °C に到達後直ぐに バンドヒーターを外し、室温まで風冷した。 反応液を遠心分離し、液相成分を HPLC で 分析した。また、固相を 110 °C で乾燥後、 重量を測定しセルロース転化率を求めた。 ②ZTC への含酸素官能基導入 以下に示す 2 通りの方法で含酸素官能基 の導入を行った。 (1) HNO3 による酸化 HNO3 により、ZTC を化学的に酸化した。 次に示す 3 種類の酸化条件を実施した。 条件(i) 炭素/ゼオライト複合体(Fig. 1b)を を 30 wt%の HNO3 水溶液で 40 °C、40 min 酸化した。その後に鋳型を除去して取り出 した ZTC を ZTC-CO-a とする。 条件(ii) 48 wt%フッ酸と 68 wt% HNO3 を体 積比 1 : 1 で混合した溶液に炭素/ゼオライ ト複合体を混合し、室温で 6 h 攪拌するこ とで、鋳型除去と酸化を同時に行った。得 られた ZTC を ZTC-CO-b とする。 条件(iii) ZTC を直接 68 wt%の HNO3 水溶液 に混合し、室温で 6 h 酸化した。得られた ZTC を ZTC-CO-c とする。 (2) 電気化学的酸化 ZTC を RuO2 被覆 Ti メッシュ電極と一緒 に PTFE メンブレンフィルターでパックし たものを作用極とし、Pt 線を対極、Ag/AgCl 参照極とする 3 極式電解セルを構築した。 電解液に 2 wt%の NaCl 水溶液を用い、25 °C の一定温度にて、5, 10, 50 mA の各定電流で 1 h 陽極酸化した。得られた試料を ZTC-EO-X とする(X = 電流値)。 電気化学的酸化は Fig. 3 からわかるように ZTC の構造をあまり破壊しない。さらに、 これらの試料においては酸化後も比表面積 があまり減少していないことがわかる (Table 1) 。以上の結果から、電気化学的酸 化を用いれば、ZTC の構造を破壊せず、高 い比表面積を保ったままそのエッジ部分に 大量の含酸素官能基を導入できることが示 された。 t=1h Effect of the current ZTC 2 mA 5 mA 10 mA 20 mA 結果および考察: ①ZTC および Ru 担持 ZTC の触媒活性評価 Fig. 2 にセルロース加水分解の結果を示 す。ZTC は CMK-3 に比べセルロース加水 分解活性が低いことが分かる。そこで、ZTC の活性を高めるために含酸素官能基の導入 を行った。 50 mA 2 5 10 20 2 30 40 6 50 7 50 mA 20 mA 10 mA 5 mA 2 mA ZTC Figure 3. XRD patterns of electrochemically oxidized ZTC in 2 wt% NaCl aqueous solution at 25 °C. Figure 2. The results for the catalytic hydrolysis reaction of cellulose. ②ZTC への含酸素官能基導入 酸化処理前後の ZTC の BET 比表面積 (SBET)、XRD パターンにおける 6.4°のピー ク強度、酸素含有量を Table 1 にまとめる。 また、電気化学的酸化前後の試料の XRD パ ターンを Fig. 3 に示す。酸化前の ZTC は Fig. 3 に示すように、6.4°にシャープなピーク を示す。これは、ゼオライト鋳型に由来す る規則構造を示している。HNO3 で酸化した 試料においては、いずれもこの XRD ピーク がほぼ消失していた。さらに、これらの比 表面積は 2200 m2/g 以下まで低下している (Table 1)ことから、HNO3 による酸化は ZTC の構造を破壊することがわかる。一方、 Table 1. Surface area, peak intensity of XRD, and oxygen amount for ZTC and its oxidized samples. Sample Oxidation SBET XRD O (m2/g) (wt%) ZTC – 3650 ◎ 9 ZTC-CO-a HNO3 2200 × 22 ZTC-CO-b HNO3 1580 × 25 ZTC-CO-c HNO3 1870 × 26 ZTC-EO-5 Electrooxidation 3460 ◎ 11 ZTC-EO-10 Electrooxidation 3140 ◎ 13 ZTC-EO-50 Electrooxidation 2780 ○ 20 今後の課題: 今後は含酸素官能基の導入と 触媒性能との関係を調べる。さらに、含窒 素官能基、スルホ基など、異なる官能基に よる異なる触媒性能の付与に関して検討を 行う予定である。 参考文献 [1] T. Kyotani, T. Nagai, S. Inoue and A. Tomita, Chem. Mater. 9 (1997) 609-615. [2] Z. X. Ma, T. Kyotani and A. Tomita, Chem. Commun. (2000) 2365-2366. [3] H. Nishihara, Q. H. Yang, P. X. Hou, M. Unno, S. Yamauchi, R. Saito, J. I. Paredes, A. Martinez-Alonso, J. M. D. Tascon, Y. Sato, M. Terauchi and T. Kyotani, Carbon 47 (2009) 1220-1230. 論文発表状況・特許状況 [1] R. Berenguer, D. Cazorla-Amorós, E. Morallón, H. Nishihara, H. Itoi and T. Kyotani, Carbon2011, 2011.7 発表予定. [2] R. Berenguer, D. Cazorla-Amorós, E. Morallón, H. Nishihara, H. Itoi and T. Kyotani, CESEP’11, 2011.8 発表予定. [3] R. Berenguer, D. Cazorla-Amorós, E. Morallón, H. Nishihara, H. Itoi and T. Kyotani, 62nd Annual Meeting of the International Society of Electrochemistry, 2011.9 発表予定.
© Copyright 2024 ExpyDoc