鋳鉄の黒鉛球状化に及ぼす Ba の影響

I-13
鋳鉄の黒鉛球状化に及ぼす Ba の影響
10-1-035-0191
緒言
1.
3.
中島
慶大
実験結果及び考察
球状黒鉛鋳鉄の製造に必要不可欠であるレアア
大気溶解及び真空溶解で溶製した母合金及び供
ースは世界に偏在しており,世界産出量の 90%以
試試料の化学成分分析結果を表 3,表 4 に示す.
上を中国が占めている.2010 年,尖閣諸島で発生
また EPMA 面分析結果を図 1((a)C,(b)Ba,(c):
した中国漁船衝突事故による希土類元素の対日禁
S,(d):O)に示す.
輸措置に代表されるように,世界に偏在する資源
表3
は国家間の諸問題から起因する禁輸措置に大きな
C
4.081
影響を受ける.
球状黒鉛鋳鉄の製造には一般的に希土類元素
Ce が使用される.本研究では Ba に Ce のような
球状化特性を有し,代替元素として使用可能であ
母合金の化学成分分析結果(mass%)
表4
Si
2.455
Mn
tr.
P
0.003
S
0.004
供試試料の化学成分分析結果(mass%)
試料No. C
Si
Ba1.00 3.799 2.362
Mn
tr.
P
S
0.003 0.001
Ce
tr.
Mg
tr.
るか検討することを目的とした.
実験方法
2.
2.1.
大気溶解(高純度母合金の溶製)
電解鉄,電極黒鉛,金属シリコンを使用し,高周
波誘導電気炉にて大気溶解を行った.溶湯の安定
(a) C
(b) Ba
(c) S
(d) O
を図るため 5 分保持した後, CO2 ガス砂型丸棒
(縦型)3 本,成分分析用金型に鋳込み,母合金を
溶製した.母合金の目標組成を表 1 に示す.
表1
C
3.700
母合金の目標組成(mass%)
Si
2.300
Mn
P
S
<0.005 <0.005 <0.005
図1
2.2.
真空溶解(供試試料の溶製)
EPMA面分析結果
各元素の分布が黒鉛の中心に位置していること
母合金を特殊耐火用るつぼ(径:72×60×150)を使
から,Baの硫化物(BaS)及び酸化物(BaO)が球
用し,真空溶解装置にて真空溶解を行った.溶湯
状黒鉛生成のサイトとなっていると考えられる.
の安定を図るため 3 分間保持した後,溶湯に Ba
を添加し,成分分析用金型に鋳込み,供試試料を
4.
溶製した.供試試料の目標組成を表 2 に示す.
表 2 供試試料の目標組成(mass%)
試料No. C
Si
Mn
P
S
Ba
Ba1.00 3.700 2.300 <0.005 <0.005 <0.005 1.00
結言
本研究に関して以下にまとめる.
1.
EPMA 面分析結果から Ba は S,O との間に球
状化特性に見られる親和力が存在する.
2.
親和力の作用から Ba は S,
O と硫化物
(BaS)
及び酸化物(BaO)を生成し,異質核物質と
2.3.
EPMA 観察
溶製した供試試料を,EPMA を使用し,Ba の
存在位置と S,O の分布を特定した.
して球状黒鉛の中心に存在する.
3.
Ba の硫化物及び酸化物が黒鉛生成サイトと
なり,球状黒鉛が生成する.