GYOS E I NO MADO

G YO S E I
水産庁施策情報誌
NO
MADO
2014.5
107
漁政の窓
vol.
通巻524号
〒100-8907 東京都千代田区霞が関1-2-1合同庁舎1号館 代表 03-3502-8111(内線6505)URL http://www.jfa.maff.go.jp/
水産庁施策情報誌漁政の窓
1
第 36 回全国海の子絵画展
農林水産大臣賞 及び 全国漁業協同組合連合会会長賞 受賞作
「するめほし」
C O N T E N T S
水産加工業における東日本大震災からの復興状況アンケート結果について..................... 2
漁政部 加工流通課 「太平洋クロマグロ産卵場調査」の結果について.................................................................5
増殖推進部 漁場資源課 漁業就業支援について.............................................................................................................7
漁政部 企画課 ............................................................................8
6 月 1 日は「鮎の日」
吉を呼ぶ魚。
「鮎」
平成 26 年4月分のプレスリリース......................................................................................8
G Y O S E I N O M A D O
水産加工業における東日本大震災からの復興状況アンケート
1% 1% 加工流通課
漁政部
結果について
1億円以上
1億円以上
5千万円~
5千万円~
1億円未満
1億円未満
7%
37件 37件
7%
個人事業主
個人事業主
300万円未満
300万円未満
13% 13%
岩手県岩手県
水産庁と全国水産加工業協同組合連合会は、岩手県・宮城県・福島県の水産加工業における東日本大震災からの復興状況を調査
84件 84件17% 17%
5% 5%
するため、平成 26 年2月 28 日~3月 12 日の 13 日間において、当該3県の全国水産加工業協同組合連合会所属組合員、673
福島県福島県
300万~ 300万~
1千万円~
1千万円~ 500万円未満
500万円未満
38% 38% 企業)でした。
企業に対しアンケート調査実施しました。回収率は、全体で 34%(231
5千万円未満
5千万円未満 13% 13%
103件103件
46% 46%500万~ 500万~
アンケート対象のうち、回答のあった組合員の県別構成、経営者の年齢構成、経営規模別の構成は、次のグラフ(1)~(4)
1千万円未満
1千万円未満
宮城県宮城県
のとおりとなっています。
14% 14%
46% 46%
1.アンケート対象
(1)県別
(2)経営規模(資本金)
(3)経営者の年齢
20代
80代以上
80代以上
1億円以上 1億円以上
5千万円~ 5千万円~
1%
1億円未満 1億円未満 1%
37件
7%
37件
13% 13%
5%
5%
岩手県 岩手県
84件
84件17%
17%
福島県 福島県
38%
38%
103件 103件
宮城県 宮城県
46%
4%
7%
個人事業主個人事業主
300万円未満
300万円未満
70代
14%
7% 3千万円~
3千万円~
10億~ 10億~
5千万円未満
8%
8%5千万円未満
50億円未満
50億円未満
19% 19%
5% 5%
4%
40代
50代
60代
500万~
1千万円未満
1千万円未満
35% 35%
14%
12% 12%
50代
27% 27%
60代
1千万円~
1千万円~
3千万円未満
3千万円未満
7%
5億~ 5億~
10億円未満
10億円未満
46%
500万~
46%
30代
18% 18% 13% 13%
300万~ 300万~
1千万円~ 1千万円~ 500万円未満
500万円未満
5千万円未満
5千万円未満 13%
13%
46%
0%
30代
40代
70代
100億円以上
100億円以上
50億円~50億円~
0% 0%
100億円未満
100億円未満
1千万円未満
1千万円未満
1% 1%
20代
0%
3%
3%
(4)売上金額
5千万円~
5千万円~
1億円未満
1億円未満
13% 13%
1億円~1億円~
5憶円未満
5憶円未満
33% 33%
水産庁施策情報誌漁政の窓
2
100億円以上
100億円以上
2.県別の生産能力
(施設の復旧)
や売上の回復状況
50億円~ 50億円~
0%
100億円未満
100億円未満
0%
20代
20代
生産能力や売上の回復状況について、3県の全体では、生産能力が8割以上回復した業者は
1千万円未満
1千万円未満
80代以上
80代以上
1%
1%
0% 30代
0% 30代
3%
3%
1千万円~1千万円~
41%となっています。これを県別に
みていくと、岩手県では 57%、宮城県 49%、福島県
24%となっています。
3千万円未満
3千万円未満
7%
7% 3千万円~3千万円~
一方、売上が8割以上回復した業者は、3県の全体では
28%となっています。これを同じく県別にみていくと、岩手県では
4%
4%
10億~
10億~
5千万円未満
5千万円未満
8%
8%
40代
40代
44%、宮城県
36%、福島県
10%となります。
50億円未満50億円未満
70代
70代
19% 19%
5%
5%
18%
18% 13% 13%
これらのことから、生産能力の回復状況と比較して、売上の回復が遅れていることが明らかとなっています。
5億~
5億~
10億円未満10億円未満
60代
35%
60代
35%
50代
50代
27%
27%
12%
5千万円~5千万円~
1億円未満1億円未満
12%
13%
生産能力の復旧状況
13%
1億円~ 1億円~
3%5憶円未満
3% 2%
5憶円未満
3% 3% 2%
33%
9%
全体(224件)
全体(224件)
33%
5% 4%
10%
5% 4% 10%
9%
3%
0%3%0%
0% 0%
3% 3% 5%
3% 3% 5%
0%
0%
2% 2%
2% 2%
6%
3%
6%
3%
1%
1%
岩手県(37件)
岩手県(37件)
宮城県(103件)
宮城県(103件)
10%
10%
14%
14%
14%
14%
18%
18%
10%未満
10%未満
9%
9%
10%以上20%未満
10%以上20%未満
20%以上30%未満
20%以上30%未満
8%
8%
22%
22%
19%
19%
24%
24%
14%
14%
30%以上40%未満
30%以上40%未満
40%以上50%未満
40%以上50%未満
57%
57%
5% 7%
5% 7%
18%
18%
福島県(84件)
福島県(84件)
全く回復していない
全く回復していない
41%
41%
0%
0%
11%
11%
15%
15%
1%
1%
6% 6% 5% 5%
6% 6% 5% 5%
20%
20%
15%
15%
21%
21%
50%以上60%未満
50%以上60%未満
13%
13%
60%以上70%未満
60%以上70%未満
49%
49%
14%
14%
10%
10%
40%
40%
11%
11%
70%以上80%未満
70%以上80%未満
11%
11%
60%
60%
80%
80%
11% 2%
11% 2%
24%
24%
80%以上90%未満
80%以上90%未満
90%以上100%未満
90%以上100%未満
100%
100% 100%以上
100%以上
売上の回復状況
2%
2%
全体(224件)
全体(224件)
6% 6%
6% 6%
28%
28%
5% 5% 10%
5% 5% 10%
7%
7%
14%
14%
18%
18%
14%
14%
6% 8%
6% 8%
3% 3%
3% 3%
岩手県(37件)
岩手県(37件)
0%
0%
2%
2%
宮城県(103件)
宮城県(103件)
1% 5% 5%
1% 5% 5%
11%
11%
11%
11%
22%
22%
22%
22%
14%
14%
5% 5% 3%
5% 5% 3%
3%
3%
44%
44%
8%
8%
9%
9%
14%
14%
7%
7%
21%
21%
22%
22%
8%
8%
36%
36% 2% 2%
2% 2%
16%
16%
福島県(84件)
福島県(84件)
0%
0%
13%
13%
20%
20%
4% 6% 5%
4% 6% 5%
40%
40%
13%
13%
8%
8%
60%
60%
13%
13%
11%
11%
80%
80%
6%
6%
10%
10%
100%
100%
売上がない
売上がない
10%未満
10%未満
10%以上20%未満
10%以上20%未満
20%以上30%未満
20%以上30%未満
30%以上40%未満
30%以上40%未満
40%以上50%未満
40%以上50%未満
50%以上60%未満
50%以上60%未満
60%以上70%未満
60%以上70%未満
70%以上80%未満
70%以上80%未満
80%以上90%未満
80%以上90%未満
90%以上100%未満
90%以上100%未満
100%以上
100%以上
2014.5
vol.107
3.規模(資本金)
別の生産能力や売上の回復状況
次に経営規模別の状況です。3県の全体では、生産能力が8割以上回復した業者は、41%となっています。また、規模別にみると、
生産能力が8割以上回復した業者は、資本金5千万円以上だと 50%、1千~5千万円で 51%、1千万円以下で 29%となってい
ます。
一方、売上が8割以上回復した業者は、28% となっており、資本金5千万円以上だと 39%、1千~5千万円で 36%、1千万
円以下で 18%となっています。
生産能力の回復状況
3% 3%
4%
全く回復していない
41%
9%
10% 10%
14%
14%
18%
9%
5%
4%
3% 3%
41%
2%
9%
10% 10%
14%
14%
18%
9%
5%
6% 6% 6% 6%
17%
11%
28%
22%
2%
50%
2%
2% 4%
3% 3%
41%
6% 6% 6% 6%
17%
11%
28%
22%
8%
13%
15%
15%
20%
7%
3%
9%
10% 10%
14%
14%
18% 16%
9%
5%
50%
2% 2%
51%
1% 2%
2%
15%
15%
20%
16%
3% 7% 8% 13%
12% 6% 28%
15%
11%
14% 4%
4% 7% 11%
6% 15%
6% 6%4%
6%6% 17%
22%
51%
1%
2%
18%
50%
2% 2%
0% 15%
4% 20%
6% 4% 7% 40%
12% 6% 60%
15%
11%80% 14% 4%100%
15%
15%
20%
16%
3% 7% 8% 13%
18%
28%
2% 20%
0%
40%
60%
80%
100%
51%
売上の回復状況
1%
2%
6% 6% 5% 5% 10% 7%
14%
18%
14% 6% 8%
15%2% 4% 6% 4% 7% 12% 6%
15%
11% 28%
14% 4%
6% 6% 5% 5% 10% 7%
14%
0% 11%
40% 28%
11%20% 6% 6%
14% 18%
6% 8%
80%
100%
39%
18%
60%
0%
20%
3%
3% 3%
12%
10%
40%
60%
6% 4% 13%
8%
80%
100%
36%
14%
13%
7% 4% 7%
18%
4.復興における問題点
0%
20%
40%
60%
80%
10%未満
20%以上30%未満
10%以上20%未満
30%以上40%未満
20%以上30%未満
40%以上50%未満
全く回復していない
30%以上40%未満
50%以上60%未満
10%未満
40%以上50%未満
60%以上70%未満
10%以上20%未満
50%以上60%未満
70%以上80%未満
20%以上30%未満
60%以上70%未満
80%以上90%未満
30%以上40%未満
70%以上80%未満
90%以上100%未満
40%以上50%未満
80%以上90%未満
100%以上
50%以上60%未満
90%以上100%未満
売上がない
60%以上70%未満
100%以上
70%以上80%未満
10%未満
売上がない
80%以上90%未満
10%以上20%未満
90%以上100%未満
10%未満
20%以上30%未満
100%以上
10%以上20%未満
30%以上40%未満
20%以上30%未満
売上がない
40%以上50%未満
30%以上40%未満
10%未満
50%以上60%未満
3
40%以上50%未満
10%以上20%未満
60%以上70%未満
水産庁施策情報誌漁政の窓
2% 2% 2%
28%
11%
11% 6% 6%
28%
39%
8%
6% 6%5%5%
5% 7%
10% 16%
7%
14% 20% 18% 17%14% 9%
6% 10%
8%
2% 2%
3%
3% 3%
36%
5% 8% 7%
16%
20%
17%
9% 10%
12% 11%
10% 6%6%
14%
13%
11%
6%4% 13%28%8%
39% 7% 4% 7%
3%
3% 3%
36%
18%
2% 2%
0%12%
40%
60%
10%20% 6% 4% 13%
8%
14%
13% 80%7% 4% 7%100%
5% 8% 7%
16%
20%
17%
9% 18%
10%
10%未満
全く回復していない
10%以上20%未満
50%以上60%未満
20%以上30%未満
70%以上80%未満
60%以上70%未満
30%以上40%未満
80%以上90%未満
70%以上80%未満
40%以上50%未満
90%以上100%未満
80%以上90%未満
50%以上60%未満
100%以上
90%以上100%未満
60%以上70%未満
100%以上
70%以上80%未満
80%以上90%未満
90%以上100%未満
100%
100%以上
施設の復旧
13%
25%
18%
31%
11% 3%
復興における問題点については、全体でみると、販路確保・風評被害が
31%を占めており、3県の回答結果を個別にみてもいず
人材の確保
施設の復旧
れの県も約3割が同様に販路確保・風評被害が問題だと答えてます。
全体(224件)
全体(224件)
岩手県(37件)
13%
6%
25%
38%
岩手県(37件)
宮城県(103件)
6%12%
38%
27%
13%
12%
17%
全体(224件)
宮城県(103件)
福島県(84件)
6%
0%
17%
岩手県(37件)
福島県(84件)
0% 12%
宮城県(103件)
25%
27%
15%
38%
20%
15%
20% 27%
17%
福島県(84件)
15%
18%13%
31%
28%
11%
12% 3%
2% 人材の確保
原材料の確保
13%
17%
28%
販路確保・風評被害
12% 2%
4% 原材料の確保
施設の復旧
復興に係る問題点
18%
17%
21%
13%
40%
21%
40% 17%
運転資金の確保
11% 3% 販路確保・風評被害
12% 8%
4%
1% 人材の確保
31%
28%
36%
60%
60%
21%
28%
36%
28%
その他
80%
80%
36%
運転資金の確保
12% 2%
100% 原材料の確保
8% 1%
12% 4%
100%
8% 1%
その他
販路確保・風評被害
運転資金の確保
その他
0%
20%
40%
60%
80%
100%
5.販路開拓に関するヒアリング結果
アンケート調査に加えて、4の復興における問題点に、風評被害・販路確保と回答した企業に販路開拓に向けた課題について、
ヒアリングした結果は次のとおりでした。
(自由回答)
地域名
内 容
塩竈市
震災後1ヶ月出荷できない際に代替として入った他のメーカー商品が、放射能の風評被害の影響もあって復活しても当社商品
に切り替わらない。風評被害が解消されたとしても震災前と同じ販路の復活は、この3年で厳しいことがわかった。
塩竈市
震災後出荷できない際に代替として入った他のメーカー商品が、放射能の風評被害の影響もあって復活しても当社商品に切り
替わらない。バイヤーからは、風評被害を理由に断られているが、他産地の商品が定着していると考えられるため、風評被害
が解消されたとしても震災前と同じ販路の復活は、厳しい。
G Y O S E I N O M A D O
地域名
内 容
石巻市
既存商品を既存顧客に売ろうと思っても無理。風評被害が解消されても震災前に戻ることはないだろうし、戻ろうとも思わな
い。
石巻市
売り上げが上がらない理由として、風評被害の影響もあるが、休業期間が長期に渡った為に商品の消費動向の変化に対する対
応についていけない現状がある。
石巻市
震災及び風評被害等により、他産地の商品に切り替えられ、会社が復旧し稼働するようになっても、そこへまた割り込んで宮
城の商品へ切り替えるということは、風評被害が解消されたとしても、とてもむずかしい問題点。
石巻市
失った販路を戻すには、容易ではなく、たとえ風評被害が解消した上で努力しても届かないものがある。
石巻市
1年目が特に風評被害の影響により落ち込んだが、現在は、関西地区を除いて大分戻ってきた。関西地区については、現在も
風評被害を理由に他産地の商品に切り替えられており、ある程度期間が経過した今となっては、そこへまた割り込んで宮城の
商品へ切り替えてもらう自体、風評被害が解消されたとしても難しいと考えられる。
気仙沼市
震災当初あった風評被害も、イカ塩辛製造がメインの当社にとっては、現在ほとんど無い。売り上げ規模も生産能力に見合っ
たものとなっている。ただ、原料イカの不足、価格高騰の影響から今後の原料確保に不安がある。
気仙沼市
加工場の建設が遅れており、生鮮出荷のみの販売となっている。震災当初あった風評被害もある程度終息したと思われる。加
工製品の出荷がストップして3年たっており、他産地の商品に切り替えられ、そこへまた同様の商品で割り込んで販売するこ
とは難しく、新商品の開発が重要と考えている。
大船渡市
震災でストップした際に、他産地の商品に切り替えられ、そこへまた割り込んで自社製品へ切り替えしてもらうということは、
ほぼ風評被害が解消されている現在でも、非常に難しい。
6.被災地の販売に係る成功事例
また、売上の回復の伸びている企業から、具体的に成功事例を聞き取ったところ、結果は次のとおりでした。
(自由回答)
水産庁施策情報誌漁政の窓
4
地域名
内 容
釜石市
県の事業でトヨタの指導による生産方式「カイゼン」の考え方を導入し、生産量を時間当たりで計画、作業員の目につく場に
示した。その結果、生産の遅れ・進みが管理され、早い段階で軌道修正が行えるようになった。導入指導が始まった昨年4月
と比較し、同年 11 月、12 月の一人あたりの生産性は、「約 30%」も向上した。
釜石市
業績を回復できたのは、震災前から取り組む消費者向け通販事業が大きく伸張したこと、同事業が宣伝効果をもたらし小売業
者や中食企業からの商品オファーが増えたことによる。
釜石市
県の事業でトヨタの指導による生産方式「カイゼン」の考え方を導入し、生産目標に対し、機械と人間で最大限に効果が出せ
る適正人数を算出できるようになった。充填ラインでは、一人あたりの生産性を 20% 上げており、製品歩留まりも上がった。
気仙沼市
震災により、主商品の落ち込みが激しい中、展示会で出会った異業種の業者とのコラボレーションで開発した新商品にて、新
規取引先が増え売上に繋がっている。
いわき市
震災以前は、下請けが主であり、震災以降は、小売店舗を立ち上げた事により、売上は上がった。(下請け時は、商品を製造し、
加工賃のみの計上であった為。)また、震災以前は、各卸売市場との取引額が全体の3分の1程あったが、現在は、ほぼ0になっ
ている。しかし、新規での取引先が増えてきている。(物産展、商談会等で獲得)
気仙沼市
震災前は、卸売の方が多く、末端販売は少なかったが、震災復興応援にて、末端の消費者の方が、お店に訪れた際に商品を買っ
て頂き、そのお客様がリピーターとして、商品を買い続けていただいているので、売上増に繋がっている。現在は、卸売が半
分、末端販売が半分の割合に変化している。その他、震災前には行わなかったこととして、購入のお客様に DM をするよう
にしている点と包装紙のリニューアルを行った。
釜石市
震災復興応援にて、テレビ報道にてネームバリューがあったこともあって、販路が広がったことが、売上増につながっている。
その他には、新商品開発にも力を入れ、お客様にとって良い商品を心がけている。
宮古市
大槌に在庫していた原料や半製品(1億円相当)は津波被害で全損したが、工場(現在は新工場が今年2月完成)は津波被害
を受けなかったため、すぐに残った原料で生産を再開でき、HACCP対応の生協主体販売で売り場も早期復旧した。また、ホー
ムページやブログ、メディアで取り上げてもらい被災地の今を発信し続けた、結果、それを見た方などの「つて」で被災地産
品を仕入れたいという新規顧客が付き売上額が伸びた。
石巻市
震災年の6月には塩釜の工場を借り、北海道から原料を調達して生産を再開。同年 11 月にはカット野菜工場を買い上げて石
巻に戻り生産開始。翌年 10 月には新工場で生産開始した。同じように復旧した先でも規模的に少量しか対応できる工場しか
なかったことで、同社は大口注文(千ケース単位)を受けることができたため品質安定が見込め荷受け筋から注文が殺到。早
期に人材確保し大口生産可能になったことで他社の注文分も取り込んだ結果である。実際、新規取引先は無く既存先からの注
文が震災前より多くなり売り上げが伸びた。現在は石巻で2工場稼働中である。
7.まとめ
今回のアンケート調査結果のポイントをまとめると次のとおりです。
生産能力の回復(施設の復旧)に対し、売上の回復が遅れています。8 割以上生産能力が回復した業者は、岩手県で 57%、宮城
県 49%、福島県 24%となっている一方で、8 割以上売上が回復した業者は、岩手県では 44%、宮城県 36%、福島県 10%となっ
ています。
小規模な加工業者ほど売上げの回復に遅れが目立っています。直面している課題として、
「販路確保・風評被害」
、
「人材確保」、
「原
材料確保」が挙げられます。3 県とも約 3 割の業者が「販路確保・風評被害」が課題と回答しています。
また、アンケート調査と併せて、水産加工業者に販路開拓等についてヒアリングした結果、販路開拓については、風評被害が解
消されても、失って 3 年が経過する販路を回復するのは困難という意見が太宗でした。
なお、販路回復に成功した事例の多くは、新商品で新販路を積極的に開拓したものや、通販・小売店事業を拡大するなど業態を
シフトしたもの、「カイゼン」などによる生産性の大幅向上を図ったものでした。
以上のことから、震災後3年を経て、販路回復が重要な課題となっており、震災前の状態に復旧するだけでは不十分で、新規商
品開発・新規販路開拓に向けた支援が求められていることが明らかとなりました。
2014.5
vol.107
「太平洋クロマグロ産卵場調査」の結果について
増殖推進部 漁場資源課
我が国は、太平洋クロマグロの最大の漁業国であるとともに消費国でもあり、その持続的利用に大きい責任を有してい
ます。水産庁では、
「太平洋クロマグロの管理強化についての対応」
(平成 22 年5月 11 日付けプレスリリース)に基づき、
資源管理の取り組みに加えて、調査研究の強化も図ってきました。その一環として平成 23 年度から、太平洋クロマグロ
の近年における産卵期及び産卵場を、漁業から得られる情報とは独立的に推定するために、研究機関の協力により、南西
諸島周辺及び日本海において仔魚(孵化後 20 日未満、体長 1cm 未満の個体)の分布調査を実施してきました。このたび、
平成 25 年度までの3カ年の調査結果がまとまり、太平洋クロマグロの近年における主要な産卵期及び産卵場を推定する
ことができました。これについて、平成 26 年5月 16 日付けでプレスリリース(http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/
sigen/140516.html)したところですが、改めて本誌でその概要を紹介します。
1.調査の概要
平成 23 年から平成 25 年にかけての5~9月に、独立行政法人水産総合研究センター、独立行政法人水産大学校、石
川県、鳥取県、島根県、山口県、鹿児島県、沖縄県の試験研究機関並びに水産庁漁業調査船により、南西諸島周辺及び日
本海において、太平洋クロマグロの仔魚の採集と、水温、海流等の調査を実施しました。仔魚の採集にはリングネット(直
径2m、長さ約8mのプランクトンネット)を用い、3年間の調査の結果、太平洋クロマグロ仔魚を合計 536 尾採集し
ました。仔魚の頭部から摘出した耳石に形成された日輪を分析して孵化後日数を推定し、さらに、仔魚の採集地点から、
海流による移動を孵化後日数分遡らせるシミュレーションにより、生み出された地点を推定しました。
2.結果の概要
5
水産庁施策情報誌漁政の窓
(1)産卵期
太平洋クロマグロは、南西諸島周辺では4月下旬に八重
山諸島西方や沖縄本島東方で産卵を開始し、次第に範囲を
広げながら、7月上旬まで八重山諸島から沖縄本島にかけ
ての海域を中心に産卵したと推定されました。日本海では
6月下旬に若狭湾沖で産卵を開始し、7月に隠岐諸島から
能登半島にかけての海域を中心に産卵したと推定されまし
た(図1)
。なお、産卵の開始には水温の影響による年変動
が見られるとともに、産卵は7月以降もしばらくは継続す
ると考えられます。また、南西諸島周辺と日本海では、産
卵親魚の年齢構成が異なるため(日本海では3~5歳の個
体が主体、南西諸島では6歳以上の個体が主体)
、南西諸島
周辺で産卵した個体が続けて日本海で産卵するのではない
と考えられます。
太平洋クロマグロの仔魚
(体長6.
4mm、国際水産資源研究所)
(2)産卵場
南西諸島周辺の産卵場は八重山諸島周辺から沖縄本島周
辺に広がり、主な産卵場は、八重山諸島南西、宮古諸島周辺、
沖縄本島南方沖と推定されました(図2-1)
。
日本海の主な産卵場は、隠岐諸島から能登半島、及び新
隠岐堆(隠岐諸島北約 100km)付近と推定されました(図
2-2)
。
3.結果の意義
太平洋クロマグロを対象に大規模な仔魚採集調査を実施
し、近年におけるその分布状況を明らかにし、仔魚採集位
置と海洋環境データを用いた最新のシミュレーション計算
により、南西諸島周辺と日本海における主要な産卵期及び
産卵場を推定しました。本種資源の持続的利用に向けた管
理方策を策定する上で、大きな意義をもつ成果であるとと
もに、将来的に、年々の加入量(生み出された魚が漁獲対
象として新たに資源に加わる量)が定まるメカニズムの解
明や、その早期把握にもつながる成果と捉えています。
文中に出てくる地名及び海域名。
細い実線は水深 1000m の等深線を示す。
G Y O S E I N O M A D O
4.参考:本調査に関する過去のプレスリリース
平成 23 年 11 月1日付けプレスリリース「太平洋クロマグロ仔稚魚分布調査」の結果について
http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/sigen/111101.html
平成 24 年 11 月 27 日付けプレスリリース「太平洋クロマグロ仔稚魚分布調査」の結果について
http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/sigen/121127_1.html
4月
5月
6月
7月
水産庁施策情報誌漁政の窓
6
図1.推定された太平洋クロマグロの月別の産卵場(平成 23 年~平成 25 年)
。
赤色が濃いほど産卵場の可能性が高い。緑丸は対応する仔魚の採集地点。
2-1)南西諸島
産卵場
2-2)日本海産卵場
図2.推定された太平洋クロマグロの産卵場(平成 23 年~平成 25 年、4~7月)
。
2-1) 南西諸島周辺、2-2)日本海。赤色が濃いほど産卵場の可能性が高い。緑丸は対応する仔魚の採集地点。
2014.5
漁業就業支援について
vol.107
漁政部 企画課
我が国の漁業就業者は、10 年間で約3割減少し、約 17 万人となっています。また、年齢構成においても 65 歳以上
が約4割を占めており、深刻な高齢化が懸念されています。このような状況を改善するためには、意欲ある若者が漁業に
新規参入し、継続して漁業に携わるための環境を整えることにより、明日の漁業を担う人材を確保・育成することが急務
となっています。このため、水産庁では、毎年度 2000 人の新規漁業就業者を確保することを政策目標として漁業就業
支援を行っています。
全国の多くの漁村では、深刻な人手不足が問題となっています。他方、都市部には、自然を相手にする漁業に魅力を感
じる若者が少なからずいると考えられます。しかし、都市在住者が自力で漁業就業に関する情報を集め、就業にこぎ着け
るのは容易ではありません。そこで、水産庁の補助事業による就業支援の一環として、漁業に関心のある方に漁業就労に
関する情報を提供するとともに、漁業就業希望者と人材の確保を希望する漁業関係者とのマッチングを行うための漁業就
業支援フェアが開催されています。
フェアでは、初めての方でも漁業や漁業就業に対する理解が深まるように、ガイダンスコーナーや資料コーナーを設け
て、情報提供を行っています。また、漁業就業を希望する方は、全国各地の漁業関係者の出展ブースから就労条件や採用
情報などを直接担当者から聞くことができます。出展ブースには漁業者が直接参加する場合もあり、漁師の生活や地域の
情報をより詳しく聞くこともできます。そして、漁業就業希望者と漁業関係者との間に合意があれば、新規就業者として
合は、水産庁による支援の対象になります。
フェアは一年間に5回程度開催され、
平均すると約 40 団体が出展しています。来場者は数十人から 300 人程度であり、
そのうち2~3割がマッチングに成功しています。今年2月に東京で開催されたフェアでは、数十年ぶりの大雪の日であっ
たにもかかわらず会場に 300 人近い方々が来場される大盛況となり、漁業就業への関心の高さが伺えます。今年度も5
月 24 日(土)の福岡でのフェアを皮切りに、東京、大阪といった大都市でフェアが開催されます。
水産庁施策情報誌漁政の窓
採用されることになります。こうして採用された新規就業者が、漁業の現場において漁労技術等についての研修を行う場
7
G Y O S E I N O M A D O
6月1日は「鮎の日」 吉を呼ぶ魚。「鮎」。
この度、鮎養殖漁業者の団体である全国鮎養殖漁業組合連合会は、河川環境保護に対する国民の意識啓発と伝統
的な和食文化に関わりの深い「鮎」を後世に伝えることを目的として、6月1日を「鮎の日」に制定しました。
今年は、この6月1日を中心に全国各地の漁業協同組合や販売者などが一致団結し、各地域で『「鮎の日」・吉を
呼ぶ魚「鮎」
』の啓発イベントを行っています。
ぜひ、これを機会にお近くのイベントに足を運んで鮎と触れ合うことや、鮎を食べることを通じて、鮎を身近に
感じてみてください。
コラム:魚偏に占うと書く「鮎」。理由は諸説ありますが、代表的なものを三点。
①「日本書紀」に、神武天皇が遠征する際、丹生川に酒壷を沈め、
「この川の魚が酔って木の葉のように流れてくれば、
大和を平定できるだろう」と占い、浮かんできた魚が「鮎」であったという説。
②神功皇后が新羅出兵の際、備前国松浦の川のほとりで釣り糸を垂れ、勝敗を占ったところ、
「鮎」が釣れたという説。
③春の鮎の遡上が多かった年は、米が豊作であったため、秋の豊作・凶作を占うことが出来たという説。
【全国各地の啓発・イベント実施スケジュール】
水産庁施策情報誌漁政の窓
8
・愛知県:「矢作川の子ども体験放流」6 月 1 日午前 10 時~矢作川古鼡水辺公園
・徳島県:「鮎のつかみどり大会」7 月開催予定徳島市美波町
・栃木県:「那珂川の子ども体験放流」6 月 1 日午前 10 時~なかがわ水遊園(那珂川)
・宮崎県:「道の駅北川はゆま」及び「綾もりの市」にて実演販売 5 月 31 日~ 6 月 1 日
・和歌山県:「貴志川の子ども体験放流」6 月 1 日午前 10 時~紀の川・貴志川諸井橋付近
・神奈川県:「湖と川の魚フェアー(アユと親しむ体験放流会)
」5 月 3 日、4 日終了済
・滋賀県:「夏の全国高等学校甲子園野球大会で滋賀県代表校への塩焼き鮎の提供」8 月初旬
プレスリリース
4 月分
発表年月日
H26.4.1
H26.4.3
H26.4.4
【お問合せ先】
全国鮎養殖漁業組合連合会
和歌山県和歌山市吐前 871
T e l : 073―477―1232
Fax : 073―477―4165
発表事項名
担当課
新たな養鰻場造成等に対する支援の取扱いについて
栽培養殖課
「日ロさけ・ます漁業交渉」の結果について
国際課
岩手県信用漁業協同組合連合会に対する行政処分について
水産経営課
H26.4.7
「水産庁・沖縄総合事務局外国漁船合同対策本部」の開所式の開催について
管理課
H26.4.8
「第2回 資源管理のあり方検討会」の開催及び一般傍聴について
管理課
H26.4.8
H26.4.14
平成 25 年度南極海鯨類捕獲調査の調査航海の終了について
国際課
「26 年漁期 漁獲可能量(TAC) 設定に関する意見交換会(さんま、まさば及びごまさば並びにずわいがに)
」の開催
について
管理課
H26.4.16
資源管理・漁業経営安定対策の実施状況(平成 26 年3月末現在)について
漁業保険管理官
H26.4.16
水産加工業者における東日本大震災からの復興状況アンケート結果について
加工流通課
H26.4.18
日豪 EPA(経済連携協定)大筋合意の内容について(水産物関係)
加工流通課
H26.4.18
今後の鯨類捕獲調査の実施方針についての農林水産大臣談話について
国際課
H26.4.21
韓国はえ縄漁船の拿捕について
管理課
H26.4.21
「第 16 回 日韓漁業共同委員会 第1回 小委員会」の開催について
国際課
H26.4.25
「2014 年度第二期北西太平洋鯨類捕獲調査(春季沿岸調査)
」の実施について
国際課
H26.4.25
「ロシア連邦の 200 海里水域における日本国の漁船によるロシア系サケ・マスの 2014 年における漁獲に関する日ロ
政府間協議」の結果について
国際課
H26.4.28
「第 16 回 日韓漁業共同委員会 第1回 小委員会」の結果について
国際課
H26.4.30
平成 26 年度 第 1 回 日本海スルメイカ長期漁況予報
漁場資源課
H26.4.30
平成 26 年度 第 1 回 瀬戸内海東部カタクチイワシ漁況予報
漁場資源課
編集・発行 水産庁漁政部漁政課広報班
水産庁施策情報誌
漁政の窓
〒100-8907 東京都千代田区霞が関1-2-1 合同庁舎1号館8階
代表 03-3502-8111(内線6505)
URL http://www.jfa.maff.go.jp/
ご意見 ご質問はこちらへ URL http://www.maff.go.jp/j/apply/recp/index.html
本冊子は水産庁ホームページでも掲載しています。 URL http://www.jfa.maff.go.jp/j/koho/pr/mado/index.html
漁政の窓
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