4 安全確保のための措置

4 安全確保のための措置
4-1 安全を支える人材
全ての事業において、変わることなく大切にすべきものは「安全」という認識のもと、社員自らが安全をつくる
ため、活発なコミュニケーションによる危険に気づく力の醸成、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)による気づく力
の環境づくり、気づく力の基礎である知識・技術・技能を養うことを重点実施項目に掲げ、安全教育を継続的に
実施しました。また、鉄道の安全をつくる社員の技術力向上・技術継承を行うため、着実な新規採用など人材
確保の取組みを行っています。
新規採用の推移
(人)
299
258
300
204
216
190
200
100
0
H22
H23
H24
H25
H26
(年度)
行動訓練
会社の風土とすべく取組んでいる「安全」は、緊張感のある指差確認や敬礼、キビキビとした敏速な行動が
基礎になります。安全の基礎となる行動を身につけるための「行動訓練」を全社員で実施することにより、安
全意識や組織力を高めています。 また、平成25年度から「行動訓練コンクール」を開催し、行動訓練の更
なるレベルアップとコミュニケーションの活性化を図っています。
[会社幹部の訓練]
[平成25年度新入社員の訓練]
[行動訓練コンクール]
実習線等の活用
各分野・階層における必要な知識・技術の継承を図るため、安全に関する講義と共に、社員研修センター東
小倉実習線等を用いて実践に即した教育を行っています。 また、各系統においても訓練やコンクール等に活
用しています。
14
4-2 社員教育及び訓練等
安全を当社の風土として定着させるため、「安全創造館」を中核ツールとした体系的な安全教育を実施している
ほか、安全の基礎となる緊張感のある行動を身につけるための行動訓練を行うと共に、各分野・階層における必
要な知識・技術の継承を図るため、実習設備等を用いた実践に即した教育を行っています。
安全創造館研修
「過去の事故等を風化させず、基本動作や安全対策の意味を理解し、お客さまや社員の安全のために行動でき
る社員の育成」を長期ビジョンに掲げ、安全教育の中核ツールとして、「安全創造館」を開設しました。
平成24年8月に開始した2巡目の研修では、過去の事故等から教訓を学び、今後の業務にどう取組むか「考え
る」ことをテーマに研修を行い、平成26年3月までに、全社員及びグループ会社社員を含め、延べ約1万名が受
講を修了しました。現在は3巡目の研修開始に向け、「過去の事故・災害を教訓に、自ら気付き自ら行動する力を
養う」ことをテーマにした研修内容に更新しています。社員参加型の研修を中心に、より一層積極的に安全に取組
む社員の育成を目指しています。
STEP ③
安全対策を考える
STEP ②
重大事故を振り返る
STEP ①
導入
自分のとるべき行動について考える
事故の教訓を考える
安全について考えるきっかけをつくる
STEP ⑥
まとめ
職責の重要性・社会的役割を自覚する
STEP ④
指差確認の効果を共有する
STEP ⑤
これからの行動を考える
意識ある指差確認への理解を深める
現物や事前に改善した事例から今後を考える
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教育・訓練の実施
社員の知識・技術力向上を図ることを目的に、各系統において様々な教育・訓練を実施しています。
■駅運転関係
在来線駅関係社員については、業務の経験年数に応じて知識や技術の習得レベルの目標を定めており、経験
年数に応じたカリキュラムを組み、115名に対して教育・訓練を実施しました。管理者等に対しては、異常事対応
能力の向上を目的とした訓練を132名に実施しました。また、各現場(支社、鉄道事業部、統括駅)でも異常時対
応訓練を実施し、一丸となって異常時対応力の強化に取組んでいます。 指導担当者に対しては、机上教育や実
設訓練を行う中で指導ポイントを確認し、指導力の向上に努めました。また、職場単位でのOJTを行い技能継承
を図っています。
■乗務員関係
各職場における定例訓練や、社員研修センターでの集合研修、シミュレータ訓練施設を活用した教育を行って
います。また、車掌・運転士の養成の他、経験年数に応じた教育、各箇所の指導者に対する教育等を車掌は約
130名、運転士は約260名に対して実施しました。また、シミュレータ訓練施設では、踏切障害事故等をコンピ
ュータ・グラフィックで再現した訓練を車掌は約270名、運転士は約560名に実施し、異常時対応能力の向上を
図りました。また、経験の浅い運転士に対しては、運転士としての心構えや乗務中における注意点など、知識・
技能の向上を目的とし、安全意識を伝えるための
ベテラン運転士による「安全講話」に約250名が
参加しました。 更に「眠気防止ガイドライン」に基
づく眠気のメカニズムを学び、より効果的な睡眠
の方法や生活習慣の改善に取組み、常に万全
の体調で乗務するよう指導を徹底しています。
■車両保守関係
平成25年度は、グループ会社社員も含め36名の新入社員に対し、基礎技能教育等を実施し、鉄道事業者と
しての責任と役割、車両の基礎知識及び技術習得を図りました。また、各車両センター等の職場内教育におい
て、故障事例やインシデント事例の研究、検査周期の厳正、労働災害防止、実車を活用した異常時訓練等を実
施しました。社員研修センターで実施する集合教育では、経験年数に応じたカリキュラムや車両検修技術の継
承を目的とした技術教育など、グループ会社社員も含め264名に対し規程や車両の専門的な教育を実施しま
した。
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■施設関係
社員研修センターにおいて専門的な教育を実施しており、特に若手社員については実習を中心とした研修を行
っています。保線・土木・建築及び機械の各系統において、専門的な教育を345名に対して実施しました。また、
異常時を想定した復旧訓練、技術習熟度等を確認するチェック表を用いて、レベルに応じたOJT等を実施するとと
もに、本社の安全推進プロジェクトを中心とした技術フォローを年2回実施し、技術・技能の向上を図りました。
■電気関係
社員研修センターにおける集合研修と各職場でのOJTによって、鉄道電気に関する専門教育を実施し、知識の
習得及び技術力の向上を図っています。 集合研修では、入社5年目までの若手社員を対象とした基礎研修にて
実習中心の研修を行い、6年目以降の社員を対象とした応用研修にて、各電気設備への理解の深度化のために
より専門的な研修を行っています。平成25年度は、これらの集合研修を延べ347名に実施しました。また、各職
場では、他の電気関係職場やグループ会社と合同の異常時訓練や意見交換会を活発に実施しており、現場力の
向上や技術継承を図っています。中でも、「事故予知訓練」には特に力を入れており、社員の「気づく力」を高め、
事故を未然に防ぐ組織づくりを行っています。
コンクールの実施
各系統で実施する各種コンクールは、職場間や個人相互間の技能の切磋琢磨のほか、コミュニケーションの
構築にも役立っています。
■駅運転関係
技術継承の一環として社員研修センター東小倉実習線において、「駅運転取扱技能コンクール」本社直轄大会
を開催し、平成25年12月14日には各支社及び本社直轄大会で選抜した6チームによる「駅運転取扱技能コン
クール全社大会」を開催しました。駅間で故障した列車を伝令法により救援するという想定で、より実践的なコン
クールとなるよう救援方法及び各担務を直前で決定し、モータカーを救援列車に見立てるなどして、更なる技術
力の向上を図りました。
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■乗務員関係
職場単位では、基本動作・出区点検・点呼・乗継ぎ及び車内放送等のコンクールを実施しており、延べ約5,
000名の車掌・運転士が参加しました。年1回本社で開催している「異常時対応コンクール」では、踏切事故や
車両故障が発生した際、お客さまへのご案内等、適切に対処できるかを競っています。 平成25年度は、全乗
務員職場から選出された29名が、技術を競い合いました。また、全職場を対象に安全に対する取組みや基本
動作の定着度等を競う「セーフティー・ランキング」、点呼時における助役の伝達能力向上を目的とした「点呼コ
ンクール」、取組みの活性化及び安全意識の高揚を図る「安全運行継続表彰」を実施しました。さらには、お客
さまに対する安全運転の決意表明と同僚に対する敬意を込め、駅ホームで列車を待ち受ける際の「グリーティ
ング」に取組み、全乗務員区所を対象とした「グリーティングコンクール」を実施しました。
■車両保守関係
グループ会社を含め、車両の保守に関わる全ての職場を対象に年1回「車両SU技術コンクール」を実施して
います。 このコンクールでは実車(電車・気動車)を使用し、車両故障発生時やサービス機器の不具合発生時
の調査技術、作業の正確さ、迅速さについて技術を競い合っています。また、各区所の運転取扱いに従事する
社員に対して、運転取扱いに関する知識・技能の向上を目的として「区所構内運転取扱技能コンクール」をグル
ープ会社と合同で開催しました。区所構内における保安装置故障の発生を想定し、より実践に近い状況下にお
いて異常時の連絡体制、作業指示、転てつ器の鎖錠、進路確認等を安全かつ迅速に対応できるかをグループ
会社社員を含む総勢82名が参加して競い合いました。
■施設関係
技術力向上、技術継承及び安全意識の高揚を図ることを目的として「技能競技会」を実施しました。保線部
門では、レール手探傷・分岐器検査・機械点検・異常時対応、全部門(保線・土木・建築)では、線路検査・災害
対応・設計計画・建物検査、土木部門では、盛土造成、構造物診断、軌陸車の異常時対応について総勢210
人が技術力を競い合いました。
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■電気関係
技術力向上及び安全意識の高揚を図ることを目的として、電気技術競技会を年1回実施しています。競技会で
は、機器や制御ケーブル等の不良箇所の調査及び復旧作業の正確さや迅速さなどを競います。平成25年度は、
トロリ線断線復旧 (電力の部)と信号保安装置に係る障害復旧(信号通信の部)をテーマに地区予選を勝ち抜い
た75名の技術者が本選に参加しました。
4-3 緊急時対応訓練
関門トンネル総合防災訓練
平成25年6月7日にJR貨物九州支社さま、門司警察署さま及び門司消防署さまにもご参加いただき、総勢約
130名で総合防災訓練を実施しました。昭和28年の北部九州の集中豪雨により、関門トンネル内に周辺の洪水
(土砂まじり)が一気に流入し、約1.8kmにわたり水没するという災害を受け、その翌年から毎年「防災訓練」を
実施しており、今回で60回目の実施となりました。まず、トンネル内で車両故障が発生し走行不能になったという
想定で、これを救援(ディーゼル機関車で連結して門司駅に収容)する訓練とトンネル内への雨水等の流入を防ぐ
防災扉の閉扉、揚水ポンプに外部電源を接続して起動する等の総合的な訓練を実施しました。
[総勢約130名の大規模訓練]
[救護列車との連結]
[トンネル内防水扉の閉扉訓練]
大規模地震想定訓練
平成17年3月20日に発生した「福岡県西方沖地震」を教訓に開始した訓練で、9回目となる訓練を平成25年
9月6日に実施しました。各主要駅で、お客さまの避難誘導訓練や人形を使ったAED(自動体外式除細動器)訓
練を実施しました。また、津波危険区域内での列車のお客さまに対する避難誘導訓練として、地元の警察及び
消防関係者との合同訓練等を実施しました。
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総合脱線復旧訓練
平成25年11月8日、小倉総合車両センター(旧小倉工場)で本社直轄管内では27回目の総合脱線復旧訓
練を実施しました。踏切において、普通列車と乗用車が衝突、脱線し車内で火災が発生したとの想定のもと、駅
社員及び乗務員による輸送指令員との情報伝達、警察・消防関係者と合同でお客様の避難誘導や救出訓練を
行いました。また列車火災によるお客さまの救済救護、車両の載線、線路、電力、信号通信設備の復旧作業を
行い、異常時の対応能力の向上を図りました。JR貨物九州支社さまを含めて、総勢約270名が参加しました。
[お客さまの救助訓練]
[クレーン車による載線]
[架線復旧作業]
[信号ケーブル復旧作業]
4-4 安全設備
新しい自動列車停止装置(ATS-DK)への移行
国土交通省令が改正され、曲線・分岐器等の速度制限区間に対して列車が危険速度に達した場合に、自動列
車停止装置により列車を停止又は減速させることが義務付けられました。JR九州では、より保安度を向上させた
ATS-DKを新たに開発し、従来のATS-SKからATS-DKへの取替工事を進めています。現在、車両最高速
度が100km/hを超える全ての在来線車両について取替工事を完了しています。平成25年度は、車両最高速
度が100km/h未満の在来線車両への取替工事を推進し、平成25年度末時点で全体の77%の取替工事が
完了しました。 また、地上設備の整備進捗率も約52%と計画どおり推移しています。平成28年6月末までに確
実にATS-DKへの移行を推進してまいります。
[ 車両(運転席側面)の車体標記]
[運転席ATS情報表示装置 ]
■ATS-DKの使用区間の拡大
平成25年度に鹿児島本線川尻信号場~
列車の速度が制限に対して
非常ブレーキを動作させな
ければならない速度となった
場合は、非常ブレーキが動
作する
データベースの情報から
自動的に速度監視を行う
八代駅間、長崎本線肥前山口駅~諫早駅
間、日豊本線中津駅~杵築駅間、篠栗線
列車速度
吉塚駅~桂川駅間において夜間走行試験
を行い、平成26年度にATS-DKを使用
(一部車両)して運転する予定です。
20
車上DB
非常ブレーキ
速度制限
ホーム検知装置
ワンマン列車において、ホームと反対側のドアを誤って開けることがないようにするため、平成21年度から
ホーム側を検知する装置を車両及び地上(まくら木)に順次導入しています。平成25年度は、新たに福岡及
び佐賀地区の一部ワンマン列車において使用開始しました。
[ 車両床下機器(車上子) ]
[ 線路まくら木上機器(地上子) ]
踏切の安全対策
踏切を安全に正しく通行していただくため、さまざまな安全対策を実施しています。
●踏切警報灯の視認性向上
踏切警報灯増設のほか、全方向踏
切警報灯(LED形)の導入を拡大し
ています。
●夜間の踏切視認性向上
踏切付近の照明を増設して、
夜間の視認性を向上させてい
ます。
●踏切注意灯
自動車の運転手に注意喚起し
ています。
●監視カメラ
踏切の正しい通行を監視していま
す。
●踏切支障報知装置
非常ボタンを押すことによ
り踏切内の異常を列車の運
転士に知らせます。
●踏切障害物検知装置
踏切内に障害物があることを検
知し、列車の運転士に知らせます。
●可倒式ポール
踏切幅の限界を
自動車運転手に知
らせる目的で、可
倒式ポールを設置
しています。
※ 列車と自動車による衝突事故が発生し、又はその恐れがある踏切には、落輪防止壁の塗色(塗替え等)、注意喚起の看板
や路面ステッカー等を設置・貼付して踏切の安全確保に努めています。
[施工前]
[施工後]
[路面ステッカー(閉込め防止対策)]
21
里道等の安全対策
「踏切里道事故防止検討委員会」において、里道
等の事故防止対策について検討を重ねています。
委員会では、線路横断状況を調査し、里道に関係
する自治体と用地協議を行うなどし、立入り防止柵
等で封鎖するなどの対策を講じています。
[対策前]
[対策後]
降雨災害対策
線路沿線の斜面については、集中豪雨や台風に
よる状態変化、経年による表面風化等による落石
や崩落等を防止するため、平成25年度は45箇所
の斜面対策工事を実施しました。
[対策前]
[対策後]
■九州北部豪雨災害復旧
「平成24年九州北部豪雨」と名づけられた九州北部地方の記録的大雨に対し、気象庁は「これまで経験した
ことのないような大雨」を初めて発表しました。甚大な被害を受けた豊肥本線の復旧に際しては、「豊肥本線復
旧事務所」を現地に設置し、7名の社員を常駐させて復旧工事にあたりました。関係者の尽力により、平成25
年8月4日、被災から1年1ヶ月という短期間で復旧工事を終了し全線で運転再開することができました。
[宮地駅~波野駅間 坂の上トンネルの崩落]
[ 復旧後 ]
[ 被災時 ]
[宮地駅~波野駅間 坂の上トンネルの線路流出]
[ 被災時 ]
[ 復旧後 ]
[宮地駅~波野駅間 願成就トンネル付近の築堤崩壊]
補強盛土・横断水路の増築・のり面工等に
より、防災強度を以前にも増して高めること
ができました。
[ 被災時 ]
[ 復旧後 ]
[全線運転再開当日の豊後竹田駅の様子]
運転再開当日は、
沿線の皆さまと一体
となって運転再開を
祝うイベント「元気、
快晴プロジェクト」を
開催しました。
22
地震・津波対策
■耐震補強
地震発生時に、高架橋柱が損傷しないよう
高架橋柱耐震補強工事を実施しています。
平成25年度は、昨年度に引き続き別府駅
のコンコース・エリアの高架橋柱9本のほか、
佐賀駅のバスセンター・エリア等の高架橋柱
96本の補強工事が完了しました。
[ 施工後 ]
[ 施工前 ]
■津波対策
平成24年8月、中央防災会議により公表された「南海トラフ巨大地震の津波浸水想定」をもとに、「津波ハザ
ードマップ」の見直しを開始し、平成25年6月に関係箇所に配布して使用開始しました。また、巨大地震によ
る津波への対応として、社員の基本的な心構えを示した「津波避難誘導心得」を制定し、乗務員等関
係社員に対し周知を図りました。更には、自治体が公表した浸水想定に基づき、「津波ハザードマッ
プ」を更新(自治体公表の指定避難場所等やその凡例を追加して表記)して再度配布し、平成25年
10月15日から使用開始しました。これに併せて、警戒区域拡大に伴う「津波警標」及び「津波警
標補助標」の建植箇所も見直しました。巨大地震による停電を想定し、津波情報等を収集するための
手段として、ポータブル発電機及びポータブルテレビを津波浸水予想区域を所管する関係職場に配備
しました。
ポータブル発電機
ポータブルテレビ
[最新のハザードマップ ]
[津波情報収集機器]
【津波避難行動心得】
4-5 安全設備投資
鉄道の安全に関する支出の推移
安全設備への投資は、毎年計画的に実施しています。平成25年度は、軌道モータカーの取替え、連続
立体交差化、ATS-DKの整備及び木まくらぎのTPC化等を行ってきました。また、線路施設、電路施設、
車両などの維持更新のための投資も実施しています。
●主な安全投資件名
(億円)
<老朽設備取替>
500
[安全設備投資]
・ 軌道モータカー取替
<保安・防災対策>
・ 連続立体交差、ATS-DK整備
400
300
<安定輸送対策>
・ 木まくらぎTPC化、分岐まくらぎ合成
まくらぎ化
<車両関係>
・ ATS-DK改良工事(気動車、電車)
200
342
337
406
420
471
100
0
H21
H22
H23
H24
H25
(年度)
23
4-6 九州新幹線の安全確保の取組み
教育・訓練の実施
新幹線の安全運行維持のため、各系統において教育や訓練及びコンクールを実施し、技術力の向上を
図っています。
■駅運転関係
新幹線指令における自動制御不能時を想定し、駅運転関係者による手動でATC進路を構成する異常時
取扱訓練を実施しました。また、訓練施設において分岐器の手回しハンドル訓練や鎖錠金具による鎖錠
訓練も実施しました。
■乗務員関係
全乗務員(車掌及び運転士)を対象とした定例訓練(規程・マニュアルの周知、車両故障発生時の応急処
置、現車を活用した訓練等)を毎月1回実施している他、経験年数に応じた教育を実施しています。また、災
害を想定した異常時訓練や新幹線シミュレータを活用した教育・訓練(車両故障時の応急処置や気象異常
時の取扱い等)を継続的に実施しています。職場単位では、車掌を対象とした接客サービスコンクール、運
転士を対象とした運転操縦技術コンクールを実施しています。本社では、年1回「車掌・運転士合同応急処
置対応コンクール」を開催しています。これは、運行中に車両故障が発生したとの想定で、応急処置やお客
さまへのご案内について適切に対処できるかを競うものです。更には、平成25年度からJR西日本さまと合
同で競技会を開催しています。
■車両関係
熊本総合車両所内で脱線復旧訓練を実施し、異常時の対応能力の向上を図っています。また、平成23
年3月に発生した輸送障害を教訓に配備した救援用電源装置の取扱い訓練や救援用パンタグラフ装着訓
練を実施し、更なる事故対応能力向上に努めています。 更には、JR東海さま及びJR西日本さまと連携し
て、実車を使用したJR3社新幹線車両技術発表会を開催しました。
24
■施設関係
線路設備や作業用車輌(保守用車)の管理強化及び技術者養成の一環として、分岐器キーマン教育や保守用
車異常時時対応競技会及び現場と指令間の連携強化を目的とした異常時救援訓練を開催しました。
■電気関係
電車線路設備事故復旧訓練、通信設備障害復旧訓練や工務関係技能競技会、電力設備事故復旧競技会な
ど、各種訓練競技会を開催しています。また、JR3社(JR東海さま、JR西日本さま)新幹線電力技能交流会を
開催するなどし、トロリ線断線時の早期復旧作業について相互に確認しました。
■指令関係
新幹線の運行管理を行う新幹線指令では、輸送指令、施設指令、電力指令、信号通信指令が参加して、年2
回合同異常時訓練を実施しています。平成25年度は、線路故障時における手順や早期復旧のための対応方
法等の訓練を実施しました。
■在来線との合同異常時訓練
駅間で運転不能となった場合を想定し、お客さまを迅速に救済する訓練を実施しました。停車列車の隣接
線路に別の列車を横付けし、相互の乗降口間に梯子を渡してお客さまにご移乗していただく訓練を警察及び
消防関係者を含め総勢250名が参加して実施しました。
25
新幹線ホーム上の安全設備
ホームからの転落防止対策や、列車を緊急に停止させるための装置等の安全設備を設置しています。
ホーム可動柵
安全確認のためのカメラ
ホームから線路内への転落防止や通過列車の風圧を防御する役割を果たす、
可動式の安全柵を設置しています。九州新幹線の博多駅を除く全駅に設置して
います。
[閉じた状態]
ホーム上の安全確認を行うために、IT
Vカメラを設置しています。
安全確認のためのモニター
列車を駅から出発させる際に、ドアやホーム上の安全を確認するた
めの設備です。ITVカメラの画像を映し出しています。
[開いた状態]
転落防止のための注意喚起装置
お客さまに安全に乗降していただくため、
ホーム上に点滅式LEDライト(スレッドライ
ン)を設置しています。
非常停止ボタン(列車防護スイッチ)
[点灯の状態(写真上下共)]
転落防止用ゴム
ホームと車両との隙間が比較的大きい乗降口に、隙間を小
さくするために「転落防止用ゴム」を設置しています。
線路内への転落や列車の安全運行に支障をきたすような緊
急時に、列車を停止させるための設備です。九州新幹線の各
駅で約50mおきに設置しています。
注意喚起シール
ホームと車両の隙間が比較的大きい箇所には、
注意喚起のためのシールを貼っています。
障害物検知用
光電気センサー
一部の駅では、お客
さまがホームと車両の
間にいるときは、可動
柵が閉まらないように
するため、センサーを
設置しています。
26
27
新幹線の安全対策
■緊急地震速報の導入
九州新幹線の対震列車防護システムに気象庁から配信される緊急地震速報を導入することで、全国約1,000
箇所の地震計情報を活用できるようになり、地震発生時に早期に列車を停止させることが可能となりました。
■脱線防止ガードの設置
地震発生時等に脱線しないよう、一部区間に
脱線防止ガードを設置しています。平成29年
■盛土部分への降雨災害対策
降雨時のり面崩壊対策として、切取区間にコンク
リート吹付け等を施工し防災強度を高めました。
度末までに総延長約56kmを施工予定で、平
成25年度末時点で約50%完了しました。
[施工前]
[イメージ]
■車両の安全
車両を安全に使用できるように、定期的に様
々な検査を行っています。
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[施工後]
■線路の安全
列車の運行が終了した夜間で、線路や電気設備
の保守点検を行っています。作業終了後「確認車」
で安全を確認します。