小動物臨床領域で見られる真菌感染症(Ⅱ)今後注目す

解説・報告
小 動 物 臨 床 領 域 で 見 ら れ る 真 菌 感 染 症(Ⅱ)
─今後注目すべき真菌症,特に人獣共通真菌症を中心に─
村田佳輝†(むらた動物病院院長・千葉県獣医師会感染症委員会)
3 皮 膚 真 菌 症
表 1 主たる寄生動物と菌種
(1)皮膚糸状菌症(白癬)
菌 腫
皮膚糸状菌症は動物から人への
寄生動物
T. equinum
ロバ,馬,犬
M. gallinae
鶏,鳩,七面鳥,カナリア,猫,
犬,猿,マウス,人
T. simii
犬,猿,鳥
M. canis
犬,猫,牛,ロバ,モルモット,
馬,ライオン,猿,兎,羊,豚,
人
T. mentagrophytes
猫,犬,牛,ロバ,モルモット,
馬,狐,山羊,鶏,マウス,兎,
羊,豚,人
イトン,表皮菌)の感染によって起こる皮膚疾患をいう.
T. verrucosum
牛,カナリア,猫,犬,ロバ,
山羊,鶏,馬,羊,豚,人
それぞれ感染源や宿主親和性に基づき,動物好性(zoo-
M. equinum
馬
M. gypseum
猫,犬,ロバ,モルモット,鶏,
馬,猿,マウス,兎,ラット,
豚,虎,人
A. benhamie
兎,モルモット,ハムスター,
はりねずみ,やまあらし,人
感染が起こることが古くから知ら
れてきているが,近年,動物の飼
育頭数や輸入頭数の増加,移動交
通手段の発達とともに報告例も増
加し,いまだ制御に難渋している
疾患である.本症は,Trichophyton 属(トリコファイ
トン,白癬菌),Microsporum 属(ミクロスポラム,小
胞子菌),及び Epiderumophyton 属(エピデルモファ
philic)菌,ヒト好性(anthropophilic)菌,土壌好性
(geophilic)菌に分けられる.皮膚科領域で最も重要な
のは動物と接触することによって,動物に感染もしくは
寄生している動物好性菌に人が感染する場合である.こ
れら動物好性菌は宿主特異性があり,罹患する動物種に
治療法は,イトラコナゾール,ケトコナゾール,テルビナ
フィン,グリセオフルビン外用,内服
対応する菌種が知られている.中でも最も重要な菌種は
主に犬,猫に分離される Microsporum canis,主に牛
から分離される Trichophyton verrucosum,げっ歯類を
ア Microsporum canis 感染症
はじめとして多くの動物から分離される T. mentagro-
犬及び猫の皮膚糸状菌症の主な原因菌である.輸入
phytes complex である[3].最近の研究では,分子生
ペット動物数の増加とともに全国に蔓延するようになっ
物学的な菌種同定が普及したことに伴って,アナモルフ
たと考えられている.最近は大都市圏では減少してお
(無性世代)の T. mentagrophytes complex は ITS 領域
り,散発的に発生はしている.地方においてはいまだ多
の塩基配列による分類でテレオモルフ(有性世代)の
くの発生がみられている.人からの分離頻度は減少して
Ar throderma benhamie,A. vanbreseghemii,A. simii
いるが,少子化,公衆衛生,動物の衛生状態の向上が関
に区別されている[4, 5].なかでも A. benhamie の遺
与していると考える.M. canis 感染症は犬,猫との接
伝子型をとる T. mentagrophytes は,1990 年代まで本
触機会の多い女性,子供に多くみられ,人から人への感
邦では分離報告はなかったが,最近,兎,ハムスター,
染力も強いため家庭内感染,ペットショップなどでの集
モルモット,ハリネズミから人への感染報告が増加して
団感染の報告が多い.
いる.さらに鶏から分離され,本邦初のシャモからの人
動物が感染すると皮膚の脱毛,紅斑,落屑,表皮小環
への感染報告のある M. gallinae も今後注意しなければ
(リングウォーム),痂皮等の掻痒皮疹を特徴とする(図
ならない菌種である[6](表 1).
10).ここで抜け落ちた被毛や落屑に寄生している分節
分生子には 1 年以上も感染力があるため,本感染症の問
題点は長期にわたる環境汚染である.また,動物が自然
† 連絡責任者:村田佳輝(むらた動物病院)
〒 299-4114 茂原市本納 2016 ☎ 0475-34-2398 FAX 0475-30-5122 E-mail : [email protected]
日獣会誌 67 878 ∼ 885(2014)
878
A
B
D
C
図 10 Microsporum canis による皮膚糸状菌症(A・B:輸入された洋猫・洋犬からもたらされ,帰化,C:PDA 培
地上のコロニー,D:大分生子)
A
B
図 11 Microsporum canis による菌腫(A:HE 染色 ×100,B:HE 染色 ×400)
治癒または治療が不十分な場合は,本菌が被毛に腐生し
(図 11).
てキャリア状態となり,接触した人が感染発症すること
人での典型的な臨床症状は小水胞性斑状型の体部白癬
が知られている.そのためブリーダー,ペットショップ
である.動物と接触しやすい露出部,特に顔面,四肢に
等の多頭飼育環境では発症すると浄化が難しくなり,関
通常,貨幣状大までの中心治癒傾向のある環屑を生じ
係者への感染が問題となっている.また室内飼育の犬,
る.また炎症を起こすと発赤,膿瘍,肉芽腫結節をつく
猫から飼い主も同様に感染する.また稀に,猫において,
り,ケルルス禿瘡(ケリオン)となる(図 12).通常,
真皮に肉芽腫を形成する,菌腫がみられることがある
動物好性菌では強い炎症を生じやすい.飼育している動
879
物がいる場合,感染経路の特定には菌株の同定が必要で
方からの報告が多く見られたが,近年,関東などその他
ある.最近では ITS 領域の塩基配列によって株のタイ
の地域からも散発的に報告がなされ,全国的に広く分布
ピング,菌種の同定が行われ,分子生物学的手法が主流
していることが伺える[7, 8].最近では遺伝子解析に
となってきているが,M. canis に関しては確立されて
より本菌は A. benhamiae のアナモルフ(無性世代)の
いない[3].
1 つである可能性が示唆されている.ペットからではな
いが,動物由来感染症の 1 つであるので今後の動向が気
イ Trichophyton verrucosum 感染症
になる感染症である[9].
本菌の宿主は,小動物ではないが,人獣共通感染症と
ウ T. mentagrophytes complex
して重要であるので,解説を加える.感染牛を主な宿主
とし,通常,酪農畜産従事者が飼育動物との接触によっ
T. mentagrophytes は ヒ ト 白 癬 の 原 因 菌 種 と し て
て感染する.家族内感染もあり,人から人へも感染する.
T. rubrum に次いで分離頻度の高い菌種である.本菌は
牛での症状は痂皮を伴う広範囲な円形脱毛で,人におい
分子生物学的に複数の菌種からなる complex を形成し
ての典型的な症状は中心治癒傾向の乏しい,通常,2 ∼
その分類は混沌としており,テレオモルフの明らかに
3 重の同心円状の隆起を伴う紅斑性病変で,他の皮膚糸
状菌による病変よりは炎症が強いことが特徴で,職業
Arthroderma vanbreuseghemii
モルモット,人
T. mentagrophytes(animal type 1)
ナラシカ
歴,臨床像から菌種の推定が可能である.患者自身も牛
からの感染を自覚していることが多い(図 13).発生地
域は日本最大の酪農地帯である北海道,特に道東地区に
T. mentagrophytes(animal type 2)
ジャンガリアン・ハムスター,ラット,
犬,アシカ
広く分布している.従来,酪農の盛んな北海道,東北地
T. mentagrophytes(animal type 3)
ゴールデン・ハムスター
T. mentagrophytes(human)人
A. simii(type 1)
A. simii(type 2)
A. simii(type 3)
A. simii(type 4)
A. benhamiae(Americano-Europian race)
モルモット,人
T. mentagrophytes(animal type 4)兎
T. mentagrophytes var. erinacei
T. benhamiae(African race)
T. rubrum 犬,人
表 2 Trichophyton mentagrophytes complex 構成菌種と
国内における分離由来(宿主)
図 12 Microsporum canis 感染 ケルルス禿瘡
A
図 13 Trichophyton verrucosum 感染症(A:牛,B:人)
880
B
表 3 ヨツユビハリネズミ,オオミミハリネズミ,テンレック,ヤマアラシ,レミング,カヤネズミ,プレーリードッグからの
Tricophyton mentagrophytes var. erinacei の分離
番号
動物種
性別
年齢
購入もしくは導入先
同居飼育動物
出身地
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
ヨツユビハリネズミ
ヨツユビハリネズミ
ヨツユビハリネズミ
ヨツユビハリネズミ
ヨツユビハリネズミ
ヨツユビハリネズミ
オオミミハリネズミ
オオミミハリネズミ
テンレック
テンレック
ヤマアラシ
ヨツユビハリネズミ
ヨツユビハリネズミ
ヨツユビハリネズミ
ヨツユビハリネズミ
ヨツユビハリネズミ
ヨツユビハリネズミ
ヨツユビハリネズミ
ヨツユビハリネズミ
オオミミハリネズミ
ヤマアラシ
ヨツユビハリネズミ
ヨツユビハリネズミ
レミング
カヤネズミ
ヨツユビハリネズミ
ヨツユビハリネズミ
プレーリードッグ
F
─
F
─
─
F
─
─
─
─
─
─
─
─
F
─
M
F
12
─
─
M
F
─
─
M
F
M
24
9
12
24
─
24
─
─
─
─
─
4
6
14
24
4
10
10
12
48
─
48
11
─
─
24
10
12
ペットショップ(輸入品)
ペットショップ(輸入品)
ペットショップ
ペットショップ
ペットショップ
ペットショップ
ペットショップ(輸入品)
ペットショップ(輸入品)
ペットショップ(輸入品)
ペットショップ(輸入品)
ペットショップ(輸入品)
─
ペットショップ
ペットショップ
ペットショップ
インターネット
自宅繁殖
自宅繁殖
─
インターネット
ペットショップ(輸入品)
ペットショップ
ペットショップ
ペットショップ(輸入品)
ペットショップ(輸入品)
ペットショップ
ペットショップ
ペットショップ
ヨツユビハリネズミ,プレーリードッグ
─
ヨツユビハリネズミ,熱帯魚
ハムスター
ハムスター
なし
多種(ペットショップのため)
多種(ペットショップのため)
多種(ペットショップのため)
多種(ペットショップのため)
多種(ペットショップのため)
犬,兎,アライグマ
カメ,熱帯魚
ヨツユビハリネズミ,犬
─
ハムスター
ヨツユビハリネズミ
ヨツユビハリネズミ
─
犬,兎,ハムスター,ハト
─
犬,猫,ハト
犬,猫,ハト
多種(ペットショップのため)
多種(ペットショップのため)
ヨツユビハリネズミ,プレーリードッグ
ヨツユビハリネズミ,プレーリードッグ
ヨツユビハリネズミ
千葉
千葉
東京
福島
茨城
千葉
千葉
千葉
千葉
千葉
千葉
埼玉
茨城
岡山
神奈川
千葉
広島
広島
埼玉
岡山
千葉
福岡
福岡
千葉
千葉
千葉
千葉
千葉
なっている A. vanbreseghemii,A. benhamiae,A. simii
の 3 種類と,テレオモルフの明らかになっていない複数
菌種から構成されている(表 2)
[10].本邦に分布する T.
mentagrophytes は 1980 年 頃 ま で は A. vabureuseghemii のみと考えられてきた.しかし 1997 年にイエウサ
ギから A. benhamie が分離されたことを皮切りにペッ
トから感染したと考えられた人感染例の報告が相次いで
おり,すでに広く蔓延していることがわかってきた
[11-13].
(ア)Arthroderma vanbreseghemii 感染症
T. mentagrophytes のテルオモルフの 1 種で,本菌
は兎,げっ歯類,犬,猫,牛,馬,鳥類,は虫類まで
図 14 Ar throderma benhamiae に感染したカナダヤマア
ラシ
広く感染する.犬,猫の病変は M. canis 感染よりも
膿胞や痂皮形成が強い場合も報告されている.また猫
の感染の多くは,屋外でネズミを捕獲する時に感染す
たが,1997 年以降からイエウサギ,モルモット,ハ
ると考えられる.人では足白癬から分離される.
リネズミからの分離報告例が相次いでいる.ペット
(イ)A. benhamiae 感染症
ブームによって持ち込まれた,輸入真菌症と考えられ
T. mentagrophytes のテレオモルフの 1 種で,本菌
る(表 3)[3].また最近,動物園において輸入した
は兎,げっ歯類,ハリネズミ,ヤマアラシ等が宿主で
ヤマアラシが同居家族内で発症した例も報告されてい
あるが,感染動物に接触した人への感染報告が散見さ
る(図 14).動物が感染すると脱毛,皮膚の紅斑,痂
れている.本菌は本邦には存在しないと考えられてい
皮,落屑などの皮疹が見られる.感染動物と接触,人
881
図 15 ヨツユビハリネズミ(Atelerix albiventris)が保菌していた Trichophyton mentagrophytes var. erinacei による
人感染例
*写真提供:金沢医科大学皮膚科 望月 隆先生
が感染すると体部白癬がみられる(図 15).
(ウ)T. rubrum 感染症
本菌は動物から人への感染症ではなく,人から動物
への感染と考えられている.本菌は人好性菌と考えら
れているが,稀に犬の皮膚糸状菌症より分離されてい
る. 本 菌 は 犬 に は 常 在 し て い な い 菌 で あ る こ と,
ITS1 遺伝子及び CHS1 遺伝子配列を解析すると,人
由来株と 99%以上一致することから,おそらく飼い
主の白癬から感染したものと考えられる[13].人へ
注意ではないが,動物と人の密接な関係により,今後,
動物の感染例の増加が危惧される.
エ Microsporum gallinae
ブラジルなどの中南米での報告は以前からあったが,
最近,佐野らにより,本邦で初めて,シャモから人への
感染が報告されており,輸入感染症なのか,問題視され
ている(図 16)[14].
(2)スポロトリコーシス(スポロトリックス感染症)
原因菌の Sporothrix schenckii は土壌中や腐敗した植
物に生息しており,本邦ではよく知られた真菌症である
が,人獣共通感染症としての認識は薄い.しかし,猫の
スポロトリックス症は 1952 年に米国で報告され,欧米
やブラジルでは本症に罹患した猫からの受傷による感染
例が多発しており,人獣共通感染症として重要視されて
いる.本邦でも感染報告例は猫のみだが[15, 16],病
原菌としての認識の低さ,同定の困難さより,症例報告
は少ない.症状は人,動物ともに同様の症状で,皮膚固
定型,皮膚─リンパ管型及び播種型の 3 型が見られる
(図 17).猫では主に難治性の潰瘍病変を呈する.罹患
動物が病変部位の菌を舐めた時に口腔内や鼻腔及び爪に
多数付着して存在し,咬傷やひっかき事故により人へも
感染するとされている.特に猫の露出した病変部に多数
図 16 シャモの Microsporum gallinae による皮膚糸状菌症
882
図 17 Sporothrix shenkii 感染症
A
B
C
図 18 マラセチア症(A・B:皮膚苔癬化,C:Malasezia pachydermatis)
883
図 19 マラセチア膿瘍(Malasezia pachydermatis)
図 20 犬のヒストプラズマ症(Histoplasma capsulatum var. farciminosum)
の菌が存在するため,飼い主や罹患動物の治療にあたる
ル,柴犬に多い.猫もアトピー関連でみられ,ペルシャ
獣医師,動物看護師に感染する危険性が指摘されている
及びチンチラ,アビシニアンの顔面∼全身性皮膚炎で本
[17-21].また,海外では小児の顔面発症例に多い.
菌の関与が報告されている.季節は,アトピー性皮膚炎
との関係で皮脂の分泌が多くなる,高温,多湿の時期は,
(3)マラセチア症
マラセチア皮膚炎も増加する.基礎疾患としてアトピー
Malassezia 属は担子菌系酵母で人,動物の正常皮膚
性皮膚炎,アレルギー性疾患,免疫介在性疾患,甲状腺
常在菌であり,動物での原因菌はほとんどが Malasse-
機能低下症などで免疫を抑制させるような治療を受けて
zia pachydermatis で,稀に M. nana が猫で報告されて
いるかどうか聴取するべきである.また,VitA 反応性
いる.犬に多く見られ,アトピー好発犬種はウェスティ,
皮膚炎,膿皮症,ニキビダニ症,腫瘍に併発しやすい.
バセットハウンド,ダックスフンド,コッカースパニエ
犬では耳,顔面,下顎部,鼠径部,肛門周囲,趾間など
884
図 21 猫の難治性皮膚炎より分離された Arthrographis kalrae
に好発し,初期病変は患部に紅斑と痒み,慢性化すると
定義され,本邦では戦前,軍馬を中心に 3 万頭以上に「仮
苔癬化,色素沈着,脱毛が認められる(図 18).猫では,
性皮疽」として確認され,日本も本症の流行地であった.
紅斑,落屑,痒みは少なく,顔面部の脂漏と落屑,外耳
本菌の生息地は土壌であるので,破傷風と同様馬のいた
の面疱,爪周囲炎と爪の色素脱が認められる.また最近,
土地では注意しなければならない.本邦での犬症例の遺
犬において本菌による皮下膿瘍もみられた(図 19).
伝子型は馬と類縁の遺伝子型である.馬,犬での症状は
Malassezia pachydermatis は口腔内,皮膚に常在して
潰瘍性皮膚炎,リンパ管炎が多く重症化するとマクロ
おり,近年では人や動物のアトピー性皮膚炎への関与が
ファージ内寄生により全身感染が起こる.人が感染して
報告されている.イギリスでは看護師の飼育している
も同様で,現在のところ動物からの直接感染はないが,
犬を感染源に新生児 ICU に持ち込まれ,全身感染を発症
馬では接触感染が報告されているので,注意しなければ
させた例が報告されているため注意が必要である[22].
ならない真菌症の 1 つである[23].本邦では,最近,
犬においては,難治性皮膚炎,全身播種例の報告例及び,
(4)ヒストプラズマ症
H. capsulatum var. duboisii の報告例がある(図 20).
Histoplasma capsulatum によって起こる高度病原性
(5)アルスログラフィス症
真菌症であり,本菌種はバイオセーフティレベル 3 であ
Ar thrographis kalrae 感染症は稀な疾患であるが,人
るため,培養検査は感染事故の防止に注意が必要である.
ヒストプラズマ症は輸入真菌症として分離されるが,現
においては深在性皮膚,リンパ管炎,髄膜脳炎などの重
在までに確認されている人症例のうち約 20%程度は土
症感染の報告に見られる疾患で,本邦での報告は,猫で
着症例である.また犬,猫,ラッコ,牛でも報告例があ
の難治性の深在性皮膚炎の報告例,人では爪からの皮膚
感染例があり,今後注意が必要な菌種である(図 21)
り全て土着症例である.本菌種は流行地域,宿主により
[24, 25].
3 型(capsulatum,duboisii,farciminosum)に 分 類 さ
(次号につづく)
れる.Farciminosum 型は馬,ロバに感染することと
885