歯科診療CT撮影における 水晶体と甲状腺の被ばく線量 鑓田和真1) 勘崎貴雄1) 中村潤平1) 関 優子1) 安藤 雅1) 武井宏行1) 須藤高行1) 高橋康幸2) 1) 群馬大学医学部附属病院 放射線部 2) 群馬県立県民健康科学大学 診療放射線学部 診療放射線学科 利益相反 この研究発表の内容に関する利益相反事項は, ありません 背景 • 歯科領域におけるCT撮影 ⇒インプラント診療に欠かせない ⇒歯科用CT装置の普及が目覚ましい ⇒水晶体および甲状腺の被ばくが懸念される • 水晶体のしきい線量が500 mGy1)に引き下げられた 1)ICRP; ICRP Statement on tissue reactions/Early and late effects of radiation in normal tissues and organs – threshold doses for tissue reactions in a radiation protection context, ICRP Publication 118. Ann. ICRP 41 (1/2) (2012) 目的 • 歯科領域におけるCT撮影 ⇒水晶体、甲状腺被ばくが懸念される ⇒これらの被ばくに関するデータは少ない 歯科領域CT撮影における水晶体、甲状腺の平均吸収 線量の把握、資料作成 使用機器 • 医科用マルチスライスCT装置 Aquilion™ 64(東芝メディカルシステムズ株式会社) Aquilion ONE™(東芝メディカルシステムズ株式会社) • 歯科用CBCT装置 ①ORTHOPHO S XG 3D(シロナデンタルシステムズ株式会社) ②Veraviewepocs 3Df(モリタ製作所) • 蛍光ガラス線量計 GD-352M (AGCテクノブラス株式会社) 歯科用CBCT • 多断面再構成 • 3D作成 株式会社モリタ 方法 ①頭部ファントムに蛍光ガラス線量計を配置 ②通常条件で水晶体、甲状腺部分を測定 ③蛍光ガラス線量計の測定値の平均で比較 蛍光ガラス線量計の配置 水晶体部 スキャン範囲 甲状腺部 撮影条件(医科用CT) 管電圧 (kV) トータルmAs スライス厚 (mm) 64列 ヘリカルスキャン 120 60 320列 ボリュームスキャン 120 60 0.5 ピッチファクタ 0.641 撮影条件(歯科用CBCT) 管電圧 (kV) 管電流 (mA) 前歯モード 80 10 5.1 臼歯モード 85 7 5.1 前歯モード 80 5 9.4 臼歯モード 80 5 9.4 装置① 装置② 照射時間 (sec) 結果(水晶体) 14.00 平均吸収線量(mGy) 12.00 11.50 12.24 10.00 右 左 8.00 6.00 4.00 1.46 1.74 2.00 0.22 0.25 0.00 医科用CT 64列 医科用CT 320列 0.33 0.27 0.07 0.07 0.12 0.12 歯科用CBCT① 歯科用CBCT① 歯科用CBCT② 歯科用CBCT② (前歯モード) (臼歯モード) (前歯モード) (臼歯モード) 結果(甲状腺) 1.40 1.31 1.26 1.20 平均吸収線量(mGy) 1.00 右 左 0.80 0.77 0.80 0.60 0.49 0.47 0.40 0.26 0.27 0.20 0.21 0.20 0.25 0.23 0.00 医科用CT 64列 医科用CT 320列 歯科用CBCT① 歯科用CBCT① 歯科用CBCT② 歯科用CBCT② (前歯モード) (臼歯モード) (前歯モード) (臼歯モード) 結果(水晶体と甲状腺の比較) 水晶体 甲状腺 14.00 平均吸収線量(mGy) 12.00 14.00 11.87 12.00 10.00 10.00 8.00 8.00 6.00 6.00 4.00 4.00 2.00 1.60 2.00 1.28 0.78 0.20 0.07 0.00 0.00 医科用CT64列 医科用CT320列 歯科用CBCT 医科用CT64列 医科用CT320列 歯科用CBCT 考察(水晶体①) • 医科用CT64列ヘリカルスキャン 11.87 mGy 医科用CT320列ボリュームスキャン 1.6 mGy 歯科用CBCT 0.07 mGy • 放射線白内障のしきい値500 mGy ⇒放射線白内障のリスクは低い 考察(水晶体②) • 医科用CT64列(ヘリカル)で水晶体部の線量が 歯科用CBCTの100倍以上も高い線量 ⇒装置固有のオーバースキャニングによる影響 考察(甲状腺) • 医科用CT64列ヘリカルスキャン 1.28 mGy 医科用CT320列ボリュームスキャン 0.78 mGy 歯科用CBCT 0.20 mGy • 100 mGy以下の線量では発がんリスクの有意な 増加は認められない1) ⇒甲状腺の発がんリスクは低い 1)酒井一夫:低線量放射線の生体影響リスクをどう考えるか、日本放射線技術学会誌 第62巻第4号 結論 歯科領域のCT撮影 • 水晶体、甲状腺の被ばく線量を把握した • 歯科用CBCTは医科用CTと比べ水晶体、甲状腺 部の線量が少ない • 放射線白内障、甲状腺の発がんリスクは低い • 装置によってオーバースキャニングに注意が必要 水晶体被ばく低減方法を検討したい
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