磁性ナノ粒子の高感度・磁場観察を 実現する新規な磁気力顕微鏡 (交流磁場アシスト・交番磁気力顕微鏡) 秋田大学 大学院工学資源学研究科 附属環境資源学研究センター 教授 齊藤 準 1 従来技術とその問題点 磁性材料の磁区観察のための汎用装置として、 観察試料から発生する磁場を計測する磁気力 顕微鏡(Magnetic Force Microscopy; MFM)が 広く用いられているが、 磁性ナノ粒子、等の発生磁場が微弱な試料に 対しては、測定感度が十分でないことが問題点と してあり、広く利用されるまでには至っていない。 2 汎用のMFMを用いた磁性ナノ粒子の磁区観察 磁気力顕微鏡(MFM) ) 磁気力顕微鏡( ソフト磁性ナノ粒子の磁区観察結果 位相検出 半導体レーザ― フォト ディテクタ 磁性探針 表面像 磁気像 圧電素子 加振器 探針の磁気モーメント 250 nm 試料からの漏洩磁場 測定感度が十分でなく、 磁区観察が容易でない。 磁性体試料 ①表面凹凸測定 ②磁気力測定 試料の漏洩磁場 ② ① 磁性体試料 磁気力が主となる距離まで、 探針を試料表面から離す必用がある。 3 新技術の特徴・従来技術との比較 • 磁性ナノ粒子に対して、外部から交流磁場を印 加して磁気モーメントを交流励磁し、磁性ナノ粒 子から交流磁場を発生させることで、我々が先 に開発した交番磁気力顕微鏡(Alternating Magnetic Force Microscopy; A-MFM)の技術 を利用して、1)磁性ナノ粒子からの漏洩磁場を、 高感度検出・画像化することが可能となった。 (交流磁場アシスト・交番磁気力顕微鏡) • 合わせて、従来技術では困難であった、 2)磁 場および磁極の極性の直接検出、3)ナノ磁性 体の交流磁場応答性の評価、が可能となった。 4 交番磁気力顕微鏡(A-MFM)の紹介 探針に印加される交流磁場 探針振動の周波数変調 • 我々が開発した、交番磁気力顕微鏡 (A-MFM) は 探針の共振周波数と異なる、非共振の交番 磁気力が誘起する、探針振動の周波数変調現 象を利用する。 2 dz (t ) + ( k 0 + ∆ k m cos (ω m t ) ) z (t ) = F0 cos (ω 0 t ) 2 dt dt ac F0 ∆k m ∂Fm dc ∂H sample = qtip ∆km = << k 0 z ( t ) ≅ mγω 0 sin ω 0 t + mγω 0 cos (ω m t ) ∂z ∂z m 図 A-MFMの模式図. d z (t ) + mγ • A-MFMによる交流磁場の計測では、ハード磁 性探針(交流磁場により探針の磁気モーメント が変化しない磁性探針)を用いる。 • A-MFM は試料表面近傍の磁場を計測でき、 磁気記録ヘッドの観察では、高い測定感度と 10 nm以下の高い空間分解能が得られる。 • A-MFMは試料面に垂直方向の磁場(垂直磁 場)の極性(上向き/下向き)を検出できる。 [1] H. Saito et al., J. Appl, Phys., 105, 07D524(2009). [2] W. Lu et al., Appl. Phys. Lett., 96, 143104(2010). 5 交流磁場アシスト・交番磁気力顕微鏡の提案 探針に印加される交流磁場 探針振動の周波数変調 A-MFM 交流磁場アシスト・A-MFM 磁性ナノ粒⼦が 交流磁場を発⽣. 外部から一様な 交流磁場を印加 電流励磁された磁性体コ アから発⽣する交流磁場 HACを検出. 外部から印加された交流磁 場により励磁された磁性ナ ノ粒⼦から発⽣する交流磁 場HACを検出. 交流磁場アシスト・ A-MFM もまた、A-MFMの利点を継承する. • 試料表⾯近傍の交流磁場を⾼い計測感度で検出できる. • 垂直磁場の極性を検出できる. 6 交流磁場アシスト・交番磁気力顕微鏡のセットアップ 観察試料: Fe3O4, CoFe2O4 磁性ナノ 粒子 (直径20 nm程度、 Si基板上). MFM システム / 観察モード: 観察モード •JSPM-5400(JEOL Ltd.) / 大気中でのリフトモード. MFM 探針: 探針 高保磁力 FePt 探針 (FePtの膜厚: 20 nm) (日東光器(株)) リフト高さ :10 nm 交流磁場強度(0 - 200 Oe 交流磁場強度(0(0-p):0 p) 交流磁場周波数:50 -150 Hz 交流磁場周波数 探針での交流磁場 ac ∂ H z ∆k ( t ) ≅ qtdipc cos (ωmt − θ ′ ) ∂z 探針振動の周波数変調 A exp(i θ ) = X + i Y Fe3O4 磁性ナノ粒子 Magnetization(emu/g) 60 40 20 CoFe2O4 Fe3O4 40 CoFe O Hc =134 Oe 2 4 装置に設置した フェライトコア. 最大磁場強度: 200 Oe (0-p) Hc=134 Oe 30 Magnetization(emu/g) 80 3 Hc =28 Oe Hc: 28 Oe 0 -20 20 10 0 -10 -20 -40 -30 -60 -40 -80 -6000 -4000 -2000 0 H(Oe) 2000 4000 6000 -6000 -4000 -2000 0 H(Oe) 2000 4000 6000 7 8 9 10 新技術の特徴(まとめ) • ソフト磁気特性を有するナノスケール磁性体か らの磁場の流れ、磁場の湧き出し・吸い込みの 直接観察が可能。 • ナノスケール磁性体の磁極の極性(N極あるい はS極)の直接検出、磁気モーメントの方向の 可視化が可能。 • ソフト磁気特性を有するナノスケール磁性体の 交流磁場応答性(磁化率、等)の評価が可能。 11 想定される用途 • 個々の磁性ナノ粒子からの磁場の流れ、磁場の 湧き出し・吸い込みの直接観察。 • 磁性ナノ粒子上の磁極の極性(N極あるいはS 極)の直接検出、磁気モーメントの方向の可視化。 • 磁性ナノ粒子の交流磁場応答性(磁化率、等)の 評価。 12 実用化に向けた課題 • 交番磁気力顕微鏡の計測システムについては、 現在、 (株)日立ハイテクサイエンスと共同で、 プロトタイプ機の試作を行っており、平成27年 3月までに完成させる予定である。その後、販 売を検討する。 • 交番磁気力顕微鏡に用いる磁気力顕微鏡探針 については、日東光器(株)と共同で開発したも のを、市販している。現在、小規模量産装置を 日東光器(株)と共同で立ち上げており、平成27 年3月までに稼働予定である。 13 JST 先端計測分析技術・機器開発プログラム・機器開発タイプ 平成23年度~平成26年度 現在:日立ハイテクサイエンス 14 企業への期待 • 磁性ナノ粒子等の、発生磁場が微弱な磁性 材料の磁気特性(静的磁気特性ならびに動的 磁気特性)の評価を必用としている企業には、 本技術の導入が有効と思われる。 • 本技術の試験、等を希望される場合には、問 い合わせ先までご連絡をお願いします。 15 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :磁性微粒子の磁気特性評価 装置および磁気特性評価方法 • 出願番号 :特願2013-004025 • 出願人 :秋田大学 • 発明者 :齊藤 準、吉村 哲、木下幸則 16 産学連携の経歴 • 2005年-2006年 JST独創的シーズ展開事業・独創 モデル化事業「磁気力顕微鏡用高分解能探針の試 作」に採択.日東光器(株)と共同開発実施. • 2008年-2010年 JST先端計測分析技術・機器開発 プログラム・要素技術タイプ「ナノスケール高周波磁 場検出・磁気力顕微鏡」に採択. • 2011年-2014年 JST先端計測分析技術・機器開発 プログラム・機器開発タイプ「ベクトル磁場検出・高分 解能・近接場磁気力顕微鏡の開発」に採択. 17 問い合わせ先 秋田大学 産学連携推進機構 リサーチ・アドミニストレーター 伊藤 慎一 TEL 018-889-2712 FAX 018-889-5356 e-mail [email protected] 18
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