愛 知 労 働 局 愛知県の第三次産業の事業場においては、年間 2,500 件以上の労働災害が発生して います。 転倒による骨折、包丁による指の創傷など「行動災害」と呼ばれるものが多く発生し ていますが、なかには頭部を強打し死亡または重篤な障害を残す事例もみられます。 そのような災害が発生した場合には、安全配慮義務違反により多額の損害賠償を請求 され、企業の存続自体が困難となることも想定されます。 労働者を使用している事業場では、安全衛生管理体制、運転資格、危険防止措置、健 康診断等の労働安全衛生法等関係法令に定められた事項は必ず遵守してください。 さらに作業場所には、法令で規制されていないものも含め様々な危険が潜んでいます。 実際に作業される方々とどのような危険があるのかを予じめ確認しておき、それぞれ危険 を回避するための方策を講じておきましょう。 今回、皆様に特に確認していただきたい事項をまとめましたので、この機会に是非、 自己チェックを行うとともに、災害防止のための対策を講じていただきますようお願い します。 第三次産業の災害事例 業 種 被災程度 小売業 休業 2ヶ月 飲食店 休業 3ヶ月 小売業 休業 2ヶ月 清掃業 死 亡 発 生 状 況 納品作業を行っていた女性 学生アルバイトが、納品さ れた商品(ダンボール箱入 飲料 50 本約 20Kg)を持 ち上げた時に、急性腰痛症 を発症し、倒れた。 調理作業場で、調理作業を 終え移動したとき、床が濡 れていたため、足を滑らせ て転倒し、膝蓋骨を骨折し た。 食品売場で、3段ステップ 脚立に上って商品補充をし ているとき、足を踏み外し 転落し、手をついた際に手 首を骨折した。 タイル床をモップで清掃し ているとき、足を滑らせ前 方に転倒し、頭部および胸 部、大腿部を床面に打ちつ けた。 チェックポイント 1 「安全衛生管理体制」 安全な職場を作るためには、まずトップが宣言。様々な問題を検討し、具体的な 対策を講ずることができる体制を整えることが重要です。 【労働安全衛生法 第 10 条∼第 13 条】 □ 労働者数が、10 人以上 50 人未満の各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、 燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業では、労働安全衛生法に定めるところにより安全衛生推 進者(その他の第三次産業では衛生推進者)を有資格者から選任し、事業場の安全衛生管 理を行わせること。 ※ 労働者数 50 名以上の事業場では、業種・規模に応じて安全管理者・産業医・衛生管理者などの選 任と監督署長への届出が義務付けられています。詳しくは、労働安全衛生関係法令をご確認ください。 ※ 労働者数が、10 人以上 50 人未満の衛生推進者を選任すればよい事業場においても安全推進者(安 全衛生推進者)を選任し、事業場の安全についても管理させることが望ましいこと。 □ 労働者数が 50 人以上の事業場では、(安全)衛生委員会を月1回以上開催し、労働者の 危険防止や健康障害防止等を審議すること。 また、(安全)衛生委員会で審議された議事の概要を、遅滞なく労働者に周知すること。 チェックポイント 2 「安全衛生教育・健康管理等」 労働災害を防止するため、作業に従事する労働者には予め、作業に伴う危険箇所 を熟知させた上で、安全な作業方法を習熟させましょう。 【労働安全衛生法 第 59 条・第 61 条・第 66 条】 □ 労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、遅滞なく、疾病の原因及 び予防・整理、整頓及び清潔の保持・事故時等における応急措置及び退避など、当該労働 者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行うこと。 □ 最大荷重1トン以上のフオークリフトは技能講習修了者、1トン未満は特別教育修了者 か技能講習修了者以外には、運転の業務を行わせないこと。 □ 常時使用する労働者に対しては、雇い入れ時及びその後 1 年以内ごとに 1 回、定期的に 健康診断を、深夜業などに従事する労働者に対しては、6 ヶ月以内ごとに 1 回、定期的に 健康診断を行うこと。 チェックポイント 3 「作業場所等に潜む危険」 行動災害についても単に「気を付ける」だけでなく、職場における危険源(ハザー ド)を見つけ出し、作業との関わりから生じるリスクを低くできるよう予め対策する とともに、その状態を維持管理していくことを心掛けて下さい。その災害防止のため の対策は、①危険源の消滅、②危険源のエネルギー低減、③危険源からの隔離等を目 標とし、④安全装置、⑤管理的対策、⑥保護具の使用等の優先順に検討して下さい。 まず、次のページのポイントから点検してみましょう。 転倒、転落災害防止のポイント □ 通路、床面等は、つまずき・滑り災害が発生しないよう次の点に配意すること。 ・ 床面はくぼみや段差がない構造とし、階段には滑り止めや手すりを 設置する。 ・ □ □ 床に垂れた雨水、調理の油などは放置せず、早急に拭き取りを行う。 用具、履物等は転倒、転落災害が発生しないよう次の点に配意すること。 ・ 移動電気コード類は壁際などに仮固定し、通路床を横断する場合は 床に固定する。 ・ 踏み台、はしご、脚立は安定した場所で正しい方法で使用させる。 ・ 滑りにくく、安定した履物を着用させる。 労働者の通行、移動が危険行動とならないよう次の点に配意すること。 ・ 脚立の天板の上には立たせない。昇降時には手に荷物を持たせない。 ・ 通路や作業場内では走らないことを徹底する。 脚立は跨いで乗ら ないこと。 台車等(手押台車・かご車・カートラック)による災害防止のポイント □ 台車等へ荷を積み込む、降ろす際は、飛来・落 下災害が発生しないよう次の点に配意すること。 ・ 積む荷の形や大きさに応じた台車を使わせる。 ・ 荷崩れしないよう、荷の重さやバランスを考え て積み込むことを徹底する。 ・ かご車の下段の荷扱いのため中間棚を上げた場 合は落下防止の固定を忘れないよう徹底する。 □ バランスを考え崩れないように積みましょう 台車等の取扱いは、他の作業者や顧客との衝突災害が発生しないよう次の点に配意する こと。 ・ 荷台の大きさ、車輪の性質に応じて、台車を押して使用するか引いて使用するかを決 め、台車に表示するなどにより作業に従事する労働者に周知する。 ・ 曲がり角、通路の交差部、出入口等では一旦停止して、周辺の安全を確認するよう徹 底する。 荷による災害防止のポイント □ 荷の置き方により、落下災害やつまずき災害が発生しないよう次の点に配意すること。 ・ 荷で通路、スイングドアやエレベータ扉前をふさがない。 ・ 荷を高さ2m以上に手積みさせない。 □ 荷の持ち方・取扱い方により腰痛が発生しないよう次の点に 配意すること。 ・ 正しい荷の持ち上げ方を教育しておくこと。 ・ 重いものは複数人で取り扱わせる。 正しい持ち上げ方(ひざ型) 刃物や食器等による切れ・こすれの災害防止のポイント □ 刃物等の取扱いによる災害が発生しないよう次の点に配意すること。 ・ 包丁はよく研いだものを使用させる。 ・ 梱包紐の切断にはカッターナイフの使用を禁止し、刃との接 触を防護した専用工具を使用させる。 □ 専用工具を使用しましょう ガラスの破片や鋭利なごみ等による災害が発生しないよう次の点に配意すること。 ・ 食器洗浄作業では、ゴム手袋など、手先を保護するものを着用させる。 ・ ごみ搬出作業では、串や缶ふた等の鋭利なものの混入がありえるので、軍手や長いエ プロン等の手先や足元を保護するものを着用させる。 食料品加工機械等による災害防止のポイント □ 運転中の回転刃等による切れこすれ災害や厨房火気の不完全燃焼による災害が発生しな いよう次の点に配意すること。 ・ 刃物部分のガードを外すなど、機械の本来の状態でない形で使用させない。 ・ スライサーなど刃物等が回転する機械の作業では、巻き込まれの おそれがあるので、手袋の使用を禁止する。 ・ ミンチ機などでは手で食材を押し込まず、押し機(棒)等の補助具 を使用させる。 ・ 一酸化炭素中毒の予防のため、ガス湯沸かし器、ガスレンジなど の使用場所の換気を徹底する。 □ 換気扇を稼働させましょう 点検・修理・清掃中の機械による災害が発生しないよう次の点に配意すること。 ・ 点検、掃除、修理をする場合には、機械の主電源を切り、完全に止まっていることを 確認してから作業させる。 ・ フライヤーの油の交換作業では、接触による火傷の防止を図るため、排出した高温の 油を入れる容器について、危険のない保管場所を確保する。 論 理 的 な 安 全 衛 生 管 理 の 推 進 ・ 定 着 愛知労働局では、災害を予防するために危険源から生じる危険事象を災害発生プロセスの何処で対策を講 じることが有効であるかを論理的に考えることが重要であるとの考え方から「論理的な安全衛生管理の推 進・定着」を目指しています。 無災害の継続だけでは安全の根拠になりません。作業は(私たちの日常も)、危なさを引き起こす根源 (危険源)と関わって成り立っています。 安全の定義に照らしても、作業に関わっている危険源を承知し、それを管理下に置いている状態こそが本当の安全の姿です。 「作業場所等におけるチェックポイント」には、下記の危険源・危険事象などが含まれています。ここに示した危険源は一例と して例示したものですが、どのような危険源が作業場所等にあるのかを考えながらチェックし、適切な対策を講じてください。 機 電 熱 危険源の例 的 な 危 械 気 的 的 危 危 険 険 険 源 危険源から予測される危険事象 切傷又は切断、突き刺し、巻き込み、こすれ、落下 源 充電部に人が接触、不具合下で充電部に人が接触 源 接触による火傷・熱傷 材料・物質による危険源 有害なガスによる中毒、窒息、引火物による火災 人間工学原則の無視による危険源 つまずき・滑りの危険源 不自然な姿勢・過剰努力、不適切な配置等により誘引されるヒューマンエラー、視認性 つまずき、滑り、転倒 ご不明の点はご遠慮なく愛知労働局労働基準部安全課・健康課または 最寄の労働基準監督署までお問い合わせください。 愛知労働局安全課製作 Nov. 2014
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