第 49 回日本理学療法学術大会 (横浜) 5 月 31 日 (土)13 : 00∼13 : 50 ポスター会場(展示ホール A・B)【ポスター 基礎!身体運動学 12】 0943 歩隔が歩行中の体幹加速度の Harmonic ratio に与える影響 藤本 知宏1,2),有賀 一朗2),矢島 英賢2),黒部 1) 恭史2),百瀬 JA 長野厚生連鹿教湯三才山リハビリテーションセンター 信州大学大学院医学系研究科,3)信州大学医学部保健学科 公人3) 鹿教湯病院 理学療法科, 2) key words 加速度・歩隔・Harmonic Ratio 【はじめに,目的】 3 軸加速度計を用いた歩行評価は簡便であり,臨床応用性が高い評価であると思われる。体幹に装着した加速度計の加速度は身 体質量中心の加速度に近似することが報告されており,その波形から歩行の時間距離因子を算出することができる。また,加速 度波形を周波数解析して求められる Harmonic Ratio(以下 HR)は加速度波形の対称性を表す指標とされ,値が高いほど安定し た歩行であると考えられている。先行研究では健常者と比較し高齢者やパーキンソン病患者で歩行中の HR が低下することや, 高齢者の転倒予測などに有用だという報告がされている。また Latt らは健常者の HR は歩行速度,ケイデンス,歩幅に影響を受 けることを報告しており,快適歩行の速度,ケイデンス,歩幅で HR は最も高くなる。しかし歩隔との関係は明らかになってお らず,歩行中の重心動揺に影響を与える歩隔の変化は,速度,歩幅,ケイデンスと同様に HR に影響を与えると考えられる。そ こで,本研究の目的は健常者の歩隔の変化と 3 軸加速度計から得られた HR の関係を明らかにすることである。 【方法】 対象は健常成人とし,歩行に影響を与えるような神経疾患,整形疾患のあるものは除外した。被験者は動きやすい服装で裸足と なり,第 3 腰椎部に 3 軸加速度計 Pocket IMU2 (ジースポート社製) をベルトで装着し歩行時の加速度をサンプリング周波数 100 Hz で計測した。歩行速度は光学式歩行分析装置 OPTOGAIT(MICROGAIT 社製)を 10m の直線歩行路を挟むように設置し計 測した。実験手順を次に述べる。歩行路を普段歩く速度で 3 回歩行し,その平均値を求めて快適歩行速度を決定した。次に 5 種類の歩隔条件(0,10,20,30,40cm)の歩行を,各条件とも 3 回歩行し加速度データを計測した。なお,歩隔条件の計測順 は被験者ごと無作為化し,各歩隔条件下で歩行速度が快適歩行速度となるように練習を行った後,データを計測した。データ計 測時,事前に求めた快適歩行速度の 10% の範囲内に入らなかった時は再計測をした。歩隔は踵中心間の距離とし,歩行路にテー プを貼り規定した。また,歩行時には正面に鏡を置き視線が下がらず,自然な歩行が出来るよう配慮した。データ解析は,前後 方向の加速度波形から歩行周期を特定後,歩行時の加減速期を除くために歩行路中央付近の 1 歩行周期を対象とし,離散フーリ エ変換により前後,側方,垂直方向の HR を算出した。HR,歩行速度は各条件下の 3 試行の平均値を代表値として採用した。統 計は Shapiro" Wilk 検定で正規性を確認後,各歩隔条件の HR,歩行速度の比較に 1 元配置分散分析を実施した。事後検定として Tukey HSD 検定をおこなった。有意水準は 5% とした。 【倫理的配慮,説明と同意】 本研究は本学倫理審査委員会の承認を得た。被験者には研究の目的及び測定内容を説明し参加の同意を得た。 【結果】 対象者は男性 14 名,年齢 22.2±2.2 歳,身長 170.9±5.8cm,体重 63.1±11.7kg,事前に計測した快適歩行速度は 1.29±0.19m! s であった。前後方向の HR は歩隔条件間で有意差を認めなかった。側方方向の HR は 0cm と 30cm 間で有意に 30cm が高い結果 となった (p<0.05) 。垂直方向の HR は歩隔条件間に有意差を認めなかった。また歩行速度は各歩隔条件間に有意差を認めなかっ た。 【考察】 歩隔条件の変化の影響は側方方向の HR のみに影響を与えており,前後と垂直方向の HR には影響を与えなかった。Latt らは歩 行速度,歩幅,ケイデンスの変化が HR に影響を与えると報告しているが,前後と垂直方向の HR と側方方向の HR は異なった 結果を示している。前後と垂直方向の HR は快適歩行条件で高くなるという明確な傾向を示しているが,側方方向の HR は条件 の変化の影響が不明瞭である。我々の結果も,前後と垂直方向の HR と側方方向の HR は異なった結果を示した。このことから, 歩行の安定性の指標として使える HR は側方方向より前後と垂直方向の HR と考えられるが,歩隔と歩行速度,歩幅,ケイデン スの相互の関係をさらに明らかにする必要があると思われる。 【理学療法学研究としての意義】 加速度計から求めた HR に与える影響を明らかにすることは, 今後の理学療法の簡便な歩行評価の確立の一助になると考えられ る。
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