【事例】ダイカスト金型内の溶湯挙動の可視化

特集
ダイカストにおける「可視化」最新技術
事例 2
ダイカスト金型内の
溶湯挙動の可視化
㈱豊田中央研究所
岩 田
靖*
ダイカストは極めて生産性の高い鋳造プロセスで、
の高速で高温の溶湯を金型内に充填し、10∼80 MPa
国内では年間約 100 万 t の生産を行っている。しか
の高圧下で急速凝固させるプロセスであり、これら条
し、ダイカストは金型内に高速・高圧で溶湯を射出す
件下での溶湯挙動の測定技術の確立が、欠陥発生原因
るプロセスのゆえ、溶湯の充填・凝固に起因する問題
を明らかにするうえで重要となる。
が多数顕在しており、現在においても鋳造欠陥対策に
これまでに、ダイカスト時の溶湯充填・凝固・溶湯
圧力伝達状態について、その場情報を知るための可視
多大な努力が払われている。
ダイカストの欠陥は、ガス巣、ひけなどの内部欠陥
化・計測技術の開発を行ってきた1)∼3)。本稿では、溶
や湯じわ、湯境など表面欠陥、および介在物などの巻
湯挙動の可視化・計測技術によって明らかにしたダイ
込みがある。いずれの欠陥も機械的特性の低下を招く
カスト時の溶湯挙動と品質との関係について、ガス巣
が、発生頻度が高く、その特性に大きな影響を与える
の挙動を中心に紹介する。
ものの一つに、溶湯充填時に生じる金型内空気の巻込
金型内溶湯挙動計測・可視化技術
み、および離型剤、潤滑剤などに起因するガス巣が考
えられる。これらのガス巣の発生挙動は、ダイカスト
1.溶湯流れ計測技術
鋳造過程における溶湯充填、凝固、溶湯圧力伝達に大
ダイカストの溶湯充填状態を実鋳造サイクルの中で
きく左右される。一方、ダイカストは 10∼100 m/s
連続測定するための湯流れセンサの構造と金型への設
置方法を図 (
1 a)
に示す2)。センサは外径 4 mm の先
*Yasushi Iwata:材料・プロセス 1 部 軽金属材料・プロセス
研究室 主任研究員
〒480−1192 愛知県長久手市横道 41−1
TEL(0561)71−7405
金型
鉄保護管
キ
ャ
導線 ビ
テ
ィ
端部を金型キャビティ面に一致させて、キャビティ面
全体に配置する。溶湯充填状態図は設置した各センサ
への溶湯到達時間をもとに時間分布図として作成する。
金型
CA熱電対
キ
ャ
ビ
テ
ィ
計測
止めねじ アルミナ保護管
(a)湯流れセンサ
ひずみ計
計測
止めねじ
熱電対受
(b)高速応答型熱電対
図 1 各センサの構造と設置方法
028
キ
ャ
ビ
テ
ィ
金型
止めねじ
ダイアフラム
(c)溶湯圧力センサ