№67 平成 26年 2月1日 公立阿伎留医療センターは、医の心を重んじ、患者の生命と健康と生活の質を考える良質の医療を実践し、 地域医療の最適化に努力します。 発 行 編 集 TEL FAX 公立阿伎留医療センター 地域医療連携室 042(558)0321 042(550)5190 CONTENTS 『RS ウイルス感染症』 『RS ウイルス感染症』 小児科 部長 小児科 部長 七野 浩之 七野 浩之 RS ウイルス(Respiratory syncytial virus)は、小児感染症の主要な原因病原体です。乳幼児の肺 炎の約 50%・細気管支炎の 50〜90%・年長児の気管支炎の 10〜30%は RS ウイルスによるものと報告され ています。 疫学 RS ウイルス感染症は世界中で毎年流行を繰り返します。最近の日本の流行は夏の初めに始まり(2013 年では第 25 週から)秋から冬にピークがあり初春まで続きます。生後 1 歳までに 50〜70%が、3 歳ま でにほぼすべての人が感染し抗体を獲得します。しかし母体からの移行抗体は感染予防には有効では なく、一般に生後 6 か月以内の児による重症例を多く経験します。入院患者のピークは 2〜5 か月児で す。年長児~成人では再感染を起こしますが重症となることは少ないようです。RS ウイルスは Paramyxovirus 科の Pneumovirus 属に分類されるエンベロープを持つ RNA ウイルスです。環境中では比 較的不安定で、凍結融解・55℃の熱・界面活性剤・クロロフォルム・エーテルなどで不活化されます。 しかし飛沫感染と手指や物品を介した接触感染により家族内などでは効率よく感染伝播します。RS ウ イルス感染の致死率は 1〜3%と報告され、心肺系疾患・免疫不全・低出生体重は危険因子であり、1980 年代では心疾患のある小児入院例では致死率 37%という報告もみられます。 臨床症状 潜伏期は 2〜8 日、初発症状は発熱や鼻汁で、次第に咳が主要症状となります。気管支炎・細気管支 炎・肺炎になると多呼吸・喘鳴がみられ、重症化すると低酸素による顔色不良・努力呼吸がみられま す。罹病期間は通常 7〜12 日です。細気管支炎と肺炎はしばしば合併します。胸部X線写真上は間質 性肺炎像と過膨張が特徴的です。血液検査所見では特徴的なものはなく白血球数は正常~やや増加、 CRP は陰性か軽度上昇します。年少ほど肺炎と細気管支炎が多く、年長になるにつれ気管支炎が増加し ます。生後 4 週未満では呼吸器症状を欠く非定型な経過が多く、突然死につながる無呼吸に注意が必 要です。成人では通常上気道炎で済むことが多いようですが、時に RS ウイルスに感染した小児を看護 する人では重症となることがあります。感染児より排出される大量のウイルスに暴露されるためと考 えられています。また高齢者や免疫不全者ではしばしば重症化や施設内流行が問題となります。 1 病原診断 日常診療で有用な診断法はイムノクロマト法によるウイルス抗原迅速診断です。感度は約 30〜80%・ 特異度は 100%に近く、流行期に陽性と判定された場合には RS ウイルス感染と診断してよいでしょう。 一方陰性と判定された場合には、感度を考慮すると RS ウイルス感染の否定にはなりません。他の臨床 症状を併せて判断すべきと思われます。 治療 治療は基本的には輸液・鼻腔吸引などの支持療法が中心です。気管支拡張剤と副腎皮質ステロイドの 効果についての評価は定まっていません。低酸素状態には酸素吸入が、呼吸不全状態であれば人工呼吸 器による呼吸管理を必要とすることもあります。米国で治療薬として認可されているリバビリンの吸入 は我が国では特殊な場合にのみ考慮される治療法と考えます。 予防 予防のためのワクチンはありません。遺伝子組換え技術によるモノクローナル抗体製剤のパリビズマ ブは、低出生体重児や先天性心疾患・ダウン症候群・小児がん・免疫異常症などの基礎疾患がある場合 に予防治療として行われています。 公立阿伎留医療センター小児科入院例の検討 2013 年 12 月に当科に入院した RS ウイルス感染による細気管支炎・肺炎例は 8 例でした(表) 。年齢 は1か月から 3 歳6か月、男5例・女3例、入院時に喘鳴を認めたのは6例です。全例でウイルス抗原 迅速診断が陽性となりました。パリビズマブ使用例はありません。検査所見では、全例で X 線写真上肺 炎像を認めています。SpO2 が 94%未満の低酸素例が 3 例、PCO250%以上の二酸化炭素貯留例が 1 例です。 CRP が陽性であったのは 3 例でした。いずれの症例も輸液・鼻腔吸引・β刺激薬の吸入を行いました。 CRP 陽性 2 例では抗菌薬を併用しました。幸い重篤化し人工呼吸器を必要とする例はありませんでした。 全例が第 12 病日までに退院が可能でした。 検査 治療 副腎 症例 年齢 性 喘鳴 抗原 皮質 肺炎 迅速 PvCO2 SpO2 WBC 酸素 CRP 抗菌 入院 退院 病日 病日 ステ 像 投与 診断 薬 ロイ ド 1 1y4m F (+) (+) 29.3 96 10300 0.46 (+) (-) (+) (-) 4 12 2 11m M (+) (+) 29.3 98 13210 4.22 (+) (-) (-) (+) 2 7 3 2y7m M (+) (+) 33.4 92 8190 0.37 (+) (+) (+) (-) 2 8 4 3y6m M (-) (+) 29.1 96 9650 0.3 (+) (-) (-) (-) 5 8 5 2y3m M (+) (+) 31.7 96 9010 3.45 (+) (-) (-) (+) 3 8 6 5m M (-) (+) 31.5 96 12950 2.12 (+) (-) (-) (-) 3 5 7 1m F (+) (+) 50.5 90 10050 0.14 (+) (+) (-) (-) 5 12 8 11m F (+) (+) 36.9 89 9990 0.32 (+) (+) (-) (-) 4 9 2 小児科は現在 5 名(3名の小児科専門医と2名の後期研修中の小児科医)の体制で診療を行っています。 午前中は一般外来を2診体制で、午後は火曜日から金曜日に予防接種・乳児健診・専門外来(血液・内 分泌・糖尿病・循環器・腎・気管支喘息・神経・夜尿症など)を行っています。救急患者や急性期の中 等症までの患者の紹介入院の対応も月~金の 17 時まで対応しています。どうぞご紹介をお願いいたし ます。時間外の入院対応は適宜対応させていただきますので、どうぞご連絡ください。 小児科部長 七野 浩之 小児科 午前 午後 小児科医長 中川 万樹生 武藤 智和 小児科医長 松村 昌治 春日 悠岐 月 火 水 木 金 七野 浩之 中川 万樹生 岩本 孝夫 七野 浩之 中川 万樹生 武藤 智和 松村 昌治 武藤 智和 春日 悠岐 松村 昌治 慢性疾患(予約) 慢性疾患(予約) 慢性疾患(予約) 慢性疾患(予約) 慢性疾患(予約) 予防接種(予約) 予防接種(予約) 予防接種(予約) 乳児検診(予約) ※ 小児科外来の初診のご予約は、行っておりません。 地域の医療機関連携推進のために紹介状のご持参で受診されますようお願い致します。 ※ 月曜日~金曜日の午後、慢性疾患(予約)は初診診察後の予約となります。予約は先生とご家族の 相談になります。 ※ 予防接種(予約) 、乳児検診(予約)は電話で受付けております。午後3時~5時までに小児科 外来に直接(電話番号 代表042-558-0321)おかけください。 3 専門外来のお知らせ 専門外来(予約制) 診療日 神経内科 火(月2回) ・金曜日 腎臓 木曜日 リウマチ・膠原病 水曜日 形成外科 水曜日(第 1 週以外) 物忘れ外来 火曜日 午前 ペインクリニック 火・木曜日 緩和ケア面談 月・金曜日 午後 緩和ケア外来 火・木曜日 午後 小児慢性疾患 月~金曜日 午後 禁煙外来 月曜日 腫瘍外来 火曜日 午後(第2週以外) 糖尿病 第1・第3木曜日 小児外科 火曜日 フットケア外来(糖尿病) 金曜日 午後 乳腺外来 月・金曜日(第1週以外) リンパ浮腫外来 木曜日 午後 子宮がん検診 水曜日 午後 補装具診 水曜日 午前 受付時間 平 日 午前8:30~11:30 お問い合わせは地域医療連携室までご一報ください。 12月の紹介患者数と画像検査数をご報告致します FAXによる紹介患者は109人、また紹介状持参による紹介患者は288人、合計397人でした。CT・MRI の画像検査の FAX 紹介は41人でした。12月の紹介率は28%でした。地域の医療機関連携推進のため に紹介状のご持参をお願い致します。ご紹介誠にありがとうございました。 公立阿伎留医療センター「地域医療連携ニュース」の内容や、紹介患者様の受診・入院等の問い合せ は下記にご連絡をお願いいたします。地域医療連携室 責任者:茅野和子 電話番号 042-558-0321 内線2123 FAX番号 042-550-5190 4
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