肺がんの免疫療法 抗 PD-1 抗体、抗 PD

肺がんの免疫療法
肺がん領域でも複数実施され、従来の免疫療法では
肺がんの薬物療法の世界では、従来の抗癌剤に加
見られなかったような治療効果が証明されてきてい
えて分子標的薬の進歩発展が著しく、EGFR チロシ
ますので、おそらく数年後には治療法として確立す
ンキナーゼ阻害薬(TKI)、血管内皮細胞増殖因子
るものと期待されています。
(VEGF)抗体薬などが既に治療に幅広く使用されて
います。ここでは、最近免疫療法として特に注目さ
れている抗 PD-1 抗体薬、抗 PD-L1 抗体薬につい
て簡単に解説します。
抗 PD-1 抗体、抗 PD-L1 抗体
活性型 CTL ががん細胞を攻撃する際に、がん細
胞 が PD-L1 や PD-L2 と い っ た リ ガ ン ド を 発 現 す
従来固形がんの治療法は①手術 ②放射線療法 ③
ると CTL 表面の PD-1 と結合して免疫寛容状態と
化学療法(薬物療法)が治療の三本柱とされてきま
なり細胞障害性を抑制することが知られています
した。その他温熱療法や免疫療法などの治療法も過
(図1)。PD-1 はもともと、生体防御と自己免疫疾
去にはトライされてきましたが、実用化されたもの
患の両方に必須なTリンパ球の過剰な活性化を抑制
は現在までありません。巷で “がんの免疫療法” と
することを目的としたシステムであり、マウスやヒ
銘打って自費診療の治療行
為を行っている医療機関も
散見されますが、それらの
図 1:PD-1, PD-L1 およびそれらに対する抗体療法
治療行為のなかで医学的に
治療効果が完全に証明され
ているものは現時点では皆
無であり、本来臨床試験の
形で行われるべき治療が一
般診療として行われている
ことは、医学倫理的に非常
に問題であるといえます。
最近免疫療法の一つで
あ る 抗 PD-1 抗 体 薬、 抗
PD-L1 抗体薬の臨床試験が
NATIONAL HOSPITAL ORGANIZATION NAGASAKI MEDICAL CENTER
トの PD-1 不全は多発性硬化症、Ⅰ型糖尿病、リウ
ん種(腎がんなど)においても非常に注目されて
マチ、全身性エリテマトーデスといった難治性自己
いる薬剤です。
免疫疾患の遺伝的危険因子とも言われています。そ
PD-1 のリガンドである PD-L1 を標的としたモノ
こで、この PD-1 やそのリガンドである PD-L1 に
クローナル抗体製剤(MPDL3280A)の前治療の
対する抗体薬を用いて、免疫寛容状態を解除して活
ある種々の固形がん患者に対する第Ⅰ相試験の結果
性型 CTL によるがん細胞障害性を回復させるのが
も報告されています(Brahmer JR, et al: N Engl
この治療法です。がん免疫の抑制の抑制、つまり促
J Med, 2012)。 こ の 薬 剤 は、 抗 体 の Fc 領 域 に
進させることを目的としている訳です。
修飾を加えることにより、過去に開発されてきた
抗ヒト PD-1 モノクローナル抗体 BMS-936558
PD-L1 または PD-1 を標的とする薬剤と比較してよ
(MDX1106/ONO-4538; nivolumab) の 第 Ⅰ 相
り高い安全性と有効性を持つよう設計されており、
試験では、前治療歴のある進行固形がん患者に対
特に抗 PD-1 抗体薬と比較すると副作用の程度が軽
する有効性と安全性が証明され(Topalian SL, et
微であることが報告されています。非小細胞肺がん
al: N Engl J Med, 2012)、特に非小細胞肺がん
を対象としてすでに複数の第Ⅱ相試験、第Ⅲ相試験
に対しても腫瘍の縮小効果が持続的に認められま
が計画されており、安全性と有効性が証明されれば
した(図2)。組織型別では扁平上皮がんで有効率
数年以内に実用化される可能性があります。
が高い傾向にあり、さらに
腫 瘍 細 胞 自 体 の PD-L1 発
現と治療奏効率との関連も
図 2:nivolumab による非小細胞肺がんの治療経過
(Topalian SL, et al: N Engl J Med, 2012 より引用 )
指 摘 さ れ て い ま す。 現 在、
非小細胞肺がん患者を対象
に第Ⅲ相試験が行われてい
ま す。 こ の nivolumab は
悪性黒色腫において、従来
の標準治療薬であるダカル
バジンとの比較第Ⅲ相試験
で全生存期間の優越性が確
認されたため試験の早期中
止が勧告されるなど、他が
業後、平成 10 年から長崎大学医学部第二内科腎臓
腎臓内科医長
班に所属し、以後関連病院で県北・県南地区及び離
河津 多代
最近の透析事情につきましては、全国の透析患者
島での透析医療に従事してまいりました。
は 30 万人を超え、導入患者は年々高齢化しており、
従いまして透析医療は終末期医療の側面ももって
平成 26 年4月より腎臓内科医長としてお世話に
います。長崎県内では平成 26 年4月の時点におい
なります河津と申します。平成8年に長崎大学を卒
て、血液透析患者数約 3860 人、腹膜透析患者数約
140 人、合計約 4000 人の
透析患者がおり、最近は透
析施設や施設内の透析装置
が少なく、収容能力の問題
があります。高齢者で通院
困難な透析患者も増加して
おりますが、地域医療シス
テムを活用しつつ、家族支
援のもと、在宅医療である
腹膜透析の選択も検討を要
すと思います。
退院調整について
先生方には、日頃より長崎医療センター地域医
優先事項であり、当連携室に於
療連携室をご利用いただき誠にありがとうござい
いても厳しい退院調整が課せら
ます。地域医療連携室は現在退院調整看護師2名
れています。しかし、私たちは、
(1名は地域医療連携係長)、MSW 4名、事務職
効率性一辺倒ではなく、患者さ
員5名で仕事をしています。昨年より MSW の2
ん一人一人が住み慣れた地域で自分らしく生活で
名増員があり、退院調整をさらに充実させなけれ
きるための在宅・転院支援に努めていきたいと考
ばならないと考えます。私達スタッフも調整能力
えています。そのためには、連携機関の皆様との
向上のため毎朝カンファレンスを行い、情報を共
密な連携が必須です。どうかよろしくご協力のほ
有するようにしています。
どお願いします。昨今、問題の複雑化した支援が
地域包括ケアの観点から、入院から外来・在宅
への移行が進んでいる中で、在院日数の短縮は最
難しい症例も多くなっておりますが、お気づきの
点がございましたら何なりとご指摘下さい。
前方連携について
地域医療連携室では、5月から新たに外科・呼
また、当院では、本年3月より、PET/CT を
吸器外科において医師の診察前に常用薬のチェッ
新たに導入し、悪性腫瘍の病期診断をはじめ癌
クを開始しました。診察前に常用薬をチェックす
診療に有用性を発揮しております。院内患者に
ることで、特に外科術前患者の手術の適応や手術
限定して運用を行ってまいりましたが、6月 10
日の決定など、円滑な外来診療が期待されていま
日より、地域連携室を介して PET/CT の予約を
す。現在はまだ限られた診療科での運用ですが、
承る予定です。なお、PET 検診は行っておりま
外科系を中心に今後拡大していく予定です。患者
せんのでご承知おきください。詳細は放射線部
さんには診察 30 分前にご来院頂くことになりま
PET センター(内線 3052)までおたずねくだ
すが、何卒ご協力のほどお願いします。
さい。
先生方には、日頃より長崎医療センター連携
室をご利用いただき誠にありがとうございます。
さて近年、当院にご紹介戴く患者の疾患はよ
り専門化し、御依頼戴く治療も一層高度化する
傾向にあります。しかし、限られた外来診察時
間内で適切な判断を下すことが困難な場合も少
なくなく、診察前にある程度の診療情報をご提
供戴く必要性が生じてまいりました。
そこで、昨年 11 月より、予約申込書に簡単
な診療情報(紹介目的と傷病名)を記載する欄
を追加いたしました。手間をおかけいたします
が、紹介患者の円滑な診療のために、簡単で結
構ですので、御記載のほど今一度よろしくお願
いいたします。他院でも、長崎大学病院をはじ
め多くの病院が予約申込書に簡単な診療情報を
記載するようになっております。
なお、旧版の予約申込書しかお手元にない場
合は、連携室にご連絡いただければ、すぐに現
行のものを郵送いたします。
紹介医の皆様には、趣旨をご理解の上、何卒
ご協力賜るようお願いいたします。
連携室からお願い
すでに多くの患者さまがお持ちの「お薬手帳」を、当院受診時にご持参いただくようお声掛けをお
願いいたします。もし「お薬手帳」をお持ちでない場合は、現在飲んでおられるお薬をご持参いただ
くようお声掛けいただければ幸いです。いうまでもなく、内服薬の履歴は、診療に際して、投薬や手
術のタイミングなどの治療方針決定において欠くべからざる重要な情報のひとつです。よろしくご協
力のほどお願いいたします。
E-mail : [email protected]