2015 - 2016 脳とこころの 健康大国実現 プロジェクト 長寿科学研究開発事業 認知症研究開発事業 障害者対策総合研究開発事業 目 次 長寿科学研究開発事業…………………… 3 認知症研究開発事業……………………… 6 障害者対策総合研究開発事業…………… 9 身体・知的等障害分野…………………9 感覚器障害分野…………………… 11 精神障害分野……………………… 12 神経・筋疾患分野…………………… 16 索引………………………………………… 18 2 日本医療研究開発機構(AMED)の事業 国が定める 「医療分野研究開発推進計画」 に基づき、再生医療、 がんなど9つの連携分野を中心とする医療分野の基礎から臨床までの研究 開発を一貫して推進し、 その成果を円滑に実用化につなげるとともに、 それら研究開発の環境整備を総合的、効果的に行うことを目標とし た各種事業をおこなっています。 【 9つの連携分野 】 オールジャパンでの医療品開発 1 9 難病克服プロジェクト オールジャパンでの医療機器開発 2 8 新興・再興感染症制御プロジェクト 革新的医療技術創出拠点プロジェクト 3 7 脳とこころの健康大国現実プロジェクト 再生医療の現実化ハイウェイ構想 4 6 ジャパン・キャンサーリサーチ・プロジェクト 5 疾病克服に向けたゲノム医療実現化プロジェクト 当課では、■ 7 の連携分野に関連した事業を担当しています。 【日本医療研究開発機構における課題管理体制】 9つの連携分野ごとに、プログラムディレクター(PD)を中心とした課題管理体制を整備 しています。PDは担当する連携分野の運営方針を決定し、 プロジェクト運営に責任を持ちます。 プログラムスーパーバイザー(PS)は担当する事業の目的及び課題を把握し、事業の運営 を行い、 プログラムオフィサー(PO)はPSを補佐して事業運営の実務を行っています。 戦略推進部 脳と心の研究課の概要 医薬品研究課 再生医療研究課 戦略推進部 脳とこころの健康大国実現プロジェクト プログラムディレクター 津本忠治 がん研究課 理化学研究所脳科学総合研究センター シニア・チームリーダー 脳と心の研究課 難病研究課 感染症研究課 研究企画課 臨床研究・ 治験基盤事業部 脳と心の研究課では、認知症やうつ病などの精神疾患等の発症 に関わる脳神経回路や機能の解明に向けた研究開発および基 盤整備を強力に進めることにより、革新的診断・予防・治療法を 確立し、認知症・精神疾患等を克服することを目指しています。 文部科学省および厚生労働省から脳科学研究戦略推進プログ ラム・脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト・長寿科学研 究開発事業 ・認知症研究開発事業・障害者対策総合研究開発 事業を継承し、基礎段階から実用化まで一貫した研究のマネジ メントを行います。 1 変形性膝関節症の発症・増悪予測スコア作成により 要介護を防止する治療戦略構築 平成26年度 ー28年度 松田 秀一 京都大学 大学院医学研究科 教授 在宅療養者に対する地域単位の 夜間休日臨時対応体制のあり方に関する研究 平成26年度 ー28年度 吉江 悟 東京大学 医学部附属病院 特任研究員 滋賀県長浜市民10,082名を対象として、臨床症状、X線、超音 平成30年度より全市町村で必須実施となる在宅医療・介護 波検査、下肢筋量、骨密度、運動機能、肥満、高血圧、糖尿病、 連携推進事業の事業項目の1つに「切れ目のない在宅医療と 動脈硬化、認知機能障害、脳血管障害、血液マーカー、遺伝子 介護の提供体制の構築推進」があげられており、その実現の 多型、 こころの健康などについて調査を行い、エンドポイント ためには、夜間休日における地域単位の臨時対応体制を確 を変形性膝関節症の発症・増悪、要介護認定・要介護度とす 保していくことが重要であるが、現状は各機関で独自に対処 る。各種因子と膝痛との関連を明らかにし、抽出されたリスク されていることが多い。本研究では、全国の実態を把握し実 現性の高いあり方を検討するとともに、最終年度には試行的 断研究から包括的に検討する。 に実証を行う。 骨粗鬆症性椎体骨折に対する保存的初期治療の指針策定 データに基づき地域づくりによる 介護予防対策を推進するための研究 平成26年度 ー28年度 大川 淳 東京医科歯科大学 医学部附属病院 教授 平成26年度 ー28年度 近藤 尚己 東京大学 大学院医学系研究科 准教授 新規骨粗鬆症性椎体骨折では発症初期の適切な治療が予後 市町村の高齢者保健の状況を「見える化」して、 データに基づ に影響を与える。汎用されている硬性装具と軟性装具の2群 く多職種連携による介護予防対策に生かそうとする試みが始 層別無作為割り付けによる全国大規模多施設前向き介入研究 まっている。申請者らが10万人規模の縦断疫学研究JAGESの を行い、各装具の効果を椎体変形、偽関節発生率をPrimary 参加自治体を対象に取り組みを進め、縦断データによりその outcomeとして比較検討する。1年間後の画像に加え、臨床 効果評価をする。介護認定データを処理して要介護度の変化 症状も比較し、椎体骨折に対する保存治療のエビデンスの確 を追跡できるソフトの開発、地域診断データのより有効な可視 立と標準化指針を策定する。 化のための情報技術開発、多職種連携に必要な部署間連携の 長寿科学研究開発事業 因子の交絡を調整し、エンドポイントに対する主効果を長期縦 推進のためのツール開発も進めている。 平成26年度 ー28年度 戸原 玄 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 准教授 高齢者が住み慣れた生活の場でできるだけ自立を続けたま 変形性膝関節症の発症・増悪予測スコア作成により 要介護を防止する治療戦略構築 平成26年度 ー28年度 大渕 修一 東京都健康長寿医療センター研究所 研究副部長 本研究では、住民との協働による介護予防推進と新たな互助 ま、摂食嚥下の有効な支援を受けられる地域作りの足がかり のための地域介入モデルを構築し、その効果を検証する地域 として、医療介護資源の明示化を含めた広報と啓発、教育活動 コントロールトライアルを行う。住民主体の活動は、住民の一 体感「社会的凝集性」を高めるだけでなく、要援護者にとって デルのガイドブック化を軸としたウェブサイトを作成し、行政 は孤立を高める危険がある「私的社会統制」を強める負の側 や病院、関連施設に配布すること、行政へのアンケートから連 面がある。そこで、 コーディネーターのかかわりによる私的社 携が十分でない地域を明らかにし、新たな連携を進めること 会統制を強めない地域介入モデルを示し、大規模調査により を中心としている。 効果を検証する。 地域包括ケアにおける摂食嚥下および栄養支援のための 評価ツールの開発とその有用性に関する検討 エビデンスに基づく地域包括ケアシステム構築のための 市町村情報活用マニュアル作成と運用に関する研究 平成26年度 ー28年度 菊谷 武 日本歯科大学 附属病院 教授 肺炎等で入院している患者は、摂食嚥下機能の低下や栄養状 平成26年度 ー28年度 熊川 寿郎 国立保健医療科学院 医療福祉サービス研究部 主任研究官 本研究の目的は,全国の市町村がそれぞれの地域の課題を把 態の低下を示す。 これらの患者が、退院後も地域においてその 握するためのツールとして、国保データベース(KDB)や当該 リスクを悪化させないためには地域において一貫した支援が ツールで扱うデータを有効活用するためのマニュアルを作成 必要である。本研究では地域連携支援ツール、評価ツールの することである。 さらにマニュアル完成後の地域包括ケアシス 開発を行い、地域包括ケアシステムにおける栄養支援、摂食嚥 テムの運用方法について検討を行うことを目的に、社会処方 下支援のモデルを構築する。 箋及びコミュニティ処方箋の実態調査を行い、我が国の地域 障害者対策総合研究開発事業 を行う。具体的には地域資源のマッピングと有効連携事例モ 認知症研究開発事業 高齢者の摂食嚥下・栄養に関する 地域包括的ケアについての研究 包括ケアの体制作りのための資料とする。 4 長寿科学研究開発事業 プログラムスーパーバイザー プログラムオフィサー 国立長寿医療研究センター 副院長 国立障害者リハビリテーションセンター 自立支援局長 大を見込んで、介護保険制度の持続可能性の確保及び医療・ 海老原 覚 介護の連携の推進に寄与することを主目的とし、高齢者に特 鷲見 幸彦 わが国の高齢化の進展状況に鑑み、また団塊の世代が後期 飯島 節 高齢者となる2025年における医療・介護ニーズの爆発的増 徴的な疾病・病態等に着目し、複合的・総合的な治療のアプ 東邦大学医学部 教授 ローチの確立を目指します。 玉腰 暁子 北海道大学公衆衛生学 教授 徳田 治彦 国立長寿医療研究センター 臨床検査部長 長寿科学研究開発事業 高齢者の薬物治療の安全性に関する研究 平成25年度 ー27年度 秋下 雅弘 東京大学 大学院医学系研究科 准教授 要介護高齢者等の口腔機能および口腔の健康状態の改善 ならびに食生活の質の向上に関する研究 平成25年度 ー27年度 平野 浩彦 東京都健康長寿医療センター研究所 専門副部長 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン作成のために系統的レ 高齢期における口腔機能低下に伴う食のQOL低下への支援 ビューを行い、15領域について薬物リスト、サマリーと解説か が、効果的に実施されないことが近年の課題である。そこで本 らなる原案を作成し、完成間近である。大学病院老年科5施設 研究では、 これらの課題を解決ために「包括的口腔機能低下 で薬物有害事象調査を行い、薬物有害事象の危険因子を統計 モデル」を考案した。 このもでるは、 フレイル、 サルコペニア、認 学的に解析してリスク評価スコアを作成する。薬局の調査研究 知症などの要因を包含したものである。 このモデルは、口腔機 により、薬局・薬剤師を核とした処方・服薬状況のチェック及び 能低下を高齢者の日常生活,運動器等も包含した包括的な視 情報連携モデルを構築する。 点からとらえ,口腔機能低下が進み「食生活の自立の崩れ」に 至り様々な課題が顕在化する前段階からのモデルである。本 モデルの検証を主目的に研究を実施した。 認知症研究開発事業 高齢脳卒中患者をモデルとした栄養管理と摂食機能訓練に関する アルゴリズムの開発、および経口摂取状態の改善効果の検証 平成25年度 ー27年度 小川 彰 岩手医科大学 学長 膝痛・腰痛・骨折に関する高齢者介護予防のための研究: 大規模住民コホート(LOCOMOスタディ)の追跡 平成25年度 ー27年度 吉村 典子 東京大学医学部附属病院 特任准教授 本研究の目的は、脳卒中患者の経口摂取状態を向上させる栄 要介護のリスクを高める運動器症状である膝痛、腰痛、骨折や 養・リハビリテーション管理のアルゴリズム立案に資するデー それに引き続く要介護の疫学エビデンスの解明を目的として、 タを得ることである。嚥下障害の高リスク因子を有する患者を 大規模住民統合コホートlongitudinal cohorts of motor 対象に、早期から間接訓練を実施するとともに嚥下機能のス system organ (LOCOMO)スタディを構築し、追跡を実施 クリーニング検査および詳細検査を定期的に実施し、その結 した結果、一般住民における膝痛は32.7%、腰痛は37.7%、 果をもとに栄養摂取経路や食形態等の検討と指導を行い、そ 合併は12.2%に認められた。65歳以上の要介護移行は年間 の安全性および有効性を実態調査結果と比較することで探索 3.6%人年で、年齢、やせ、肥満に影響を受けていた。 的に評価する。 障害者対策総合研究開発事業 加齢による運動器への影響に関する研究 -サルコペニアに関する包括的検討- 平成25年度 ー27年度 原田 敦 国立長寿医療研究センター 病院長 サルコペニアに関して、診断では、筋肉量カットオフ値、バイオ 高齢者の筋骨格系変性を改善・予防する 在宅ロボットリハビリシステム開発とその実証試験 平成25年度 ー27年度 東京大学医学部附属病院 部長 加齢性の筋骨格系障害を改善するために、個々の高齢者の体 マーカー、ロコモティブシンドロームとの関連、老年症候群等 格と身体機能に応じた全身運動を補助する在宅リハビリシス を検討し、予防では、複数の大規模コホートによる危険因子と テムの開発を行っている。筋力や関節可動域、運動内容をモニ 予防提言と介入プログラムの効果を検証し、治療では、筋細胞 タリングすることにより、運動習慣を記録するだけでなく、 イン による効果の検定系を確立し、既存薬の効果検証を行う。 これ ターネット回線を通じて医療機関と高齢者住居を繋ぎ即時的 らの成果を踏まえたサルコペニアの予防・診断・治療に関する に運動内容の変更や指導を行うことが出来る。高齢者を対象 マニュアルを作成する。 に、運動機能と筋骨格系疼痛の改善効果についての実証試験 を行っている。 3 住谷 昌彦 認知症研究開発事業 プログラムオフィサー プログラムスーパーバイザー 鷲見 幸彦 国立長寿医療研究センター 副院長 認知症の実態把握、予防、診断、治療、ケアという観点に立って、 谷向 知 それぞれ重点的な研究を推進します。 愛媛大学大学院医学系研究科 教授 (1) 認知症の原因解明、治療法開発、診断法開発、 吉田 邦広 予防法開発等のためのコホート研究 (2) 家族性認知症に関する研究 信州大学医学部 特任教授 (3) ドラッグ・リポジショニングによる認知症薬の開発に関する研究 (4) 認知症患者の新規予防法、診断法、治療法等に関する研究 平成25年度 ー27年度 新井 哲明 筑波大学 医学医療系 准教授 大規模疫学調査による、認知症の発症促進因子および 抑制因子の検索に関する研究 平成25年度 ー27年度 下方 浩史 名古屋学芸大学大学院 栄養科学研究科 教授 BPSDの対処法を確立し、認知症患者の精神科入院の長期 本研究では、無作為抽出された地域住民を対象とした大規模 化を防ぐため、16カ所の精神科病院に入院した382例の認 な疫学調査データを用い認知症及び認知機能障害の発症促 知症患者の実態調査を行い、BPSDの標準的な治療法と入 進因子・抑制因子を明らかにしていく基幹コホート研究、その 院長期化に関連する要因を明らかにした。それらの結果を基 結果との比較検証を行う検証コホート研究及び予防的介入研 に、BPSD予防あるいは入院期間短縮のためのモニタリング 究の対象者総計2万人を超える3つの研究を実施し、中高年期 シートやチェックシート等を開発中である。 さらに、画像・病理 における認知症予防、認知機能の維持のための新たなストラ 研究から高齢者の妄想や抑うつと側坐核を含む辺縁系におけ テジーの開発を目指す。 長寿科学研究開発事業 BPSDの症状評価法および治療法の開発と脳内基盤解明を 目指した総合的研究 るタウ病変との関連性を明らかにした。 平成25年度 ー27年度 数井 裕光 大阪大学大学院 医学系研究科 講師 認知症のケア及び看護技術に関する研究 平成25年度 ー27年度 筒井 孝子 兵庫県立大学大学院 経営研究科 教授 一度出現した認知症の心理行動障害(BPSD) を治療すること 現在、認知症者へのケアと看護技術の標準化が求められてい は困難である。 またBPSDへの対応法の選択は、現時点では、 るにも関わらず、 これに関するエビデンスは、国内外ともにほ 個人の経験に基づいて選択されることが多いため、効果は浮 とんど示されていない。本研究事業においては、研究代表者ら 動的である。そこで本研究では、BPSDの予防法を開発する。 さ がすでに開発した認知症の臨床像を総合的に評価するアスメ らに発現機序に基づいたBPSDの対応法を開発し、治療の有 ントツールであるDASC(粟田2012)等を活用し、介護保険施 効性を増す。そしてこれらの結果を、 「BPSD予防法と発現機序 設や医療機関を利用している認知症の方へのケアや看護技 に基づいた対応法マニュアル」にまとめて公開する。 術の実態調査を通して認知症のステージ別に、そのケアや看 認知症研究開発事業 BPSDの予防法と発現機序に基づいた 治療法・対応法の開発研究 護技術を明らかにし、 この標準化を行う。 平成25年度 ー27年度 清原 裕 九州大学 大学院医学研究院 教授 福岡県久山町で継続中の認知症の疫学調査において、アル エビデンスに基づく地域包括ケアシステム構築のための 市町村情報活用マニュアル作成と運用に関する研究 平成26年度 ー28年度 田原 康玄 京都大学大学院 医学研究科 准教授 滋賀県長浜市民約1万人を対象としたオミックスコホート ツハイマー病(AD)をはじめとする認知症の実態を明らか 研究から、認知症や軽度認知機能障害の発症・進展に関連 にし、その危険因子および防御因子を解明する。そしてゲノ する新たな病因分子の同定を目指す。具体的には、①フィー ム解析によってADの遺伝的危険因子や遺伝環境相関を特 ルドワークで認知機能を評価するとともに、②動脈硬化や耐 定する。また、脳卒中患者と糖尿病患者を対象にした大規 糖能異常等の既知のリスク因子も評価し、これら臨床情報 模疾患コホートの成績から認知症の危険因子を明らかにす と③末梢血中の低分子化合物、脂質、ペプチド等の網羅的 る。さらに、全国5つの認知症の疫学研究を統合して認知症 分析、及び④ゲノム情報とを包括的に解析することで、研究 データバンクを形成する。 目標の達成を目指す。 障害者対策総合研究開発事業 大規模ゲノム疫学共同研究による 認知症の危険因子および防御因子の解明 6 地域包括ケアシステム構築に向けた地域マネジメント力の強化 手法ならびに地域リーダー養成プログラムの開発に関する研究 平成26年度 ー28年度 川越 雅弘 国立社会保障・人口問題研究所 部長 地域包括ケアシステムを構築するためには、市町村の地域マ ネジメント力強化が重要課題となる。特に、地域課題を把握す るための能力の向上、ならびに地域課題を解決するための方 法論の向上がキーポイントとなる。そこで、本研究では、 まず、 市町村ニーズを踏まえたデータ分析支援を通じて、汎用性の 高い地域診断支援ツールの開発を行う。さらに、計画策定及 び会議運営支援をもとに、市町村職員のスキル向上に資する マニュアルならびに研修プログラムの開発を行う。 長寿科学研究開発事業 大腿骨近位部骨折術後1年の要介護状態 ハイリスク患者に対する介護予防や要介護度の重度化予防 平成26年度 ー28年度 田中 亮 広島国際大学 総合リハビリテーション学部 講師 本研究の目的は、大腿骨近位部骨折術後1年の要介護状態悪 化のリスク要因を特定し、ハイリスク患者に対するリハビリテ ーションマネジメントによって実際の1年後の要介護状態悪化 を予防できるか、検証することである。研究1では、大腿骨近位 部骨折術後に要介護状態に陥る患者を早期に発見するため のスクリーニングツールを開発する。研究2では、大腿骨近位 部骨折術後患者に対する免荷式リフトを使用した歩行練習が ADL回復に及ぼす効果を検証する。 認知症研究開発事業 地域づくりによる介護予防を推進するための研究 平成27年度 ー29年度 近藤 克則 千葉大学 予防医学センター 教授 2015年度から、介護予防政策はハイリスクな虚弱高齢者だけ を対象とする二次予防から、誰でも参加できる住民主体の「地 域づくりによる介護予防」へ目標をシフトすることとなった。 し かし多くの市町村にとっては未経験のため、新しい政策の導 入や評価の仕方に戸惑っている。効果的な地域づくりによる 介護予防の普及に向けて、1) プロトコール作成、2)評価手 法開発、3)地域包括ケア「見える化」システム活用・改善、4) 研修プログラム開発を行う. 障害者対策総合研究開発事業 5 アルツハイマー病に対するポリフェノールの 安全性と有効性に関する研究 平成26年度 ー27年度 篠原 もえ子 金沢大学 大学院医薬保健学総合研究科 助教 時間軸を念頭に適切な医療・ケアを目指した、認知症の人等の 全国的な情報登録・連携システムに関する研究 平成27年度 ー27年度 鳥羽 研二 国立長寿医療研究センター 理事長 アルツハイマー病患者においてレモンバーム抽出ロスマリ 本研究は、 インターネットや地域コホートからの前臨床期、認 ン酸 500 mg/日を96週間経口投与した時の安全性と有 知症疾患医療センターなどの外来からのMCI、医療施設や介 効性、ロスマリン酸代謝物の抗アミロイド作用及び血中・脳 護施設からの認知症期といった、疾患の時間軸を見据えた全 脊髄液中のロスマリン酸代謝動態(クーロアレイHPLCを用 国規模の登録を行い、薬剤治験、生活習慣変革などの介入研 いたポリフェノール血中濃度、脳脊髄液中濃度解析)につい 究、バイオマーカーの開発、 ケア技術の向上研究に資する国際 て明らかにする。 的に評価しうる情報基盤を整備するため、 これらの完成に必 要な課題を網羅的に検討する。 平成27年度 ー27年度 清原 裕 九州大学 大学院医学研究院 教授 本研究開発では、認知症の病態解明と予防・治療法の確立を 目指して、精度の高い認知症のコホート研究である久山町研 長寿科学研究開発事業 健康長寿社会の実現を目指した 大規模認知症コホート研究の創設 究の豊富な経験と知識を活用し、全国8カ所から抽出する地域 高齢者1万人からなる認知症の大規模前向きコホート研究を 創設するための基盤整備を行う。具体的には、各地域に新た に設定される認知症コホート研究における調査データの質の 均一化および精度の向上を図り、将来のゲノム・メタボローム 解析のための生体資料を収集する準備を行う。 平成27年度 ー31年度 森啓 大阪市立大学 大学院医学研究科 特任教授 多施設臨床研究により、アルツハイマー病(AD)の超早期 段階において、疾患の進行を反映する変化の計量的評価を可 能とする、あるいは将来のMCI、認知症への進展の予測を可 認知症研究開発事業 プレクリニカル期におけるアルツハイマー病に対する客観的 画像診断・評価法の確立を目指す臨床研究 能とするような、MRIやPETなどの脳画像・体液バイオマーカ ーの長期的プロファイルを確定する。同時に臨床認知機能デ ータを並行して収集し、詳細に比較することにより、健常高齢 者、preclinical AD、MCIにおけるバイオマーカーの意義を 明らかにする。 平成27年度 ー27年度 加藤 祐一 大阪市立大学 医学部附属病院 特任教授 認知症臨床研究・治験の支援を通じて、 “認知症治療薬の効 果”を正確に検出できる臨床・認知機能評価法,画像解析法、 バイオマーカー指標の最適化、データ管理と活用法を研究し、 国内・国際的な認知症臨床研究のネットワークを強化し、支援 体制を確立する。それにより2020年に本邦発のアルツハイマ ー病根本治療薬の開発を実現する。 障害者対策総合研究開発事業 認知症臨床研究の実施を支援する 国内・国際連携体制の構築に関する研究 8 認知症の根本的な原因の解明を目指した コホート研究と網羅的ゲノム配列解析研究 平成26年度 ー28年度 辻 省次 東京大学 医学部附属病院 教授 ポリマー製フォトニック結晶を用いたアルツハイマー病 高感度診断用センサーの開発 平成26年度 ー27年度 遠藤 達郎 大阪府立大学大学院 工学研究科 准教授 孤発性アルツハイマー病の発症原因を解明するために,アル 本研究では、 ナノインプリントリソグラフィーを用いて作製した ツハイマー病のコホート研究を推進し,詳細な臨床情報の取 ポリマー製フォトニック結晶を用いて、 アルツハイマー病の診 得とバイオリソースの収集を進める.既存のバイオリソースを 断指標となるアミロイドβを高感度かつ非染色にて検出・定 含めて,網羅的なゲノム解析(全エクソン配列解析―関連解 量可能なセンサーを開発することを目的とする。本研究で開発 析),罹患同胞対解析を実施し,両者の結果を統合的に解析す するセンサーは、専門の検査機関に依頼することなく、市中病 長寿科学研究開発事業 ることにより, アルツハイマー病の発症に対する影響度の大き 院でも簡便・迅速・安価にアミロイドβの検出・定量およびア い低頻度アレルを探索する. ルツハイマー病診断が可能となる。 家族性アルツハイマー病に関する縦断的観察コホート研究 要介護高齢者等の口腔機能および口腔の健康状態の改善 ならびに食生活の質の向上に関する研究 平成26年度 ー28年度 森啓 大阪市立大学 大学院医学研究科 特任教授 多施設臨床研究により、家族性アルツハイマー病(AD)の病態 平成26年度 ー28年度 本田 学 国立精神・神経医療研究センター神経研究所 疾病研究第七部 部長 人間の可聴域上限をこえる超高周波成分を豊富に含む音響 進行を反映する変化の計量的評価を可能とするような、MRI 情報が、脳幹部から前頭前野に拡がる広範囲調節系を活性化 やPETなどの脳画像・体液バイオマーカーや臨床認知機能デ する現象(ハイパーソニック・エフェクト) を応用し、認知症およ ータの長期的プロファイルを観察し、将来の治療薬開発に必 び軽度認知障害の行動・心理症状(BPSD)に対する、新しい非 要な証拠を得る。本研究の目的は、家系内での未発症者の発 薬物療法を開発することを目的とする。同時に、BPSDに対す 症を阻止することである。 る非薬物療法の有効性について、非侵襲脳計測法をもちいた 客観的な効果測定方法を確立することを目指す。 認知症研究開発事業 神経エネルギー代謝の改善を指標とした認知症根本治療効果を 発揮する生薬エキスの網羅的評価 平成26年度 ー28年度 竹森 洋 医薬基盤・健康・栄養研究所 創薬基盤研究部 主任研究員 ICTを利用した認知症ケアのための情報収集・蓄積と グッドプラクティス自動抽出システムの開発と検証研究 平成26年度 ー28年度 数井 裕光 大阪大学大学院 医学系研究科 講師 認知症病態の共通現象である神経細胞-支持細胞(アストロサ 認知症の心理行動障害(BPSD) は患者の在宅生活を脅かすも イト)間のエネルギー交換能低下による神経興奮毒性制御不 っとも重要な障害である。BPSDに対する対応法は様々な書籍 全に着目し、双方間のエネルギー代謝を評価するスクリーニン やウエブサイトで提案されているが、 これらが実際に奏功する グ系を構築し、漢方生薬エキスライブラリーを網羅的に評価す か否かは検証されていない。そこで我々は多くの介護者が行 ることで、認知症根本治療効果を発揮する生薬及びその成分 った介護法を、それが奏功したか否かの情報とともに、 インタ を同定することを目標とする。 また、 ヒト有効性判断として、 ヒ ーネットを用いて、広く収集し、その中から、奏功確率の高いケ トiPS細胞由来神経系細胞も利用する。 アの方法を自動的に抽出し、それらを奏功確率とともに公開 するウエブシステムを構築する。 障害者対策総合研究開発事業 7 認知症と心血管病の改善を図る迷走神経刺激効果を有する 簡易トレーニングプログラムの開発とメカニズムの解明 平成26年度 ー28年度 井手 友美 九州大学大学院 医学研究院 講師 身体活動コミュニティワイドキャンペーンを通じた 認知症予防介入方法の開発 平成26年度 ー28年度 小熊 祐子 慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科・ 准教授 わが国の高齢化・認知症の増加はかつて類をみないほど加速 藤沢市全体の身体活動量増加、健康増進のために、多方面・多 し、有効な治療法の開発が急務である。口腔筋訓練が迷走神 レベルの取り組みを行う。即ち、広く市民への情報提供、 ター 経刺激効果を有し、かつ認知症の治療に有効で、高齢者の様 ゲット層(60歳以上の高齢者)への教育機会提供、地域資源を 々な機能低下の治療・予防につながる可能性があると考えら 活用した協同企画の推進、身体活動を鍵とする住民間のコミ れる。本研究では、①口腔筋機能訓練の有効性および安全性 ュニティ形成促進から構成する (コミュニティワイドキャンペー のエビデンスの確立を行うために、オープン無作為化試験を ン)。 この取組が、身体活動増加・体力増強及び認知機能低下 行う。 さらに②機序の解明のため画像解析を主とした臨床試 予防につながるかどうかを検討し、得られた知見より身体活 験を実施すること、 を目的とする。 動を中心とした認知症予防介入方法を開発する。 障害福祉データの利活用に関する研究 平成26年度 ー28年度 岩谷 力 国立障害者リハビリテーションセンター 顧問 脳性麻痺者・脳卒中者の意思伝達支援のための 非接触ジェスチャ認識インタフェースの開発 平成27年度 ー29年度 伊藤 和幸 国立障害者リハビリテーションセンター研究所 福祉機器開発部 第2福祉機器試験評価室長 本研究では、障害福祉に関するデータ活用の意義と方法を 脳性麻痺、脳卒中などの身体的な理由が原因で意思伝達装 明らかにすることを目的とする。具体的には、 「生活のしづら 置などへの入力が困難な重度の運動機能障害者に対して、 さなどに関する調査」 (厚生労働省、平成23年度)等の詳細 簡易なジェスチャにより情報機器を操作可能にするインタフ 統計を作成し、既存データ活用の意義を示し、今後の全国 ェースの研究開発を行う。 障害児者実態調査への提言を行う。また、障害福祉に関す る調査データ、行政データ等の既存データの再利用をする ための仕組みを国内外で探索し、障害福祉データの再利用 システムを提言する。 平成26年度 ー28年度 宮野前 健 国立病院機構南京都病院 院長 進行したALS患者等を含む 障害者のコミュニケーション支援機器の開発 平成27年度 ー28年度 中島 孝 国立病院機構新潟病院 副院長 国立病院機構73施設から,重症心身障害児(者)データベー 進行した筋萎縮性側索硬化症などの神経・筋疾患では随意運 スには、15年間で約1万人・延べ6万有余のデータが集積さ 動が極度に障害されているので、意思表現するための運動が れている。 このデータベースの精度を高め、継続的に活用する 不可能である。皮膚表面に貼った電極を通して運動意図を示 ことにより医療的・福祉政策上の現状や課題・意義を明らか す特徴的な生体電位を運動単位電位(MUP) として非侵襲的 にし障害福祉施策への提言と、その情報共有の仕組みを確立 に検出し、それを意図に変換し、市販の意思伝達装置や環境 し現場の医療・療育の質の向上を目的に、以下の研究を行う。 制御装置に情報を受け渡すサイバニックインターフェースを 長寿科学研究開発事業 重症心身障害データベースの構築・利活用のあり方と 政策提言に関する研究 実用レベルまで開発する。 平成26年度 ー28年度 神尾 陽子 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 精神保健研究所 部長 体温調整が困難な頚髄損傷者等の障害者に対する運動中の 体温調整 システムの開発 平成27年度 ー28年度 緒方 徹 国立障害者リハビリテーションセンター病院 障害者健康増進・運動医科学支援センター長 わが国の自閉症療育はエビデンスに基づいた実践、そして 神経損傷で体温調節が困難な障害者にとって暑さは生活活動 統一的な効果検証もほとんどなされておらず、その質の向 と社会参加を阻害する因子である。本研究では体温調節をモ 上は喫緊の課題である。本研究は、国外ではエビデンスがあ ニタリングと体接触型のデバイスにて実施することを試み、冷 るABA療育をその他の地域療育と比較し、その効果やレス 却・加温の機構としては、皮膚との接触面からの熱伝導と血流 ポンダーの特徴について明らかにする。あわせて海外研究 による熱循環とを相補的に組み合わせたシステムを開発し、 のメタアナリシスおよび国内の民間ABA療育の実態調査、 車いす上での利用が可能な実装方式を目指す。最終的には、 および長期追跡ケースシリーズ研究をあわせて行い、わが 障害者スポーツや屋外活動などの実フィールドにおける試用 国の地域で提供されるべき自閉症療育のあり方に一定のエ 評価で有効性を実証する。 認知症研究開発事業 我が国における、自閉症児に対する 「応用行動分析による療育」の検証に関する研究 ビデンスを提供する。 平成26年度 ー28年度 加藤 誠志 国立障害者リハビリテーションセンター 研究所 顧問 本研究では、障害者・高齢者の社会参加の促進とQOLの向 上を目指し、それを支える効果的な支援機器イノベーション の戦略的な推進に資する情報基盤構築を目的とする。具体 的には、(1)支援機器の研究開発及び利用促進に資する情 報データベース、(2)支援機器に関する当事者参加型の情 報創発基盤、(3)支援機器イノベーション推進のための人材 障害者対策総合研究開発事業 支援機器イノベーション創出のための 情報基盤構築に関する研究 育成基盤の構築を行う。 10 障害者対策総合研究開発事業 プログラムオフィサー プログラムスーパーバイザー 中村 耕三 障害全般に関するリハビリテーション等の適切な支援を提供 中島 八十一 国立障害者リハビリテーションセンター 総長 するための研究開発、障害を招く疾患等についての病因・病 国立障害者リハビリテーションセンター 学院長 態の解明、診断・予防・治療法、 リハビリテーション等の先進 的・実践的な研究を推進します。 樋口 輝彦 国立精神・神経医療研究センター 理事長 西澤 正豊 新潟大学脳研究所 所長 長寿科学研究開発事業 障害者の健康増進活動推進を目的とした エクササイズに関する研究 平成25年度 ー27年度 身体・知的等障害 分野 認知症研究開発事業 福祉機器の利活用と開発を促進するための 社会技術基盤の創成 平成25年度 ー27年度 諏訪 基 国立障害者リハビリテーションセンター研究所 顧問 澤江 幸則 筑波大学 体育系 准教授 本研究では、エクササイズが施設障害者の健康に寄与するた めのエビデンスを示すために、私たちが作成した評価シート と、そのシートをもとに、 アダプテッド・エクササイズ・プログラ ムを開発し、それらの標準化を図ることを目的とした。 ブレイン-マシン・インターフェイス (BMI)による 障害者自立支援機器の開発 平成25年度 ー27年度 森 浩一 国立障害者リハビリテーションセンター 感覚機能系障害研究部長 本研究では、社会技術的な観点から、福祉機器が適切に利活 障害者の自立支援に向け、脳からの信号でコミュニケーションと環境制御等を可能と 用され、実用的な福祉機器が効率的に開発されるために必 するBMI機器開発を行う。 これまで、開発した支援機器を用いて筋萎縮性側索硬化症 要な、方法論構築を目的としている。障害者が着たい服を手 (ALS)等の患者・障害者を対象とした実証評価を実施してきた。本研究では特に、 に入れやすい環境を整備するためのファッションショーや、当 これらのBMI機器の実証評価を、 これまでよりも期間を長く重点的に実施し、 さらに 事者と技術者が協働する機器開発ワークショップなど、障害 現場からのフィードバックをもととして機器の改良を行う。 当事者が参加するコミュニティ運営を通して、 これらを効果的 に福祉機器の適切な利活用と開発につなげるための要件や 手法を抽出し、知識化している。 障害者対策総合研究開発事業 音声言語機能変化を有する進行性難病等に対する コミュニケーション機器の支給体制の整備に関する研究 平成25年度 ー27年度 井村 保 平成26年度 ー28年度 望月 秀樹 大阪大学大学院 医学系研究科 教授 ALS等の進行性難病患者に対するコミュニケーション機器 被検者自身に脳活動を提示することで随意的な制御方法を学 の導入においては、新たに開発されるIT機器等の物的支援 習させるニューロフィードバック技術は侵襲性の低い中枢神 や、利用支援を行う人的支援の対応等を含めた異なる制度 経機能の修飾技術として注目されている。本研究課題では、非 にまたがる支援が 必要である。本研究では、患者の身体機 侵襲的脳機能画像である近赤外分光法を用いたニューロフィ 能と生 活 環 境でのニーズも想 定した 社 会モデルも加 味し ードバックシステムを開発し、 リハビリテーションとの組み合わ た2軸での導入評価プロセスを検討する。そして、利用者の せで、慢性期神経疾患患者におけるADL低下の原因となる歩 QOLの向上に資するコミュニケーション機器の供給・利用 行障害などに対する機能改善促進効果の検証を行っている。 支援体制の提案を目指す。 9 中部学院大学 看護リハビリテーション学部 教授 近赤外分光装置によるニューロフィードバック技術を応用した 脳卒中及び神経難病の機能改善に寄与する 新しいリハビリテーションシステムの開発に関する研究 ノイズ様前庭電気刺激を利用した末梢前庭障害患者に対する バランス障害改善機器の開発 平成26年度 ー27年度 岩崎 真一 東京大学 医学部附属病院 准教授 経皮的前庭電気刺激(GVS)は、耳後部に貼付した電極より電 精神障害 分野 流を流すことで前庭神経を直接刺激する方法で、従来、前庭機 能検査に使用されている。近年、入力信号に対する応答が、微 弱なノイズによって補強されるという確率共振現象が注目さ れており、GVSが様々な神経疾患におけるパフォーマンスの 向上に有効であることが示されている。本研究では、確率共振 を前庭神経に応用し、 ノイズ様GVSによって末梢前庭障害によ る平衡障害に対する新たな治療法を開発する。 平成26年度 ー28年度 東 範行 国立成育医療研究センター 眼科医長・視覚科学研究室 室長 小児・若年者の重篤な視覚障害の約90%は0歳で発症するの 精神疾患の有病率等に関する 大規模疫学調査研究:世界精神保健日本調査セカンド 平成25年度 ー27年度 川上 憲人 東京大学大学院医学系研究科 教授 本研究では、①2010年代半ばにおけるわが国の地域住民の で、早期に発見・診断できないことが問題である。疾患の種類 精神疾患の頻度、受診行動、関連要因、社会生活・自殺行動な は多彩で、原因や病態が明らかでないものも多い。早期に適 どへの影響を、全国民から無作為抽出された日本人の代表サ 切に診断し、治療やリハビリテーションを行えば、可能な限り ンプルにおいて明らかにする、②精神疾患の疫学調査手法を の保有視覚の発達を誘導できる。本研究では、視覚障害疾患 改善し妥当性等について評価分析を行う、③精神保健疫学の を早期に発見・診断する方法を確立するとともに、早期治療、 研究推進と行政施策への貢献の方策について提言する。 長寿科学研究開発事業 小児・若年者の視覚障害の早期発見・診断・治療・訓練・ リハビリ等の自立支援に資する技術開発等に関する研究 有効なリハビリテーション法の早期導入の技術を開発する。 平成26年度 ー28年度 守本 倫子 国立成育医療研究センター 耳鼻咽喉科 医長 臨床評価指標を踏まえた睡眠障害の治療ガイドライン作成及び 難治性の睡眠障害の治療法開発に関する研究 平成25年度 ー27年度 井上 雄一 公益財団法人神経研究所 客員研究員 風疹の不顕性感染により難聴児が出生しているものの、風 本研究は、睡眠薬多剤併用を抑制し、慢性難治性不眠症の 疹ウイルスが 難 聴 の 原 因となったことを後 方 視 的 に 検 索 治療成績を向上させることを目的としており、1)多施設共 する方法はない。しかし我々は保存臍帯から安定性の低い 同研究として、Web上で行う不眠症のための認知行動療法 RNAウイルスである風疹ウイルスを同定することに成功し (web CBT-I)の効果についてのランダム化比較試験を実 た。この技術を発展させることにより、先天性・進行性難聴 施中である。2)個人面談式CBT-Iについては、その併用によ 症例の発症に風疹ウイルスがどの程度関与しているのかが る睡眠薬減量の可能性の検討と、web上でのスーパーバイズ 明らかになり、さらにあまり知られていない先天性風疹症候 システム構築を行っている。3)本班で作成した睡眠薬離脱症 群の実態を把握することができる。 状スケール、不眠症の健康関連QOLスケールの重症度判定 認知症研究開発事業 先天性難聴に対する保存臍帯を用いた 胎内先天性風疹ウイルス感染検索方法の新規開発 基準を作成中である。4)慢性難治性不眠症の治療手順に関 するエキスパートコンセンサスを作成中である。 平成25年度 ー27年度 境 泉洋 徳島大学大学院 ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部 准教授 ひきこもり状態を伴う広汎性発達障害者の家族に対して、 当事者の社会参加を促進するための効果的なプログラム を構築することは、自ら社会参加することが少ないとされる ひきこもり支援において重要な課題となっている。本研究で は、ひきこもりの家族支援のニーズ調査を踏まえて、コミュ ニティ強化と家族訓練(CRAFT)プログラムが当事者の社 障害者対策総合研究開発事業 ひきこもり状態を伴う広汎性発達障害者の家族に対する 認知行動療法の効果:CRAFTプログラムの適用 会参加に与える効果を検証し、CRAFTプログラムの実施者 養成の在り方について検討している。 12 次世代視覚障害者支援システムの実践的検証 平成25年度 ー27年度 仲泊 聡 国立障害者リハビリテーションセンター 第二診療部長 先行研究にて提唱したファーストステップと中間型アウトリー 感覚器障害 分野 チ支援を中軸とする視覚障害者に対する次世代支援モデルを 検証する。 まず、 ファーストステップの精度を上げるために必 要なアクティブ視野計を作製し、 ヒアリング等に基づきナレッジ バンクを強化するとともに、 その実践可能性について検討する。 さらに、 アクティブ視野の生理学的基礎を探る実験とアクティ ブ視野計による視野狭窄リハビリテーション訓練を行う。 長寿科学研究開発事業 中高度難聴者への超磁歪素子を用いた 埋め込み型骨導人工中耳の開発 平成25年度 ー27年度 羽藤 直人 愛媛大学 大学院医学系研究科 教授 次世代拡散テンソルイメージング (DTI)を用いた 聴覚系描出法の確立とその臨床応用研究 平成25年度 ー27年度 藤岡 正人 慶應義塾大学医学部 助教 外部装置と内部ユニットで構成される新しい皮下植込み型骨 近年のMR画像解析(イメージング)の発展はめざましく多臓 伝導聴覚デバイスを提案し開発してきた。外部装置で集音し 器で革新的な診断法が開発・実用化されている。本研究では 送信コイルで相互誘導により内部ユニットに信号を送信する 最新の拡散テンソルイメージング法(DTI)を聴覚系の実地 仕組みである。周囲の磁界の変化により高速に変形する超磁 臨床に応用する橋渡し研究を目的とする。高磁場MR機器(3 歪材料からなる振動子は内部ユニットに設置され、頭蓋骨を ~9.4T)にクライオプローブを適宜装備してHARDI法で画像 駆動する。複数のプロトタイプ振動子を開発したが、それらの を取得し、FA値からのfiber trackingを駆使して、側頭骨内 加振力は特に高周波数域で良好であった。 の神経線維走行の3次元的描出、側頭骨病理組織像の取得か ら、難聴発症時や聴覚再獲得時における聴覚中枢神経ネット ワークの再構成の可視化までを行う。 認知症研究開発事業 新しい難聴遺伝子診断システムの開発および 臨床応用に関する研究 平成25年度 ー27年度 信州大学医学部耳鼻咽喉科 教授 宇佐美 真一 老人性難聴に対する詳細な聴取評価法と 聴覚認知訓練の開発に関する研究 平成26年度 ー28年度 山岨 達也 東京大学 医学部附属病院 教授 先天性難聴は新生児1,000名に1名に認められる比較的頻度 老人性難聴では「音は聞こえるが、内容が聴きとれず、特に雑 の高い障害である。 音下での聞き取りが困難」という特徴がある。老人性難聴では その原因のうち、約60%に遺伝子が関与することが報告され 末梢聴覚障害による聴覚閾値上昇に加え、中枢聴覚処理の障 ているが、100種類ぐらいの遺伝子の関与が示唆されており、 害が聴取に大きく影響するが、本邦では中枢聴覚処理の評価 効率的に解析する事が困難であった。 法は確立されておらず、中枢聴覚のリハビリはまだない。 この 本研究では、3年間の研究期間を通じて、次世代シークエンサ ような背景から本研究では日常生活を反映する (中枢)聴覚機 ーを用いた新しい難聴の遺伝子診断システムの開発および臨 能の評価法を確立し、中枢聴覚機能の強化を目的とする、聴覚 床応用を行い、原因診断に基づいたオーダーメイド医療を実 を用いた認知トレーニングを開発する。 現する基盤を整備することを目的としている。 障害者対策総合研究開発事業 患者由来iPS細胞を用いた 加齢黄斑変性の病態解明・治療法の開発研究 平成25年度 ー27年度 辻川 明孝 香川大学医学部 教授 平成26年度 ー28年度 加我 君孝 東京医療センター 名誉臨床研究センター長 加齢黄斑変性の前駆病変であるドルーゼンを眼底に有する患 新生児聴覚スクリーニングにおいて発見されるAuditory 者の皮膚細胞からiPS細胞を作成し、網膜色素上皮細胞に分 Neuropathy Spectrum Disorders(ANSD)[DPOAE(+), 化誘導させる。 この加齢黄斑変性発症のリスクの高い患者の ABR(-)]は多様な聴覚障害の集合したもので、その聴覚障害 細胞の機能・代謝評価、更に、遺伝子多型とドルーゼン形成の を分類しANSDの特徴を明らかにする。その研究を基礎に新 関連性に関する解析を行い、 ドルーゼン形成のメカニズム解 生児聴覚スクリーニングの結果の解釈と人工内耳手術の適応 明を行う。 また、Valosin-containing protein阻害剤による に関する新しい指針を提案すべく研究を進めている。 網膜色素上皮細胞賦活化作用を評価し、加齢黄斑変性の予防 薬の開発をめざす。 11 新生児聴覚スクリーニングにおけるAuditory Neuropathy Spectrum Disorders症例の長期追跡研究 ポリジェニック脳神経画像解析による 統合失調症の早期診断法の開発 平成26年度 ー28年度 橋本 亮太 大阪大学大学院大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・ 千葉大学・福井大学連合小児発達学研究科 准教授 精神疾患の病態を反映した鑑別診断、重症度予測が可能な 血中バイオマーカーの実用化研究 平成27年度 ー29年度 神庭 重信 九州大学大学院医学研究院 教授 精神疾患は医師が症状を診ることにより診断され、客観的な診 中枢機能や病態に近い系(脳髄液・iPS/iMG・モデル動物) か 断法は確立しておらず、客観的・科学的診断法の開発が必要と らバイオマーカー候補を絞り込み、 臨床診断と中間表現型データ されている。大阪大学の脳表現型コンソーシアムにおけるデー とを相互につきあわせることにより、病態を鋭敏に反映する血 タリソースを用いて、ポリジェニック解析による遺伝学的なリス 液バイオマーカーを同定し、簡便に測定できる検査法を確立 ク、脳神経画像による構造脆弱性、そして現在の脳病態を反映 することである。 する安静時脳機能画像を組み合わせて統合失調症の早期診断 すでに我々は、精神疾患(統合失調症・双極性障害・大うつ病・ 法を開発することを目的とする。 本研究成果は、 精神疾患に対す 自閉スペクトラム症)の鑑別とその症状評価のためのバイオ マーカーを幾つか見出しており、二次サンプルやコホートサン ものである。 プルの臨床データを蓄積している。 血液バイオマーカーを用いたうつ病と双極性障害の 鑑別診断法の開発に関する研究 精神医学・救急医学・法医学が連携した危険ドラッグ使用の病態・ 症状対応法の開発に関する研究 平成26年度 ー28年度 橋本 謙二 千葉大学社会精神保健教育研究センター 教授 全国6医療機関(千葉大学、国立精神・神経医療研究センター、 平成27年度 ー29年度 松本 俊彦 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 部長 本研究は、 「依存症専門機関」、 「精神科急性期治療機関」、 浜松医科大学、金沢大学、大阪大学、神戸大学) で集めた健常 「一 般 救 急 医 療 機 関 」、 「法 医 学 機 関 」という4つ 領 域を研 者、大うつ病性障害患者、双極性障害患者の血液サンプルを 究フィールドとして、危険ドラッグに関連する医学的障害の 用いて、両疾患の鑑別診断法を開発することである。 長寿科学研究開発事業 る誤解や偏見の打破や国民の保健・医療・福祉の向上に資する 詳細を明らかにするとともに、治療ガイドラインを開発する ものである。 平成27年度 ー29年度 平林 直次 国立精神・神経医療研究センター病院 第二精神診療部長 精神科病院の入院処遇における 医療水準の向上システムの開発に関する研究 平成27年度 ー29年度 山之内 芳雄 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 部長 医療観察法施行後10年が経ち、同法による効果が明らかにな 精神科病院における入院医療の「中身」について、電子カル るとともに、入院期間の長期化や指定通院医療機関の不足、 テ等からデータを集約し、集計解析を行うシステムの開発 少数ではあるが再他害行為、 自殺、再入院などの課題も明らか を行う。これを通して、精神科医療の質に関する知見を創出 となってきた。本研究では、医療観察法対象者の社会復帰を促 する。 認知症研究開発事業 医療観察法における、新たな治療介入法や、 行動制御に係る指標の開発等に関する研究 進するために、転帰や予後に関する予測指標を明らかにし、効 果的かつ効率的な治療方法や介入方法を開発する。 平成27年度 ー29年度 立森 久照 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 室長 精神疾患に起因した自殺の予防法に関する研究 平成27年度 ー29年度 山田 光彦 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 部長 精神科領域において、将来的な人口の変化などを考慮した患 自殺未遂者のほとんどは何らかの精神科疾患を有している 者の発生と医療対応の必要量の予測を行うための手法の開 可能性が高い。しかし、救急医療施設入院中あるいは退院 発を行う。 また各地域を精神科医療ササービスの特徴による 後に適切な精神医学的評価や支援を受けていない場合が 分類し、その結果を可視化する手法の開発も行う。 少なくない。そこで本研究では、1)救急医療施設を受診した 自殺企図者に対する効果的な介入法について系統的レビュ ーとメタ解析を実施し、2)異なる精神科診断における効果 障害者対策総合研究開発事業 精神医療に関する空間疫学を用いた疾患発症等の将来予測 システムの開発に関する研究 について検討し、3)臨床で必要とされている支援提供者の 育成プログラムを開発する。 14 高齢者うつ病の病態診断と治療評価のための イメージングバイオマーカーの開発と実用化 平成25年度 ー27年度 大久保 善朗 日本医科大学医学部 教授 発達障害を含む児童・思春期精神疾患の 薬物治療ガイドライン作成 平成26年度 ー28年度 中村 和彦 弘前大学大学院医学研究科 教授 分子イメージングを用いて、高齢者のうつ病の病態診断および 児童・思春期精神疾患の薬物治療に関する最近の出版物や 治療評価のためのイメージングバイオマーカーの開発を目指 欧米のガイドラインを検討する。そして各薬物ごとの児童・ した。 アミロイドイメージング研究では、70歳以上と晩発初発 思春期精神疾患薬物療法ガイドラインを作成する。具体的に うつ病は、βアミロイド陽性率が高く、 アルツハイマー病の前 は抗うつ薬、感情調整剤、抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬、抗 駆症状としてうつ病を発症する可能性を示した。その他、 ドパ ADHD薬である。次に疾患分類ごとの児童・思春期精神疾患 ミン機能を反映するドパミントランスポーターおよび脳タウ病 薬物治療ガイドライン作成する。具体的には気分障害、統合 理を評価するタウのイメージングの有用性について検討した。 失調症、不安障害、ASD、ADHD、 トゥレット症候群、睡眠障 害、PTSDである。次に適正薬量、副作用、少量薬物療法につ いて検討する。 長寿科学研究開発事業 MRIを用いた気分障害の診断補助法についての実用化研究 平成25年度 ー27年度 笠井 清登 東京大学大学院医学系研究科 教授 精神疾患患者早期介入のための医療従事者向け教育研修プログラムの開発 ー メンタルヘルス・ファーストエイドの応用 ー 平成26年度 ー28年度 加藤 隆弘 九州大学 先端融合医療レドックスナビ研究拠点 特任准教授 本 研 究 は 、安 静 時 機 能 的 M R ( I resting-statef MRI メンタルヘルス・ファーストエイド (MHFA)は、 うつ病など精 [rs-fMRI])および構造MRIを用いて、気分障害の客観的な診 神疾患患者早期介入のために開発された一般人向けの12時 断に有用な脳機能・構造評価システムを構築し、診療場面に 間の教育研修法であり、 オーストラリア、米国など、世界的に普 おける補助検査として実用化することを目的とする。 及しはじめている。本研究では、MHFAのエッセンスを取り組 み、日本の状況に鑑みて、日本の医療従事者向けの短期教育 研修プログラムを開発することで、精神科以外の診療場面に おいて、精神疾患の早期発見・早期介入・自殺予防に貢献でき る医療従事者を育成する。 認知症研究開発事業 DNAメチル化修飾に着目したうつ病のマーカー作成 -双極、単極、治療抵抗性うつ病の識別を目指して- 平成25年度 ー27年度 大森 哲郎 平成26年度 ー28年度 水野 雅文 東邦大学医学部精神神経医学講座 教授 うつ病患者の白血球をサンプルとし、DNAメチル化修飾変化 精神疾患の早期介入に関するガイドラインの作成を視野に入 を測定し、複数サイトの測定値を組み合わせて生物学的指標 れ、わが国の初発統合失調症におけるDUPの長期予後への を作成する。現在のところ18サイトの組み合わせで健常者と 影響、前駆期における臨床特性や受診行動特性や治療指針を の識別が可能であり、別集団において再現性を確認した。並行 一層明らかにする。諸外国における早期精神病の臨床エビデ して行っているmRNA発現量を指標とする検討でも、5遺伝 ンス並びに早期支援体制に関する情報収集を行い、わが国に 子の発現量を組み合わせて80%以上の感度と特異性で識別 おける適切なシステムを提案する。 さらに、精神病発症危険状 障害者対策総合研究開発事業 できた。双極性障害との区別をも検討し、臨床診断を補助でき 態(ARMS)症例に対する認知行動療法の我が国の治療環境 るレベルを目指している。 における実施可能性の検証を行う。 双極性障害の神経病理学に基づく診断法の開発 カルボニルストレス関連分子による 統合失調症バイオマーカーの探索 平成25年度 ー27年度 加藤 忠史 理化学研究所脳科学総合研究センター チームリーダー 本研究の目的は、双極性障害の診断法を開発するため、神 平成26年度 ー28年度 糸川 昌成 東京都医学総合研究所 病院等連携研究センター長 本研究の目的は、末梢血のカルボニルストレス関連分子の 経病理学的基盤を明らかにすることである。そのため、生前 異常を客観的指標として、統合失調症の早期診断法を確立 登録等を通して双極性障害患者の剖検を推進し、死後脳の することである。 収集を進めると共に、動物モデルを用いて病変部位の探索 および病変の可視化方法の検討を進め、見いだされた部位 について、ヒト死後脳で検討を進め、双極性障害の神経病 理学的基盤を明らかにする。 13 徳島大学 大学院医歯薬学研究部 教授 精神疾患患者に対する早期介入と その体制の確立のための研究 縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーに対する さらに高い効果の期待される治療薬の開発 平成25年度 ー27年度 神経・筋疾患 分野 野口 悟 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 室長 縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーを対象として、病気の進行 を抑えつつ、罹患骨格筋を回復させる効果的な治療法の開発 研究を行う。我々はモデルマウスを独自に開発し、 シアル酸投 与による発症の予防に成功し、 シアル酸の低下が疾患原因で あることを示した。本研究では、モデルマウスを用いて罹患筋 の病態機構の詳細を分子レベルで明らかにし、治療標的を具 体的に設定し、 さらなる効果的な治療薬の開発に取り組むこ とを目的としている。 平成25年度 ー27年度 松本 直通 横浜市立大学医学研究科遺伝学 教授 脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究 平成25年度 ー27年度 嘉山 孝正 山形大学 医学部 特任教授 数十個の遺伝子を集約する新技術とNGSを組み合わせ、効率 脳脊髄液減少症は、70年以上も前に提唱された低髄液圧 的かつ安価に遺伝子異常を同定する技術(統合的遺伝子解析 症候群としばしば同義に扱われてきたが、臨床像に異なる システム)を用いて点変異とコピー数異常の検出も可能とす 点も多く、疾病の定義が混乱している。更に近年、交通外傷 る解析手法を確立し、効率的にヒト発達障害の遺伝子異常を 後の後遺障害として法廷で争われるなど、社会問題化して 同定、その分子病理を明らかにすることを目的とする。対象は いる。本研究は、脳脊髄液減少症の疾患概念を確立し、それ てんかん関連疾患・知的障害関連疾患である。 に対応した診断基準を作成、更にブラッドパッチも含めた治 長寿科学研究開発事業 統合的遺伝子解析システムを用いたヒト発達障害研究 療法の検証を行い、最終的には、本症に関連する国内の学 会が協力し、診療指針を作成することが目標である。 平成25年度 ー27年度 長谷川 成人 東京都医学総合研究所 分野長 認知症や運動ニューロン疾患などの多くは、神経、 グリア細胞 慢性疲労症候群の病因病態の解明と画期的診断・治療法の開発 平成25年度 ー27年度 倉恒 弘彦 関西福祉科学大学健康福祉学部 教授 重症度の高い慢性疲労症候群(CFS)患者における神経・内 に異常タンパク質の蓄積病変を伴い、その病変の広がりが臨 分泌・免疫系やエネルギー代謝の異常を明らかにすること 床経過と関係する。申請者らは細胞内に生じた異常タンパク により、客観的CFS診断法を取り入れた新たなCFS診断基 質が、そのプリオン様の性質から正常分子を異常に変換し、他 準を策定する。また、対症療法ではなく、CFSの病因・病態に の細胞に広がって神経変性が進行するという考えを提唱、検 即した特異的な治療法の開発に着手する。 認知症研究開発事業 異常蛋白伝播仮説に基づく神経疾患の画期的治療法の開発 証してきた。 この考えに基づいて細胞、動物モデルを作製する と共に、変性や伝播メカニズムの解明、治療法や診断法の開 発を行うことを目的とする 平成25年度 ー27年度 小野寺 理 新潟大学・脳研究所 教授 中枢性脱髄障害の神経組織修復に関する研究 平成25年度 ー27年度 村松 里衣子 大阪大学大学院医学系研究科 准教授 近年多くの神経変性疾患が蛋白質のフォールディング異常で 外傷や炎症により脳脊髄が傷つくと、様々な重篤な症状が 引き起こされる事が明らかとなった。 このフォールディング異 あらわれる。症状を改善させるには、傷ついた神経組織の 常を標的とした治療は,病態の進行を抑制する画期的な治療 修復が必要と考えられている。傷ついた中枢神経系はわず 法に繋がる。我々はポリグルタミン病をモデルとして蛋白質フ かではあるが自然に修復するため、その修復力を高めるこ ォールディング異常を抑制する化学シャペロンを探索し、治療 とができれば、症状の改善に繋がると期待される。本研究で 薬候補を見出した.臨床応用には、主観の入らない客観的評 は、実験動物を用いて、中枢神経系の修復の分子メカニズ 価方法の開発が不可欠であった。本研究申請では、申請者ら ムを解明する。解明した分子メカニズムを活かすことで治療 が開発した評価方法を用いる。 効果が発揮されるかも、検証する。 障害者対策総合研究開発事業 新評価方法を用いた フォールディング病の分子シャペロン療法の検討 16 高次脳機能障害支援における 血液バイオマーカーの活用に関する研究 平成27年度 ー29年度 緒方 徹 国立障害者リハビリテーションセンター 病院 障害者健康増進・運動医科学支援センター長 治療抵抗性統合失調症に対する客観的診断・治療法の開発 平成27年度 ー27年度 橋本 亮太 大阪大学大学院大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・ 千葉大学・福井大学連合小児発達学研究科 准教授 高次脳機能障害に対する支援制度の円滑な運用のための課 治療抵抗性統合失調症に有用なクロザピン治療を普及させ 題として、器質的脳傷害の正確な把握が挙げられる。本研究 るために、 クロザピン誘発性無顆粒球症の全ゲノム関連解析 では神経損傷に伴い血中で上昇する神経関連タンパクを計 を行い治療法選択に資する客観的診断法を開発し、治療抵 測し、外傷性脳損傷後に生じる高次脳機能障害を予測しよう 抗性統合失調症患者由来のiPS細胞を用いて治療反応性の とするものである。バイオマーカーの候補となる分子の検証 メカニズムを探索し、新たな治療薬の開発を加速することが を行った後、新規発生の外傷性脳損傷症例を対象としたコホ 目的である。本研究成果は、精神疾患に対する誤解や偏見の ート調査により急性期の血中バイオマーカー値から亜急性期 打破や国民の保健・医療・福祉の向上に資するものである。 の脳機能障害を予測できるかを検証する。 長寿科学研究開発事業 合併症を伴う精神疾患の治療に関する研究 平成27年度 ー29年度 伊藤 弘人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 部長 脳脊髄液サンプルを用いたうつ病バイオマーカーの開発 平成27年度 ー27年度 功刀 浩 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 部長 2型糖尿病とうつ病の合併患者に関する観察研究とともに、 本研究は、世界最大級の脳脊髄液バイオリソースを用いたう 地域連携システムモデルの開発を並行して実施する。 つ病のバイオマーカー開発を行う。1) 多施設脳脊髄液サンプ ル収集ネットワークを構築する。2) 最も有力であるエタノール アミンの低下、 フィブリノーゲンの上昇について、 ヒト大規模サ ンプルでの検討と動物実験による前臨床的検討とを行い、臨 床実用化のためのエビデンスを構築する。3)プロテオミクスに よる大規模脳脊髄液タンパク質データベースを構築し、 さらな るバイオマーカーの同定を行う。 認知症研究開発事業 知的障害者、発達障害者の支援における多分野共通の アセスメントと情報共有手段の開発に関する研究 平成27年度 ー29年度 安達 潤 北海道大学 大学院教育学研究院 教授 早期発見・早期支援、精神科医療、障害福祉、障害者雇用、引き こもり対策、矯正教育、老人介護の7つの分野で発達障害者の 特性や支援課題に関する情報を共有するためのアセスメント パッケージと情報共有手段を開発する。 アセスメントパッケー ジにはICFの観点を導入し、環境因子を考慮した支援構築を 可能とする。開発したアセスメントパッケージと情報共有手段 を用いてモデル地域において情報共有に関する試行を行った 後、全国普及用の研修会テキストを作成する。 障害者対策総合研究開発事業 発達障害者の特性をふまえた精神科ショートケア・プログラムの 開発と臨床応用 (修学・就労支援)に関する研究 平成27年度 ー29年度 加藤 進昌 昭和大学発達障害医療研究所 所長 ①「発達障害者のリハビリテーション・プロジェクト」開発し たプログラムを複数の施設で実施・検証する。その応用を全 国規模で展開し、デイケアの規模と構成、参加者の質の吟味 によって最適化を実現する。同時に②「発達障害学生の社 会参加・プロジェクト」大学生を対象に標準プログラムを応 用・検証し、必要な修正を行う。そのために大学における発 達障害支援のニーズを探り、修学・就労支援を通じて発達 障害学生の社会参加を支援する。 15 索 引 あ な 大渕 修一 P4 中島 孝 P10 大森 哲郎 P13 仲泊 聡 P11 中村 和彦 P13 P16 緒方 徹 P10,15 小川 彰 P3 野口 悟 小熊 祐子 P7 は 小野寺 理 P16 か 加我 君孝 橋本 謙二 P14 橋本 亮太 P14,P15 P11 長谷川 成人 P16 笠井 清登 P13 羽藤 直人 P11 数井 裕光 P6,P7 加藤 祐一 原田 敦 P3 P8 田原 康玄 P6 加藤 誠志 P10 平野 浩彦 P3 加藤 隆弘 P13 平林 直次 P14 加藤 忠史 P13 福田 恵一 P17 加藤 進昌 P15 藤岡 正人 P11 神尾 陽子 P10 本田 学 嘉山 孝正 P16 ま 川上 憲人 P12 松尾 雅文 P17 川越 雅弘 P5 松田 秀一 P4 神庭 重信 P14 P7 松村 剛 P17 菊谷 武 P4 松本 俊彦 P14 清原 裕 P6,P8 松本 直通 P16 功刀 浩 P15 水野 雅文 P13 熊川 寿郎 P4 宮野前 健 P10 倉恒 弘彦 P16,P17 村松 里衣子 P16 近藤 克則 P5 望月 秀樹 近藤 尚己 P4 森 啓 さ 境 泉洋 森 浩一 P12 守本 倫子 P9 P7,P8 P9 P12 澤江 幸則 P9 や 篠原 もえ子 P8 山岨 達也 P11 下方 浩史 P6 山田 光彦 P14 住谷 昌彦 P3 山之内 芳雄 P14 諏訪 基 P9 吉江 悟 P4 吉村 典子 P3 た 武田 伸一 竹森 洋 立森 久照 P17 P7 P14 田中 亮 P5 辻 省次 P7 辻川 明孝 P11 筒井 孝子 P6 戸田 達史 P17 鳥羽 研二 P8 戸原 玄 P4 18 デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対するエクソン・スキップ治療薬の 臨床開発に資するバイオマーカーの探索 平成26年度 ー28年度 武田 伸一 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 部長 慢性疲労症候群に対する 治療法の開発と治療ガイドラインの作成 平成27年度 ー29年度 倉恒 弘彦 関西福祉科学大学健康福祉学部 教授 デュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象としたアンチセンス 慢性疲労症候群(CFS)に有効な治療法は確立されておら 核酸によるエクソン・スキップ薬の臨床開発が進む中、その ず、約1/4のCFS患者ほとんど回復がみられず、日中も臥床 有効性評価の代理エンドポイントとしてバイオマーカーの重 して生活せざるを得ない状況にある。そこで、本研究では日 要性が大きくなりつつある。本研究ではジストロフィンタンパ 本におけるCFS治療の現状を明らかにするとともに、現在 ク、 ジストロフィン関連マイクロRNA、及び新規のバイオマー 行われているCFS治療の評価を行う。また、最近明らかにな カー等の最適な測定や解釈の手法について検討し、 これらを ってきたCFS患者における神経炎症に対して有効な治療法 DMD治療薬の開発に活用するための高度な知見を明らか についても検討する。さらに、世界中で行われているCFS治 にすることを目指す。 療について科学的根拠に基づいた評価を行い、CFS治療ガ イドラインを作成する。 長寿科学研究開発事業 福山型筋ジストロフィーの自然歴の把握と病状を反映する バイオマーカーの検索 平成26年度 ー28年度 戸田 達史 神戸大学大学院医学研究科 教授 Duchenne型筋ジストロフィーに対する カルパイン1阻害剤治療法の開発 平成27年度 ー29年度 松尾 雅文 神戸学院大学 総合リハビリテーション学部 教授 福山型筋ジストロフィーは、重度の筋ジストロフィーに脳障害 Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)は、最も頻度の高い を伴う。我々は原因遺伝子の同定に成功、 レトロトランスポゾ 遺伝性筋疾患で、致死性の進行性筋萎縮症で、世界の患者が ン挿入変異によるスプライシング異常症であることを見出し、 治療法の確立を待望している。本研究は、筋崩壊に関与する これを阻止するアンチセンス核酸により、患者細胞及びモデル タンパク分解酵素であるカルパイン1の阻害剤がDMD治療 動物において、正常タンパク、糖鎖異常の回復に成功した。臨 に応用できることを明らかにするとともに、その治療の有効性 床治験にむけ、運動機能評価・筋量測定・画像診断・発達機能 の客観的評価法を確立するもので、 カルパイン1阻害剤による 評価を含めた自然歴の把握を後方視的・前方視的に行い、新 DMD治療法を世界に先駆けて開発する最先端研究である。 規バイオマーカーの探索を行う。 認知症研究開発事業 G -CSFによる筋ジストロフィー治療方法の開発 平成26年度 ー28年度 福田 恵一 慶應義塾大学 医学部 教授 遺伝性筋疾患に対する新たな高効率細胞移植治療法の開発 平成27年度 ー29年度 上住 聡芳 藤田保健衛生大学・総合医科学研究所・ 難病治療学研究部門 講師 進行性筋ジストロフィー患者の治療法を確立するため、進行 骨格筋には筋衛星細胞と呼ばれる幹細胞が存在する。遺伝性 性筋ジストロフィーモデルマウスを用いて、治療実験を行う。 筋疾患に対して筋衛星細胞を移植し骨格筋を再生させる治 筋芽細胞にG-CSF受容体が発言していることを利用し、G- 療戦略が考えられているが、筋衛星細胞は培養すると筋形成 CSFを投与して、筋細胞の再生能力を評価する。 能が低下してしまうため、細胞移植治療は未だ実現していな い。本研究では、独自に見出した筋衛星細胞のニッチ細胞の 機能や、筋衛星細胞の幹細胞性維持に重要なシグナル系を 応用することで、筋衛星細胞が本来持つ能力を引き出し、高 効率な移植法の開発を行う。 障害者対策総合研究開発事業 筋強直性ジストロフィー治験推進のための臨床基盤整備の研究 平成27年度 ー28年度 松村 剛 国立刀根山病院 神経内科 部長 筋強直性ジストロフィーでは、新規治療法が臨床段階を迎え つつあるが、稀少疾患の治験推進には、国際協調的な疾患レ ジストリーや標準的医療の実践、鋭敏な臨床評価指標、自然 歴データなどが不可欠である。本研究班は、積極的なアウトリ ーチ活動で患者登録の推進と受療行動の改善、自然歴データ の収集を行うと共に、標準的医療確立のためのエビデンス構 築を目指した臨床研究を行う。あわせて指定難病検討に必要 な資料の作成も行う。 17 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 戦略推進部 脳と心の研究課 〒100-0004 東京都千代田区大手町1-7-1 読売新聞ビル22F TEL:03-6870-2222 FAX:03-6870-2244 Email:[email protected] 2015. 12. 24 発行
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