外来患者の心臓リハビリテーション におけるレジスタンストレーニング

C NSCA JAPAN
Volume16, Number1, pages45-50
Key Words【心臓リハビリテーション:cardiac rehabilitation、リハビリ:rehab、レジスタンストレーニング:
resistance training、筋力:strength、自己効力感:self-efficacy、自信:confidence 】
外来患者の心臓リハビリテーション
におけるレジスタンストレーニング
Resistance Training in Outpatient Cardiac Rehabilitation
Jeremy L. Spencer MS, CSCS
Hopedale Wellness Center, Hopedale, Illinois
要約
はじめに
ストレーニング(RT)を加えることに
第Ⅱ段階の心臓リハビリテー
第Ⅱ段階の心臓リハビリテーショ
よって、通常の看護だけでは解決でき
ション患者の多くは、回復期、座
ン で は、 冠 状 動 脈 バ イ パ ス 移 植 術
ない問題に対して効果的な解決方法を
位中心の生活習慣、加齢による不
(CABG)、心筋梗塞(MI)、ペースメー
活動に伴う、筋骨格系の弱化と萎
カー、あるいは血管形成術などの心臓
心臓血管系のエクササイズに比べ、
縮症状を呈する。その結果、日常
疾患の予後における心筋の回復に主に
RTは 虚 血 性 反 応 と 不 整 脈 を も た ら
生活に必要な作業を行う能力また
関心が払われる。さらにリハビリテー
す傾向が少なく、左心室に明らかな
は自信を失うことで、心理的およ
ションプログラムは、冠状動脈疾患
有害作用を及ぼさず、より高い弛緩
び情緒的な健全性が損なわれるこ
(CAD)の危険因子プロフィールと機
期血圧をもたらすことにより、冠動
とも多い。通常の看護と心臓血管
能的能力を向上させ、生産性と独立性
脈灌流を促進し心拍数を低下させる
系のみに限られたプログラムにレ
を高め、活動の再開による症状を軽減
(7,14,15)。 さ ら にRTプ ロ グ ラ ム は、
ジスタンストレーニングを加える
し、日常の業務や余暇活動の再開を助
バランス、持久力、コーディネーショ
ことによって、通常の看護だけで
けることをめざしている(13)。
ン、可動域(ROM)、柔軟性、高血圧、
は解決できない問題に対して効果
第Ⅱ段階の心臓リハビリテーション
高脂血症、耐糖性、インスリン感受
的な解決方法を提供する。
患者の多くは、回復期、座位中心の生
性、身体組成を改善し、末梢動脈障害
活習慣、加齢による不活動に伴う、筋
に伴う痛みを軽減して、家庭における
骨格系の弱化と萎縮症状を呈する。そ
広範囲な身体活動能力を向上させる
の結果、日常生活に必要な作業を行う
(1,8,10,11,14,15)。 こ れ ら のRTの 特 徴
提供する。
能力または自信を失うことで、心理的
や利益は、その他多くの利益とともに、
および情緒的な健全性が損なわれるこ
研究によって十分に証明されている。
とも多い。通常の看護と心臓血管系の
Haennelら は(9)、12週 間 のRTプ ロ
みに限られたプログラムにレジスタン
グラムが心拍数、収縮時血圧、3種類
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の日常生活活動における主観的運動強
身体活動を行う」ことを奨励するのに
登録看護師とエクササイズ専門職が行
度(RPE)
の低下をもたらしたことを明
役立つ可能性があると指摘した
(1)
。
わなければならない。
らかにした。これに対して、ウォーキ
ある程度筋力を必要とする日常活動の
ング-ジョギング-自転車プログラム
多くは、レジスタンスエクササイズに
スクリーニング
に参加しているコントロール群ではい
よく似ている。必要であれば、例えば
S&C専門職は、エクササイズへの
ずれの変化も見られなかった。特定
雪かきや手荷物を運ぶといった日常活
適応をスクリーニングする際、心臓疾
のサーキットウェイトトレーニング
動を模倣したエクササイズを手直しす
患患者にとってRTが禁忌である場合
(CWT)において、RTは心臓リハビリ
ることもできる。筋力トレーニングの
を十分に配慮しなければならない。禁
テーション患者の有酸素性能力に関す
妥当性と実生活への応用に関して、患
忌には以下の項目が含まれる。
る様々な測定値を改善したが、その中
者に十分に説明し、相談に乗ることが
○不安定狭心症
でも総運動時間と主観的努力に最も
重要である。例えば、高い食器棚にシ
○ 安 静 時 収 縮 期( 最 高 )血 圧 >
影響を及ぼした
(9,15)
。Stewartら は
リアルの箱を置くことをオーバーヘッ
200mmHg、または安静時拡張期
(最
(13,14)
、通常のプログラムとCWTを
ドプレスと関連付けることはRTに対
低)血圧>100mmHg
含むプログラムを比較した2つの研究
する疑問を解く助けとなり、生活に対
を行った。両研究によれば、CWT群
する自信と安心を取り戻すことにつな
は持続不整脈も虚血性症状も全く経験
がる。同じように重要なことは、RT
○負荷漸増運動テストに伴う異常血行
しなかった。その上、VO2max、最大
の目標をそれぞれの患者に明確にする
動態反応または顕著な虚血性心電図
サイクルタイム、および四肢の筋力が
ことである。すなわち、
(a)絶対筋力
増大した。通常の看護群は改善が少な
の向上、
(b)心臓血管系持久力の向上、
く、最初の研究ではVO2maxと上肢の
さらに(c)筋力を必要とする職業活動
筋力は向上せず、2番目の研究ではす
や余暇活動を行うための自信の向上で
○コントロール不良不整脈
べての測定値の改善の程度が有意に低
ある
(16)。
○重篤な大動脈弁狭窄症あるいは冠状
かった
(13,14,16)
。さらに、心臓疾患
患者自身が自分の目標を設定するこ
患者のためのRTの有益性は、筋力を
とも奨励されるべきである。それらの
○有酸素性能力<6代謝当量
(METs)
必要とする活動や身体的な測定値ばか
個人的な目標は患者と話し合って決
○臨床的制限のある整形外科疾患また
りではなく、患者の心理的な健全性と
め、必要であればエクササイズの選択
自己効力感も向上させた
(1,16)
。
や漸進に変更を加え、一人ひとりが目
○急性の全身疾患または発熱
前述したように、第Ⅱ段階のリハビ
標に向かって進歩するように促す。
○コントロール不良心房または心室律
リの大きな目標の1つは、筋力が必要
RTのもたらす有益性は、慎重に検
とされる職業活動や余暇活動を行うた
討され適切に実行されたRTプログラ
めのより大きな自信を育てることであ
ムの重要性を強調する。伝統的な心臓
る(3)
。Adesらによれば
(1)
、牛乳を
血管系エクササイズと併せて、低~中
○コントロール不良鬱血性心不全
注ぐ、ジャケットを着る、床をブラシ
程度のリスクを持つ心臓疾患患者のた
○第三度房室(A-V)心ブロック
で擦る、掃除機をかける、洗濯物を出
めの従来の有酸素性コンディショニン
○活動性心膜炎または心筋炎
し入れするといった柔軟性とコーディ
グプログラムにRTを付け加える必要
○安静時ST波変動(>3mm)
ネーションを必要とする活動は、RT
がある。RTの要素を付け加えること
○コントロール不良糖尿病
によって容易にできるようになった。
で、最も効果的で調和のとれた包括的
○エクササイズが禁じられている整形
彼らは同じ研究の中で、日常機能にお
なリハビリテーションとなる(16)。し
ける筋力向上の重要性に関して前向き
かし、それぞれの患者ごとに禁忌と適
な評価を与えることで、病後に不安を
応に関して徹底的なスクリーニングを
抱えている患者に対し
「増大した筋力
行ってからRTプログラムの実施に着
一般に、これらの禁忌のいずれが存
を活用して、家庭でさらに広い範囲の
手すべきである。スクリーニングは、
在しても患者のRTへの参加は適応と
4
4
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○コントロール不良高血圧
(>
160/100mmHg)
(EKG)変化
○左心室機能の低下
(駆出分画<
30%)
動脈疾患
は心臓血管系症候群
動異常
○コントロール不良洞頻脈
(>
120bpm)
外科疾患
○肥大型心筋症
は認められない
(3,4,7)
。
低リスクで段階的に十分なトレーニ
プログラム
また、以下に米国スポーツ医学会
ングを積んだ患者は、プログラム目
概要
(The American College of Sports
標に応じて相対的に高い負荷に漸進
我々が実施しているリハビリテー
させてもよい。
ションプログラムのRT要素は、大抵
Medicine:ACSM)と 米 国 心 肺 リ
ハビリテーション学会
(American
○レジスタンストレーニング中に、血
の場合3ヵ月間の第Ⅱ段階プログラム
Association of Cardiovascular
圧
(BP)および/またはRPP(収縮
の2ヵ月目に始まる。これは13回目の
and Pulmonary Rehabilitation:
期血圧×心拍数)の過度の上昇が見
セッションに当たる。しかしすでに述
Association:AACVPR)
から公表され
られる患者は、
(両脚、両腕ではなく)
べたように、プログラムの実施は個々
ているRT導入基準と適用ガイドライ
片脚、片腕のエクササイズを行う。
の患者の症状と疾患の程度によるた
○6~8種目のエクササイズ(多関節)
め、時にはそれより早く始める場合も
を各1セットずつ週2~3回実施。
遅く始める場合もあり、上記のような
○RPE( 6 ~ 20RPEス ケ ー ル )の
禁忌があればまったく行わない場合も
ンも検討する。
ACSMの導入基準
○MIまたはCABG後、4~6週間経過
した場合
○CABG以外の経皮経管的冠動脈血管
形成術その他の血管再開術後1~2
週間経過し、MIを伴わない場合
○監督下での心臓血管系持久力プログ
ラムを4~6週間実施した後か、第
Ⅱ段階を終了した場合
○安静時拡張期血圧が105mmHg以下
の場合
○ピークエクササイズ能力が5METs
の場合
○冠状動脈心臓麻痺、不安定な症状、
または不整脈による障害が認められ
「かなり楽
(fairly light)
(
」RPE 9)か
ら
「ややきつい
(somewhat hard)
」
(RPE13)
の範囲で行う。患者が過度
に力まないようにする。
○息を止めない。常に平常どおりの呼
吸をする。
ある。
最初のRTでは、通常軽いフリーウェ
イト、レジスタンスバンド、および自
重を使ったエクササイズを行う。負荷
は低く、適切な身体姿勢、適切な技術、
適切なスピードと可動域、適切な呼吸
○12 ~ 15レップを楽に完了できるよ
パターン、さらに息を止めずに行うこ
うになったら、負荷を1~2kg(2.5
となどに重点を置く。バルサルバ法は、
~ 5ポンド)ずつ漸増する。
心臓に戻る血液量を減少させる可能性
○普通は大筋群を先に、次に小筋群の
があり、それによってリハビリテー
順序で、週2~3回筋のエクササイ
ション患者ではすでに大きく低下して
ズを行う。上肢下肢、両方のエクサ
いる心拍出量をさらに減少させること
サイズを含める。
になる。この段階で選択するエクササ
○できる限り過度の静的な筋活動やハ
イズには2つの主な目的がある。第1
ンドグリップ(フリーウェイトバー、
の目的は、RTの考え方と概念を一人
ダンベル、マシンのハンドルなど)
ひとりに丁寧に紹介し、患者がこのタ
AACVPRの導入ガイドライン
を避ける。過度の静的収縮により、
イプの運動に伴う動作と感覚に慣れる
○症状が全く認められないか、軽度に
急激な血圧反応が起こる場合があ
のを手助けすることである。第2の目
る。
的は、患者に器具や知識や自信を与え、
ない場合
(3)
認められる患者に限り、レジスタン
○禁忌警告的な兆候や症状が見られた
施設のメンバーとして継続しない場合
○有酸素性トレーニングを最低12週
場合には、どのような場合もエクサ
でも、各家庭において独力でエクササ
間実施した後、レジスタンストレー
サイズを直ちに中止する。特にめま
イズを継続できるようにすることであ
ニングを始める。
い、異常な鼓動、異常な息切れ、胸
る。3ヵ月目のはじめ、すなわち第Ⅱ
痛などには注意が必要である(2)。
段階の最終月にはノーチラスマシンを
ストレーニングは実施される。
○筋肉痛を予防し傷害リスクを最小限
に抑えるために、最初の負荷は12
導入する。
~ 15レップが容易に完了できる程
患者がいずれの禁忌にも該当せず、
プログラムの第Ⅱ段階が終了した時
度とする。この負荷は1RMテスト
上記導入基準を考慮してRTの適応と
点で、患者は第Ⅲ段階を1ヵ月間無料
を用いたとすると、上半身では30
認められた後、第Ⅱ段階のプログラム
で継続することができる。患者の圧倒
~ 40%1RMに、股関節と脚部では
のRT要素を開始できる。
的多数は運動の継続を選択する。第Ⅲ
50 ~ 60 % 1RMに ほ ぼ 相 当 す る。
段階の期間中は心臓血管系エクササイ
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ズを継続し、適切であればEKGモニ
表1 毎回のウォームアップ
ターを外し、RTを漸進させて、すで
エクササイズ
セット数
レップ数
スローウォーキング(100m トラック2周)
1
-
ネックムーブメント
1
10
ショルダーシュラッグ
1
10
になるオプションがあり、この時点で
ショルダーストレッチ
1
左右 30 秒ずつ
第Ⅲ段階に移る。患者は6ヵ月間また
サイドストレッチ
1
左右 30 秒ずつ
は退会するまで、第Ⅲ段階のプログラ
スタンディング・ヒップアブダクション
1
10
ムを継続する。これらの患者会員は、
スタンディング・ニーエクステンション
1
10
もはや常時EKGによるモニターは行
アンクルローテーション
1
10
わ な い。 た だ しRPE、 血 圧、SpO2な
リスト&ハンドムーブメント
1
10
どはモニターし、記録する。この段階
スタンディング・カーフストレッチ
1
左右 30 秒ずつ
シーティッド・ハムストリングストレッチ
1
左右 30 秒ずつ
に行っているバンドと自重トレーニン
グに加えてノーチラスマシンのフル
サーキットを行う。無料月間が終了す
ると、患者には我々の施設のメンバー
のプログラムの目標は患者を助け、エ
クササイズを自分で行えるようにする
ことである。第Ⅲ段階のクラスでは、
看護師、エクササイズ専門職、フィッ
表2 初級バンドトレーニング(2ヵ月目)
トネススタッフにいつでも相談でき
エクササイズ
る。第Ⅲ段階のプログラムが完了した
セット数
レップ数
後、
患者は再び評価とテストを受ける。
バンドロウ
1~3
12
評価とテストの後、患者は特別な制限
バンド・パンチツイスト
1~3
12
のない一般会員になる準備が整ったと
バンド・オーバーヘッドプレス
1~3
12
みなされる場合もあるし、医学的な監
ベンチシット(スクワット)
1~3
12
督が必要なエクササイズプログラムへ
バンドカール
1~3
12
の参加が決まる場合もある。
バンド・トライセップスプルダウン
1~3
12
バンド・フロントレイズ
1~3
12
第Ⅱ段階のプログラム
ウォームアップ
各エクササイズセッションは、可動
実施することが最適であるが、少なく
域と軽いストレッチングに重点を置い
とも週2回は必要である。だが、2日
ウェイトトレーニングで構成される
た軽度のウォームアップから始まる
連続してRTを行ってはならない。第
(表2)
。基本的なダンベルエクササイ
(表1)。ウォームアップは大抵5~7
Ⅱ段階のプログラムでは普通、週3回
ズも、第6~8週にかけて順次導入す
分続く。各エクササイズは1セットず
実施する。当施設のプログラムでは、
る
(表3)
。それぞれのエクササイズは、
つ、セット間にほとんど、またはまっ
3日間すべての日にRTと心臓血管系
10レップ、1セットずつ、エクササイ
たく休息をとらずに行う。すべてのス
エクササイズの両方を行う。1時間に
ズ間に30秒以内の休息を挟んで行い、
トレッチは30秒間保持する。可動域の
わたる第Ⅱ段階のセッションでは、毎
徐々に12レップ、2セットまで漸進さ
エクササイズは10 ~ 12レップを左右
回ウォームアップと有酸素性エクサ
せる。
両側とも行う。心臓血管系セッション
サイズで最初の35 ~ 40分間を構成す
第9週からは、3~5種類の多関
の最初の3分間もウォームアップに含
る。各セッションの残りの時間をRT
節用ノーチラスマシンを導入する(表
まれる。
とクールダウンに当てる。
4)
。ノーチラスサーキットの休息時
いレジスタンスバンドと自重を使った
間は、各エクササイズ間でも、またエ
頻度
様式と量
心臓リハビリ患者は、週3回RTを
第5週から始まる初期のRTは、軽
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クササイズのセット間でも比較的短い
(1分以内またはシートと負荷の調整
をするのに要する時間程度)
。これは、
表3 初級ダンベルトレーニング(3ヵ月目)
筋持久力と有酸素性トレーニングの利
セット数
レップ数
ダンベルロウ
1~3
12
バンド・パンチツイスト
1~3
12
ダンベル・オーバーヘッドプレス
1~3
12
ササイズやバンド、ダンベルエクササ
ダンベル・ベンチシット(スクワット)
1~3
12
イズも奨励される。
よく行われるのは、
ダンベルカール
1~3
12
ダンベルカール、ベンチシット、自重
トライセップスキックバック
1~3
12
スクワット、トライセップスキック
ダンベル・フロントレイズ
1~3
12
バック、ベントアーム・ラテラルレイ
ダンベルキャリー
1~3
12
ズなどである。
ダンベル・ファーマーキャリー
1~3
12
益を最大化するためである。患者は、
各エクササイズを10レップ、2セット
または、最大3セットまで行うように
指導される。時間が許せば単関節エク
エクササイズ
強度
表4 第Ⅲ段階の初級ノーチラストレーニング
我々は、開始時の負荷の決定に順化
セット数
レップ数
レッグプレス※
1~3
12
チェストプレス※
1~3
12
ラットプルダウン※
1~3
12
フに余裕があれば、低リスクの心臓病
ローワーバック※
1~3
12
患者が1RMテストを安全に実施でき
アブドミナル※
1~3
12
ることはすでに明らかになっている
レッグカール※
1~3
12
法を用いている
(2,7)
。この方法は時
間を節約できるので、少人数のスタッ
フで行うには不可欠である。しかし1
RMテストを好む場合、時間とスタッ
(5)。順化応法を使う当施設では、非
エクササイズ
レッグエクステンション
1~3
12
常に軽いウェイトから始めて、12 ~
ヒップアブダクション
1~3
12
15レ ッ プ ま た は、RPEがBorgス ケ ー
ヒップアダクション
1~3
12
ルの13(ややきつい/somewhat hard)
デルトイドフライ
1~3
12
オーバーヘッドプレス
1~3
12
トライセップスディップ
1~3
12
バイセップスカール
1~3
12
より大きくならない程度まで患者の反
応をモニターする。もし患者のRPEが
目標を下回り、なんら症状が認められ
ずウェイトに十分耐えられる場合は、
負荷を次のレベルに増加させる。ノー
※基本のエクササイズ。その他のエクササイズは適宜追加する。
チラスマシンであれば大抵2kg(5
ポンド)
増加させ、RPEが13 ~ 14を超
て注意深くモニターされる。すべての
○エクササイズに伴う狭心症の発症
えない範囲で、
処方された12 ~ 15レッ
患者は、各エクササイズまたはエクサ
○症候性上室性頻拍症
プを完了できるようにする
(7)
。これ
サイズセットの後、RPEと自覚症状を
○STの変化(3mm)安静時から水平ま
らの負荷の増加は、状況次第で同一
モニターする必要がある。もし患者に
セッションのセット間で行う場合もあ
以下のACSMの基準のいずれかが認め
れば、次回のセッションから増加させ
られた場合は、セッションを中止する。
る場合もある。バンドを使うときは最
○疲労
も軽い負荷のバンドを選択し、次第に
○モニター装置の故障
負荷を変える。
○めまい、意識混濁、運動失調、蒼白、
たは下降
○心室頻脈[3回以上の連続心室性期
外収縮(PVCs)]
○エクササイズに誘発された左脚ブ
患者の強度と全身状態は、トレーニ
チアノーゼ、呼吸困難、吐き気、ま
ングの間、エクササイズ専門職によっ
たは末梢循環障害
ロック
○第2度または第3度のAVブロック
の開始
○R-波またはT-波PVCs
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○ 頻 発 性PVCs( 異 常 心 電 図 症 状 の
30%)
な効果は測定することは難しいが、身
体的効果と同じぐらい重要である。事
○エクササイズによる低血圧
(エクサ
例的に、RTは心臓血管系のエクササ
サイズ中の収縮期血圧が20mmHg
イズ以上に我々の患者を力づけるよう
低下)
に思われる。おそらく多くの患者に
○血圧の急上昇(収縮期血圧220また
は拡張期血圧110mmHg)
とって、RTが全く新しい経験だから
であろう。RTはただ単に筋力をつけ、
○負荷の増加または負荷に変化がない
身体的な自信を深める機会を与えるだ
状態における不適切な徐脈
(10bpm
けではなく、新しい能力を獲得する機
以上の心拍数低下)
(3)
会を提供する可能性がある。患者の多
患者には力まないように、力を発揮
くは、実際自分がRTによって精神的
するときには息を吐き、挙上動作をコ
にも肉体的にもどれほど大きな変化を
ントロールし、可動域全体を使ってエ
感じたかに驚く。このような事実を考
クササイズを行うように指導する。小
慮すると、たとえ生理学的有益性がさ
筋群の前に大筋群のエクササイズを行
ほど顕著でなかったとしても、心臓リ
う。また、過度の血圧反応をもたらす
ハビリテーションの過程におけるRT
危険性があるので、マシンのハンドル
の重要性はいくら強調しても強調しす
を握り締めるようなアイソメトリッ
ぎることはないと思われる。◆
クな筋活動を避けるように指示する
References
(7,15)
。
結論
心臓リハビリプログラムの第Ⅱ段
階の主な目的は心筋の回復を図ること
であるが、患者の自己効力感と日常生
活の作業能力も彼らの心理的な展望
を決めるために重要である。大抵の
患者はリハビリプログラムに参加す
るとき、少なからず不安を抱えてい
る。患者は多くの場合、死と直面する
ような体験をしたばかりで、病気か
らの回復や将来活気に満ちた生活を
送る自分の能力に疑いを抱いている。
RTによる数量的に計測可能な進歩や
有益性は明らかである。RTは絶対筋
力、心臓血管系持久力、バランス、協
調性、ROM、柔軟性、高血圧、高脂
血症、耐糖性、インスリン感受性、身
体組成などを改善し、末梢動脈障害に
伴う痛みを軽減し、さらに家庭におけ
る広範囲な身体活動能力を向上させる
(1,8,10,11,14-16)
。 一 方、RTの 精 神 的
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From Strength and Conditioning Journal:
Volume 29, Number 1, pages 18-23.
著者紹介
Jeremy Spencer:イリノイ州ホープデール
にあるHope-dale Wellness Center のフィッ
トネスコーディネーターで、エクササイズス
ペシャリストである。