粘弾性流体を充填した指先をもつロ ボットハンドで何ができるのか

粘弾性流体を充填した指先をもつロ
ボットハンドで何ができるのか?
-壊れやすい物体把握金沢大学 理工研究域 機械工学系
准教授 渡辺 哲陽
流体指をもつロボットハンド
硬いものから柔らかいものまで
研究目的
・壊れやすく脆い物体の把持などが可能なロボット指の開発
・壊れやすい物体の把持だけでなく,通常の物体も把持可能
・壊れやすい物体の把持を行うため,指内部に粘弾性特性を
持つ流体を充填するという方法を提案する
・二層構造からなるロボット指とそれを使った把持戦略
gel
3
関連研究
M1
• Kim and Song らのグリッパ:接触剛性
可変という特徴
良:生卵などの把持が可能
悪:イレギュラーな形状の対象物や
より柔らかい物体の把持は困難
• Brown ら:コーヒー豆を中に入れてジャミン
グ効果により物体把持
良:イレギュラーな形状の対象物
悪:壊れ易い物体の把持は困難
w4
M17
• Simoga ら:ジェル指の良さを紹介
⇒ どのようにジェル指を使うかは不明
開発した指先の構造
指先 (詳細図)
製作した指先
【特徴】
• 指先部と制御ユニットに分けて設計
⇒ハンドの小型軽量化のため
• 圧力センサを内蔵
• 二層構造
ジェル層
: 壊れやすい物体
⇒
シリコーン層 : その他
5
開発した指先の圧縮特性
【圧縮実験】
指先に負荷された圧力と変形量の関係を調査.
ζ
近似曲線 :
f = C∆d
(N. Xydas and I. Kao, 1997.)
Gel layer
∆d
10
Silicon layer
15kPa
9
8
F
10kPa
Initial pressure
5kPa
(when there is not contact)
Force [N]
0.00 N
7
Contact area
6
5
4
3
Fingertip
2
Force gauge
1
Flat Plate
0
0
1
2
3
4
5
6
Deformation [mm]
7
8
9
10
6
開発した指先の接触圧力分布
【 圧力分布測定実験 】
感圧紙を用いて圧力分布を測定.
⇒ シリコーン指とジェル指の圧力分布特性を比較
ジェル指
シリコーン指
Force gauge
10N
0.00 N
ジェル指
中心部ほど圧力が高い
ジェル指
Pressure sensitive
圧力分布は位置によらずほぼ一様
paper
Fingertip
: 把持対象物に対して局所的な圧力が加わることがない
壊れやすい物体を把持する際に有効である
壊れやすい物体を把持する際に有効である.
を把持する際に有効である
Prescale mat
7
把持実験
把持実験(1) : 壊れやすく脆い物体
把持対象物 : ポテトチップス
破壊が突然起こるような脆い物体
⇒ 破壊しない接触圧力で把持
把持実験(2) : 壊れやすく柔らかい物体
把持対象物 : 絹ごし豆腐
破壊までに変形が起こるような物体
⇒ 破壊の兆候を検知して把持
把持実験(3) : 比較的重い物体
把持対象物 : ジュース入りペットボトル
破壊の心配がないような物体
⇒ 指先の汎用性の検証
8
壊れやすく脆い物体の把持
対象物 (1) : ポテトチップス
破壊実験
9
M6
壊れやすく脆い物体の把持
対象物 (1) : ポテトチップス
把持実験
10
壊れやすく柔らかい物体の把持
対象物(2) : 絹ごし豆腐
破壊実験
11
壊れやすく柔らかい物体の把持
対象物(2) : 絹ごし豆腐
(1)初期破壊を検知するまでグリッパを閉じる.
(2)初期破壊を検知した瞬間にグリッパを停止させ,圧
力を維持する.
(3)接触圧力が維持されるよう制御を行いながら
自動ステージにより持ち上げる.
12
重い物体の把持
対象物(3) : 500mlの飲料入りペットボトル
M9
13
実用化に向けた課題
•絹ごし豆腐把持の場合,局所的な破壊が生じ
ることがある
→より早い段階での破壊検知法の必要性
•現在,豆腐の変性を活用した,より早い段階で
の破壊検知法を開発中
•柔らかい表皮の剛性などの影響は不明
•変性の詳細は不明
•実用化先(ターゲット)を明確にする必要あり
→ターゲットに応じた戦略の開発が必要
現在進行中の研究
より早い段階での破壊検知法
豆腐破壊実験
押込み量 初期位置
1mm/s
押込み力:ロードセルの値
指内圧:(
指内圧:(現在の内圧)-(初期内圧)
実験で使用した指先
1.5[kPa]
未充填
4.0[kPa]
充填
押し込み力/指の内圧
指内圧 [kPa]
4.0[kPa]
1.5[kPa]
5mm
10mm
15mm
・収束する付近で豆腐に傷がつく.
・1.5 [kPa](未充填)の指の方が
(未充填)の指の方が
早く収束する.
押込み量 [mm]
フェーズチェンジ
豆腐を潰す際にいくつかの現象が見られた
フェーズ 0:
指の未充填の部分が押し
込まれる。(1.5[kPa]のみ)
フェーズ 1:
指が豆腐を押し込む。
フェーズ 2:
豆腐が硬くなり、
押し込まれにくくなる。
フェーズチェンジ検出
フェーズが変わる場所=圧力の上昇率が変わる場所
RMSE (Root Mean Square Error): 2乗平均平方根誤差
௣௢௟௬ଶ
௣௢௟௬ଷ
が大きく変化する場所をフェーズが変わる場所とする.
2次多項式
3次多項式
∆大きい
∆小さい
フェーズチェンジの様子(4.0[kPa])
フェーズ 1
(1回目)
フェーズ 2
(1回目)
フェーズ 1
(2回目)
破壊
フェーズチェンジ検出(4.0[kPa])
∆RSME [kPa]
1
1
2
フェーズ 1
フェーズ 2
2
1
押込み量 想定される用途
•食品運搬やその調理
•医療手術中において,思いかけない組織の
破壊などを防ぐ
•廃炉など危険領域での作業における作業場所の
危険度チェック
•遺跡発掘で誤って発掘物を損傷しないようにする
企業への期待
•未解決の表皮の影響については,ゴム製袋の
開発技術により克服できると考えている
•様々な柔らかい表皮を開発できる技術を持つ
企業との共同研究を希望
•医療手術分野への展開を考えている企業には,
本技術の導入が有効と思われる
本技術に関する知的財産権
•発明の名称 :対象物保持方法、および、当接機構
•出願番号 :特願2013-151087
•出願人
:金沢大学
•発明者
:渡邊 哲陽、丸山 量志、内田 真裕
お問い合わせ先
金沢大学ティ・エル・オー
山田 光俊
TEL 076-264-6115
FAX 076-234-4018
e-mail [email protected]