【総評】 今回も四季折々の作品が数多く集まり、質の高さから自然豊かな月山をじっくり吟味し取り組む姿 勢を感じることができました。普段は夏の応募作品が少ないのですが、今年は見応えのある作品が多 く集まった点が印象的で、さまざまな季節に訪れていることを実感しました。昨年は気象変動に振り 回された 1 年で、急な気温上昇で新緑の訪れが早く、9 月の涼しさから秋の彩りも足早に過ぎ去った ように思います。ただ、例年とは違う思いがけない出合いによって、また別の捉え方ができたことも 事実です。風景写真は一期一会ですから、固定観念にとらわれず目の前の被写体の魅力を存分に引き 出してください。 応募作品を拝見して毎回感じることですが、選出基準はプリントの色の善し悪しが大きく影響しま す。彩度の高さとシャープネスの強さが多く目立ち、とくにグリーンの色合いが強烈で自然の雰囲気 を壊しているのは残念です。色の再現に迷ったら、窓の外の自然の緑を参考にして見てください。決 して派手さは無いはずで、色の深みの再現に注意して仕上げましょう。紅葉も同様で、一枚一枚の葉 のディテールを大切にしてください。 斎藤友覧氏 プロフィール 1941 年東京都生まれ。1980 年会社経営から写真家に転向し、全国の風景を写し始める。 1990 年写真事務所「フォトワーク遊」を設立。大判からデジタルカメラまでを駆使して日本全国を 撮影し、カレンダー、ポスター等に写真を提供。光を生かした撮影で、日本情緒あふれる風景を 得意としている。多くの写真雑誌に作品を発表し、全国の撮影地を網羅していることから撮影地 ガイドなど多数を執筆している。現在、日本カメラ社「たのしく覚える写真の教室」に連載され、日本 カメラ社HPでも撮影地ガイドを連載中。写真講師 25 年以上のキャリアを持ち、多くの写真クラブから依頼を受け、セミ ナーの講演の他に写真コンテストの審査員を務めている。近著に「日本の風景 春夏編Ⅰ」「日本の風景 秋冬編Ⅰ」 「日本の風景 春夏編Ⅱ」「日本の風景 秋冬編Ⅱ」「風景の写し方入門」(日本カメラ社刊)などがある。写真クラブ「ふぉ とくらぶ遊」主宰 ※毎年2~3回、月山で撮影会を開催し、月山の魅力を全国に発信していただいております。 審 査 結 果 審査会:平成27年12月11日(金) 西川町長賞「春の目覚め」 増川 満氏(山形県河北町) [選 評] 浅い新緑のブナの森はまだ多くの雪が残 り、霧にけむる神秘的な情景に惹かれまし た。前景に雪解けの沼の水面を配置し、水 中から立ち上がる木々を大きく捉えて生命 の力強さを描いたフレーミングは見事で す。シルエットになった木立によって画面 が引き締まり、遠く霧のブナ林が霞んで遠 近感も表現されました。木々の位置も的確 で、目線が自然に奥に向かう画面構成も優 れています。 月山朝日観光協会長賞「大河の源」 鈴木 明吉氏(山形県南陽市) [選 評] 雪解けから生まれた水たまりを、芽鱗が散 り敷く残雪のブナの森で見つけました。周 囲がうっすらと凍る水面には浅いグリーン が映り込み、緩やかな起伏が続く森の爽や かな姿を捉えています。この小さな水たま りが地に蓄えられ、長い年月を経て私たち に恵みを与えてくれる一滴になるのでしょ う。作者は巡る営みを発見し、作品に高揚 させた着眼点が優れています。 西川町商工会長賞「4月の地蔵沼」 髙橋 雄一氏(山形県寒河江市) [選 評] とても 4 月とは思えない光景ですが、深い 雪に閉ざされていた沼にも水面が現れ、 木々に積もる重たそうな雪に近づく春の足 音が聞こえてきます。前景と遠景のバラン スも素晴らしく、青い水面を取り入れた画 面構成が雪景色ながらも何か明るく感じる のはそのためでしょう。もう少しシャッタ ースピードが遅かったならば、降雪による 動感がもっと描くことができました。 佳 作「惜秋」 伊勢 英一氏(神奈川県横浜市) [選 評] ブナ林に囲まれた小さな池に落ち葉がく るくると回り、秋の終わりを告げているか のようです。落ち葉を引き立てている青い 水面には、すっかり葉を落とした林と雲の 流れる様子が映り込み、周囲の環境と天候 を読み取ることができました。水面に漂う 落ち葉を回転するスローシャッターの速 度は的確で、深まる秋を惜しむように流れ る音が静かな林に響き渡っているようで す。 佳 作「目覚めの刻」 甲野 恵美氏(東京都新宿区) [選 評] 残雪の中に桜が咲き誇る姿は珍しい光景 で、豪雪地ならではの景色です。雪解け水 の流れる川と桜とのバランスも良好で、薄 赤く染まる朝の川面は春の息吹が聞こえて きます。日が差す前のブルートーンが風景 を包み、優しい色合いの中にピンクの桜色 がいっそう際立ちました。芽吹き始めた 木々の色合いとともに、ようやく訪れた遅 い春を歓喜しているかのようです。 佳 作「降り注ぐ星」 芳賀 和代氏(山形県寒河江市) [選 評] 夜空に繊細な枝を広げる古木の背景に、長 時間露光によって回転する満天の星空を描 いた点に目を奪われました。その幹には暗 闇に妖しく光るツキヨタケ。数こそ少ない ですが黒い幹に点々と映える蛍光色が際立 ち、星空の引き立て役として重要な存在感 を見せています。周囲に覆い被さる木々の 暗さも深い森の雰囲気を十分盛り上げて、 神秘的な夜の世界に引き込まれました。 佳 作「盛夏」 富樫 辰也氏(山形県山形市) [選 評] チングルマを地面間近から見上げるように 捉え、夏の太陽に向かって伸び伸びと咲く 姿が開放的です。超広角レンズの湾曲する 描写特性を上手く活用し、すべての花が空 に集中しているような不思議な風景を作り 出しました。難しい露出のコントロールも 的確で、光に透ける花びらが白飛びするこ となくディテールが描かれているため、ダ イナミックな作品になりました。 佳 作 「濃霧の登拝駈(とはいかけ)」 田代 貢一氏(山形県酒田市) [選 評] 山開きと共にお目にかかる月山ならではの 厳かな光景です。足の動きから察するとか なりの早足で、誰もが白装束に身を包み周 囲の花々に目もくれず一心に進む視線に信 仰の深さを物語っています。深い霧によっ て背景が隠され、視線が信者たちに集中す ることも功を奏しました。カーブする木道 で待ち構えていたことで奥行きも生まれ、 シャッターチャンスも的確です。 入 選「草紅葉を行く」 粟野 康夫氏(山形県山形市) 入 選「真冬の晴れ間に」 前澤 安信氏(山形県天童市) 入 選「湿原の春」 髙橋 俊則氏(山形県村山市) 入 選「北国の春」 佐藤 昭治氏(山形県河北町) 入 選「ブナ霧の幻想」 小西 輝雄氏(山形県山形市) 入 選「雪溶けの頃」 草苅 幹夫氏(東京都清瀬市) 入 入 選「色づく頃」 武田 茂春氏(山形県天童市) 選「秋のフィナーレ」 安住 守氏(宮城県富谷町) 入 選「秋の装い」 石山 利勝氏(山形県新庄市) 【作品展示会の開催】 平成28年1月 4日~1月18日 西川交流センター2Fギャラリー(西川町間沢 280) 1月18日~2月 3日 霞城セントラル1Fギャラリー(山形市) 2月 3日~2月10日 遊学館1Fギャラリー(山形市) 2月15日~3月 2日 山形空港2F多目的ルーム(東根市) 3月 2日~3月14日 もりーな天童(天童市) 3月14日~3月30日 村山総合支庁1Fギャラリー(山形市) ※1/18、2/3、2/10、2/15、3/2、3/14、については、搬出及び次会場への搬入となります。
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