IT予算 - 日本情報システム・ユーザー協会

プレスリリース
報道関係者各位
2016 年 1 月 13 日
一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会
「企業 IT 動向調査 2016」(IT 予算の速報値)を発表
一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(略称:JUAS)は、IT ユーザー企業の投資動向や
IT 戦略動向などを定点観測する「企業 IT 動向調査 2016」を実施しました。IT 戦略立案や予算策定の
一助となるために、IT 予算に関する速報値を発表します。なお、最終集計・分析結果は 2016 年 4 月
上旬に発表予定です。今回発表の速報値と若干のズレが生じる可能性があることをご了承ください。
調査対象は国内上場企業およびそれに準ずる企業です。本調査の IT 予算は、当該年度に支出予定の
金額(キャッシュベース)を基本としています。金銭的な支出を伴わない費用(償却費等)は除外し
ています。調査概要はリリース最終ページをご参照ください。
■2016 年度の IT 予算、4 割強が「増やす」
ユーザー企業各社は 2016 年度も IT 投資を積極的に行いそうです。2016 年度の IT 予算の対前年比
を調査したところ、回答企業(※調査対象は国内上場企業およびそれに準ずる企業)の 4 割強(43.6%、
前年調査比 1.6 ポイント増)は、2015 年度よりも IT 予算を「増やす」と回答しました。「減らす」と
回答した企業の割合は 2 割弱(18.0%、同 0.2 ポイント減)でした。
図 1●2016 年度 IT 予算の増減 (2015 年度比の増減予想)
0%
全体
(n=654)
20%
18.7
10%以上増加
40%
60%
24.9
10%未満増加
80%
38.4
不変
10%未満減少
100%
10.4
7.6
DI値
25.6
10%以上減少
IT 予算を「増やす」割合から「減らす」割合を差し引いて求めた DI(ディフュージョン・インデッ
クス)は 25.6 ポイントで、こちらも前年調査の DI(23.8 ポイント)を上回りました。
各種報道によれば、2015 年度決算では過去最高の営業利益を達成する企業が相次ぎそうです。円
安・株高が続いており市況も追い風の状況が続いているため、体力があるうちに「攻めの IT 投資」を
推進して企業競争力を高めておこうとする企業が増えていると考えられます。
■売上高 1000 億円未満の中堅・中小企業での IT 投資が活発に
売上高規模別に IT 予算の増減を集計した結果を図 2 に示します。すべての売上高規模で DI がプラ
ス(IT 予算を増やす企業が減らす企業よりも多い状況)でした。
IT 予算を特に増やしそうなのが、売上高 1000 億~1 兆円未満の層です。半数を超える 55.1%の企業
-1-
が 2016 年度に IT 予算を「増やす」と回答しました。DI は 37.1 ポイントで前回調査(11.6 ポイント)
から大幅改善。IT 予算を「増やす」企業の割合が前年調査から 14.3 ポイント増、「減らす」割合は同
11.2 ポイント減となり、この売上規模の企業の多くが IT 投資を活発化する方向にあります。
図 2●売上高規模別 2016 年度 IT 予算の増減 (2015 年度比)
0%
20%
100億円未満
(n=118)
17.8
100億円以上1000億円未満
(n=330)
40%
16.1
19.7
1000億円以上1兆円未満
(n=156)
23.6
11.8
26.9
19.4
10%以上増加
5.1
37.3
37.2
16.7
100%
80%
51.7
17.9
1兆円以上(n=36 )
60%
10.9
44.4
10%未満増加
不変
11.1
10%未満減少
9.3
DI値
19.5
7.6
23.9
7.1
37.1
8.3
16.7
10%以上減少
■IT 投資に特に積極的な業種は金融
業種グループ別に IT 予算の増減を集計した結果を図 3 に示します。DI が最も高かったのが、銀行
や証券、保険などの「金融」グループです。2016 年度 IT 予算の DI は 47.1 ポイントで、前年調査より
も 26 ポイントも上昇しました。勘定系システムといった既存システムの強化に加え、金融と IT を融
合して新しいサービスを生み出す「FinTech」分野などでも IT 投資が活発化するものとみられます。
図 3●業種グループ別 2016 年度 IT 予算の増減 (2015 年度比)
0%
建築・土木(n=54)
20%
14.8
素材製造(n=145)
17.2
機械器具製造(n=176)
18.2
商社・流通(n=98)
18.4
金融(n=34)
20.6
社会インフラ(n=55)
21.8
サービス(n=92)
21.7
10%以上増加
40%
60%
20.4
80%
42.6
24.1
9.3
35.9
28.4
16.6
11.9
34.1
25.5
41.8
35.3
6.1
35.3
21.8
41.8
19.6
43.5
10%未満増加
100%
DI値
12.9
13.0
不変
10%未満減少
6.2
18.5
7.4
27.3
8.2
29.6
2.9 5.9
47.1
7.3
7.3
29.0
7.6
7.6
26.1
10%以上減少
DI の増減でみると、前年より IT 予算を増やす傾向が強いのは、機械器具製造(DI=27.3 ポイント、
前年調査比 7.2 ポイント増)、素材製造(DI=18.5 ポイント、同 5.9 ポイント増)、商社・流通(DI
=29.6 ポイント、同 4.4 ポイント増)である。一方、前年調査で DI が高かった社会インフラ(DI=29.0
-2-
ポイント、同 13.6 ポイント減)やサービス(DI=26.4 ポイント、同 9.9 ポイント減)、建築・土木(DI
=12.9 ポイント、同 6.7 ポイント減)については、IT 予算は増加傾向にあるものの 2016 年度はひと呼
吸おくような状態になりそうです。
■売上高に占める IT 予算、全体平均は 1.2%、中央値は 0.6%。業種ごとに差。
今回の企業 IT 動向調査でも、売上高に占める IT 予算の割合を計算しました。以前から IT 予算は「売
上高の 1%」といわれていますが、実際は一概にそうと言えなさそうです。IT の適用範囲が広がれば
自ずと IT 予算は増えていきます。一方、IT サービスのコモディティ化と低価格化が進んでいるため、
適用範囲が同じであれば IT 予算は減っていきます。動向を確認するために、業種グループ別に売上高
に占める IT 予算の割合を集計した結果を図 4 に示します。
図 4●業種グループ別にみた売上高に占める 2015 年度 IT 予算の割合
0.00
全体 (n=763)
建築・土木 (n=69)
1.00
0.75
0.60
2.00
3.00
4.00
5.00
6.00
7.00
0.75
0.63
0.53
機械器具製造 (n=202)
0.67
0.77
0.56
商社・流通 (n=119)
0.73
0.59
0.50
9.00
(%)
1.21
平均値
トリム平均値
中央値
0.49
0.43
0.38
素材製造 (n=163)
8.00
7.82
7.40
金融 (n=37)
6.43
社会インフラ (n=56)
サービス (n=117)
1.18
0.98
0.80
1.25
0.84
0.60
回答企業(※調査対象は国内上場企業およびそれに準ずる企業)の全体平均では、売上高に占める
IT 予算の割合は 1.21%でした。ただし、この値は極端に投資が多い企業、または少ない企業によって
大きくぶれてしまします。最大値および最小値の双方から回答の 10%を排除して計算したトリム平均
値は 0.75%、中央値は 0.6%でした。
なお、業種グループによって大きく差がある点にも注意する必要があります。IT 装置産業とも言わ
れる金融は、売上高に占める IT 予算の比率が極端に高く、平均値で 7.82%、トリム平均値で 7.40%、
中央値でも 6.43%ありました。一方、トリム平均値が最も低かった建築・土木では、それぞれ 0.49%、
0.43%、0.38%でした。
-3-
IT 予算の妥当性については、「売上高の 1%」という言葉ではなく、本調査の業種グループ別の結
果をベンチマークとして用いるとよさそうです。
■根強い業務効率化ニーズ、経営の「見える化」に対するニーズも高い
どういった分野に IT 予算は振り向けられるのでしょうか。「IT 投資で解決したい中期的な経営課
題」を優先度の高い 1 位から 3 位まで回答した結果を図 5 に示します。傾向としては前年調査と大き
くは変わりませんでした。
あらかじめ用意した 15 個の選択肢の中で、群を抜いて回答が多かったのが「業務プロセスの効率化
(省力化、業務コスト削減)」と、「迅速な業績把握、情報把握(リアルタイム経営)」でした。い
ずれも回答企業の約 2 割が、IT 投資で解決したい中期的な経営課題の 1 位として挙げました。解決し
たい課題として 3 位までに挙げた企業の割合は、「業務プロセスの効率化」が 52.3%、「迅速な業績
把握、情報把握」が 37.5%でした。
図 5●IT 投資で解決したい中期的な経営課題(1 位~3 位)・1 位の降順
0.0
10.0
20.0
30.0
40.0
50.0
60.0
(%)
業務プロセスの効率化(省力化、業務コスト削減)
21.7
18.9
8.8
19.2
迅速な業績把握、情報把握(リアルタイム経営)
営業力の強化
7.5
グローバル化への対応
7.3
IT開発・運用のコスト削減
6.4
顧客重視の経営
6.0
業務プロセスの質・精度の向上(ミス、欠品削減等)
5.6
企業としての社会的責任の履行
(セキュリティ確保、個人情報の保護等)
4.9
ビジネスモデルの変革
4.8
社内コミュニケーションの強化
4.5
商品・サービスの差別化・高付加価値化
4.2
業務プロセスのスピードアップ(リードタイム短縮等)
3.6
8.9
6.0
11.7
9.5
8.2
5.5
5.9
8.8
1位
2位
(n=1060)
1.9
企業間(グループ、業界、取引先間)の情報連携
1.9
7.8
5.5
8.7
7.5
4.7
3.8
5.9
4.7
9.5
4.2
10.2
4.0
1.6
2.5
BCP(事業継続計画)の見直し
0.8
経営の透明性の確保
2.2
(内部統制、システム監査への対応等)
4.1
3.7
7.1
3.3
-4-
6.7
3位
■調査概要
「企業 IT 動向調査」は、IT ユーザー企業の IT 動向を把握することを目的に、1994 年度から実施し
ている調査です。経済産業省商務情報政策局の監修を受け、一般社団法人日本情報システム・ユーザ
ー協会(略称:JUAS)が行っています。
「企業 IT 動向調査 2016」の調査期間は 2015 年 9 月 30 日から 10 月 19 日。調査対象は、東証一部
上場企業とそれに準じる企業の 4000 社で、各社の IT 部門長に調査票を郵送して回答を得ました。調
査の有効回答社数は 1115 社。本リリースの IT 予算に関する有効回答数は 654 社、IT 投資で解決した
い経営課題に関する有効回答は 1060 社です。
本リリースは、調査結果をいち早くユーザー企業の皆様にお役立ていただくために「速報値」とし
て公開するものです。正式なデータや分析結果については、ダイジェスト版を 2016 年 4 月上旬に、詳
細な分析結果を掲載した報告書は同年 5 月に発行する予定です。
■JUAS ライブラリーのご紹介
一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(略称:JUAS)は、「企業 IT 動向調査」をはじめ
とした様々な調査の報告書を紹介する「JUAS ライブラリー」を Web サイト上に開設しています。有
償販売している報告書についても、発売から 2 年以上が経過したものについては無償で公開していま
す。
調査報告書には、日本における IT 活用の歴史と先達の経験が詰まっており、調査実施から年数が経
っても、今後の IT 活用の方向性を見極めるために有用であると考えました。そこで今回、発行から一
定期間が経った報告書を公開いたしました。幅広い分野の皆様の調査・研究に役立てていただければ
幸いです。詳しくは以下の Web サイトをご覧ください。
JUAS ライブラリーの URL はこちら→
http://www.juas.or.jp/servey/library/
なお、直近 2 回分の調査結果に関しては、「企業 IT 動向調査報告書 2014」および「企業 IT 動向調
査報告書 2015」として有償で販売しております。詳しくは以下の Web サイトをご覧ください。
企業 IT 動向調査報告書 2015 の URL はこちら→
http://www.juas.or.jp/servey/it15/
■本リリースに関するお問い合わせ先
一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会 担当:各務(カガミ)
〒103-0012 東京都中央区日本橋堀留町 2-4-3 ユニゾ堀留町二丁目ビル
電話:03-3249-4101
電子メール:[email protected]
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