声 仮面ライダーW SS ケイス・ロンタイ ︻注意事項︼ このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にP DF化したものです。 小説の作者、 ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作 品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁 じます。 ︻あらすじ︼ ケイス・ロンタイと申します。 仮面ライダーWの短編の物語です。 ご意見ご感想等ありましたら、宜しくお願いします。 pixiv様、ss投稿掲示板様等にも同一の作品を載せていま す。 読みやすいほうでお気軽にどーぞm︵︳ ︳︶m 目 次 声 仮面ライダーW SS ││││││││││││││││ 1 声 仮面ライダーW SS 静かな夜だった。 この世の全てが暗黒に包まれてしまったような、不吉な夜。 月齢では本日は満月。 しかし、空は厚い雲で覆われており、星どころか月すらもみえない。 風も亡く、人もまったくいない裏路地で、まるで世界に自分ひとり だけが取り残されているような錯覚に陥る。 この街はとても強い風が吹くことで有名なはずなのだが、この日は 不気味なくらいに風が凪いでいた。 ﹁ハァ、ハァ、ハァ、﹂ 私は今、追われている。 誰に追われているのか、何故追われているのか、どこに助けを求め ればいいのかすらも分からない。 何も考えがまとまらないまま、とにかく私は走る。 ﹁ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、﹂ 全力疾走なんて学生のとき以来だ。 走ることを忘れた私の足は、最初の10歩程度で軋みだした。 肺は体に充分な酸素を入れることができず。 喉は焼けるように熱い。 それでも、走る。 だって、もし私が歩みを止めてしまったら。 そこが私の人生の終着点になってしまうのだから。 自分で言うのも何なのだが。 私はこの街に住む、ごくごく平凡な一般人だと思う。 平日は朝から晩まで働き、家ではテレビをみながらご飯を食べ、適 当にダラダラしてようやく床に就く。 1 週末には友人と遊んだり誰もつかまらなかったら家で映画のDV Dをみているような、どこにでもいる小市民。 特定の誰かに恨みをかったことなどないし、何か良くない犯罪に手 を染めたこともない。 今日だってこんなに夜遅いのは、たまっていた会社の事務整理に思 いのほか手間取ってしまったからだ。 やっとの思いで本日の仕事に決着をつけ、会社から出る。 ぱきぱきっと首を鳴らして携帯で時刻を確認する。 どうやらいつもの帰宅時間を大幅にすぎてしまったようだ。 普段なら人のいる大通りから帰るのだが、それだと電車に確実に乗 り遅れてしまう。 なので、少し怖いが近道の裏路地から帰ることにした。 怖いといっても、もう何度も通っている道なので特に不安はなかっ た。 2 何てことはない。 このまま歩いて電車に乗り、帰ってシャワーを浴び、毎週楽しみに しているテレビ番組をみながらご飯を食べ、時間になったら寝る。 いつものささやかな日常の繰り返し。 何もないけれど、それでも大切だと胸をはれる、とてもかけがえの ない日々。 今日だってそうなるはず。 ︶ そうなるはず、だったのだが。 ︵Anomalocaris 機械の電子音のような声。 右に曲がり、左に曲がり、また右に曲がり。 裏路地をがむしゃらに走る。 ﹁ハァ、ハァ、ハァ、﹂ この声を境に、私の人生はくるっと反転した。 !!! とにかく走る。 止まることは許されない。止まってしまったら、私の全てが終わっ てしまう。 走りすぎてもう何も感覚がない足。 満足に空気が入ってこない肺。 早鐘のように鼓動を乱打する心臓。 息なんか荒くなりすぎて、まるで盛りのついた犬のようだ。 ﹁ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、﹂ それらの一切を無視して力の限り走る。 自分は走ることしかできない機械か何かなのだと。 もし走ることを止めてしまったら自分はお払い箱なのだと。 そんなバカなことを必死で自分に言い聞かす。 しかし、その逃走劇は突然に幕を下ろされた。 路地の行き止まり。 耳に突き刺さる。 ﹁・・・・・・・。﹂ 私はおそるおそる、たっぷり時間をかけて振り返る。 ■■■■ーーーー そこには、 エビやカニのように硬そうな甲羅。 無機質で大きな黒目。 正真正銘の、化け物がいた。 !!!" 3 分厚いコンクリートの壁が、突如私の前に立ちはだかった。 焦る、焦る、焦る。 出口らしきもの、自分の体をすべりこませそうな窓をさがす。 探す、探す、探す、さがす、さがす、さがす。 ■■■■ーーーー しかし何もない。 !!!" およそ生き物の鳴き声とは思えない、悲鳴にも似た甲高い声が私の " " 刃物のように鋭い爪と牙。 ■■■■ーーーー そんな異形を持ちながら、それは人間のように二足で立っていた。 ■■■■ーーーー ・・・・・・・ 怪人は私の心情なんか気にせず、ただこちらを見ている。 私の愛した日常は、きっとこの路地裏の袋小路で終わりになる。 私はきっと、明日の太陽をみることはできない。 もう、ダメだ。 ゲットにしたのだ。 自動販売機でジュースを選ぶくらいの気軽さで、こいつは私をター 人が邪魔だという理由で虫を踏み潰すのと同じこと。 ただ、たまたま目についた私を襲ってみただけ。 こいつには、理由なんか無いんだ。 かったような気がした。 私はここにきて、この怪人になぜ襲われたのかようやく理由が分 ああ、なんだ、と私は思う。 ﹁・・・・・・・。﹂ 不意に私と目が合う。 一歩、また一歩、とそいつは歩を進めてくる。 その怪人はゆっくりと私に歩み寄ってくる。 私はその場でヘタりこむ。 あまりの恐怖に腰が抜けてしまった。 ぺたん。 こそぎ奪い取っていく。 その不快な声は、私から逃げるための気力と生きるための希望を根 !!!" !!!" そのありったけの狂気を詰め込んだような凶器を、月光が怪しく照 その腕の先には、金属をも簡単に断ち切れそうな鋭い爪。 そいつは手を振り上げる。 弱い者をただ弱いというだけで見下すような、気持ちの悪い笑顔。 気のせいか、その顔は笑っているようにみえた。 " 4 " " " らしている。 ・・・・・・月光 おかしい。 本日は雲が厚くて星はおろか月ですらみえないはずなのだが くるくるくるくる・・・・・ 下のほうから音がする。 足元をみると、かざぐるまが勢いよく回っていた。 ■■■■ーーーー のだろう。 きっとこの街の風が、あの厚くて不気味な雲を吹き飛ばしてくれた 空を見上げると、綺麗な満月が顔を出していた。 風こそがこの街の象徴なのだ。 るところには様々な形状の風車が設置してあった。 この街はとても強い風が吹くことで有名であり、そのためか街の至 ? ? ■■■■ーーーー ■■■■ーーーー ■■■■ーーーー 怪人、は、こちらを、みる。 その理不尽な怒りの矛先が私にかわるのに数秒とかからなかった。 しかし。 風情だった。 どこにその苛立ちを発散したらいいのか、よく分からないといった ようなしかめっつら。 まるで、楽しく遊んでいる最中に親にケチをつけられたときの子供 の月光が、思いのほかうざったらしかったらしい。 突然吹いたこの爽やかな風とすべての希望を照らし出すようなあ たようだ。 どうやらこの怪人は、さっきの暗くて不気味な雰囲気が好ましかっ いうふうにみえた。 いや。実際のところはどうか分からないが、少なくとも私にはそう 怪人は顔をしかめた。 !!!" !!!" !!!" !!!" 5 " " " " ■■■■ーーーー ■■■■ーーーー びゅんっ しかして、その、怪人の、爪は。 怪人、は、爪を、ふり、あげる。 !!!" !!!" ︵Cyclone ︶ !!! ・・・ ﹁ふむ。 ただし、影は一つだけ。 ントがいなくならねぇんだ ﹂ ﹁しっかし、園崎家も財団Xの加頭も倒したってのにどうしてドーパ 目をこらすと路地の入り口のところに人影がみえる。 この場に不釣合いな、なんとも落ち着いた二つの声。 続いて聞こえた別の声。 いだね﹂ ﹁やはり犯行は月齢の周期に合わせて、場所を変えて行っていたみた ﹁やっと見つけたぜ、この通り魔野郎﹂ 先ほどと同じ、機械の電子音のような声。 突然の声に怪人の手が止まる。 ・・・・・・かのように思えた。 ︵Joker ︶ と、音を立てて、私の胴体を真っ二つにした。 !! !!! ???" 影は一つだけのはずなのに、その声たちは確かにその人影から聞こ ・・・・・・実に興味深いね﹂ もし、そうだとするならば。 あるいは、まだ僕たちの知らない第三勢力がいる、とも考えられる。 ろう。 たぶん財団Xの残党がまだガイアメモリの売買を続けているのだ はないかな。 この前のEXEの一件もあるが、、今回のケースはおそらく別口で ? 6 " " " ■■■■ーーーー えた。 ・・・・・・・っ ﹁ふ、男が細かいことを気にすんな。 れば今月も赤字は確実だと思うのだが ﹂ 情報料をかなりふんだくられてしまった。 僕の記憶違いでなけ しかし、いいのかい ﹁ふむ、確かに。 犯行現場の特定にはもっと時間がかかっていただろうぜ﹂ こいつはウォッチャマンに感謝だな。あいつの情報がなかったら、 ﹁まぁともあれ。 た。 顔もマスクで覆われており、その両目で光る赤い複眼が印象的だっ 右が緑、左が黒のアシンメトリーの怪人。 ただ、このエビの化け物とはまったく違う姿をしていた。 つまるところ、その声の主も怪人だった。 その月明かりで、一連の声の主の正体が明らかになった。 雲が晴れ、月の光がいっそう濃くなる。 はここで破綻するかもしれないということを予期しているのか。 実はある程度あの影の正体を理解していて、出会ってしまった自分 とも、 あの得体の知れない人影に、未知への不安を抱いているのか。それ というよりかは、怯えているかのようにみえた。 怪人は驚いている。 自 ﹂と言わんばかりに、さらに強い風が吹く。 というアピールまじりの威嚇のようにみえた。 びゅうううっ ・・・っ その怪人に﹁黙れ !! " まるでその人影を取り巻く竜巻のような強い風。 ! 分を無視するな しかし、その咆哮はさっきのように勝ち誇ったものではなく、 突然の来訪者に怪人が吠える。 !!!" !" ? ? 7 !??" " " " " いいか、男の仕事の八割は決断。 そこから先はおまけみたいなも んだ。 報酬なんざ二の次。 それが、ハードボイルドってやつなのさ﹂ ﹁・・・・・・ふむ、なるほど。 その考えは全く理解はできないが、君の考えはよく分かった。 それじゃあ、所長に怒られる役は君に一任するとするよ。 ﹂ あのスリッパはかなりの攻撃力を持っている、僕向きじゃない。﹂ ﹁ぅおいっ ﹁それに僕は、一刻も早く片付けて﹁とうふ﹂の検索を続けたいからね﹂ ﹁・・・・・・とうふって、お前な﹂ ・・・・・・・。 私はあっけを取られてしまった。 ︶みたいなもの その奇妙な一体の人影は、この緊迫した状況の中でも全くショック を受けた様子もなく、あまつさえ自分の職業理念︵ について語り始めてしまったのだ。 ﹁・・・っと、 いけない、意識、が、遠く、なる。 今まで張り詰めていた心の糸が切れてしまったらしい。 そう思ったら私は、突然体から力が抜けてしまった。 ぱたり。 あった。 もう二度と聞くことはできないと覚悟した日常の声が、そこには どこにでもある、かけがえのない大切なもの。 私が愛した、とりとめのないささやかな日々。 それはまるで、友人同士が話すような下らない会話の一幕だった。 でも。 内容はまったく意味不明で、まるで理解不能だった。 出している。 しかも、もう一つの声に至っては、とうふの検索がどうとかと言い ? ま、早く終わらすってことに関しては俺も賛成だ。 8 !? あのか弱い女の子をいつまでもこんな暗い路地に寝かしておくわ けにはいかねぇ。 │││半分力貸せよ、相棒﹂ ﹁やれやれ、相変わらず君は甘いな。 そんなことだから、いつまでたってもハーフボイルドを卒業できな いのだよ。 まぁしかし、それが君の良いところでもあるのだがね。 いいだろう。力はいつだって貸してやるさ。 なんたって、 という声が遠くに聞こえる。 │││僕たちは二人で一人の探偵だからね﹂ ハーフボイルドっていうな ﹁・・・・・・・。﹂ ああ、そうか。 思い出した。 通り魔野郎 ﹂ 落ちてゆく意識のなか、私はある噂を思い出した。 ﹁さぁて、覚悟はできてるか この街には伝説がある。 てもらうよ ﹂ ﹁君の犯行原理には実に興味がある。倒したあとでじっくり調べさせ ! 風があるという。 ﹁﹁さあ、﹂﹂ ﹂﹂ その風の名を、人々は親愛と敬意と畏怖を込めて、こう呼んだ。 仮面ライダー ! 、と。 " 9 ! ? 曰く、街のどこかで誰かが悲しい涙を流したとき、必ず吹く一陣の ? ﹁﹁お前の罪を数えろ "
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